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投資契約書・出資契約書によくある落とし穴とは?安易な雛形利用は危険!

投資契約書(出資契約書)について解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは、咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

ベンチャー企業、スタートアップ企業を成長させるためには、出資を上手に集めていくことが大きな課題の1つになります。このときに、重要になる契約が投資契約書(出資契約書)です。

投資契約書の作成にあたって、出資者側から提示を受けた契約書を十分検討せずに、自社にとって不利益な内容が入っているのを見過ごしてしまうと、以下のようなトラブルが起こります。

 

  • 順調にIPOを実現できなかったときに株式の買取を求められ、会社が資金的に行き詰まる
  • 将来のM&Aの局面で投資家への配分が優先され、創業株主に配分される額が著しく少なくなってしまう
  • 出資後の経営に制約を受け、自由な経営ができなくなる
  • 今回の出資は受けられても、他の投資家による追加投資を受けることが難しくなる
  • 将来のIPOやM&Aの局面で出資者とトラブルになる

 

この記事では、創業株主や投資を受ける会社の側の立場から、投資契約書(出資契約書)を検討するにあたっての重要な注意点をご説明します。また、投資契約書(出資契約書)の一般的な記載事項についても解説していますので、この記事を読んで十分契約書の意味を理解するようにしてください。

 

弁護士西川暢春からのワンポイント解説

投資契約書は投資をする側の利益を重視して作られていることが多いです。

そのため、内容を十分に理解せずに契約すると、創業株主が後に大きな不利益をこうむるリスクがあります。また、投資契約は長期的な会社と投資家の契約になることが多く、会社の経営にも大きな影響を与えます。

不利益な内容で契約してしまい失敗しないように、必ず投資契約書に精通した弁護士に確認してもらってから契約するようにしてください。

咲くやこの花法律事務所でもご相談をお受けしています。ご相談の流れは以下をご覧ください。

 

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▼投資(出資)契約書に関して、弁護士の相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

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「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

 

1,投資契約書(出資契約書)とは?

投資契約書とは、出資者からの出資を受け入れる場合に、会社が出資者に割り当てる株式の種類や数、価格、払込期日等を定める契約書です。「出資契約書」とも呼ばれます。その他、出資資金に関する使途についての制限や、出資後の出資者の経営への関与に関する事項、契約違反時の処理などの項目を盛り込むことが多くなっています。

出資者としては、ベンチャーキャピタルや一般の事業会社のほか、ベンチャー企業を支援する投資家(エンジェル)などが想定されます。

投資契約書は、これらの出資者と、出資を受ける会社(発行会社)、及びその創業株主の3者間で締結されることが通例です。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
出資後の株主間の関係について、出資契約書とは別に株主間契約を取り交わすことも増えています。

株主間契約については以下で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

▶参考情報:株主間契約の重要ポイントとは?契約書の安易な雛形利用は危険!

 

2,創業者、発行会社の立場からみた投資契約書の作成、リーガルチェックのポイント

創業者や発行会社の立場から注意が必要なのは、資金調達の必要性を優先するあまり、契約書の意味を十分理解せずに、出資者側の利益に偏った内容の投資契約書(出資契約書)を受け入れてしまうケースがあることです。

ベンチャーキャピタルやその他出資者の側から投資契約書(出資契約書)が提示されたときは、必ず自社の弁護士に相談して契約のリスク面を十分把握し、必要に応じて契約内容を修正してもらう契約交渉を行うことが非常に重要です。

創業者あるいは発行会社の立場からみたよくある失敗例として以下の点があげられます。

 

(1)不本意なExitを要求される

出資者(投資家)が会社が成長した後の株式公開やM&Aにより利益を得ること(Exit)を目的として、出資するケースでは、「株式公開に向けた努力義務」や「Exitに向けた協力義務」が投資契約書で定められることがあります。

例えば、一定期間経過してもIPOができない場合は、「創業株主の株式を含む全株式を出資者主導で売却する」内容や、「発行会社が出資者の株式を買い取る」内容が投資契約書に盛り込まれるケースがあります。

