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【判例ニュース】 固定残業代の合意を無効と判断し、企業に約770万円の支払いを命じた裁判例

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  • 話題の判例ニュース!残業代トラブルについての裁判例

    事件の概要

    中小企業の労務のトラブルの中でも特にご相談が多いのが、「従業員からの残業代請求」に対する対応の問題です。
    東京労働局によると、平成25年度に100万円以上の残業代不払いが指摘された企業は、東京都内だけでも「142企業」あり、労働基準監督の指導により「約22億円」の未払い残業代が支払われたことが発表されています。

    この残業代の問題については、毎月定額の残業手当を支給する「固定残業代」あるいは「固定残業手当」の制度を導入する会社が増えています。会社によっては、「定額残業手当」とか「みなし残業手当」と呼んでいるケースもあります。

    ところが、この「固定残業代」の合意を裁判所が「無効」と判断し、固定残業代を支払っていても会社に残業代の支払いを命じるケースが少なくありません。今回は、裁判所が「固定残業代」の合意を無効と判断し、会社に残業代の支払いを命じたケースの一例として、平成27年2月27日の東京地方裁判所の判決「リンクスタッフ事件」をご紹介します。

    この事件は、人材紹介会社の従業員が、会社に対して、残業代の支払を求めた事件です。
    その概要は以下の通りです。

    「リンクスタッフ」事件の概要

    概要1:
    会社は従業員に対して、以下の内容で賃金を支給していました。

    賃金30万円
    (うち基本給20万9000円、営業手当1万7000円、業務手当7万4000円)、通勤手当別途支給

    そして、雇用契約書には、「業務手当には45時間分までの時間外手当が含まれるが、時間外労働が45時間を下回っても減額されない。」との記載がありました。

    概要2:
    訴訟を起こした従業員は平成22年3月28日まで、大阪本社に勤務していました。大阪本社では、45時間以上の残業については事前に会社の許可を得なければならない「許可制」が採用されていましたが、実際には残業時間が月45時間を超えても超過残業代を支払わないサービス残業が常態化していました。

    概要3:
    さらに、この従業員は平成22年3月29日から、上海での勤務となりましたが、ここでは時には月の残業時間が100時間を超えるような長時間労働の実態がありました。しかも、残業時間が月45時間を超えても、会社は超過残業代を支払わない実態が常態化していました。

    このような経緯の中で、従業員が退職し、会社に対して、「業務手当には月45時間までの時間外手当が含まれる」とした雇用契約書の合意は無効であるとして、会社に残業代の支払いを求めたのが本件訴訟です。

     

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    今回の注目の判例記事の目次

    ●事件の判例について
    ●裁判における争点
    ●裁判所の見解
    ●判例における結論まとめ
    ●ワンポイントチェック!「判例から学ぶ!固定残業代制度導入時の注意点」

     

    事件の判例について

    裁判所は、本件では「業務手当には45時間までの時間外手当が含まれる」とした雇用契約書の合意は無効であると判断し、会社に対して、残業代約420万円と付加金約350万円の合計「約770万円」の支払いを命じました。

     

    裁判における争点

    本件の裁判における争点は、以下の点です。

    『雇用契約書の固定残業代の合意を有効と認め、月45時間までの残業代は支払い済みと扱うことができるか』

    本件では、会社は従業員に業務手当「7万4000円」を支給しており、雇用契約書には、「業務手当には月45時間分までの時間外手当が含まれる」と記載されていました。このような、定額の残業手当を支給する内容の合意を、「固定残業代の合意」と呼びます。会社はこの固定残業代の合意に基づき、残業代のうち、毎月45時間分はすでに支払い済みであると主張しました。

    これに対して、従業員側は、会社が、「残業が月45時間を超えても超過分の残業代を支払っていなかったこと」などを理由に、固定残業代の合意は無効であると主張しました。そして、「固定残業代の合意が無効である以上、毎月45時間分についても残業代がすでに支払われていることにはならない」と主張しました。

     

    裁判所の見解

    本件で裁判所は、まず、「固定残業代の合意の有効性の判断基準」として、以下の通り判示しました。

    裁判所が示した固定残業代の合意の有効性の判断基準

    基準1:
    一般論としては、固定残業代の合意をすること自体が法律上禁止されるものではなく、固定残業代の額以上に割増賃金が発生した場合に超過分が適宜支払われるのであれば問題はない。

