取締役からの残業代請求への対応方法
閉じる
企業向け法律講座ブログ

取締役からの残業代請求への対応方法

2012年12月21日

今回は、形式的には取締役などの役員であっても、労働組合に加入したうえで、解雇の無効や未払い残業代の支払いを主張して、会社に対し団体交渉を申し込んでくることがあり、会社としてその団体交渉に応じなければならない場合があるというお話をさせていただきます。

 

経営者の方々の認識としては、「管理職は組合員になれない」というものであって、ましてや取締役が組合に加入して団体交渉を申し込んでくるなどという事態は想定しておられないのではないでしょうか。

 

 しかし、取締役などの役員が労働組合に加入して、会社に対して団体交渉を申し込んでこないとは、言いきれないのです。

 

 確かに、労働組合法という法律の2条には、「役員が加入することができる労働組合は、法律上の労働組合とは認められない」ということが定められています。

 

法律上の労働組合でなければ、例え団体交渉を申し込んできたとしてもこれに応じる義務は会社にはありません。

  ただ、この労働組合法の2条の「役員」と言えるためには、単に会社の株主総会で役員として選任されて、「取締役」の肩書がついているだけでは足りません。

 

そうではなく、役員としての実態を備えている必要があります。

 

 

 この点について、佐賀地方裁判所で平成22年3月26日に下された判決のなかで、「取締役」の肩書を有している者の加入している労働組合が、法律上の労働組合に当たるかどうか、ということについて判断がされています。

 この事件は、ゴルフ練習場を経営する被告会社が、原告である同社の取締役が外部の労働組合(建交労・全日本建設交運一般労働組合)に加入したことを理由として解雇したことから、不当労働行為として訴えられたというものです。

 労働組合法の7条には、「従業員が労働組合に加入したことを理由として解雇してはいけない」ということが定められています。

 

つまり、取締役である原告が、労働組合法2条で言うところの「役員」に当たらないのであれば、原告が外部の労働組合に加入したことを理由とする解雇は、労働組合法の7条に違反する違法なものとなります。

 

 結論として、佐賀地方裁判所は、取締役である原告は、会社役員としての実態を備えていないため、労働組合法2条の「役員」には当たらないとして、原告が外部の労働組合に加入したことを理由とする解雇は、労働組合法7条に違反する不当解雇であると判断しました。

  原告は、登記簿上も取締役とされており、対外的にも「取締役」の肩書を用いていただけでなく、基本給も他の一般従業員と比較して、5万円程度高いものでした。

 そうであるにもかかわらず、佐賀地方裁判所が、原告である取締役が会社役員としての実態を備えていないと判断した理由は、次の3つです。

 

 ① 原告は単なる従業員から取締役に昇進した者であるが、従業員時代と取締役になってからとで勤務場所や勤務実態に変化がなかったこと。

 

② 勤務時間や勤務日数についても会社から管理を受けていたこと。

 

③ 被告会社では取締役会が開催されておらず、経営上の重要事項については原告以外の取締役らの間の協議で決められていたこと。

 

 

これらの理由から、取締役である原告は、役員としての実態を備えていないとして、原告が外部の労働組合に加入したことを理由としてなされた解雇は違法であり不当解雇であると判断されたのです。

 

 この佐賀地方裁判所の判決からもわかるように、取締役として登記されていても本当に役員としての実態を備えている人以外は、労働者として扱わなければなりません。

 

 役員の実態を備えているというためには、以下の点が必要です。

 

 

① 従業員から昇進して就任した役員については、特に、昇進に伴って役員にふさわしい職責を与えること。

 例えば、人事に関する権限や契約締結についての決裁権を拡大したり、対外的な交渉権・決定権を与えること。

 

② 役員の勤務時間や勤務日については会社側がタイムカードや出勤簿を用いての管理をおこなわず、役員の裁量に委ねること。

 

③ 取締役会を定期的に(少なくとも3カ月に1回は)開催し、役員を必ず参加させる。

 

 

この3点を備えない役員については、そもそも従業員として考えていかなければなりません。

 会社の取締役との関係についてお悩みの経営者の方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

 

 

顧問契約をご希望の経営者の方の面談を随時行っておりますので https://kigyobengo.com/contact.htmlからお申し込みください。

 

なお、このブログの内容はメールマガジンによる配信も行っております。https://kigyobengo.com/mailmagazinにメールマガジン登録フォームを設けておりますので、ぜひご登録をお願いいたします。

 

顧問実績170社 以上!企業法務に特に強い弁護士が揃う 顧問弁護士サービス

企業法務の取扱い分野一覧

お問い合わせ状況

昨日のお問い合わせ件数6
今月のお問い合わせ件数44

企業法務に強い弁護士紹介

西川 暢春 代表弁護士
西川 暢春(にしかわ のぶはる)
大阪弁護士会、近畿税理士会/
東京大学法学部卒
小田 学洋 弁護士
小田 学洋(おだ たかひろ)
大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
池内 康裕 弁護士
池内 康裕(いけうち やすひろ)
大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
片山 琢也 弁護士
片山 琢也(かたやま たくや)
大阪弁護士会/京都大学法学部
堀野 健一 弁護士
堀野 健一(ほりの けんいち)
大阪弁護士会/大阪大学
荒武 宏明 弁護士
荒武 宏明(あらたけ ひろあき)
大阪弁護士会/大阪大学文学部
米田 光晴 弁護士
米田 光晴(よねだ みつはる)
大阪弁護士会/関西学院大学法学部
渕山 剛行 弁護士
渕山 剛行(ふちやま よしゆき)
大阪弁護士会/大阪大学法学部法学科
弁護士紹介一覧へ

メディア掲載情報

「わかりやすい・説明親切な対応・迅速なレスポンス」を徹底している弁護士として、フジサンケイビジネスアイに掲載されました。
弁護士法人咲くやこの花法律事務所 YouTube
大阪弁護士会
企業法務のお役立ち情報 咲くや企業法務.NET