ベンチャーキャピタルのような投資家(出資者)は、株式を将来的に売却すること(Exit)を目的として出資している以上、発行会社や創業株主に対してExitに協力する義務が設けられること自体はやむを得ない側面があります。

しかし、前述の例で「創業株主の株式を含む全株式を出資者主導で売却する」内容を投資契約書に盛り込む場合は、実際に実行されると創業株主は会社に関する権利をすべて失うリスクがあります。

また、「発行会社が出資者の株式を買い取る」内容を投資契約書に盛り込む場合は、実行されると発行会社が資金面で行き詰まる恐れが出てきます。

発行会社や創業株主としてはこのような不本意なExitとならないように、Exitに関する契約条項については十分、自社の弁護士に確認して投資家との間で条件交渉を行うことが必要です。

 

(2)M&Aの際に創業株主が受領できる分配額が少額となる

投資契約書(出資契約書)の中には、投資家に対して優先株式を発行する内容になっているものもあります。

 

▶参考情報:優先株式とは?

優先株式とは、通常の株式よりも、配当を優先的に受けられる株式や残余財産の分配を優先的に受けられる株式をいいます。

優先株式は上手に利用すれば、投資家と創業株主の双方がwin-winの関係を築くことに役立ちます。ただ、投資家が優先株式の発行数や発行内容によっては、発行会社や創業株主にとってデメリットが生じるケースもあるため、慎重な検討が必要です。

 

出資者に対して優先株式を発行すると出資を受けやすくなります。

しかし、出資を受けることを優先して、優先株式を多く発行すると、後日、会社が成長して会社を売却する際に、優先株主を持つ投資家に優先して売却代金が分配され、創業株主が受領できる額が少額になるというデメリットがあります。

投資契約書(出資契約書)で優先株式の発行を定めている場合は、その内容をよく理解し、将来M&Aがされたときに株主に対してどのような分配がされるのかを十分理解したうえで、意思決定する必要があります。

 

(3)契約違反や法令違反を理由に株式の買い取りを要求される

通常の投資契約書(出資契約書)では、投資契約に対する違反があった場合、あるいは発行会社の事業活動の中で法令違反があった場合には、投資家が株式の買い取りを請求することができるという契約条項が盛り込まれます。

確かに重大な契約違反や、重大な法令違反が会社側にあった場合、投資家(出資者)が株式を会社に買い取らせることにより、出資を引き揚げたいと考えることはやむを得ない面があります。

しかし、一方で、実際のベンチャー企業の経営の現実では、いかなる法令違反もなくすということは困難なケースもあり、些細な契約違反、法令違反を理由に、投資家から株式の買い取りを請求されることがないように契約条項を工夫する必要があります。

会社が出資者の株式を買い取ることになると、株式買い取り代金を支出することになり、会社が資金面で行き詰まる事態になりかねないため注意が必要です。

 

(4)追加投資について制約を受ける

投資契約書(出資契約書)を締結する場合、今回の投資だけを想定するのではなく、今後別の投資家から出資を受ける可能性も踏まえて、今後の追加投資を制約しない内容にしておく必要があります。

投資家によっては、自身の株式の割合が減らないように、発行会社に対して将来受ける出資についての上限設定を投資契約書に記載することを求めるケースもあります。

こういった上限設定は後日、会社が別の投資家から追加の出資を受ける際の制約になることに注意が必要です。

また、投資を受けることを優先して、優先株式を多く発行すると、後日、他の投資家が出資を検討する際に、他の投資家に将来配分される可能性がある分配額が少なくなり、追加の投資をする魅力がない会社になってしまう恐れもあります。

さらに、投資家ごとに個別の条件で投資契約書を作成することで、投資家ごとに必要な対応がまちまちになり、発行会社の株主管理事務が複雑になりすぎるという問題もあることに注意が必要です。

 

以上、創業者、発行会社の立場からみたよくある失敗例をご紹介しました。

投資契約書では、特にExitの局面でのトラブルを回避することが重要です。そして、Exitの局面でのトラブルの回避のためには、創業者、出資者のどちらか一方に偏った内容は好ましくありません。

投資契約書の内容は、創業者、出資者の双方がwin-winの関係になるような合理的なものにしておく必要があります。

以下では、契約書の作成やリーガルチェックについての基礎知識をはじめ重要なポイントなどを詳しく解説していますので参考にご覧ください。

 

