会社が、従業員に対して、自宅待機を命じることがあります。
この、自宅待機命令には、
① 会社と従業員との間でトラブルがあった場合に、そのトラブルによる影響が他の従業員に及ぶことを防止し、健全な職場環境を維持するための自宅待機命令
② 従業員が不正行為(セクハラ、横領など)を行った疑いがある場合に、従業員を一定期間自宅待機にしておいて、証拠を捨てたり隠したりするのを防止し、調査を行うための自宅待機命令
などがあります。
①は、例えば、会社と従業員との間で、残業代の支払をめぐってトラブルがおきている場合に、そのトラブルが解決していないのに、渦中の従業員が普通に出勤してきたのでは、職場の雰囲気が悪くなったり、真似して自分も残業代を請求する従業員が出てきたりします。
これを防ぐために、とりあえず渦中の従業員を自宅に待機させるために命じられたりします。
②は、例えば、セクハラが起こった疑いがあり、被害者と加害者をとりあえず引き離しておく必要がある場合に命じられたりします。
セクハラが起こったかどうかはっきりしない間は、とりあえず加害者を自宅待機としておき、その間に被害者や目撃者に聞き取りを行うなどのセクハラの調査をするのです。
自宅待機命令は、懲戒処分としての出勤停止命令とは異なります。
出勤停止命令は、
従業員に対する「制裁」
として行われるものですので、就業規則に、懲戒処分の内容として出勤停止が定められていない限り、命じることはできません。
これに対して自宅待機命令は、
トラブル拡大の防止による健全な職場環境の維持や、不正行為があったかどうかの調査といった会社の業務の一環
に必要なものです。
ですので、
業務命令の一環として、就業規則に特に定めはなくても命じることができます。
そもそも従業員には、
「就労請求権」
つまり、会社に対して、自分を働かせるように請求する権利はありません。
従業員の権利は、賃金を会社に請求することです。
会社が、健全な職場環境の維持や不正行為の有無の調査という業務のために必要であれば、従業員を働かせずに、業務命令として自宅待機にすることも、基本的には問題ないのです。
ただし、自宅待機期間中の従業員に対しては、通常支払っている賃金を支払う必要があります。
経営者の皆さんの中には、
「休業期間中は、通常の6割の賃金を支払えばよい。」
という話を聞いたことのある方もおられるでしょう。
確かに、労働基準法26条には、次のように定められています。
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、
使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」
これだけを読むと、会社が従業員に自宅待機を命じたことで、従業員が会社を休んでいる場合には、支払うべき賃金は普段支払っている賃金の6割でいいようにも読めます。
しかし、労働基準法26条の
「使用者の責に帰すべき事由」
には、会社が意図的に従業員に休業を命じたような場合は含まれません。
この、「使用者の責に帰すべき事由」というのは、
経営者が意図したり、経営者側に落ち度があって生じたわけではないが、経営者の側で生じた経営上の障害(例えば、機械の故障や検査、原料不足、官庁による操業停止命令など)のことです。
ですので、会社が意図的に、調査のために従業員に休業を命じた場合は、この「使用者の責に帰すべき事由」には当たらず、6割ではなく通常支払っている賃金を支払う必要があるのです。
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○ セクハラ被害の申告に対する対応方法 https://kigyobengo.com/blog/labor/742
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