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株主間契約の重要ポイントとは?契約書の安易な雛形利用は危険!

株主間契約の重要ポイントとは?契約書の安易な雛形利用は危険!
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは、咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

ベンチャー企業の資金調達の際に重要になる契約の1つが株主間契約です。

時間に追われて内容の検討が不十分のまま押印してしまっていませんか?

株主間契約書は、長期間にわたり会社の経営を拘束する重要な契約書です。

株主間契約書の内容をよく理解しないで契約してしまうと、自社にとって不利益な内容が入っているのを見過ごしてしまうことがあり、以下のようなトラブルが起こります。

 

  • 順調にIPOを実現できなかったときに強制的に創業者の株式を売られてしまい、不本意な形で会社を売却させられる
  • 重要な意思決定のたびに出資者の同意を求めることが必要になり、自由な経営ができなくなる

 

また、ベンチャーキャピタルが投資時に作成した契約書の契約条項を根拠に発行会社に対して株式の買取のあっせんを求め、さらにあっせんにより買い取られた株式の買取価格が当初の株式取得価格を下回ったとして差額分の金銭請求を求める訴訟も起きています(平成30年3月29日東京地裁判決)。

ベンチャーキャピタルとの関係が良好であっても安心するのではなく、担当者が変わることなどによって関係性が変わることもあることを踏まえて、契約書の内容をきっちり精査する必要があります。

この記事では、創業株主や投資を受ける会社の側の立場から、株主間契約を検討するにあたっての重要な注意点をご説明します。

また、株主間契約書の一般的な記載事項についても解説していますので、この記事を読んで十分契約書の意味を理解するようにしてください。

 

弁護士西川暢春からのワンポイント解説
出資者側から提示される株主間契約書は出資者側の都合で作られていることが多いです。

自社に不利益な内容で契約してしまい、不利益を受けないようにするために、必ず株主間契約に精通した弁護士に確認してもらってから契約するようにしてください。

咲くやこの花法律事務所でもご相談をお受けしています。

 

咲くやこの花法律事務所のご相談の流れはこちら

 

▶株主間契約に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

 

1,株主間契約とは?

株主間契約とは、会社の株主の間で締結される会社経営のルールに関する取り決めです。

ベンチャー企業などが投資家(出資者)からの出資を受け入れる場合に、出資後の会社経営について、株主間契約で取り決めるケースが多くなっています。

出資者としては、ベンチャーキャピタルや一般の事業会社などが想定されます。

株主間契約書は、これらの出資者と、出資を受ける会社(発行会社)、及び既存の主要株主の間で作成されることが通例です。

株主間協定書とも呼ばれます。

 

▶参考情報:株主間契約と投資契約の関係について

株主間契約は投資契約とセットで行われることが多いです。

投資契約は投資が実行されるまでの条件について定める契約であるのに対し、株主間契約は投資実行後の会社経営等についての取り決めをする契約です。

投資契約書については以下をご参照ください。

 

投資契約書・出資契約書によくある落とし穴とは?安易な雛形利用は危険!

 

2,創業者、発行会社の立場からみた株主間契約書のリーガルチェックのポイント

創業者や発行会社の立場から注意が必要なのは、内容をよく検討せずに、出資者側から提示された株主間契約をそのまま受け入れてしまうケースがあることです。

ベンチャーキャピタルやその他出資者の側から株主間契約書が提示されたときは、自社の弁護士に相談してその内容を十分把握し、必要に応じて契約内容の修正交渉を行うことが必要不可欠です。

創業者あるいは発行会社の立場からみた一般的なチェックポイントとして以下の点があげられます。

 

(1)望まない株式の売却を強制される内容になっていないか?

株主間契約書には、発行会社の株式を買い取りを希望する第三者が現れ、一定割合以上の出資者が賛成したときは、残りの株主もこれに賛同して株式を売却することを義務付ける条項(強制売却権条項)が入れられていることがあります。

これは出資者がM&Aにより株式を売却して、売却益を得たいと考える場面で、創業株主が売却に応じないために、M&Aが成立しないことを防ぐための条項です。

このような条項が入っていると、創業株主としてはIPOを目指したいと考えていても、出資者の一定割合以上がM&Aによる株式の売却を望んだときは、創業株主の株式も強制的に売却される危険があります。

創業株主としてはこのような不本意な株式の売却を強制されることがないように、契約内容について出資者との間で条件交渉を行うことが必要です。

 

(2)事前承認事項の設定により会社の意思決定が遅れないか?

株主間契約書では、取締役の選任・解任や、追加の出資を受けること、あるいは上場予定時期の変更など、一定の重要事項について、出資者の事前承認が必要であるとする契約条項が入っていることが通常です。

発行会社や経営者の立場から見ると、これらの重要事項を決定する際は、社内の承認手続きだけでなく、出資者からの承諾も取り付けなければならないことになり、意思決定が遅れるというデメリットが生じることがあります。

事前承認事項を定める契約条項については以下の点を確認する必要があります。

 

事前承認事項を定める契約条項のチェックポイント

  • 事前承認事項が必要以上に網羅的に設定されていないかどうか
  • 「発行会社から承認を求めた後一定期間内に出資者が不承認の意思表示をしない場合は承認したものとみなす」といった、スムーズに応答しない場合を想定した規定が盛り込まれているかどうか

 

(3)情報開示についての労力が過大にならないか?