 

3,投資契約書(出資契約書)の一般的な記載事項

投資契約書(出資契約書)の一般的な記載事項

次に、投資契約書(出資契約書)の一般的な記載事項を確認しておきましょう。

 

(1)投資の内容

投資の基本的な内容を定める部分です。

具体的には以下のような点を定めます。

 

  • 出資に対して発行する株式の種類(普通株式か優先株式かなど)
  • 出資に対して発行する株式の数(今回の出資に対して何株発行するのか)
  • 1株あたりの発行価格(1株あたりいくらの出資を受けるのか)
  • 払込金額の総額(出資額の合計はいくらか)
  • 払込期日(出資者が実際に出資金を支払うのはいつか)

 

これらの点は投資契約書(出資契約書)の最も基本的な記載事項になります。

 

(2)種類株式を発行する場合はその内容

出資者に対して優先株式など、普通株式とは異なる種類の株式(「種類株式」といいます)を発行する場合は、その株式の内容について定めます。

 

▶参考情報:種類株式とは?

種類株式とは、普通株式とは権利の内容が異なる株式をいいます。

配当などで普通株式より優先される「優先株式」や、株主が会社に買い取りを請求することができる権利がついた「取得請求権付種類株式」、あるいは逆に会社が強制的に買い取ることができる「取得条項付株式」などがあります。

 

(3)表明保証

会社や創業株主が、出資者に対して開示した決算書類の内容が正しいこと、反社会的勢力との関与がないこと、事業に関して重大な法令違反がないことなどを、出資者に対して保証する条項です。

 

(4)投資実行の条件

投資(出資)の実行日までに問題が起きた場合に投資(出資)を取りやめることが記載されます。

投資の実行日までに投資契約書(出資契約書)への違反が発覚した場合や、表明保証した内容に虚偽が発覚した場合などは投資を実行しないことなどが記載されることが通常です。

 

(5)投資家の優先引受権

会社が今後も出資を募る場合に、今回投資した投資家に優先的に投資を引き受ける権利を認めることを求められるケースがあります。

このようなケースでは、投資家の優先引受権についての契約条項を投資契約書に入れます。

 

(6)財務状況の報告

出資者側の要望により、財務状況の報告に関する条項を投資契約書(出資契約書)に入れることがあります。

出資者は株主総会で会社の財務状況について報告を受けることにはなりますが、より詳細に、例えば、月次での貸借対照表や損益計算書による報告を要求する場合は、「財務状況の報告」に関する契約条項を入れてその点を定めます。

 

(7)承認事項

出資者側の要望により、会社について、今後、重要な変更や出資者に不利益が及ぶ可能性がある変更をする場合、出資者の承認を得ることを義務付ける規定を設けるケースがあります。

例えば、会社の合併や新株の発行などの場面において、出資者に事前に通知して承諾を得なければならないことなどを投資契約書(出資契約書)に定めるケースがあります。

 

(8)監査請求権

出資者側の要望により、出資後に出資者が必要と判断した場合は、会社の経営状況について出資者が監査をすることができる内容の契約条項を入れることがあります。

 

(9)秘密保持義務

出資を受けるにあたり会社が出資者に開示した情報(例えば決算情報や経営計画に関する情報)について、出資者が守秘義務を負うことなどを定めます。

 

(10)株式公開などに向けた努力義務、協力義務

出資者が株式公開やM&Aにより、株式を売却して利益を得ること(Exit)を目的として出資するケースでは、出資者側の要望で、株式公開に向けた努力義務やExitに向けた協力義務が定められることがあります。

 

(11)資金使途の制限

出資者の立場から、出資した資金が創業株主の個人的な使途や過度な福利厚生、あるいは高額の役員報酬にあてられることを危惧して、資金使途の制限条項を設けることを求められることも多いです。

例えば、資金の使途を事業の発展のために必要な人材採用、研究開発、設備投資等に限定することを定めるケースが多くなっています。

 

