営業職の従業員や旅行添乗員などの外勤の社員から、残業代の請求をされるトラブルが増えています。
このような外勤社員については、労働基準法の「事業場外のみなし時間制」を利用されている企業も多いと思います。
そこで、今回は、外勤社員について「事業場外のみなし時間制」を利用する場合の注意点についてお話したいと思います。
参考になるのが、東京地方裁判所平成22年7月2日判決です。
この裁判は、海外旅行の添乗員が残業代が支払われていないとして会社に残業代の請求をした事件です。
会社側は「事業場外のみなし時間制」により、残業代は実際の労働時間ではなく、「業務に通常必要とされる労働時間」により計算されると主張しました。その上で、添乗業務の場合、「業務に通常必要とされる労働時間」は1日11時間であり、会社はこれに対応する賃金として1日当たり16000円を支払っているから、残業代の未払いはないと主張しました。
これに対し、裁判所は、会社が1日当たり16000円を支払っているとしてもそれは8時間分の給与であり、残り3時間分は未払いになっているとして、会社に残業代の支払いを命じました。
「事業場外のみなし時間制」を採用する場合、残業代は実際の労働時間ではなく、「業務に通常必要とされる労働時間」に基づいて計算されます。
そして、この「業務に通常必要とされる労働時間」を何時間にするかについては労使協定で取り決めることができますので、その取り決めをしている会社が多いと思います。
「業務に通常必要とされる労働時間」を1日8時間などと法定の労働時間の範囲内の時間で取り決めた場合は、残業代は発生しませんので問題ありません。
しかし、場合によっては、それでは実態に合わず、1日8時間よりも長い時間を「業務に通常必要とされる労働時間」として、労使協定で定めることもあるでしょう。
その場合に、重要なのは、たとえば仮に1日11時間とした場合に、現在の給与の中に1日8時間を超える分(具体的には1日3時間分)が含まれていることが雇用契約書等で明確になっているかどうかという点です。
この裁判のケースでは会社は1日当たりの給与として16000円と定めており、会社としては当然それは11時間分の給与であると考えていたと思われます。
しかし、裁判所は、これを認めず、16000円の給与は労働基準法の法定労働時間の8時間分の給与であり、3時間分は未払いであると判断しました。
会社の考えを認めてもらうためには、雇用契約書で「1日あたり基本給12000円および残業手当4000円を支給する」などと、1日8時間に対応する基本給と、8時間を超えた部分に対応する残業手当の部分を明確にわけて書いておく必要がありました。
雇用契約書は、労働関係でも最も基本的な書類の1つですが、その記載の方法は、企業の実情に即してしっかり検討したものをつくっておかなければなりません。
そうでなければ、思わぬところで、会社にとって予期せぬ負担をしなければならないケースがでてきます。
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