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公務員の定年延長とは?いつから?早見表や図解付きでわかりやすく解説

公務員の定年延長とは?いつから?早見表や図解付きでわかりやすく解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

公務員の定年延長について調べていませんか?

公務員の定年は以前は60歳でしたが、令和3年6月11日、「国家公務員法等の一部を改正する法律」と「地方公務員法等の一部を改正する法律」が公布され、令和5年4月から施行されたことで、段階的に65歳まで延長されることとなりました。

これに伴い、60歳以降の働き方も大きく変わり、役職定年制や短時間勤務制といった新たな制度が導入されます。

国や地方公共団体などの任命権者は、職員が60歳に達する前年度に、60歳以降の働き方について、適切な情報を提供し、本人の意思を確認することが求められています。この際、今後給与がどうなるかや、短時間勤務を希望した場合の勤務時間など、それぞれの職員の希望に応じて説明する必要があり、仕組みを良く理解しておくことが重要となります。

この記事では、公務員の定年延長について、実施スケジュールを説明したうえで、給与のシステムなどが今までとどのように変化するのかを解説します。この記事を読めば、今後、公務員の定年延長がどのような流れで進んでいくのかを理解していただけるはずです。

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

定年延長について、人事担当者は、必要な情報を職員に提供し、職員本人の意思を確認することが求められています。また、その情報提供をした日から、職員本人への意思確認をするまでに十分な期間を確保することが求められています。このように、人事担当者側には様々な配慮が要求され、説明が不十分であったり、意思確認が適切な時期に行われなかった場合は、後でトラブルになることも想定されます。

咲くやこの花法律事務所では、自治体等の担当者からのご相談をお受けしています。トラブルになる前に、少しでもご不安な点がございましたら、お問い合わせください。

 

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1,公務員の定年延長とは?

公務員の定年延長とは?

公務員の定年延長とは、平成25年度からの年金受給開始年齢の段階的な引き上げに伴って、年金の給付開始まで無収入の期間がなくなるように、定年を段階的に延長することです。これは、令和4年度から令和13年の約10年間で、2年毎に1歳ずつ定年を引き上げていき、最終的に65歳まで延長するもので、60歳を迎えた職員が、短時間勤務などの多様な働き方を選択できる仕組みになっています。

公務員の定年延長は、少子高齢化問題の影響のもと、年金の受給開始年齢が引き上げられたことに伴って、必要になったもので、高齢の公務員の経済的な安定が期待できます。

この定年の引き上げは、前述のとおり令和13年までに段階的に行われ、60歳以降から定年までは、給与が60歳の時の7割水準となります。そして、退職金は7割水準となる前の部分と7割水準になった後の部分を分けて計算されるため、職員に不利益がないような仕組みとなっています。また、60歳以降であれば、定年前であっても退職事由を「定年」とすることができ、退職後は、定年前再任用制度によって短時間勤務者として採用されることも可能です。

 

2,なぜ定年延長が必要なのか?

では、そもそも定年延長の法改正が必要になった理由はなんでしょうか。

 

(1)年金受給開始年齢の引上げ

その大きな要因としては、先程ご説明した通り、年金受給開始年齢の引き上げが挙げられます。

近年日本において大きな問題となっている少子高齢化により、働く若い世代が減少する一方で、年金受給者の数が増加することにより、年金制度へ財政的な圧力がかかっています。そこで、この対策として、年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられることとなりました。すると、今まで通り60歳で定年を迎えた公務員は、65歳までの間は無収入となってしまいます。そのため、60歳以降に無収入となり困ることがないように、公務員の定年も引き上げられることとなりました。

 

(2)健康寿命の向上

また、近年の医療技術の進歩により国民の健康寿命が伸びていることも、定年延長の理由の一つと言えます。長寿化することによって、60歳や65歳という年齢でも健康的に働ける人々が増えたと考えられ、それによって高齢者がより長い期間、経済活動へ貢献することが期待されていると言えます。

 

3,地方自治体では条例改正が必要

今回の定年延長についての法改正に伴い、地方自治体については条例改正を行う必要があります。

「地方公務員法の一部を改正する法律」では、「国家公務員法の一部を改正する法律」とは違い、具体的に改正の内容が示されておらず、細かな規定は条例で定めることとなっています。そして条例を改正する際は、国家公務員法の規定を基準に定めることが必要とされています。

例えば、地方公務員法の一部を改正する法律の第24条4号では、以下のように定められています。

 

▶参照:地方公務員法の一部を改正する法律の第24条4号

「任命権者は、当該任命権者の属する地方公共団体の条例年齢以上退職者・・・を、条例で定めるところにより、・・・短時間勤務の職に採用することができる。・・・
2 前項の条例で定める年齢は、国の職員につき定められている国家公務員法第六十条の二第一項に規定する年齢を基準として定めるものとする。」(一部省略しています。)

・参照元:衆議院「地方公務員法の一部を改正する法律」

 

つまり、地方自治体は、国家公務員における定年延長の法改正の内容に準じて、条例改正をする必要があるのです。

 

