平成27年10月から、マイナンバーの番号通知がスタートしました。そして、平成28年1月以降、企業も各種書類へのマイナンバーの記載が義務付けられました。
マイナンバーは、企業にとって、煩雑な事務が増えてしまうという側面が否定できません。
しかも、法律上、マイナンバーについて企業が不正な取り扱いをした場合の罰則が設けられており、マイナンバーの取得や管理には十分注意が必要です。
今回は、マイナンバー制度にできるだけシンプルに対応するために、中小企業が最低限、対応しておかなければならない3つのポイントをわかりやすくまとめました。
ぜひ、この機会にチェックしておいてください。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,中小企業のマイナンバー制度対応の3つのポイントとは?
マイナンバー制度がスタートにあたって、企業側で対応すべきことはさまざま発生してきますが、その中でも中小企業がマイナンバー制度に対応するために最低限おさえておくべきポイントは以下の3つです。
(1)中小企業のマイナンバー制度対応の3つのポイント
ポイント1:
企業は、従業員等のマイナンバーを確認する必要がある。
ポイント2:
マイナンバーは決められた目的以外に利用してはならない。
ポイント3:
マイナンバーは担当者以外に扱わせず、漏洩しないように保管する。
以下では、この3つのポイントについて、詳しくご説明したいと思いますので、中小企業の経営者は内容を確認した上で対応策を準備していきましょう。
1−1,ポイント1:
企業は、従業員等のマイナンバーを確認しておく必要がある。
マイナンバーに関しておさえておかなければならないポイントの1つ目は、「企業は、従業員等のマイナンバーを確認する必要がある。」という点です。
マイナンバーは平成28年1月から、企業が作成する源泉徴収票や社会保険関係の書類に記載することが義務付けられました。
そのため、企業はこれらの書類を作成するために、従業員のマイナンバーを確認しておかなければなりません。
この「マイナンバーの確認」については、以下の5点をおさえておきましょう。
「マイナンバー確認」について、おさえておくべき6つの重要ポイント!
- (1)マイナンバーの管理の担当者を決めましょう。
- (2)マイナンバーの利用目的を明示して、従業員にマイナンバーの確認書類を持参させましょう。
- (3)従業員のマイナンバーを確認して、記録しましょう。
- (4)従業員の扶養家族のマイナンバーが必要になる場合は、適宜確認しましょう。
- (5)従業員がマイナンバーを提出しない場合の対応をおさえておきましょう。
以下、順番にご説明します。
(1)マイナンバーの管理の担当者を決めましょう。
マイナンバーについては、企業内で事務取扱担当者を決め、担当者以外が取り扱わない措置をすることが必要です。
社内で、マイナンバーの事務取扱担当者を決め、全従業員に通知しましょう。
(2)マイナンバーの利用目的を明示して、従業員にマイナンバーの確認書類を持参させましょう。
法律上、マイナンバーを取得する場合は、利用目的を明示することが義務付けられています。
この点は、以下の通り明示すれば問題ありません。
マイナンバーの会社での利用目的について
- 1,給与所得・退職所得の源泉徴収票作成事務
- 2,雇用保険届出事務
- 3,健康保険・厚生年金保険届出事務
- 4,労働者災害補償保険法に基づく請求に関する事務
利用目的の明示の方法は、以下のようなものが考えられます。
マイナンバーの利用目的の明示の方法について
- 1,従業員に一斉メールで利用目的を通知
- 2,従業員に文書で利用目的を通知(給与袋に入れる、郵送するなど)
- 3,利用目的を記載した文書を社内に掲示
いずれかの方法で、利用目的を明示した上で、従業員にマイナンバーの確認書類を持参するように指示しましょう。
(4)従業員のマイナンバーを確認して、記録しましょう。
従業員が持参した書類をもとに、マイナンバーの事務取扱担当者が、従業員のマイナンバーを確認し、記録します。
このマイナンバーの確認方法は、「従来からの従業員で、本人確認を行わなくても、人違いでないことが明らかな場合」と「新しく従業員を雇い入れる場合」で異なります。
従来からの従業員で、本人確認を行わなくても、人違いでないことが明らかな場合は、以下の「1」~「3」のいずれかによりマイナンバーを確認すれば問題ありません。
- 1,マイナンバー通知カード
- 2,マイナンバーが記載された住民票
- 3,個人番号カード
「3」の「個人番号カード」は、マイナンバー通知を受け取った個人が市町村に申請して発行を受けることができる、身分証明書です。
一方、新しく従業員を雇い入れる場合は、以下の「1」か「2」のいずれかの方法により、人違いでないことを確認したうえで、マイナンバーを確認しなければなりません。
1,「マイナンバー通知カード」あるいは「マイナンバーが記載された住民票」でマイナンバーを確認する場合は、運転免許証やパスポート等の写真付きの身分証明書で人違いでないことを確認します。
2,「個人番号カード」でマイナンバーを確認する場合は、「個人番号カード」に写真が入っていますので、個人番号カードで人違いでないことを確認します。