株主間契約書では、発行会社による出資者に対する情報開示義務が定められることが通常です。

例えば、月次の貸借対照表や損益計算書を翌月の一定の期日までに開示することを定めるケースがありますが、これらの情報開示の労力が過大なものになっていないか確認することが必要です。

例えば、以下の点を確認し、必要に応じて出資者に契約条項の変更を求めることが重要です。

 

情報開示義務に関する契約条項のチェックポイント!

  • 情報開示の項目が必要以上に多く設定されていないか
  • 情報開示の期限は現実的に対応可能な期日になっているかどうか

 

3,株主間契約書の一般的な記載事項

株主間契約書を締結する際はその全ての契約条項の意味を十分理解して契約することが必要です。

株主間契約書に盛り込まれる契約条項は一般的には以下のようなものがあります。

 

(1)事前承認事項の取り決め

取締役の選任・解任や、追加投資に関する契約の締結、あるいは上場予定時期の変更など、一定の重要事項について、出資者の事前承認が必要であるとすることを取り決める契約条項です。

 

(2)情報開示に関する取り決め

会社の決算内容や月次での貸借対照表や損益計算書などを会社から投資家に情報開示することについて定めます。

財務情報だけでなく、訴訟が提起された場面や新規事業立ち上げの意思決定をした場面での情報開示を義務付けるケースもあります。

 

(3)取締役指名権やオブザベーションライトに関する条項

出資者の要望により、出資者が取締役を指名して取締役会に参加させる権利や、出資者が取締役会にオブザーバーを派遣する権利を定める契約条項が盛り込まれることがあります。

 

(4)創業株主の専念義務に関する条項

出資者側の立場からは、創業株主が代表取締役を勝手に辞任したり、あるいは、創業株主が発行会社とは別の会社の事業に注力して発行会社への関与が手薄になることを防ぐために、専念義務に関する契約条項を入れることを求められることがあります。

 

▶参考例:例えば、以下などを定めます。

・少なくとも一定期間は発行会社の代表取締役を務めること
・他の会社の取締役になったり、発行会社とは別に事業を起こす際は事前の承認を要すること

 

(5)株式公開などに向けた努力義務、協力義務

出資者が株式公開やM&Aにより、株式を売却して利益を得ること(Exit)を目的として出資するケースでは、出資者側の要望で、株式公開に向けた努力義務やExitに向けた協力義務が定められることがあります。

 

(6)先買権(さきがいけん)に関する条項

先買権とは、創業株主が発行会社の株式を第三者に譲渡しようとする際に、投資家が自分にその株式を譲渡するように求める権利です。

出資者側の要望で、出資者が自身と敵対的な第三者に創業株主の株式が譲渡されることを防ぐために、先買権に関する条項を入れるように求めることがあります。

 

(7)共同売却請求権に関する条項

共同売却請求権とは、創業株主が発行会社の株式を第三者に譲渡しようとする際に、出資者も創業株主と一緒にその第三者に株式を売却できる権利です。

創業株主が保有株式を売却するタイミングで、出資者も一緒に株式を売却できるようにして、売却益を得るExitの機会を確保したいという出資者側の要望で共同売却請求権に関する契約条項を入れるように求められることがあります。

売主追加請求権とも呼ばれます。

 

(8)強制売却権(共同売渡請求権)に関する条項

強制売却権とは、発行会社の株式を買い取りたいという第三者が現れた場合に、一定割合以上の株主が株式売却に賛成したときは、創業株主もこれに賛同することを義務付ける条項です。

これは、出資者がM&Aにより、第三者に株式を買い取らせることにより、売却益を得たい場合に、創業株主が反対してM&Aが流れることを封じるための契約条項です。共同売渡請求とも呼ばれます。

 

(9)デッドロックに関する条項

意見対立により、会社の意思決定が進まなくなることをデッドロックといいます。

 

▶参考例:例えば、以下のようなケースがデッドロックにあたります。

●取締役会で、出資者側が指名した取締役とそれ以外の取締役の意見が対立し、議案が可決されないケース

●新たに出資を受けることについては既存の出資者の承認を得ることを株主間契約書で定めているケースでにおいて、会社が新しい出資者から出資を受けようとする際に、既存の出資者が反対し承認しないために、出資を受けられないケース

 

このような場面で、デッドロックを解消するための手段として、一方の当事者が他方当事者のもつ株式を買い取るなどの権利を定める条項が設けられることがあります。

 

(10)ロックアップに関する条項

会社がIPOを実現した際に、出資者が大量に売却すると株価が下がることから、上場後一定期間は株式の売却を制限する条項です。

 

(11)新規株主の参加に関する条項

発行会社が新たに出資を受けるなどして、新規の株主が現れた場合は、その新規の株主にも株主間契約を締結させることを義務付ける条項です。

 

