営業職や旅行添乗員など外勤社員の残業管理の注意点
企業向け法律講座ブログ

営業職や旅行添乗員など外勤社員の残業管理の注意点

  • ツイート
  • シェア
  • はてブ
  • LINEで送る
  • Pocket
  • 2014年05月08日

    営業職の従業員や旅行添乗員などの外勤の社員から、残業代の請求をされるトラブルが増えています。

     

    このような外勤社員については、労働基準法の「事業場外のみなし時間制」を利用されている企業も多いと思います。

    そこで、今回は、外勤社員について「事業場外のみなし時間制」を利用する場合の注意点についてお話したいと思います。

     

     

    参考になるのが、東京地方裁判所平成22年7月2日判決です。

    この裁判は、海外旅行の添乗員が残業代が支払われていないとして会社に残業代の請求をした事件です。

    会社側は「事業場外のみなし時間制」により、残業代は実際の労働時間ではなく、「業務に通常必要とされる労働時間」により計算されると主張しました。その上で、添乗業務の場合、「業務に通常必要とされる労働時間」は1日11時間であり、会社はこれに対応する賃金として1日当たり16000円を支払っているから、残業代の未払いはないと主張しました。

    これに対し、裁判所は、会社が1日当たり16000円を支払っているとしてもそれは8時間分の給与であり、残り3時間分は未払いになっているとして、会社に残業代の支払いを命じました。

     

     

    「事業場外のみなし時間制」を採用する場合、残業代は実際の労働時間ではなく、「業務に通常必要とされる労働時間」に基づいて計算されます。

    そして、この「業務に通常必要とされる労働時間」を何時間にするかについては労使協定で取り決めることができますので、その取り決めをしている会社が多いと思います。

     

     

    「業務に通常必要とされる労働時間」を1日8時間などと法定の労働時間の範囲内の時間で取り決めた場合は、残業代は発生しませんので問題ありません。

    しかし、場合によっては、それでは実態に合わず、1日8時間よりも長い時間を「業務に通常必要とされる労働時間」として、労使協定で定めることもあるでしょう。

     

     

    その場合に、重要なのは、たとえば仮に1日11時間とした場合に、現在の給与の中に1日8時間を超える分(具体的には1日3時間分)が含まれていることが雇用契約書等で明確になっているかどうかという点です。

     この裁判のケースでは会社は1日当たりの給与として16000円と定めており、会社としては当然それは11時間分の給与であると考えていたと思われます。

     

    しかし、裁判所は、これを認めず、16000円の給与は労働基準法の法定労働時間の8時間分の給与であり、3時間分は未払いであると判断しました。

    会社の考えを認めてもらうためには、雇用契約書で「1日あたり基本給12000円および残業手当4000円を支給する」などと、1日8時間に対応する基本給と、8時間を超えた部分に対応する残業手当の部分を明確にわけて書いておく必要がありました。

     

     

    雇用契約書は、労働関係でも最も基本的な書類の1つですが、その記載の方法は、企業の実情に即してしっかり検討したものをつくっておかなければなりません。

    うでなければ、思わぬところで、会社にとって予期せぬ負担をしなければならないケースがでてきます。

    労務の問題でお困りの企業様はぜひご相談ください。弁護士が経営者の立場にたってご相談をお受けします。

    ▼ この記事を読んでいただいた方にお勧めの記事はこちらです。 ▼

    ○ 旅行添乗員からの残業代請求 https://kigyobengo.com/blog/2841

    ○ 残業代を給与に含めて支払う場合の雇用契約書の書き方 https://kigyobengo.com/blog/2883

    ○ 労働問題でお困りの方はこちら http://roumubengo.com/

    ○ ご相談はこちらから https://kigyobengo.com/contact

    ○ ブログの一覧はこちらから https://kigyobengo.com/blog

     

    ご相談はhttps://kigyobengo.com/contactから気軽にお申し込みください。

    顧問契約をご希望の経営者の方の面談を随時行っておりますので、

    https://kigyobengo.com/adviser.htmlからお申し込みください。

    なお、このブログの内容はメールマガジンによる配信も行っております。

    https://kigyobengo.com/mailmagazinにメールマガジン登録フォームを設けておりますので、ぜひご登録をお願いいたします。

  • ツイート
  • シェア
  • はてブ
  • LINEで送る
  • Pocket
  • 業法務に特に強い弁護士が揃う 顧問弁護士サービス

    企業法務の取扱い分野一覧

    企業法務に強い弁護士紹介

    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
    池内 康裕 弁護士
    池内 康裕(いけうち やすひろ)
    大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
    片山 琢也 弁護士
    片山 琢也(かたやま たくや)
    大阪弁護士会/京都大学法学部
    堀野 健一 弁護士
    堀野 健一(ほりの けんいち)
    大阪弁護士会/大阪大学
    所属弁護士のご紹介

    書籍出版情報


    労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


    書籍出版情報一覧へ

    運営サイト

    大阪をはじめ全国の中小企業に選ばれ続けている顧問弁護士サービス
    弁護士西川暢春の咲くや企業法務TV
    中小企業や士業(社労士・税理士)のための労務セミナー情報サイト

    弁護士会サイト

    大阪弁護士会
    日本弁護士連合会
    企業法務のお役立ち情報 咲くや企業法務.NET遠方の方のご相談方法