警備会社からのご相談で多いのが、警備業法の行政処分等に対する対応のご相談です。
警察庁が発表した、平成26年の警備業者に対する行政処分の実施状況をみると、指示処分が「273件」、営業停止処分が「12件」、認定の取消し処分が「3件」となっています。
特に営業停止処分を受けると、営業停止期間中の顧客対応ができないことになり、事業に重大な影響を及ぼします。
今回は、咲くやこの花法律事務所の経験をもとに、警備会社には必ず確認しておいていただきたい「よくある警備業法違反事例と予想される営業停止処分等の内容」についてご説明したいと思います。
また、それぞれの違反事例の予防策についてもご紹介しておりますので、警備会社の方は必ずチェックしておいてください。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,警備会社における「よくある警備業法違反事例」とは?
警備会社における、よくある警備業法違反事例と予想される営業停止処分等の内容について詳細な説明をしていきたいと思いますが、最初に咲くやこの花法律事務所の経験をもとに、よくある警備業法違反事例として、以下の3つの典型事例についてチェックしておきましょう。
(1)警備会社における「よくある警備業法違反事例」の3つの典型事例
事例1:
警備員の違法派遣の事例
「警備員の数が足りず、他社の警備員を応援にきてもらい、派遣してしまった」というようなケースです。
事例2:
警備員に対する教育懈怠の事例
「警備員の新任教育が間に合わず、教育を受けさせないまま現場に配置してしまった」というようなケースです。
事例3:
教育実施簿の虚偽記載の事例
「立入検査に対応するため、教育を行っていない警備員について、教育を行ったという嘘の記載を教育実施簿に記載してしまった」というケースです。
上記の典型事例をチェックした上で、これらの警備業法違反事例に対して予想される営業停止処分等の内容についてご説明していきたいと思います。
2,警備業法違反事例1:
警備員の違法派遣の事例で予想される処分内容について
警備会社からご相談の多い警備業法違反事例の1つ目として、最初にご紹介するのが、「警備員の違法派遣」の事例です。
その典型的な内容は、「現場に配置する警備員の数が足りず、他社の警備員を応援にきてもらい、派遣してしまった」という事例です。
警備業務についての労働者の派遣は労働者派遣法違反になり、それについて警備業法上の行政処分が課されます。
このケースで予想される処分内容は以下の通りになります。
(1)警備会社における警備員の違法派遣の事例で予想される処分内容
1,営業停止処分
違法派遣をした側、違法派遣を受けた側の双方に7日~14日間の営業停止処分が課されることが通常です。
2,指導教育責任者証の返納命令
事件に関与した指導教育責任者に対しては、指導教育責任者資格証の返納命令が出されることがあります。
3,再発防止策の報告
再発防止策を立案して公安委員会に報告することが公安委員会から指示されます。
4,現場責任者に対する研修の実施
現場責任者に対して労働関係法令に関する研修を実施し、その結果を書面で提出することが公安委員会から指示されます。
このように違法派遣事例では、派遣した側も派遣を受けた側も、営業停止処分が課されます。
違法派遣事例の発生を防ぐためには、警備業務請負契約の内容を、警備先の顧客と自社の2社間の契約にせず、応援に来てくれる警備会社も加えた3社間の契約にすることがおすすめです。
3社間の契約を作っておけば、違法派遣にはなりません。
現場に配置できる警備員が足りなくなった場合の対応方法や3社間契約をする場合の契約内容等を日ごろから明確に準備しておくことが、違法派遣事例の発生の予防につながりますので、早めに取り組んでおきましょう。
3,警備業法違反事例2:
警備員に対する教育懈怠の事例で予想される処分内容について
警備会社からご相談の多い警備業法違反事例の2つ目としてご紹介するのが、「警備員に対する教育懈怠の事例」です。
その典型的な内容は、「新しい現場に配置する警備員の新任教育が間に合わず、教育を受けさせないまま現場に配置してしまった」という事例です。
このケースで予想される処分内容は以下の通りになります。
(1)警備会社における警備員に対する教育懈怠の事例で予想される処分内容
1,営業停止処分