(12)契約違反時の扱い

主に創業株主の側に投資契約への違反があった場合の出資者側がとれる手段について定めます。

例えば、出資者は契約違反によって被った損害を賠償請求することができるとする内容や、出資者が出資の引き揚げのために株式の買い取りを請求することができるといった内容が盛り込まれることが多くなっています。

 

(13)契約の終了

発行会社が上場申請をした場合や、出資者が発行会社の株主ではなくなった場合に、投資契約が終了することが規定されます。

 

(14)合意管轄

投資契約について当事者間でトラブルがおき、訴訟での解決が必要になった場合に、どの裁判所で審理するのかを定める条項です。

合意管轄条項については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

4,投資契約書の印紙税について

印紙税は法律で定められる特定の契約書にのみ課されます。

投資契約書(出資契約書)は印紙税の課税文書として法律で定められていないため、非課税です。

 

5,投資契約書(出資契約書)に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に咲くやこの花法律事務所における投資契約書(出資契約書)についてのサポート内容をご説明したいと思います。

 

(1)投資契約書(出資契約書)のリーガルチェックのご相談

咲くやこの花法律事務所では、ベンチャーキャピタルなどの出資者から提示される投資契約書のリーガルチェックのご相談を承っています。

この記事でも解説したように、出資者から提示される投資契約書は、出資者の利益を優先して作成されていることがあり、そのまま契約を締結してしまうと将来思わぬ不利益を被るリスクがあります。

必ず、弁護士のリーガルチェックを受け、内容を十分理解して、必要に応じて契約書の修正交渉を行うことが重要です。

咲くやこの花法律事務所では、ベンチャー企業法務に精通した弁護士が投資契約書のリーガルチェックのご相談を随時承っております。

 

投資契約書(出資契約書)に関するリーガルチェックの弁護士費用の目安

  • 初回相談料:30分あたり5000円(顧問契約の場合は無料)
  • 契約書リーガルチェック費用:5万円程度~(顧問契約の場合は無料)

 

(2)投資契約書(出資契約書)の作成のご相談

一般の事業会社や個人から出資を受ける場合は、投資契約書を自社で作成しなければならないケースがあります。

投資契約書(出資契約書)についても、様々なひな形がありますが、実際に作成するべき投資契約書の内容は、事業の内容や今後の成長戦略、出資割合や出資者側の意向によって大きく異なりますので、安易にひな形を利用してそのまま締結してしまうことは絶対に避けるべきです。

十分に内容を理解しないままひな形を流用すると、自社にとって思わぬ不利益な条項が入っていたり、知らないうちに契約違反を犯してしまったり、あるいは、現実にそぐわない内容の契約書になってしまう恐れがあります。

投資契約書(出資契約書)は出資期間中の会社経営の根幹にかかわる重要な契約書ですので必ず弁護士の作成をご依頼いただくことが重要です。

咲くやこの花法律事務所では、ベンチャー企業法務に精通した弁護士が投資契約書の作成のご相談を随時承っております。

 

投資契約書(出資契約書)の作成に関する弁護士費用の目安

  • 初回相談料:30分あたり5000円(顧問契約の場合は無料)
  • 契約書作成費用:10万円程度~

 

投資契約書の作成やリーガルチェックに関する具体的なサービス内容については、以下をご参照ください。

 

 

(3)ベンチャー企業向けの顧問契約による継続的なサポート

ベンチャー企業を継続的に成長させるためには、法務面について顧問弁護士による継続的なサポートを受けることが必要です。咲くやこの花法律事務所では、ベンチャー企業からの以下のようなご相談について、ベンチャー企業の経営者や管理職向けに的確な助言を行い、企業の継続的な成長を後押しします。

 

  • 就業規則」や「雇用契約書」など労務分野の整備
  • 「労務トラブル」、「クレーム対応」、「債権回収」など各種トラブルの対応
  • 資金調達の支援
  • 「契約書の作成」やリーガルチェック
  • コンプライアンス研修」など社内研修の実施
  • 社内規程の整備

 

ベンチャー企業向けの咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの内容については以下をご覧ください。

 

▶参考情報:ベンチャー・スタートアップ法務に強い弁護士への相談サービス

 

(4)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

弁護士の相談を予約したい方は、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年12月5日

 

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
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