4,定年延長はいつから適用か?スケジュールについて

次に、定年延長がいつから適用されるかなど、今後のスケジュールについてご説明いたします。

 

(1)令和13年までに段階的に定年延長

公務員の定年延長は、以下の表の通り、令和5年度から令和13年度にかけて、2年につき1歳ずつ、段階的に引き上げられます。この点は、地方公務員についても、国家公務員の定年を基準に定められるため、同様です。

細かいことですが、これは「年度」ごとに計算されるため、例えば令和4年度の場合は、「令和4年1月1日〜令和4年12月31日」ではなく、「令和4年4月2日〜 令和5年4月1日」の期間を指していることに注意してください。

 

▶参考:「公務員の定年延長の段階的な引き上げ」一覧表

年度西暦 定年
令和4年 2022年 60歳
令和5年 2023年 61歳
令和6年 2024年
令和7年 2025年 62歳
令和8年 2026年
令和9年 2027年 63歳
令和10年 2028年
令和11年 2029年 64歳
令和12年 2030年
令和13年 2031年〜 65歳

 

そのため、例えば、令和5年8月に56歳の誕生日を迎える職員は、令和13年に65歳で定年退職することとなります。年代ごとの定年年度については、「6,【2023年度最新】国家公務員と地方公務員の定年延長の早見表」でご説明いたします。

 

(2)60歳以降の定年までのスケジュールについて

例えば、63歳で定年退職予定の職員が60歳を迎えた際、定年退職日までの期間、必ずしも以前と同じように勤務するわけではなく、60歳以降から定年退職日までについては、自身の意思で働き方を選択することとなります。

国家公務員の60歳から定年退職までの働き方については、主に以下のパターンに分けられます。

 

  • 1.定年時に管理監督職に就いている職員が非管理監督職として勤務(役職定年制)
  • 2.定年時に非管理監督職に就いている職員が引き続き非管理監督職として勤務
  • 3.一旦退職し、短時間勤務官職への定年前再任用として勤務

 

少し難しく聞こえますが、かみ砕いて言うと、60歳以降も定年までは今まで通りフルタイムで働きたい人は「1.定年時に管理監督職に就いている職員が非管理監督職として勤務(役職定年制)」か「2.定年時に非管理監督職に就いている職員が引き続き非管理監督職として勤務」に該当し、60歳以降は短時間勤務にして定年までゆとりのある働き方をしたい人は、「3.一旦退職し、短時間勤務官職への定年前再任用として勤務」に該当します。

ただし、管理監督職の職員は60歳で役降りをして、60歳以降は非管理監督職として勤務する必要があります。「役降り」とは、60歳を超えた職員が、管理監督職以外の官職へ異動することを言います。以下の図の通り、管理監督職の職員は、60歳の誕生日当日から、その日以降に最初に来る4月1日(特定日)までの期間中に、降任又は降給を伴う転任をする必要があります。

 

▶参考:「役降り」の参考例

「役降り」の参考例

そして、国家公務員は、特定日以降定年退職までの俸給は、60歳の時の7割相当の水準となります。これについては、「7,定年延長で給与はどうなる?」で詳しくご説明いたします。

一方、地方公務員については、「1.定年時に管理監督職に就いている職員が非管理監督職として勤務」の役職定年制については、地方自治体が個々に条例を定めることとなっているため、一律の規定はありません。ただし、条例は「国家公務員との権衡を考慮した上で条例で定める」こととなっているため、国家公務員に適用されている制度と大きく乖離することは考えにくいでしょう。また、「2.定年時に非管理監督職に就いている職員が引き続き非管理監督職として勤務」と「3.一旦退職し、短時間勤務官職への定年前再任用として勤務」については、地方公務員も同様となります。

 

5,定年延長は何年生まれから影響があるのか?

では、実際に定年延長の対象となるのは、何年生まれからでしょうか。

一番最初に定年延長の影響を受けるのは、1963年4月2日〜1964年4月1日(昭和38年度)生まれの職員です。つまり、令和5年度に60歳になる代の定年は61歳となります。

そして、この代以降の年代に属するすべての職員が、定年延長の影響を受けることとなります。この点についても、国家公務員、地方公務員とも同じです。

 

6,【2023年度最新】国家公務員と地方公務員の定年延長の早見表

国家公務員と地方公務員の定年の段階的な引上げの早見表は、以下の通りです。

 

▶参考:2023年度最新版の定年延長の早見表

【2023年度最新】国家公務員と地方公務員の定年延長の早見表

・参照元:内閣官房内閣人事局:「国家公務員の60歳以降の働き方について」(pdf)7ページ

 

このように、2年毎に1歳ずつ段階的に引き上げられ、最終的に公務員の定年は65歳となります。但し、段階的な定年の引き上げ期間中、定年後も65歳までの間は、暫定再任用制度により勤務することが可能です。この暫定再任用制度については、「10.再任用制度との違いについて」で解説します。

 

7,定年延長で給与はどうなる?