警備員のうち教育をしていた者の割合に応じて、7日~1ヶ月の営業停止処分、あるいは指示処分になります。
●教育をした警備員数が50%未満の場合:
通常1ヶ月の営業停止処分
●教育をした警備員数が50%以上70%未満の場合:
通常14日の営業停止処分
●教育をした警備員数が70%以上90%未満の場合:
通常7日の営業停止処分
●教育をした警備員数が90%以上の場合:
指示処分
2,指導教育責任者証の返納命令
事件に関与した指導教育責任者に対しては、指導教育責任者資格証の返納命令が出されることがあります。
3,教育の実施の指示
教育ができていなかった警備員に対して未実施分の教育を行うことが公安委員会から指示されます。
4,再発防止策の報告
再発防止策を立案して公安委員会に報告することが求められることが指示されます。
教育懈怠事例の発生を防ぐためには、警備員に対する教育の進捗状況を確実に管理することが必要です。また、どうしても現場配置までに教育が間に合わない警備員については、現場に配置しないという決断をすることが必要です。
教育自体はやっているが、教育時間が少し足りないというケースもありますが、日ごろから、法定通りの時間数をきっちり教育することを徹底しておかなければ、だんだんとルーズになってしまいます。
また、教育懈怠事例は、急に新しい現場の依頼を受けたときに、教育が間に合わずに警備員を現場に配置してしまうことにより、発生することが多いです。
そのため、急に新しい依頼を受けたなどの場面で応援に来てくれる警備会社をあらかじめ確保しておき、2社で新しい現場に対応することも、重要な予防策の1つになりますので、おさえておきましょう。
4,警備業法違反事例3:
教育実施簿の虚偽記載の事例で予想される処分内容について
警備会社からご相談の多い警備業法違反事例の3つ目としてご紹介するのが、「教育実施簿の虚偽記載の事例」です。
その典型的な内容は、「立入検査に対応するため、実際には教育を行っていない警備員について、教育を行ったという嘘の記載を教育実施簿に記載してしまった」という事例です。
このケースで予想される処分内容は以下の通りになります。
(1)警備会社における教育実施簿の虚偽記載の事例で予想される処分内容
1,罰金刑:
30万円以下の罰金に科されます。
2,認定証の返納命令:
罰金が科される結果、認定証の返納が命じられ、5年間警備業を行うことができなくなります。
3,指導教育責任者証の返納命令:
事件に関与した指導教育責任者に対しては、指導教育責任者資格証の返納命令が出されます。
なお、教育実施簿の虚偽記載については、各都道府県の公安委員会が処分基準を定めており、そこでは、営業停止処分とされています。
しかし、実際には、ここ数年は、教育実施簿の虚偽記載については、単に営業停止処分にとどまらず、認定証の返納まで命じられることが通常となっています。
これは、教育実施簿の虚偽記載は、単なる行政処分にとどまらず罰金刑が科されるところ、警備業法8条2号で、罰金刑を科された警備業者に対しては認定証の返納を命じることができるとされているためです。
このように教育実施簿に虚偽の記載をした場合の警備業者のペナルティは極めて重大なものになっていますので、絶対に虚偽の記載をしないように、教育実施簿の作成者に日ごろから指導することが必要です。
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7,まとめ
今回は、警備業に関するご相談の多い咲くやこの花法律事務所で、これまで実際にご相談をお受けした警備業法違反事例のうち、特に多いケースをピックアップしてご説明しました。
警備の現場では、「忙しい」、「人が足りない」、「教育が間に合わない」ということが発生しがちですが、そのような場面でも警備業法をきちんと守って対応できるように日ごろからの準備が大切です。
咲くやこの花法律事務所では、警備業法違反事例の発生予防に関するご相談だけでなく、万が一、警備業法違反を起こしてしまった場合の、営業停止処分等への対応のご相談も承っております。
営業停止等の処分は、事業にとって重大なダメージにはなりますが、早めに必要な対策をとることで、事業と会社を存続させることが可能です。
営業停止処分等への対応でお困りの警備会社様も、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2022年8月3日