【雛形あり】契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのルール

契約社員の雇用契約書

会社の経営者であれば従業員を雇用する機会は多いと思います。そんな経営者の方に必ずおさえておいていただきたいのが「雇用契約書」の正しい作成方法です。

最近では「契約社員」との雇用関係に関するトラブルが増えています。厚生労働省の統計でも、労働局などが行う総合労働相談で、平成26年度、「契約社員」からの労働相談件数が、全国で「2万6000件」にのぼりました。さらに、契約社員からの相談を受けて労働局から企業に対し指導などの措置をとった件数も「1590件」にのぼっています。

また、平成25年4月に労働契約法が改正されて、「5年ルール」や「不合理な労働条件の禁止のルール」が新たに設けられ、契約社員の権利保護が強化されました。そのため、契約社員の労務管理においては、法改正を踏まえた新たな対応が必要になっています。

そして、契約社員との雇用関係において、トラブル防止の基本となるのが、「雇用契約書」です。そこで、今回は、契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのルールについてご説明したいと思います。

 

今回の記事で書かれている要点(目次)

●基本をチェック!契約社員と正社員の違いについて
●契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのルールとは?
●ルール1:所定労働時間は1日8時間以内かつ週40時間以内が原則。
●ルール2:雇用契約書の内容は就業規則の労働条件を下回ってはならない。
●ルール3:5年で無期契約に転換できる5年ルールに注意!
●ルール4:期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止のルール
●ルール5:法定の記載事項に注意!労働条件の明示義務のルール

 

基本をチェック!
契約社員と正社員の違いについて

契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのルールの説明に入る前に、まずは、基本事項として、「契約社員と正社員の違い」についておさえておきましょう。
契約社員と正社員の違いは以下の通りです。

契約社員と正社員の違い

契約社員:
雇用契約の期間の定めを設けて、期間限定で雇用される従業員

正社員:
雇用契約の期間の定めを設けず雇用される従業員。解雇や退職がない限り定年まで雇用されます。

このように、「雇用契約の期間が決まっているか否か」が契約社員と正社員の違いになりますので、確認しておきましょう。

 

契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのルールとは?

では、契約社員と正社員の違いを踏まえたうえで、契約社員の雇用契約書を作成する際のルールについて見ていきましょう。
契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのルールは以下の通りです。

契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのルール

ルール1:
所定労働時間は1日8時間以内かつ週40時間以内が原則。

ルール2:
契約書の内容は就業規則の労働条件を下回ってはならない。

ルール3:
5年で無期契約に転換できる5年ルールに注意!

ルール4:
期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止のルール

ルール5:
法定の記載事項に注意!労働条件の明示義務のルール

自社の契約社員の契約書がルール通り作られているか、以下で順番にチェックしていきましょう。また、契約社員を雇用しているのに、雇用契約書を作っていないという場合は、この機会に必ず作っておいてください。

 

ルール1:
所定労働時間は1日8時間以内かつ週40時間以内が原則。

まずは、もっとも基本的なルールの1つである「所定労働時間は1日8時間以内かつ週40時間以内が原則」のルールからご説明したいと思います。

このルールは「労働基準法32条」に規定されているルールです。具体的には、「始業時刻から終業時刻までの時間数」から「休憩時間」を差し引いた「所定労働時間」は、「1日8時間以内かつ週40時間以内」である必要があります。

雇用契約書には、「始業時刻」や「終業時刻」、「休憩時間」、「休日」についての記載をします。このときに、たとえば、平日の午前10時から午後9時まで空いている店舗を経営する場合に、「始業時刻午前10時、終業時刻午後9時、休憩1時間、土日休日」という所定労働時間を設定することはできません。これでは、所定労働時間が1日10時間、週50時間になり、法律上の制限である「1日8時間以内かつ週40時間以内」を超えてしまうからです。