このように、従来からの従業員と、新しく雇い入れる従業員では、マイナンバー確認の際の資料が異なりますので、おさえておきましょう。
(5)従業員の扶養家族のマイナンバーが必要になる場合は、適宜確認しましょう。
年金の手続に関連して、従業員の扶養家族のマイナンバーを取得しなければならないケースもあります。
たとえば、従業員が結婚して、配偶者が年収130万円未満の場合、配偶者を国民年金の第三号被保険者として届け出るために、従業員の配偶者のマイナンバーを確認する必要があります。
扶養家族のマイナンバーは手続きが必要になった際に、適宜確認するようにしましょう
(6)従業員がマイナンバーを提出しない場合の対応をおさえておきましょう。
『なんらかの理由で従業員がマイナンバーを提出しない場合、どのように対応すべきでしょうか?』
従業員がマイナンバーを提出しない場合は、源泉徴収票や社会保険関係の届け出に、マイナンバーを記載しなくても問題ありません。
企業としては従業員にマイナンバーの提出を求めれば、実際にマイナンバーが従業員から提出されなくても、マイナンバーに関する企業としての義務は果たしたことになります。
マイナンバーを提出しないことを理由に就職希望者を不採用としたり、あるいは従来からの従業員を解雇する必要はありません。
従業員のマイナンバーの確認については、以上の5点を、理解しておきましょう。
1−2,ポイント2:
マイナンバーは決められた目的以外に利用してはならない。
マイナンバーに関しておさえておかなければならないポイントの2つ目は、「マイナンバーは決められた目的以外に利用してはならない。」という点です。
マイナンバーを一般企業が利用できるケースは、法律で決められており、決められた目的以外にマイナンバーを利用することはできません。
企業が従業員から確認したマイナンバーを利用するのは、次のような場面です。
企業が従業員から確認したマイナンバーを利用する場面
- (1)毎年1月末までに交付する源泉徴収票に、マイナンバーを記載する。
- (2)従業員の就職、退職の際に、雇用保険の届出にマイナンバーを記載する。
- (3)従業員の就職、退職の際に、健康保険組合や年金事務所への届出にマイナンバーを記載する。
- (4)従業員の労災があったときに、労災請求の書類にマイナンバーを記載する。
このような、税関係の事務処理あるいは社会保険関係の事務処理以外の目的で、マイナンバーを利用することはできません。
たとえば、マイナンバーを社内で、社員番号等として利用することは、法律上禁止されていますので、注意しましょう。また、マイナンバーの事務取扱担当者には、源泉徴収票や社会保険関係の届出書といった、法律上マイナンバーの記載が必要な書面以外の書面には、マイナンバーを記載しないように、伝えておきましょう。
1−3,ポイント3:
マイナンバーは担当者以外に扱わせず、漏洩しないように保管する。
マイナンバーに関しておさえておかなければならないポイントの3つ目は、「マイナンバーは担当者以外に扱わせず、漏洩しないように保管する。」という点です。
マイナンバーについては、個人情報保護の見地から、法律で、漏えいしないように保管することが義務付けられています。
マイナンバーの保管については、以下の5点をおさえておきましょう。
「マイナンバーの保管について」注意すべき5つのポイント!
- (1)企業内でマイナンバーの事務取扱担当者を決め、担当者以外にマイナンバーを取り扱わさせないようにしましょう
- (2)マイナンバーを記載した書類を保管するときは、机や棚を施錠しましょう。
- (3)マイナンバーをデータとして保管するときは、ウィルス対策ソフトを導入し、担当者以外がアクセスできないようにアクセスパスワードを設定しましょう。
- (4)マイナンバーを記載した書類を廃棄するときは、シュレッダーにかけることを徹底しましょう。
- (5)従業員の退職等により、マイナンバーが不必要になった場合は、速やかに廃棄しましょう。
マイナンバーの事務取扱担当者には、マイナンバーは漏えいしてはならないものだということを理解させたうえで、上記の5点を徹底させることが必要です。
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4,まとめ
今回は、マイナンバーについて中小企業が最低限おさえておかなければならないポイントを、以下の3つに整理してご説明しました。
ポイント1:
企業は、従業員等のマイナンバーを確認する必要がある。
ポイント2:
マイナンバーは決められた目的以外に利用してはならない。
ポイント3:
マイナンバーは担当者以外に扱わせず、漏洩しないように保管する。
さらに、進んで、マイナンバーの取り扱いに関する社内規定を作ったり、就業規則に規定を盛り込むなどの対応をされている企業もありますが、そのような対応は、必ずしもすべての企業にとって必要なことではありません。
まずは、今回の記事でご説明した対応を徹底していただくことが最重要です。
自社のマイナンバー対応の準備がどのくらい進んでいるか、この機会に確認しておきましょう。
記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2020年12月18日