こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
新しいサービスや新規事業を始めたいけれども、法律の規制が気になり、迷っていませんか?
そんなときに、頼りになるのが「グレーゾーン解消制度」です。
この制度を利用することで、自社が検討している新規事業や新サービスに関する法律による規制の有無について、所管省庁の見解を書面で確認することができます。
制度創設後平成31年3月までの期間に、142件の申請があり、その全件が回答されています(うち、中小企業の申請は85件)。
グレーゾーン解消制度の利用状況の詳細は、以下の経済産業省の公式サイトをご覧ください。
今回はこのグレーゾーン解消制度の利用方法やメリットについてご説明したいと思います。
グレーゾーン解消制度の利用は、照会書を正しく記載することが何よりも重要です。
正しい記載ができていないと、スムーズな制度の利用ができなかったり、回答を得ても自社の事業にとってあまり意味のない内容になってしまう、場合によってはやりなおしが必要になるなど様々なデメリットがあります。
制度利用については事前に必ず弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
▼グレーゾーン解消制度に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
今回の記事で書かれている要点(目次)
1,グレーゾーン解消制度とは?
グレーゾーン解消制度とは、事業者が安心して新規事業を行えるように、新規事業や新サービスについての法規制の適用の有無を、規制を所管する省庁(規制所管省庁)に確認することができる制度です。
原則として1か月以内に回答を得ることができます。
▶参考情報:「規制所管省庁」とは?
規制を所管する省庁とは、事業についての法規制の解釈や適用を担当する省庁のことです。
例えば、貸金業法なら金融庁、貨物自動車運送事業法なら国土交通省などというように、各法律ごとに規制所管担当省庁が決められています。
グレーゾーン解消制度はこの担当省庁に自社の事業内容について法規制の適用があるかどうかを確認する制度です。
どの法令をどの省庁が所管しているかについては以下のウェブサイトで確認することが可能です。
2,グレーゾーン解消制度の活用事例
グレーゾーン解消制度はさまざまな業種の新規サービス、新規事業について利用されています。
以下で活用の具体例をいくつかご紹介したいと思います。
(1)給与前払いサービスの適法性について金融庁への確認を行った事例
給与の支払い日よりも前に、従業員の勤怠実績に応じた給与金額を従業員に前払いする「給与前払いサービス」について、貸金業の許可を得る必要があるかどうかを金融庁に確認した事例です。
金融庁からの回答により、給与前払いサービスの提供は原則として、貸金業にあたらず、許可を得る必要がないことが確認されました。
(2)薬局の時間外薬剤受け渡しサービスについて厚生労働省への確認を行った事例
この事例は、薬局営業時間外に機械で薬剤を患者に受け渡すサービスの適法性について厚生労働省への確認を行った事例です。
医薬品医療機器等法の第8条で、薬局の管理者は医薬品の管理等について必要な注意をする義務が規定されています。
新サービスがこの医薬品医療機器等法第8条に反しないかどうかについて、グレーゾーン解消制度を利用して確認がされ、厚生労働省が、抵触しないとの回答をしています。
(3)web上での登記手続書類作成サービスについて法務省への確認を行った事例
この事例は、web上で法人の本店移転登記手続に必要な書類を洗い出したうえで必要書類を自動的に作成するサービスについての法規制の適用の有無について法務省への確認を行った事例です。
司法書士法では、登記手続書類の作成は司法書士の独占業務とされています。
そのため、新サービスがこの司法書士法の規定に反しないかどうかについて、グレーゾーン解消制度を利用して確認がされ、法務省が、計画されているウェブサービスの内容からすると抵触しないとの回答をしています。
3,グレーゾーン解消制度を利用して回答を得るまでの流れ
グレーゾーン解消制度は、産業競争力強化法という法律の第9条に制度の内容が定められています。
企業がグレーゾーン解消制度を利用して省庁から回答を得るまでの流れは以下の通りです。
主な流れ
(1)照会書を作成する
(2)照会書を経済産業省など事業所管省庁に提出する
(3)事業所管省庁から規制所管省庁に照会書を送付してもらう
(4)規制所管省庁からの回答結果は、事業所管省庁を経由して事業者に通知される
このように事業所管省庁を経由して規制所管省庁に法規制の適用の有無の照会をする流れになっており、わかりやすい回答を得られるように事業所管省庁のサポートを得ながら進められることが特徴となっています。
事業所管省庁は多くの場合「経済産業省」です。
事業所管省庁が不明な場合は、経済産業省に問い合わせることにより確認することが可能です。
照会書の作成のしかた
照会書の記載事項は以下の通りです。
1 新事業活動及びこれに関連する事業活動の目標
(1)事業目標の要約
(2)生産性の向上又は新たな需要の獲得が見込まれる理由
2 新事業活動及びこれに関連する事業活動の内容
(1)事業実施主体
(2)事業概要
(3)新事業活動を実施する場所
