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【入札関連事業者は必読】一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルールとトラブル時の対応ポイント!

契約書の記載が原因で約1500万円の賠償命令を受けた裁判例

「一般競争入札の入札参加拒否をめぐるトラブルで、裁判所が、自治体に対して、2900万円の賠償命令」

平成26年7月10日に水戸地方裁判所で言い渡された判決です。

水戸地方裁判所は、市が設定した地元業者優先の入札参加資格の設定を違法と判断しました。
入札関連の事業者にとっては、入札参加資格の有無は、売上に直結する重要なポイントです。

今回は、「一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルールとトラブル時の対応ポイント」についてご説明したいと思います。

 

今回の記事で書かれている要点(目次)

●最初にチェック!一般競争入札の入札参加資格審査とは?
●【重要】一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルールについて
●一般競争入札の入札参加資格に関するトラブルについての裁判例
●一般競争入札の入札参加資格審査におけるトラブル時の対応のポイント!

 

最初にチェック!
一般競争入札の入札参加資格審査とは?

「一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルールとトラブル時の対応のポイント」についてご説明する前に、まずは、「一般競争入札の入札参加資格審査とは何か?」について確認しておきましょう。

「一般競争入札の入札参加資格審査」とは、自治体が一般競争入札に参加する事業者について一定の条件、制限を設けている場合に、各事業者がその条件を満たしているかを自治体が審査することを言います。

以下で、少し詳しく見ていきましょう。

一般競争入札の入札参加資格審査について詳しい解説

そもそも、「一般競争入札」とは、誰でも参加できる入札です。

そして、自治体の民間業者への発注については、できるだけ多くの事業者に機会を与えるという「機会均等」や「公平性」、「透明性」の観点から、地方自治法234条2項により、「原則として一般競争入札によるべきこと」が定められています。

しかし、一方で、一般競争入札を、企業規模や実績を問わずに完全に誰でも参加できる入札としてしまうと、事業者による契約履行の確実性や、工事等の品質に問題が生じるおそれがあります。

そこで、一般競争入札ではあるが、自治体が入札参加資格を定め、入札に一定の条件を設けるという「制限付一般競争入札」と呼ばれる入札方法が増えてきました。

この制限付一般競争入札において、自治体が、各事業者について入札参加資格を有しているかを審査するのが、入札参加資格審査です。

【補足】
「一般競争入札」と「指名競争入札」について

「一般競争入札」とは別の入札方式として、「指名競争入札」があります。

「一般競争入札」が誰でも参加できる入札であるのに対して、「指名競争入札」は自治体が指名した特定の企業のみが入札に参加できる方式です。

前述のとおり、法律上は「原則として一般競争入札によるべきこと」が定められていますが、かつては、法律の規定に反して、指名競争入札が多用されていました。しかし、この指名競争入札については、前述のとおり地方自治法234条2項が「原則として一般競争入札によるべき」としていることとの関連で問題があるほか、入札参加者が限られるために談合がされやすいなどの問題が指摘されてきました。

このような指摘の中で、指名競争入札を減らし、法律の原則である一般競争入札を増やす動きが進み、現在では、一般競争入札が大半を占めるようになっています。

ここでは、「一般競争入札の入札参加資格審査」の意義と、補足として、「一般競争入札と指名競争入札の違い」についておさえておきましょう。

 

【重要】
一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルールについて

では、「一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルール」についてご説明したいと思います。

「一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルール」として、以下の3点をおさえておきましょう。

一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルール

法律ルール1:

自治体は、一般競争入札であっても、必要なときは、入札参加者について、実績、従業員数、経営の規模などを要件とする入札参加資格を定めることができる。

法律ルール2:

さらに、自治体は、入札を適正かつ合理的に行うため特に必要があるときは、事業所の所在地または工事等の経験若しくは技術的適性の有無等を要件とする入札参加資格も定めることができる。

法律ルール3:

自治体が一般競争入札の入札参加資格を定めたときは、その内容を公示しなければならない。

 

以下で詳細を見ていきましょう。

法律ルール1:
自治体は、一般競争入札であっても、必要なときは、入札参加者について、実績、従業員数、経営の規模などを要件とする入札参加資格を定めることができる。

一般競争入札を、企業規模や実績を問わずに完全に誰でも参加できる入札としてしまうと、事業者による契約履行の確実性や、工事等の品質に問題が生じるおそれがあります。

そのため、自治体は、必要なときは、入札参加事業者について、実績、従業員数、経営の規模などを要件とする入札参加資格を定めることができるとされています。

法律ルール2:
さらに、自治体は、入札を適正かつ合理的に行うため特に必要があるときは、事業所の所在地または工事等の経験若しくは技術的適性の有無等を要件とする入札参加資格も定めることができる。