このような場合は、「始業時刻午前10時、終業時刻午後7時、休憩1時間、土日休日」などと変更して、所定労働時間がルールの範囲内におさまるように変更しなければなりません。その場合、終業時刻である午後7時から午後9時の閉店までは残業として対応してもらうか、あるいはシフト制にして早番の従業員と遅番の従業員を作るなどして対応することになります。

なお、特例として、小規模の事業所は、所定労働時間が1日8時間以内かつ週44時間以内であればよいとされています。具体的には、「商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業」のいずれかの業種の10名未満の事業所については、所定労働時間が1日8時間以内かつ週44時間以内であればよいとされています。会社全体で従業員が10名未満でなくても、その事業所で従業員が10名未満であれば、週44時間まで所定労働時間を設定することが可能です。

この場合、例えば、「月曜日から金曜日までは1日8時間、土曜日は1日4時間」といった所定労働時間の設定が可能になります。
この点も、ポイントとしておさえておきましょう。

 

ルール2:
雇用契約書の内容は就業規則の労働条件を下回ってはならない。

契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたいルールの2つ目は、「雇用契約書の内容は就業規則の労働条件を下回ってはならない。」というルールです。

このルールは、「労働契約法12条」に記載されているルールです。雇用契約書には、「賃金」や「休日」が記載されます。このときに、たとえば、就業規則に家族手当や住居手当の支給についての規定があるのに、雇用契約書で家族手当や住居手当を支給しないことを定めることはできません。

これでは、雇用契約書の内容が就業規則の労働条件を下回ることになるからです。また、就業規則に「祝日は休日である」と規定があるのに、雇用契約書で「休日は土曜日と日曜日のみ」とすることもできません。

ただし、このルールは、「契約社員にも就業規則が適用されることが前提」になります。契約社員に就業規則が適用されない場合は、この「ルール2」は気にする必要はありません。

ここで、契約社員に就業規則が適用されるかどうかについては主に4つのパターンがありますので、おさえておきましょう。

契約社員と就業規則の関係の4つのパターン

パターン1:
就業規則に全従業員に就業規則を適用することが記載されているパターン

この場合には、契約社員にも正社員と同じ就業規則が適用されますので、契約社員の雇用契約書が就業規則の労働条件を下回らないようにする必要があります。

パターン2:
正社員用の就業規則とは別に契約社員用の就業規則が作成されているパターン

この場合には、契約社員には契約社員用の就業規則が適用されます。そこで、契約社員の雇用契約書が契約社員用の就業規則の労働条件を下回らないようにする必要があります。

パターン3:
就業規則には正社員にのみ就業規則を適用する旨が記載され、契約社員に適用される就業規則が作成されていないパターン

この場合には、契約社員には就業規則の適用がありませんので、「雇用契約書の内容は就業規則の労働条件を下回ってはならない。」というルールは契約社員には適用されません。

パターン4:
正社員用、契約社員用いずれも就業規則が作成されていないパターン

この場合にも、契約社員に適用される就業規則はありませんので、「雇用契約書の内容は就業規則の労働条件を下回ってはならない。」というルールは契約社員には適用されません。

自社の就業規則が4つのパターンのうちいずれのパターンになっているかを確認したうえで、契約社員に適用される就業規則があるときは、雇用契約書の内容が就業規則の労働条件を下回っていないか確認しておきましょう。

 

ルール3:
5年で無期契約に転換できる5年ルールに注意!

契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたいルールの3つ目は、「雇用契約の期間の設定」に関するルールです。

契約社員の雇用契約書には、雇用契約の期間を必ず記載する必要があります。この雇用契約の期間は、「労働基準法14条」により、原則として「3年以内」に設定する必要があります。
さらに、雇用契約の期間を設定する際には以下の2つのポイントに注意しておきましょう。

雇用契約の期間を設定する際の2つのポイント

ポイント1:
雇用契約期間中は原則として解雇できない。

労働契約法17条で、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」されています。

つまり、雇用契約期間中は「やむを得ない事由」がない限り、解雇はできません。そして、この「やむを得ない事由」という条件を満たすためのハードルは極めて高く、雇用契約期間の途中で契約社員を解雇した場合、裁判所が「やむを得ない事由があったから解雇は合法」と判断することはほとんどありません。