    基準2:
    例外として、「固定残業代の合意の趣旨に反する不誠実な賃金支払の実態」がある場合は、固定残業代の合意は、労働基準法に反し無効である。

    この「基準2」で裁判所が言及している「固定割残業代の合意の趣旨」とは、「固定残業代の額を超える残業代が発生した場合は差額を適正に支払うこと」、「従業員の残業時間が長時間になりすぎて健康を害さないように管理すること」の2点が含まれると考えられます。

    裁判所は、これらの2点に反する不誠実な労務管理の実態があるときは、固定残業代の合意は、雇用契約書に記載されていても無効であるとの判断基準を明示しました。

    その上で、本件では、以下の2つの理由から、「固定残業代の合意の趣旨に反する不誠実な賃金支払の実態」があり、固定残業代の合意は無効であると結論付けました。

    裁判所が本件で「固定残業代の合意を無効と判断した理由」

    理由1:
    大阪本社勤務中に、従業員の残業時間を実際より少なく申告させてサービス残業をさせていた実態があり、しかも、固定残業代を超える残業代が支払われていなかったこと。

    理由2:
    上海勤務中は、ときには月の残業時間が100時間を超えるような長時間残業の実態があり、しかも、固定残業代を超える残業代が支払われていなかったこと。

    このように、裁判所は、「業務手当には45時間までの時間外手当が含まれるとした雇用契約書の合意は無効である」と判断しました。

     

    判例における結論まとめ

    本件で、裁判所は、本件で、「月100時間を超えるような長時間残業があったり」、「固定残業代を上回る残業代が発生しても支払っていない実態があること」を理由に、固定残業代の合意は無効であると判断しました。

    そのうえで、固定残業代の合意が無効である以上、毎月45時間分についても残業代の支払いがあったと認めることはできないとして、発生した残業代全額の支払いを命じました。

    あわせて、裁判所はこの会社に付加金の支払いも命じました。この「付加金」は企業が本来支払うべきだった残業代の額とは別に、悪質な賃金未払いに対するいわば「ペナルティ」として判決確定を条件として支払いを命じられる金銭です。本件で、裁判所は、付加金として約350万円の支払いを会社に命じています。

     

    ワンポイントチェック!
    「判例から学ぶ!固定残業代制度導入時の注意点」

    今回の判例から固定残業代の合意が雇用契約書に明記してあったとしても、以下のようなケースでは、裁判所で、「固定残業代の合意が無効と判断される可能性が高い」ことが明らかになりました。

    固定残業代の合意が無効と判断される可能性が高いケースの例

    例1:
    固定残業代に含まれる時間数を超える残業が発生しても、超過分の残業代を支払っていないケース

    例2:
    残業代を固定残業代に含まれる時間内に抑えるために、実際の残業時間よりも少ない時間を労働時間として申告させ、サービス残業をさせているケース

    例3:
    月100時間を超えるような長時間残業が常態化しているにもかかわらず、会社として残業時間を減らす対策をとっていないケース

    従業員からの未払い残業代請求に対する対策として、企業側で、固定残業代制度を導入する動きが広がっていますが、上記のような労務環境にある場合は、裁判所は、固定残業代を残業代の支払いであると認めない可能性が高いといえます。固定残業代の合意をしたからといって、残業時間の計算や固定残業代を超える分の残業代の支払いをしなくてよいわけではありません。
    固定残業代制度を導入する場合は、以下の注意点を踏まえた運用をしなければならないことをおさえておきましょう。

    固定残業代制度導入時の運用面の注意点

    注意点1:
    始業時刻、終業時刻は適切に記録しなければならず、残業時間を過少申告させるなどの実態があってはならない。

    注意点2:
    固定残業代に含まれる時間数を超える残業が発生した場合、超過分の残業代を支払わなければならない。

    注意点3:
    残業時間は従業員の健康に悪影響を及ぼさない程度の範囲内(月80時間から多くても100時間未満)におさまるように管理しなければならない。

    固定残業代制度を導入する際は、これらの運用面の注意点をきっちり確認しておきましょう。

     

    残業代トラブルに関する咲くやこの花法律事務所の解決実績

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