自治体は、特に必要があるときは、「ルール1」で定めることが可能な「実績、従業員数、経営の規模などを要件とする入札参加資格」に加えて、「事業所の所在地または工事等の経験若しくは技術的適性の有無等を要件とする入札参加資格」も定めることができるとされています。

ただし、一般競争入札における機会均等、公平、透明性の観点から、『事業所の所在地等による入札参加資格の制限が許されるのは、「特に必要」がある場合に限られ、その解釈は厳格になされるべきである。』とされています(平成26年7月10日水戸地方裁判所判決)。

「事業所の所在地または工事等の経験若しくは技術的適性の有無等を要件とする入札参加資格」については、「ルール1」で定めることが可能な「実績、従業員数、経営の規模などを要件とする入札参加資格」とは異なり、「特に必要がある場合」に限り、許されているということが重要なポイントです。

法律ルール3:
自治体が一般競争入札の入札参加資格を定めたときは、その内容を公示しなければならない。

自治体が一般競争入札の入札参加資格を定めたときは、その内容を事前に公示することが義務付けられています。

以上の3つの基本ルールについては、地方自治法施行令の「167条の5」、「167条の5の2」に規定されています。

念のため、条文をあげておくと以下の通りです。

●●参考●●

・地方自治法施行令第167条の5

1 普通地方公共団体の長は、前条に定めるもののほか、必要があるときは、一般競争入札に参加する者に必要な資格として、あらかじめ、契約の種類及び金額に応じ、工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他の経営の規模及び状況を要件とする資格を定めることができる。

2  普通地方公共団体の長は、前項の規定により一般競争入札に参加する者に必要な資格を定めたときは、これを公示しなければならない。

・地方自治法施行令第167条の5の2

普通地方公共団体の長は、一般競争入札により契約を締結しようとする場合において、契約の性質又は目的により、当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要があると認めるときは、前条第一項の資格を有する者につき、更に、当該入札に参加する者の事業所の所在地又はその者の当該契約に係る工事等についての経験若しくは技術的適性の有無等に関する必要な資格を定め、当該資格を有する者により当該入札を行わせることができる。

●●●●●●●

 

「ルール1」が地方自治法施行令第167条の5第1項に、「ルール2」が地方自治法施行令第167条の5の2に、「ルール3」が地方自治法施行令第167条の5第2項に定められています。

ここでは、「一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルール」として、3つのルールをおさえておいてください。

 

一般競争入札の入札参加資格に関するトラブルについての裁判例

では、事業者が自治体から一般競争入札の入札資格審査において、入札への参加を認められなかった場合、事業者としてはどのような対応が可能なのでしょうか。

一般競争入札の入札参加資格をめぐって自治体とトラブルになり、入札業者が自治体に損害賠償等を請求した事例として、「平成26年7月10日水戸地方裁判所判決」があります。

以下で、概要を見ていきたいと思います。

平成26年7月10日水戸地方裁判所判決の概要

1,茨城県神栖市は、災害復旧工事の一般競争入札において、「市と災害協定を締結している事業者」にのみ入札参加資格を認めていました。

2,「A建設会社」は、神栖市の一般競争入札において、最低価格で入札しましたが、市と災害協定を締結していなかったため、入札参加資格を認められず、落札することができませんでした。

3,その後、神栖市は、災害復旧工事の一般競争入札の参加資格について、「市と災害協定を締結している事業者であること」を要件とすることを廃止し、新たに、「神栖市内あるいはその近隣4市の市内に本店がある事業者であること」を要件とする変更を行いました。

4,「A建設会社」の本店は、神栖市内あるいは近隣四市内ではありませんでした。

5,そこで、「A建設会社」は、神栖市が一般競争入札の参加資格として、「市と災害協定を締結している事業者であること」を要件としたり、あるいは「神栖市内あるいはその近隣4市の市内に本店がある事業者であること」を要件とすることは違法であると主張しました。

6,そして、「A建設会社」が神栖市に対し、工事を落札できなかったことによる損害の賠償と、神栖市内あるいは近隣4市内に本店がなくても入札参加資格において制限を受けないことの確認を求めたのが本件の訴訟です。

裁判における争点

裁判で、神栖市は、「市と災害協定を締結している事業者であること」あるいは「神栖市内あるいはその近隣4市の市内に本店がある事業者であること」を要件とする入札参加資格を設けた目的は、災害時の応急対応に協力してもらいやすい地元業者を育成することや、地元業者のほうが工事にあたり近隣住民への配慮をするのに適しているなどの点にあると主張して、入札参加資格を設けたことの正当性を主張しました。

