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顧問弁護士コラム

顧問弁護士が監査役を兼任する場合の問題点をわかりやすく解説

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  • 顧問弁護士が監査役を兼任する場合の問題点をわかりやすく解説
    • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    • この記事を書いた弁護士

      西川 暢春(にしかわ のぶはる)

      咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
    • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

    こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

    自社の監査役に欠員が出た場面や上場の準備をする場面で、顧問弁護士に監査役を依頼することを検討することがあるかもしれません。

    会社の整備の観点からは、法的な知識を持った弁護士を監査役にすることは望ましいことでもあります。

    ただし、監査役を依頼する弁護士が自社の顧問弁護士でもある場合は、注意が必要な点です。

    顧問弁護士が監査役を兼ねることで、顧問弁護士としての役割や、監査役としての役割を正しく果たすことができなくなることがあるためです。

    例えば、以下のようなケースです。

     

    参考例1:
    監査役には、取締役に法令違反行為があった場合に、会社を代表して取締役に損害賠償請求訴訟を起こすなどの行動が必要になる場面があります。

    監査役が、取締役から普段相談を受けている顧問弁護士である場合、このような場面で正しい判断ができない危険があるでしょう。

     

    参考例2:
    顧問弁護士には、会社の規程類を整備する役割もあります。一方で、監査役は会社の規程類が正しく整備されているかを監査する役割があります。

    顧問弁護士が監査役を兼ねていると、自分が顧問弁護士として整備した規程類を、監査役として監査することになり、これも適切とはいえません。

     

    この記事では、顧問弁護士が監査役を兼ねる場合の問題点についてご説明したいと思います。

     

    ▼顧問弁護士の監査役の兼任に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

    「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

     

     

    1.顧問弁護士の役割と監査役の役割

    顧問弁護士が監査役を兼ねる場合の問題点についてご説明する前に、まず、それぞれの役割を確認しておきましょう。

     

    (1)監査役の役割

    監査役は、株式会社において取締役の職務の執行を監査することが役割です。

    この監査には取締役の職務の執行が法令や自社の定款を遵守して行われているかどうかを監査する「業務監査」と株主総会に提出される計算書類を監査する「会計監査」とがあります。

    監査役は、株主総会において選任されます(会社法329条第1項)。

     

    (2)顧問弁護士の役割

    これに対して、顧問弁護士は、会社でおこる法律問題や法的な課題について普段から継続的に相談を受け、会社をサポートする弁護士をいいます。

    例えば、「社内規定の整備」、「労務管理の改善」、「契約書の整備やリーガルチェック」、「法改正への対応」、「新規事業の法的な課題の検討」などについて、会社の担当者からの相談を受け、サポートします。また、取引先や顧客、従業員とのトラブル等が生じたときに、その解決方法について助言することも顧問弁護士の重要な役割です。

    そして、このような顧問弁護士は、監査役とは異なり、株主総会で選任されるわけではありません。通常は、会社の取締役から依頼を受け、顧問弁護士に就任することになります。

    顧問弁護士の役割については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

     

     

    このように、おおまかにいうと、監査役は取締役を監査する役割であるのに対し、顧問弁護士は取締役をサポートする役割であるといえます。

     

    2,兼任は法律違反ではない

    兼任は法律違反ではない

    では、顧問弁護士に監査役になってもらうことはできるのでしょうか?

    会社法は以下にあげる人が監査役を兼任するのを禁止しています(会社法335条2項)。これを「監査役の兼任禁止 」といいます。

     

    • 会社の取締役
    • 会社の使用人(従業員)
    • 会計参与
    • 子会社の取締役
    • 子会社の使用人(従業員)
    • 子会社の会計参与

     

    会社法335条2項の条文は以下をご参照ください。

     

     

    会社法が、これらの人について監査役を兼任することを禁止しているのは、例えば会社の取締役が監査役を兼任した場合、自分が自分を監査することになり、本来の監査役の役割を果たせないからです。

    また、会社の従業員が監査役になった場合、その従業員は取締役の指揮命令下にあるため、有効な監査が行われない可能性があるためです。

    そして、顧問弁護士は形式的には上記の兼任禁止対象者にはなっていません。ただし、弁護士であっても、取締役の指揮命令に従う「使用人」にあたる場合は、監査役になることが法律上、禁止されます。

     

    3,日弁連(日本弁護士連合会)の見解

    では、顧問弁護士は、兼任が禁止される「会社の使用人」にあたるのでしょうか?

