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予防法務とは?重要性と取り組み方を弁護士わかりやすく解説

予防法務の重要性と取り組み方を弁護士が解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

予防法務とは、企業が法的な紛争を避けるために、あるいは法的な紛争が発生してもすみやかに解決できるように、予防するための取り組み全般をいいます。このような「予防法務」が中小企業にとっても常識になりつつあります。

日ごろから「予防法務」に取り組まなければ、契約トラブル、労務トラブル、知的財産トラブル、法令違反のトラブルなど、さまざまなトラブルが発生し、事業を発展させることができません。

でも、予防法務といっても、具体的に何から始めればよいかわからないということもあるのではないでしょうか?

今回は、予防法務に取り組んできた咲くやこの花法律事務所の経験も踏まえて、予防法務の重要性と取り組み方について、ご説明したいと思います。

 

「弁護士西川暢春からのご案内」
咲くやこの花法律事務所が顧問先と行ってきた予防法務の取り組みについて、顧問先企業と弁護士の対談動画をアップしています。

予防法務について具体的にどのようなやりとりをしながら進めていくのかがよくわかるインタビュー形式の動画になっています。もしよろしければご参照ください。

「顧問先とのインタビュー動画」はこちら

 

▶【関連情報】予防法務については、以下の関連する記事もあわせてご覧ください。

企業法務とは?弁護士がわかりやすく解説

 

▼予防法務について今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

また予防法務において顧問弁護士をお探しの方は、以下を参考にご覧下さい。

【全国対応可】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

 

 

1,予防法務とは?

予防法務とは、企業が法的な紛争を避けるために、あるいは法的な紛争が発生してもすみやかに解決できるように、予防するための取り組み全般をいいます。契約書や就業規則の整備、自社の知的財産権の管理、債権の管理、日ごろの法令遵守体制の整備、従業員に対するコンプライアンス研修などといった活動がこれに該当します。

 

(1)戦略法務、臨床法務との比較

予防法務とよく比較される概念として、「戦略法務」、「臨床法務」という概念があります。

「戦略法務」は、法務の立場から新規の事業戦略を組み立てていく取り組み、あるいは既存事業の事業戦略を法務の立場から修正していく取り組みをいいます。

一方、「臨床法務」とは、紛争が起こったときの緊急時の対応を行う法務をいいます。

 

2,予防法務の重要性

予防法務は、「紛争を事前に回避することで、会社の貴重なリソースを紛争解決のために使わなくて済む環境を作る」という点と、「紛争が起きた場合でも自社に不利益な解決になることを避けることができる」という点の2つの側面から重要です。

以下でその理由をご説明していきます。

 

(1)紛争が起きてから弁護士に依頼しても不利な解決になってしまう

まだ法務面が弱い企業では、どうしてもトラブルが起こってからの臨床法務のみの対応になりがちです。

しかし、紛争が起きてから弁護士に依頼しても、紛争になる前の段階で企業として誤った判断をしている場合は、敗訴が避けられません。

場合によっては多額の賠償責任を負担してしまい、企業が倒産してしまうケースすらあります。

これらのケースの多くは法的知識の不足や誤解が原因となって起きており、日ごろから顧問弁護士に相談して予防法務に取り組んでいれば防げるものであることがほとんどです。

顧問弁護士の役割や必要性については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にご覧ください。

 

▶参考情報:「顧問弁護士とは?」その意味や役割、活用方法などについては以下の記事を参考にご覧下さい。

顧問弁護士とは?その役割、費用と相場、必要性について解説

 

参考例:社内で病気による休職者が出た場合の対応の場面

うつ病により休職していた従業員が強く復職を希望したため会社も復職を認めたが、その後本人の病気が悪化して自殺してしまったという事例があります。

この事例で会社は従業員の遺族から、「安易に復職を認めた」として責任を問われ、敗訴して3000万円の支払いを命じられました(市川エフエム事件東京高等裁判所平成28年4月27日判決)。

