システムのバグに関するベンダーの損害賠償責任について
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IT・著作権について

システムのバグに関するベンダーの損害賠償責任について

2012年05月18日

前回のブログhttps://kigyobengo.com/blog/it/1504をご参照ください。)では、契約書の中に、ベンダーが制作してユーザーに納入したシステム等が、第三者の著作権等の知的財産権を侵害していた場合に備えた条項を入れるべきだというお話をさせていただきました。

 

今回は、ベンダーが開発したシステムにバグがあってシステムの利用に支障が出たり、あるいはバグが原因でシステムがダウンしてしまったことでユーザーに損害が生じた場合のお話です。

このような場合に備えて、ベンダーの責任を、契約書の中で限定しておくべきだというお話をさせていただきます。

 

そもそも、システムにはバグがつきものです。

バグがあるというだけでそれが欠陥であるとされて、ベンダーが損害賠償責任を負わなければならないということにはなりません。

 

 

 

この点については、以前紹介させていただいた、東京地方裁判所の平成15年11月15日の判決(https://kigyobengo.com/blog/149をご参照ください。)が参考になります。

 

この事件では、ユーザーはスーパーマーケットでした。

ユーザーが、販売管理システムの制作をベンダーに依頼したところ、制作されたシステムには、ハンド・ヘルド・ターミナルに日付を誤って入力すると、本部のシステムが止まってしまったり、大量のプリントアウトが出てきてしまうといった不具合がありました。

そのため、ユーザーはベンダーに、これらの不具合を理由に、すでに支払ったシステム開発費の返還を請求しました。

東京地方裁判所は、これらの不具合は「欠陥」ではなく、ユーザーであるスーパーマーケットからベンダーへの請求を否定しました。

このように、裁判になった場合に、システムの「不具合」がすべてシステムの「欠陥」と認定されるわけではありません。

 

 

 

では、どのような場合に、ベンダーがシステムの不具合について損害賠償責任を負うかというと、

ユーザーから指摘を受けたシステムの不具合についてベンダーがスムーズに補修できず、ユーザーがこれにより損害を被った場合は、判例上ベンダーはユーザーの損害について賠償責任を負うとされています。

 

逆に言うと、システムにバグがありユーザーの業務に支障が生じても、ベンダーがユーザーから指摘を受けてすみやかに補修して対応した場合は、ユーザーの損害は賠償請求の対象となりません。

 

では、これを踏まえて契約書ではどのように対応すればよいのでしょうか。

判例上は上記のとおり、ベンダーがシステムのバグや不具合について賠償責任を負うケースはかなり限定されています。

しかし、そうは言っても、システムに不具合があってシステムがダウンしてしまい、そのことでユーザーに損害が発生した場合には、ユーザーはベンダーに対してその賠償を求めてくることが予想されます。

 

ユーザーとしては、たとえばシステムがダウンしている間、営業ができなかったことによる損害、つまり、システムがダウンしていなければ売れたはずの商品の利益なども損害として賠償を求めてくることが十分に考えられます。

実際にも1億円を超えるような請求がされることも珍しくありません。

 

これでは、最終的に裁判所でユーザーの損害賠償請求が否定されることとなったとしても、トラブルが発展して裁判になること自体によって、ベンダーには大きな金銭的・時間的損失が生じます。

 

 

そこで、まず、ユーザーがシステムの不具合について責任を負うのは、

「ベンダーがシステムの瑕疵の修正を繰り返し実施したにもかかわらず、ベンダーの責任で瑕疵が修正されないことによりユーザーが損害を被った場合」

に限られることを契約書に明記すべきです。

 

このことによって、システムのバグで売り上げが落ちたからすぐに損害賠償を求めることができるわけではないということが契約書上明確になります。

 

 

さらに

「ユーザーが損害を被った場合にベンダーが支払うべき賠償金の額は、ユーザーからベンダーに支払われた委託料の金額を上限とする」

という内容の条項を入れておくのもよいでしょう。

 

また、システムのバグやシステムのダウンについては、納品後いつまでも無償で対応する責任を負うのではなく、一定期間に限定することが必要です。

期間経過後のシステムの保守・管理・復旧は、システムの開発契約とは別にシステムの保守・管理契約を結んで有償で対応することが原則となります。

これらを総合すると、開発契約には次のような条文を入れておくことになります。甲とはユーザーのこと、乙とはベンダーのことです。

 

 

 第○条

第1項

甲は成果物の瑕疵の修正が相当な範囲で繰り返し実施されたにもかかわらず、当該瑕疵が乙の責に帰すべき事由により修正されないことにより損害を被った場合、甲に対して、損害賠償を請求することができる。但し、成果物の瑕疵に関する損害賠償請求は、当該成果物の検収完了日から3カ月間が経過した後は行うことができない。

第2項

前項の損害賠償の累計総額は、債務不履行、法律上の瑕疵担保責任、不当利得、不法行為その他請求原因の如何にかかわらず、帰責事由の原因となった個別契約に定める委託料の金額を限度とし、また、当事者の予見の有無を問わず特別の事情から生じた損害、逸失利益については、賠償責任を負わないものとする。

 

 

 

このような条項を入れておけば、ユーザーがシステムの不具合による損害賠償を請求してきた場合に、ベンダーとしては、この条項の存在を盾に、ユーザーからの過大な損害賠償の求めを拒否することができます。

契約書にきちんと記載があればユーザーとしても納得せざるを得ません。

 

つまり、トラブルが裁判に発展せず、交渉で解決する見込みが高まるということです。

このように、ベンダーの責任を限定する条項を契約書の中に入れておくことで、トラブル解決のためにかかる労力・時間を、最小限に抑えることができるのです。

▼ この記事を読んでいただいた方にお勧めの記事はこちらです。 ▼

○ ユーザーからシステム開発契約を解除された時のベンダーのとるべき対処法 https://kigyobengo.com/blog/1820

○ システム納品後の検査の合格・不合格とベンダーの責任 https://kigyobengo.com/blog/it/1476

○ インターネット上のトラブルでお困りの方はこちらから https://kigyobengo.com/internet

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