    この点については、日本弁護士連合会(日弁連)の見解が参考になります。

    日弁連は、以下の弁護士は、「使用人」に該当するために監査役を兼任することはできないとしています。

     

    • 自社に所属して一社員として働く弁護士(企業内弁護士)
    • 専属して自社の法律事務のみを行い、他の依頼者からの依頼を受けない弁護士

     

    一方、以下の弁護士は、「使用人」に該当しないので監査役を兼任することも可能であるとしています。

     

    • 独自に法律事務所に属して自社の法律顧問以外の法律事務も行っている弁護士

     

    このような見解を踏まえると、顧問弁護士は、通常は、使用人には該当しないでしょう。

    従って、顧問弁護士が監査役を兼任することは、通常は、法律違反にはなりません。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

    過去の裁判例においても、顧問弁護士が監査役を兼任することは、原則として、監査役の兼任禁止に違反しないとしたものがあります(大阪高等裁判所判決 昭和61年10月24日)。

     

    4,会社の訴訟を監査役を兼任する顧問弁護士に依頼できる?

    社外の第三者から会社に対して訴訟が起こされた場合、通常は、会社は、顧問弁護士に訴訟の対応を依頼することになるでしょう。

    では、顧問弁護士が監査役を兼任している場合も、通常の顧問弁護士と同様に、会社に対して起こされた訴訟の対応を依頼することはできるのでしょうか?

    この点について、最高裁判所は、会社法の兼任制限は、弁護士資格を有する監査役が、特定の訴訟事件について、会社から委任を受けて訴訟代理人となることまで禁止するものではないとしています(最高裁判所判決昭和61年2月18日)。

    最高裁判所判決昭和61年2月18日の内容は以下をご参照ください。

     

     

    そのため、社外の第三者から会社に対して訴訟が起こされた場合に、その対応を、監査役を兼ねる顧問弁護士に依頼することも可能であるといえます。

     

    5,利益相反の観点からは適切ではない

    このように、法律上は、顧問弁護士が監査役を兼任することは禁止されていませんが、顧問弁護士に監査役を依頼するのが適切かといえば、そうではありません。

    監査役は、取締役が法律を守って業務を行っているか、会計上の不正がないかなどをチェックし、不正があるとわかった時は是正していく役割です。

    例えば、取締役に法令違反行為があり、それによって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、監査役は取締役に対して訴訟を起こすなどの手段で、法令違反行為をやめるように請求することが、法律上、予定されています(会社法385条1項)。

    これを「取締役の違法行為差止請求」といい、監査役の重要な権限です。

    ところが、監査役が取締役から依頼された顧問弁護士であり、普段から取締役からの相談や依頼を受ける立場にある場合、取締役に対して訴訟を起こして、その法令違反行為を差し止めることが実際上できるのかどうか、疑問の余地があるでしょう。

    また、取締役に法令違反行為や不正行為があり、会社に損害が発生した場合、会社が取締役に損害賠償請求をすることが想定されます。

    この場合の、会社が取締役の責任を追及する訴えについては、監査役が会社を代表して行うとされています(会社法386条1項)。また、会社が取締役を訴えるかどうかの判断も監査役が行うことになります。

    監査役が取締役から依頼された顧問弁護士であり、普段から取締役をサポートする立場にある場合、監査役による取締役に対する責任追及が正しく行われるのかについても、疑問の余地があるでしょう。

    このように考えると、取締役を監査しなければならない監査役が、取締役から依頼を受けて顧問弁護士も担当しているというのは、利益相反の観点から、適切とはいえません。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