これは、雇用契約書で雇用契約の期間を定めた以上、「その期間中はよほどの事情がない限り雇用を継続することを会社は契約社員に約束した」と理解されるからです。そのため、契約社員用の雇用契約書に記載する雇用契約の期間は、期間中の解雇が原則としてできないことを踏まえて設定しましょう。

ポイント2:
契約社員の雇用契約を更新して通算5年を超えて雇用する場合は、契約社員から無期契約への転換を求められれば、会社は応じる義務がある。

これは、冒頭で「5年ルール」としてご紹介したもので、「労働契約法18条」で新たに定められ、平成25年4月1日に施行されたルールです。

たとえば、雇用契約の期間を3年と設定して契約社員を雇用する場合、契約終了時に再度期間を3年として更新すれば、合計6年になりますので、「通算5年を超える雇用」になります。
この場合、契約社員が希望すれば、会社は、期間の定めのない雇用契約への転換に応じる義務があります。
これが、「5年ルール」です。

そのため、契約社員を雇用する企業は、「契約社員の雇用期間が通算5年を超えないように管理する」とか、「5年を超えて無期契約に転換される契約社員が出てくることを踏まえてその場合の労働条件をあらかじめ定めておく」などの対応が必要になります。

この2つのポイントを踏まえて、雇用契約の期間を設定しましょう。

 

ルール4:
期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止のルール

契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたいルールの4つ目は、「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」のルールです。

このルールは、冒頭で「不合理な労働条件の禁止のルール」としてご紹介したもので、「労働契約法20条」で新たに定められ、平成25年4月1日に施行されました。このルールにより、特別な事情がなく、正社員よりも契約社員を低賃金としたり、正社員よりも低い労働条件とすることは禁止されています。

ただし、正社員との労働条件の違いが、仕事の内容や責任の程度、配置転換の範囲などが異なることによるものであり、合理的な理由がある場合は、不合理な労働条件とはなりません。この「不合理な労働条件の禁止のルール」については、平成25年4月1日から施行されたものですが、すでにこのルールをもとに契約社員から会社に対して裁判を起こされるケースが出てきています。

●参考例●

タクシー会社の裁判例
(大津地方裁判所彦根支部平成27年9月16日判決)。

この裁判例は、タクシー会社で通勤手当の支給が、正社員であれば5000円を上限として支給されていたのに対し、契約社員については2000円までしか支給されていなかった事案について、契約社員が正社員との支給額の違いは「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止のルール」に違反するとして、タクシー会社に対して差額分相当額の支払い求めた裁判がありました。

この裁判では、裁判所が会社に対して差額分の支払いを命じた判決が出ています。

●●●●

今後、契約社員と正社員の待遇の差については、契約社員が労働契約法20条を根拠に退職後の差額分の支払いを求めるケースが増えてくると予想されますので、注意が必要です。

自社における契約社員の労働条件が正社員の労働条件と比較して不合理なものとなっていないか、正社員の労働条件と契約社員の労働条件に差がある場合はその差を仕事の内容や責任の程度、配置転換の範囲などが異なることによるものとして合理的に説明できるかを確認しておきましょう。

 

ルール5:
法定の記載事項に注意!労働条件の明示義務のルール

契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたいルールの5つ目は、「記載事項」に関するルールです。

労働基準法15条1項で、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」とされ、さらに、明示を義務付ける項目が細かく決められています。

これらの明示の項目は必ずしも雇用契約書に記載しなければならないわけではないのですが、雇用契約書に記載しておかなければ別途明示を要するため、雇用契約書に記載しておくことをお薦めします。
具体的には以下の項目について明示が義務付けられており、これらを雇用契約書に記載しておきましょう。

契約社員との雇用契約において必ず明示しなければならない項目

(労働基準法15条1項)