(12)優先関係に関する条項

投資契約書と株主間契約書を取り交わすなどといった複数の契約書が取り交わされる場面で、どの契約が優先的に適用されるかを定める条項です。

 

(13)合意管轄条項

株主間契約について当事者間でトラブルがおき、訴訟での解決が必要になった場合に、どの裁判所で審理するのかを定める条項です。

合意管轄条項については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

以上、株主契約書によく盛り込まれる契約条項について解説しました。

 

4,株主間契約のメリットとデメリット

株主間契約を作成することのメリットとデメリットについてもご説明しておきたいと思います。

 

メリット:
詳細な合意ができ手間もかからない

例えば株主間で、一方の株主に重要事項に関する拒否権を与えることに合意する場合、株主間契約でそれを定める方法のほかに、重要事項について拒否権をもつ株式(黄金株)を発行しその内容を登記するという方法があります。

ただし、重要事項について拒否権をもつ株式を発行するといった方法は、株主総会での手続きや、登記手続きが必要になるため、手続に手間がかかるという問題があります。

この点、株主間契約では、通常の契約書の作成により、合意が可能なため、株主総会の手続きや登記などの必要がなく、手間がかからないというメリットがあります。

また、株主間で約束すれば、登記できないような詳細な項目も合意に盛り込むことが可能です。

 

デメリット1:
判例上、違反に対して法的な責任が認められないことがある

一方で、株主間契約のデメリットとして、判例上、違反に対して、法的な責任が認めらないケースがあり、相手方が契約を守らない場合のペナルティの実効性が低いケースがあることがあげられます。

過去の判例でも、例えば、上場に向けて協力する義務を定めた株主間契約の契約条項について法的な効力を認められなかった事例(東京地方裁判所平成25年2月15日判決)などがあります。

また、取締役の選任についての株主間契約について、契約通りの議決権行使を強制するほどの法的効力は認められないとした事例(東京高等裁判所令和2年1月22日判決)もあります。

このように、判例上、すべての契約条項について法的な効力が認められているわけではなく、契約条項の書き方によっては、相手方が違反しているように見えても、法的な責任を問えない可能性があるということに注意する必要があります。

 

デメリット2:
株主間契約が複数になると処理が複雑になることがある

また、株主間契約のもう1つのデメリットとして、株主の数が増え、株主間契約の数も増えると、株主間契約の違反がないように管理しながら、会社の運営をすることに相当の注意が必要になり、処理が複雑になるということもあげられます。

株主間契約の内容を決める際には、会社の運営上の処理が複雑になりすぎないように注意することも重要です。

 

5,株主間契約に関して弁護士へ相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に咲くやこの花法律事務所における株主間契約についてのサポート内容をご説明したいと思います。

 

(1)株主間契約書のリーガルチェックのご相談

この記事でも解説したように、出資者から提示される投資契約書は、出資者の利益を優先して作成されていることが通常であり、そのまま契約を締結してまうと将来思わぬ不利益を被るリスクがあります。

必ず、弁護士のリーガルチェックを受け、内容を十分理解して、必要に応じて契約書の修正交渉を行うことが重要です。

咲くやこの花法律事務所では、ベンチャー企業法務に精通した弁護士が株主間契約書のリーガルチェックのご相談を随時承っております。

 

株主間契約書に関するリーガルチェックの弁護士費用の目安

●初回相談料:30分あたり5000円(顧問契約の場合は無料)
●契約書リーガルチェック費用:5万円程度~(顧問契約の場合は無料)

 

(2)株主間契約の作成のご相談

一般の事業会社や個人から出資を受ける場合は、株主間契約書を自社で作成しなければならないケースがあります。

株主間契約書についても、様々なひな形がありますが、実際に作成するべき契約書の内容は、事業の内容や今後の成長戦略、出資割合や出資の出資目的によって大きく異なりますので、安易にひな形を利用してそのまま締結してしまうことは絶対に避けるべきです。

十分に内容を理解しないままひな形を流用すると、自社にとって思わぬ不利益な条項が入っていたり、知らないうちに契約違反を犯してしまったり、あるいは、現実にそぐわない内容の契約書になってしまう恐れがあります。

咲くやこの花法律事務所では、ベンチャー企業法務に精通した弁護士が株主間契約書の作成のご相談を随時承っております。

 

株主間契約書の作成に関する弁護士費用の目安

●初回相談料:30分あたり5000円(顧問契約の場合は無料)
●契約書作成費用:10万円程度~

 

(3)ベンチャー企業向けの顧問契約による継続的なサポート

ベンチャー企業を継続的に成長させるためには、法務面について顧問弁護士による継続的なサポートを受けることが必要です。

咲くやこの花法律事務所では、ベンチャー企業からの以下のようなご相談について、ベンチャー企業の経営者や管理職向けに的確な助言を行い、企業の継続的な成長を後押しします。

 

 

咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの内容については以下をご覧ください。

 

 

ベンチャー企業における弁護士の役割については、以下の記事でも詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

6,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

お問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事作成日:2022年8月5日

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    小田 学洋 弁護士
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    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
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