その結果、この会社は破産しています。

一方で、逆に、病気による休職者について復職を認めず退職扱いにした場面でも、従業員から不当解雇であるとして訴えられ企業が敗訴する事例が数多く出ています。

敗訴した結果、企業側が1000万円を超える高額の支払いを命じられるケースも少なくありません。

 

▶参考情報:休職者の退職や解雇については、以下の関連情報も参考にご覧下さい。

怖い休職トラブル!休職期間満了を理由に従業員を退職扱いや解雇する際の注意点

 

予防法務に取り組まない企業は、上記のような問題が起こる可能性があることを知らずに自社の判断で休職者に対応することになります。

そして、判断が誤っていた場合に、紛争になってから弁護士に依頼して対応しても、誤った判断のリカバリーが難しく、敗訴がほぼ確実になってしまいます。

予防法務に取り組み、顧問弁護士に事前に相談していれば防げるトラブルであり、このようなトラブルで企業を倒産させてしまうことは非常にもったいないことです。

 

(2)予防法務に取り組むことで紛争を事前に回避できる

予防法務に取り組まず臨床法務のみに頼る場合のもう1つの問題点として、事前に顧問弁護士に相談していれば避けることができた紛争を避けることができず、紛争が増えてしまうという点があります。

その場合には紛争解決のための弁護士費用が負担になりますが、問題はそれにとどまりません。

弁護士に解決を依頼した後も、自社として弁護士との打ち合わせや資料の提出など、紛争解決に割かなければならなくなる労力や人員の負担が大きく、事業にとって大きなブレーキになってしまいます。

特に紛争が裁判に発展すれば、2年、3年と裁判が続くケースが少なくありません。

これに対して、予防法務に日ごろから取り組んでいれば、紛争を事前に防ぐことができ、貴重なマンパワーを紛争解決という後ろ向きのことではなく、事業を進めるという前向きのことに割くことができるようになります。

 

参考例:新店舗の出店や新製品発売の場面

新しい店舗や製品、サービスの名称について商標権をとっていない場合、他社が後でその名称について商標権をとれば、自社が先に使っていた名称であったとしても、原則として商標権侵害になってしまいます。

そのため、自社が店舗名や製品名、サービス名を変更せざるを得なくなり、そのためのコストを負担することになりますし、商標権侵害について訴訟を起こされれば損害賠償を命じられることになってしまいます。

このような事例も予防法務に取り組まなかった結果、自社にとって不利な紛争を招き、紛争解決のためのコストを割かなければならなくなるケースの例といえるでしょう。

商標権を取得しないことによって起きるトラブルについては以下でより具体的な例をあげて解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

以上述べたように予防法務は重要です。

できるだけ早い段階で予防法務への取り組みをはじめ、それを継続的に続けていかなければ、将来、予想もしなかったきっかけで、会社が重大な損害をこうむる危険があります。

多くの企業が予防法務への取り組みをしている理由はこの点にあります。

 

3,予防法務の例

以下では中小企業を念頭に各分野ごとに取り組むべき予防法務の例をご紹介していきたいと思います。

 

(1)労務分野における予防法務

労働関連の法律は年々複雑になり、労務トラブルも増えています。

例えば、「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、厚生労働省が各都道府県で行っている総合労働相談の平成29年度の相談件数は110万件を超えています。

 

 

このような労働分野における予防法務としては以下の点が重要になります。

 

  • 就業規則や雇用契約書、賃金制度などを正しく整備すること
  • 労務関連の各種法律が守られていることを常時確認すること
  • 労務関連の法改正に正しく対応すること
  • ハラスメントの防止や労務トラブル防止に必要な措置をとっておくこと
  • 問題社員の対応について常時顧問弁護士に相談しながら必要な対応をすること

 

これらの予防法務を怠ると例えば以下のような問題が生じます。

 