(1)労働契約の期間
(2)就業の場所
(3)従事する業務の内容
(4)始業時刻・終業時刻
(5)所定労働時間を超える労働の有無
(6)休憩時間
(7)休日
(8)休暇
(9)賃金の決定・計算方法
(10)賃金の支払方法
(11)賃金の締切り・支払の時期に関する事項
(12)退職に関する事項 ※解雇事由を含む
(13)昇給に関する事項
(14)契約更新の有無、及び、契約更新ありの場合は更新するか否かの判断基準

契約社員との雇用契約において制度を設ける場合は明示しなければならない項目

(労働基準法15条1項)

(15)交替制勤務をさせる場合は交替期日あるいは交替順序等に関する事項
(16)退職金の定めが適用される労働者の範囲、退職金の決定、計算・支払の方法、支払時期に関する事項
(17)臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
(18)労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
(19)安全・衛生に関する事項
(20)職業訓練に関する事項
(21)災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
(22)表彰、懲戒処分に関する事項
(23)休職に関する事項

契約社員の1週の所定労働時間が正社員より短い場合は明示しなければならない項目

(パートタイム労働法6条1項)

(24)昇給の有無
(25)賞与支給の有無
(26)退職金支給の有無
(27)短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

このように、「必ず明示しなければならない項目」と「制度を設ける場合は明示しなければならない項目」、「所定労働時間が正社員より短い場合は明示しなければならない項目」の3種類があります。

たとえば、契約社員に賞与を支給しない場合、賞与に関する事項は「(17)」で「制度を設ける場合は明示しなければならない項目」になりますので、賞与の制度がある場合にその内容を明示すれば足り、賞与の制度がない場合に「賞与無し」と明示することまでは義務付けられていません。

ただし、この契約社員の1週の所定労働時間が正社員より短い場合は、賞与支給の有無は「(25)」で「所定労働時間が正社員より短い場合は明示しなければならない項目」に該当しますので、この場合は、賞与の制度がなければ「賞与無し」と明示することが必要です。

自社で契約社員用の雇用契約書を作成されている場合は、自社の雛形がこれらの記載項目をすべて記載しているか確認しておきましょう。

なお、契約社員に適用される就業規則があるときは、就業規則に定めのある項目については、雇用契約書で就業規則に従うことを記載したうえで、契約社員に就業規則を交付すれば、雇用契約書での記載を省略することが可能です。

 

まとめ

今回は、まず契約社員と正社員の違いについてご説明したうえで、契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのルールとして以下の点をご説明しました。

ルール1:
所定労働時間は1日8時間以内かつ週40時間以内が原則。

ルール2:
雇用契約書の内容は就業規則の労働条件を下回ってはならない。

ルール3:
5年で無期契約に転換できる5年ルールに注意!

ルール4:
期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止のルール

ルール5:
法定の記載事項に注意!労働条件の明示義務のルール

いずれも、契約社員とのトラブル防止のために重要なルールとなりますので、きっちり対応しておきましょう。なお、これから契約社員との雇用契約書を作成される方は、ぜひ下記の雛形もご参照ください。また、最近では雇用契約に関するトラブルが急増しておりますので、自社の雇用契約書に不安がある際は、予防法務の対策として労務に強い咲くやこの花法律事務所の弁護士に契約書チェックのご相談をして下さい。

契約社員との雇用契約書の雛形

「契約社員との雇用契約書」の雛形をダウンロード

 

補足!
パート社員の雇用契約書の作成の際におさえておきたいポイント!

これまで説明してきました契約社員の雇用契約書の作成の際の重要ポイントと合わせて、昨今ではパート社員の契約形態も増え続けています。今回の「契約社員の雇用契約書の作成の際の重要ポイント」の記事の関連情報として、「パート社員の雇用契約書の作成の際の重要ポイントも合わせてご確認下さい。また「雇用契約書の雛形」はこちらからダウンロードしていただけます。

 

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事作成日:2016年03月22日

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