そこで、「地元業種の育成」や、「近隣住民への配慮の必要」という目的で、自治体が一般競争入札の入札参加資格を制限することができるかが争点となりました。

裁判所の判断

裁判所は、神栖市が上記の目的で、一般競争入札の参加資格として、「市と災害協定を締結している事業者であること」を要件としたり、あるいは「神栖市内あるいはその近隣4市の市内に本店がある事業者であること」を要件としたことは、違法であると判断しました。

そして、裁判所は、神栖市に対し、「A建設株式会社」が入札参加資格の制限により災害復旧工事を落札できなかったことによる損害の賠償として、「A建設株式会社」に約2900万円の損害賠償を支払うように命じました。

さらに、裁判所は、A建設会社が神栖市内あるいは近隣4市内に本店がなくても入札参加資格において制限を受けないことを確認する判決を下しました。

裁判所の判断の理由

裁判所は、「地元業者の育成」を目的として入札参加資格を制限することは、「機会均等、公正性、透明性等のために、一般競争入札を原則とした地方自治法施行令の趣旨に反し、違法である」と判断しました。

また、「近隣住民への配慮」という目的で入札参加資格を地元業者に制限することも、「地元業者以外の業者による施工の場合に、近隣住民との関係で支障が生じたといった具体的事情は認められないことなどからすれば、違法である。」と判断しました。

そして、「A建設会社」は神栖市による違法な参加資格制限により工事を受注できなかったと判断して、A建設会社が工事を落札していた場合に想定される粗利益額等として「約2900万円」の支払いを神栖市に命じました。

 

以上、自治体による一般競争入札の入札参加資格制限を違法と判断し、自治体に対して、入札事業者への損害賠償を命じた裁判例をご紹介しました。

「一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルールについて」の項目の「法律ルール2」でご説明した通り、「事業所の所在地等」についての入札参加資格は、「特に必要な場合」にのみ、設定することが許されます。本件では、自治体が入札参加資格として、「市と災害協定を締結している事業者であること」あるいは「神栖市内あるいはその近隣4市の市内に本店がある事業者であること」を要求したことが、「特に必要な場合」にあたらないとして、違法と判断されました。

このように、自治体が一般競争入札の参加資格を不当に制限しているケースでは、裁判所で「損害賠償の支払い」や、「入札参加資格制限を受けないことの確認」を求めることが可能です。

 

一般競争入札の入札参加資格審査におけるトラブル時の対応のポイント!

最後に、「一般競争入札の入札参加資格審査におけるトラブル時の対応のポイント」についてご説明します。

これまでご説明してきた点からもわかるとおり、自治体から一般競争入札への参加を拒否された場合、必ずしも自治体の対応が適法とは限りません。これを踏まえて、一般競争入札の資格審査におけるトラブル時の対応のポイントおさえておいていただきたいのが、「参加を拒否されても入札はしておく」という点です。

この点をご説明するためには、まず、一般競争入札の資格審査には「事前審査型」と「事後審査型」があることをおさえていただく必要があります。

その内容は以下の通りです。

一般競争入札の資格審査の「事前審査型」と「事後審査型」

●「事前審査型」=

入札前に、入札を希望する事業者に入札参加資格申請を提出させて、自治体が入札参加資格審査を行ったうえで、入札を行う方式。

●「事後審査型」=

自治体が入札を行った後に、最低入札価格を入れた落札予定者に対して、入札参加資格審査を行い、もし、入札参加資格を満たしていないときは失格とする方式。

 

注意を要するのは、このうち、「事前審査型」の一般競争入札のケースです。

事前に入札参加資格審査で失格とされた結果、入札を行わなかった場合、入札への参加拒否が違法であっても、自治体に対する損害賠償請求が困難となります。

なぜなら、入札に参加していない以上、「仮に入札参加資格審査で失格となっていなければ最低価格で入札して落札していた」という主張ができず、入札参加拒否により事業者に損害が発生したことの立証が困難になるためです。

そのため、「参加を拒否されても入札はしておく」ことが重要なポイントとなります。

特に、電子入札が採用されている場合などは、入札参加資格審査で失格とされた場合はそもそも入札できないシステムになっていることもありますが、その場合でも、紙入札を行っておくなど、「参加を拒否されても入札はしておく」ことが重要です。

この点を、一般競争入札の入札参加資格審査におけるトラブル時の対応のポイントとしておさえておいてください。

 

まとめ

今回は、まず、「一般競争入札の入札参加資格審査とは何か」ということと、「一般競争入札の入札参加資格に関する法律のルール」についてご説明しました。

その上で、一般競争入札の参加拒否をめぐって、事業者が自治体に訴訟を起こしたケースの裁判例をご紹介しました。そして、最後に、トラブル時の対応のポイントとして、「参加を拒否されても入札はしておく」という点をご説明しました。

一般競争入札に関する法律のルールとトラブル時の対応のポイントを、おさえておいてください。

 

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