  • 労務トラブルが裁判になった場合に、就業規則や雇用契約書あるいは会社の労務管理の不備を指摘され、敗訴してしまう。
  • ハラスメントの防止や問題社員対応が十分に行えず、職場環境が悪化し、離職者が増える。
  • 労務関連の法律を十分守らなければ、従業員にも法令違反のある会社という印象を与え、従業員からの信頼を失ってしまう。

 

労務管理について日ごろから弁護士に相談して予防法務に取り組む重要性については以下の記事でも解説していますのであわせて参照してください。

 

 

また、企業の労務管理に関する厚生労働省の解説資料「事業主の方へ(適切な労務管理のポイント)」もあわせてご参照ください。

 

 

(2)知的財産分野における予防法務

商標権や意匠権、特許権、著作権など知的財産権の分野でも予防法務が重要です。

例えば、以下の点が重要になります。

 

  • 自社の製品やサービスについて他社の知的財産権を侵害していないか事前にチェックすること
  • 自社の重要な技術やデザイン、ブランドについて知的財産権を取得しておくこと

 

これらの予防法務を怠ると例えば以下のような問題が生じます。

 

  • 自社の製品やサービスについて、知らないうちに他社の知的財産権を侵害してしまい、訴えられてしまう。
  • 自社の重要な技術やデザイン、ブランド名などについて他社に先に権利を取得されてしまい、製品の販売に中止や設計変更などが必要になってしまう。

 

なお、知的財産権の各制度の概要については以下の特許庁ウェブサイトもご参照ください。

 

 

 

(3)取引分野における予防法務

取引分野での予防法務では、例えば以下の点が重要です。

 

  • 自社が提供するサービスや商品についての契約書を正しく整備すること
  • 取引相手から提示された契約書についてリーガルチェックを行い、自社に不利な条項については修正の交渉をすること
  • 自社の債権の管理を徹底し、支払いの遅延があればすぐに回収に向けた行動をとれるようにしておくこと
  • 代金の不払いが起きた場合の回収のための手段をあらかじめ検討して準備しておくこと

 

これらの予防法務を怠ると例えば以下のような問題が生じます。

 

  • 取引相手が提示した自社に不利益な契約条項にそのままサインしてしまった結果、自社に発生した損害の賠償を相手に請求できなくなったり、相手にいつまでも仕事のやり直しをさせられるなどの不利益が生じる。
  • 契約書を作成していないため、仕事の代金をもらえなくなってしまう。
  • 代金の不払いが起きたときに債権の回収の手段がなく、代金の支払いが得られなくなる。

 

▶参考情報:取引分野における予防法務については以下の関連情報もご参照ください。

契約書作成やリーガルチェックに強い弁護士へ相談

 

(4)新規事業における予防法務

新規事業における予防法務では、例えば以下の点が重要です。

 

  • 新しい事業に法律上の問題がないか確認すること
  • 新しい事業の法的なリスクを回避するための措置をあらかじめとっておくこと

 

これらの予防法務を怠ると例えば以下のような問題が生じます。

 

  • 法的な問題に気づかないまま事業を進めてしまい、法令違反についてペナルティを課される
  • 新規事業の法的なリスクに事前に対処できず、自社に重大な損害を発生させてしまう。

 

4,顧問弁護士に相談しながら予防法務に取り組むのがベスト

ここまで予防法務で取り組むべき内容の一部をご紹介してきましたが、具体的な予防法務の取り組みは、顧問弁護士に相談しながら進めていくことをおすすめします。

自社で法務に詳しい人材を採用したり、育てていく方法もありますが、顧問弁護士に相談しながら予防法務に取り組むほうが、通常は圧倒的に低コストです。

また、予防法務は労務分野、知財分野、取引分野、新規事業など多種多様な分野にわたる事業全般のリスクに配慮して取り組む必要があります。

そのためには、行政書士や司法書士ではなく、弁護士と一緒に取り組まれることをおすすめします。

 