3 新事業活動の実施時期
4 解釈及び適用の有無の確認を求める法令の条項等
5 具体的な確認事項
6 その他
上記の記載事項のうち、「1~3」の部分は新しい事業やサービスの内容を説明する部分になります。
グレーゾーン解消制度は、新商品の開発や新しいサービスの提供など、新規性のある事業を支援するための制度です。
この点を踏まえて、「1」の事業活動の目標は意欲的な内容を記載し、「2」の事業活動の内容は事業の新規性が伝わるようにわかりやすく記載することがポイントとなります。
そして、「4」の「解釈及び適用の有無の確認を求める法令の条項等」の部分には自社の事業に適用があるかどうかを知りたい法律の条文を具体的に記載します。
さらに、「5」の「具体的な確認事項」で、確認事項を明確に記載することが必要になります。また、確認事項についての自社の見解(例えば、「~の理由により自社サービスは法規制の適用を受けないものと考える」等の内容)を書くことが求められます。
グレーゾーン解消制度の照会書のひな形や記載例は以下のページからダウンロードすることが可能です。
4,活用のメリット
グレーゾーン解消制度を利用するメリットとしては以下の点があげられます。
(1)規制の有無について公的な見解が得られ安心して事業に取り組むことができる
法規制の対象でないと思って進めていた事業が、あとで規制対象であるという判断になると、事業を根本から見直すことを迫られます。
場合によっては事業を続けることができなくなり、顧客や従業員からの信頼を失うことにもつながりかねません。
事業を始める段階で、法規制の適用の有無について、確実な確認をしておくことは非常に重要です。
新サービスの適法性が問題になり、事業の見直しを迫られた実際の例の1つとして、ソーシャルゲーム業界で問題になった「コンプガチャ」のケースがあげられます。
「コンプガチャ」は当時、ソーシャルメディア業界の高い利益率の源泉となっていましたが、消費者庁の違法判断が示され、事業モデルの大きな転換を強いられました。
新しい事業やビジネスモデルについては初期段階で法規制の有無を確認しておくことが重要です。
(2)顧客や見込み顧客に対しても適法な事業であることをアピールできる
グレーゾーン解消制度を利用して法規制の問題をクリアした適法な事業であることを確認しておくことで、顧客や見込み顧客に対してのアピールにもつながります。
グレーゾーン解消制度の利用の結果、法規制の対象外であることが確認できたときはそれを自社のウェブサイトなどで公表して、顧客や見込み顧客に周知する事業者も増えています。
グレーゾーン解消制度を利用することで話題性が生まれるケースもあり、マスメディアなどで取り上げられ、一定のPR効果が生まれることもあります。
(3)回答については公表の対象外とすることも可能
一方で、グレーゾーン解消制度による確認結果を公表せず、競合に知られないようにして、事業を進めたいというケースもあると思います。
その場合は、グレーゾーン解消制度による回答を公表しないことを希望することが可能です。
5,グレーゾーン解消制度に関して弁護士に相談したい方はこちら
最後に、グレーゾーン解消制度に関する咲くやこの花法律事務所のサポート内容についてご説明します。
(1)グレーゾーン解消制度利用についてのご相談
咲くやこの花法律事務所では、グレーゾーン解消制度のご利用を検討される企業からのご相談を承っています。
弁護士が、新規事業の内容を詳しくお聴きし、グレーゾーン解消制度を利用するのが適切かどうかや、利用する場合の利用方法についてわかりやすい助言を行います。
また、実際にグレーゾーン解消制度を利用する場合は、適切な照会書を作成することが何よりも重要になります。
「自社の事業の内容」や「法規制の適用についての自社の見解」をわかりやすく伝える工夫が必要です。
弁護士がご依頼を受けて、適切な照会書を作成することで、確実な制度利用と回答結果の確認が可能になります。
咲くやこの花法律事務所の企業法務に強い弁護士による相談料
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
(2)新規事業の適法性についてのご相談
咲くやこの花法律事務所では、グレーゾーン解消制度の利用のご相談のみならず、「新規事業の適法性について弁護士に確認したい」というご相談を常時お受けしています。
新規のサービスや事業の適法性の確認は、多数の法令についての検討が必要です。
自社として確認する必要があると思っている法令とは別に、思わぬ法令に抵触してしまっているというケースもあります。
自己判断せず、必ず、事前にご相談いただきますようにお願いいたします。
咲くやこの花法律事務所の企業法務に強い弁護士による相談料
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
なお、新規事業の適法性確認など予防法務全般やベンチャー事業における弁護士の役割についての解説は以下で行っていますので、あわせてご参照ください。
▶参考情報:予防法務の重要性と取り組み方を弁護士が解説
6,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
今すぐお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:20234月15日