会社の中には「残業代は給与の中に含まれている」という理解をされているケースも多いと思います。
今回は、年棒の中に残業代も含めて支払っていたというケースについて、残業代請求がされた場合の対応を考えたいと思います。
東京地方裁判所平成23年12月27日判決の「HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件」は,年棒1250万円を支給されていた外資系銀行の従業員が、銀行に対し残業代の請求をした裁判です。
銀行側は「残業代は給料に含めて支払うことにしているので,残業代を払う必要はない」と主張しました。
しかし、裁判所はこれを認めず、「1日8時間を超える時間については残業代を払わなければならない」と判断しました。
このケースは、1250万円という高額の年棒を支給するかわりに残業代は支給していなかった事例であり、会社(銀行)としては残業分も含めて年棒を支給する趣旨であったと推測されます。
しかし、裁判所の結論からも明らかなように、雇用契約書や就業規則で支給額の中に残業代分を含むことを明記しておかなければ、いざ裁判となれば会社側が敗訴してしまうリスクがあります。
また、労働基準法第41条では「管理監督者」には残業代の支払い義務がないとされています。
しかし、一般に「管理監督者」として残業代の支払い義務がないとされるのは、少なくともある部門の統括的な立場以上にある従業員で出退勤時間の自由がある場合に限られます。
いわゆる専門職で部下がいない場合などは「管理監督者」として支払い義務が免除されるケースには該当しません。
社内で「管理監督者」として扱い、残業代分も含めた給与を支給していたとしても、必ずしも裁判所がそれを認めるとは限りません。
この点を踏まえて、たとえ会社としては管理職として扱っている場合であっても、役職手当は残業代相当分としての支給であることを雇用契約書や就業規則で明記することが望ましいです。
管理職から残業代の請求を受けた会社は、残業代の請求に対応すると同時に雇用契約書や就業規則を整備していく必要があります。
ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談いただき、一緒にトラブルを乗り切っていきましょう。
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