    上場企業においては、監査役の取締役からの独立性が特に強く求められ、独立性に疑問のある監査役を選任する議案については反対票が増える傾向にあります。

    その観点からは、顧問弁護士と同じ法律事務所に所属する弁護士に監査役を依頼することも避けることが適切です。

     

    6,顧問弁護士が社外監査役を兼ねる場合の注意点

    監査役会設置会社では、監査役は3人以上で、そのうちの半数以上が社外監査役である必要があります(会社法335条3項)。

    そして、社外監査役が会社から指揮命令を受けるような立場では、健全なガバナンスを機能させることができないため、社外監査役には厳しい要件が設けられています。

    具体的には、以下にあげる5つの要件をすべて満たす人しか社外監査役になることはできないとされています(会社法2条16号)。

     

    社外監査役の5つの要件

    • 1.監査役就任前10年間、自社または子会社の取締役・会計参与・執行役・使用人であったことがないこと
    • 2.監査役就任前10年内のいずれかの時に、自社または子会社の監査役であったことがある者については、当該監査役への就任前10年間、自社または子会社の取締役・会計参与・執行役・使用人であったことがないこと
    • 3.親会社の取締役・監査役・執行役・使用人等でないこと
    • 4.自社の親会社等の子会社等(いわゆる兄弟会社)の業務執行取締役等ではないこと
    • 5.自社の取締役もしくは支配人その他の重要な使用人等の配偶者または二親等内の親族でないこと

     

    例えば、取締役の弟が弁護士であり、会社の顧問弁護士を依頼しているという場合、この顧問弁護士に監査役になってもらうことは法律違反ではありません。

    しかし、この監査役は「自社の取締役の二親等内の親族」になるため、社外監査役には該当しないことに注意する必要があります。

    また、自社の従業員が弁護士資格をとって独立したため、その弁護士に顧問弁護士を依頼しているという会社もあります。

    その場合に、その顧問弁護士が、自社の社外監査役になるためには、自社を退職してから10年以上経過していることが必要です。

     

    7,常勤監査役を兼ねることは事実上不可能

    監査役会設置会社では、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならないとされています(会社法390条3項)。

    常勤監査役は、他の常勤の職に就いておらず、自社の営業時間中、自社の監査役の職に専念する人のことです。これに対して、非常勤監査役は、常勤監査役以外の監査役のことをいいます。

    非常勤監査役は、取締役会や監査役会に出席するために、月に1回または2回程度、出社すれば足りることが通常でしょう。

    前述のとおり、監査役になることができる顧問弁護士は、独自に法律事務所に所属して他の依頼者からの依頼も受ける弁護士です。

    そのため、顧問弁護士を会社の常勤監査役にすることは事実上不可能であるといってよいでしょう。

     

    8,まとめ

    いかがでしたでしょうか。

    結論をまとめると、顧問弁護士に監査役を依頼することは法律違反ではないが、適切ではないということになります。また、顧問弁護士を常勤監査役とすることは事実上不可能です。

    監査役には、主に法律と会計の知識が必要です。そのため、弁護士に監査役を依頼すること自体は適切ですが、ここまでご説明した問題点を踏まえれば、顧問弁護士以外の別の弁護士に依頼するべきであるといえます。

    また、監査役の確保が難しい場合は、監査役をおかない会社に組織変更するという方法も検討すべきでしょう。

    会社法上、取締役会設置会社は、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除いて監査役を置くことが義務付けられています(会社法327条2項)。

    しかし、取締役会を廃止した場合、この義務はありませんので、監査役を置かないことが可能です。

    中小企業で監査役のポストが事実上機能していない場合は、定款を変更して、取締役会のない会社に組織変更するという選択肢も検討してみてください。

    監査役の廃止についてのご相談や、会社と監査役の間のトラブルのご相談は、筆者が代表弁護士をつとめる咲くやこの花法律事務所でも承っております。お困りの企業様はご相談ください。

     

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    記事作成日:2022年3月1日
    記事作成弁護士:西川暢春

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