(1)予防法務を相談する弁護士を選ぶ際の確認事項

候補となる弁護士と実際に話をして、以下の点を確認することが必要です。

 

  • 毎月の顧問料がいくらか
  • どの範囲まで顧問料の範囲でサポートしてくれるのか
  • いつでもすぐに連絡が取れる弁護士かどうか、レスポンスが遅くないかどうか
  • 企業の予防法務に精通した弁護士かどうか
  • わかりやすく親切に質問に答えてくれるか
  • 自社の事業をよく理解してくれる弁護士かどうか
  • 積極的に事業のリスク回避のための提案をしてくれるかどうか
  • メールやチャットワーク、Zoom、スカイプなど自社が希望する連絡手段に対応してくれるかどうか

 

以下のような弁護士は不適切です。

 

  • メールの返信や電話の折り返しが遅い弁護士
  • えらそうな弁護士
  • 日ごろ、離婚や相続の仕事をしていて、事業者のサポートに精通していない弁護士
  • わかりやすく具体的な解決策を教えてくれない弁護士

 

(2)予防法務を相談する弁護士の選び方

予防法務を相談する顧問弁護士の選び方としては、主に以下の2通りがあります。

 

  • 「インターネットなどで情報収集して候補となる弁護士を自分で探す方法」
  • 「知り合いの社長や自社の税理士に顧問弁護士の候補者を紹介してもらう方法」

 

インターネットなどで探す場合は、確認事項として前述した項目については法律事務所のウェブサイトなどに表示されていますので、まずはウェブサイトに掲載されている情報をよく確認することが必要です。

一方、知り合いの社長や税理士に紹介してもらう場合は、紹介者の推薦をうのみにせずに、本当に自社の顧問弁護士として適切かどうかを前述の視点で確認することが必要です。

知り合いに弁護士を紹介してもらい、契約をした場合、あとでミスマッチだったと感じても、断りにくいという声がよく聴かれますので、慎重に吟味されることをおすすめします。

自分の会社にピッタリあった顧問弁護士の選び方については、以下の記事も参考にご覧下さい。

 

 

5,予防法務に関して弁護士へ相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に咲くやこの花法律事務所のサービス内容についても簡単にご紹介したいと思います。

咲くやこの花法律事務所では、顧問先400社以上に予防法務サービスを提供してきた実績があります。

予防法務のための顧問弁護士サービスのプランとして主に3つのプランを用意していますが、その中で最も多くの方に多く選択していただいているのが以下のプランです。

 

(1)スタンダードプラン(月額顧問料5万円 ご相談頻度の目安:週に1~2回程度)

 

1,主なサポート内容

 

  • 予防法務に精通した弁護士が対応します。
  • 弁護士にいつでもメールや電話、チャットワーク、Zoom、スカイプなどでご相談いただくことが可能です。もちろん事務所に来所いただいての相談も可能です。
  • 契約前に担当弁護士との無料面談で相性をご確認いただくことができます(電話・テレビ電話でのご説明or来所面談)
  • 来所していただかなくても、電話あるいはテレビ電話でお申込みいただけます。

 

また、咲くやこの花法律事務所のその他の顧問弁護士プランの詳細や顧問弁護士サービスの実績については以下の顧問弁護士サービスページをご参照ください。

 

 

6,顧問弁護士サービスに関するお問い合わせ方法

企業法務に強い顧問弁護士との無料面談は、下記からお気軽にお問い合わせください。また、今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

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注)咲くやこの花法律事務所のウェブ記事が他にコピーして転載されるケースが散見され、定期的にチェックを行っております。咲くやこの花法律事務所に著作権がありますので、コピーは控えていただきますようにお願い致します。

 

記事更新日:2023年6月16日
記事作成弁護士:西川 暢春

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
    池内 康裕 弁護士
    池内 康裕(いけうち やすひろ)
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    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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