定年延長により、60歳から定年までの給与は、60歳の時の7割相当の水準となります。この7割水準が適用となるタイミングは、職員が60歳の誕生日以降に最初に来る4月1日です。この日を「特定日」と呼びます。

 

(1)非管理監督職者の場合

例えば、非管理監督職の常勤の職員が63歳に定年を迎える場合、60歳以降も常勤として勤務し続けたとしても、給与は60歳に達する前の俸給の7割となります。但し、前述のとおり、この7割水準が適用される時期は、60歳の誕生日を迎えた日ではなく、60歳の誕生日を迎えた日以降にくる最初の4月1日、つまり「特定日」以降となります。

 

▶参考:60歳に達した職員の俸給(基本給)

60歳に達した職員の俸給(基本給)

・参照元:内閣官房内閣人事局:「国家公務員の60歳以降の働き方について」(pdf)11ページ

 

(2)管理監督者の場合

一方で、管理監督者の場合、役降りをした後の俸給の7割に加え、「管理監督職勤務上限年齢調整額」が加算されます。

この「管理監督職勤務上限年齢調整額」は、管理監督職だった職員が、2重に給与を減額されないようにするためのものです。つまり、管理監督職から降任した場合、降任によって給与が下がることになりますが、そこからまた7割水準の給与となると、2重に給与が下げられることとなります。そこで、管理監督職だった職員は、役降り後の給与の7割ではなく、役降り前に受給していた給与の7割が受給できるよう、調整する仕組みとなっています。

管理監督職勤務上限年齢調整額の計算式は、以下の図をご覧ください。

 

▶参考:管理監督職勤務上限年齢による降任等をされた職員の俸給(管理監督職勤務上限年齢調整額)

管理監督職勤務上限年齢による降任等をされた職員の俸給(管理監督職勤務上限年齢調整額)

・参照元:内閣官房内閣人事局:「国家公務員の60歳以降の働き方について」(pdf)12ページ

 

少しややこしく感じる方も多いと思いますので、実際に計算のイメージを掴んでみましょう。

 

管理監督職勤務上限年齢による降任等をされた職員の俸給(管理監督職勤務上限年齢調整額)の計算例

・参照元:内閣官房内閣人事局:「国家公務員の60歳以降の働き方について」(pdf)12ページ

 

この図は、管理監督職である課長の時代に、51万0100円を受給していた例です。

60歳の誕生日を迎え、非管理監督職である課長補佐に役降りしたことで、給与は41万0200円となりました。さらに、その後、特定日以降は、給与は7割水準となります。その場合、まず、役降り後の給与の7割(特定日俸給月額)を計算します。

 

41万200円 × 70%=①28万7100円

 

次に、役降り前の給与の7割(基礎俸給月額)を計算します。

 

51万100円×70%=②35万7100円

 

そして、「②35万7100円」から「①28万7100円」を引いた額が、「管理監督職勤務上限年齢調整額」となり、今回の例であれば、「7万円」となります。

 

②35万7100円-①28万7100円=③7万円

 

つまり、管理監督職だった職員が特定日以降に受給できる額は、以下の通りです。

 

①28万7100円+③7万円=357,100円

 

一見ややこしい計算をしているように感じますが、結局は管理監督職時代の給与の7割となります。

 

(3)諸手当について

特定日以降の諸手当については、7割水準とする手当と、7割水準としない手当に分けられます。

 

1.7割水準とする手当

7割水準とする手当は、以下のものです。

 

  • 1.地域手当
  • 2.夜勤手当
  • 3.期末・勤勉手当
  • 4.超過勤務手当
  • 5.休日給
  • 6.広域異動手当や特地勤務手当など

 

2.7割水準としない手当

一方で、以下の諸手当は7割水準の影響を受けません。

 

  • 1.扶養手当
  • 2.住居手当
  • 3.通勤手当
  • 4.単身赴任手当
  • 5.特殊勤務手当
  • 6.宿日直手当
  • 7.寒冷地手当

 

(4)賃金カーブについて

ここまでご説明した「7割措置」はあくまで「当分の間」のものであり、将来的には60歳の前後で賃金カーブを連続させるように検討・措置することが法律で求められています。そのため、将来的には、60歳前の時期について平均的な給与上昇を抑制させる方向で賃金カーブを修正されることが予想されます。

 

8,定年延長で退職金は減る?退職金の計算方法について

では、定年延長によって退職金が減ることはあるのでしょうか。

結論からいうと、定年延長によって退職金の額が減ることはありません。以下でご説明いたします。

 

(1)定年前の退職の退職事由の扱いについて

退職事由は、退職金の額を計算するのに用いられる「支給率」に影響し、自己都合退職に比べ、定年を理由に退職した場合の方が多くの退職金がもらえます。そして、定年を退職事由として、退職金を受給できるパターンは、以下の2つになります。

 

  • 1.定年退職日まで勤務して退職するパターン
  • 2.60歳以降に定年前に退職するパターン

 

「2.60歳以降に定年前に退職するパターン」については、今回の定年延長に伴い、60歳を迎えた日以降、定年前に退職した場合でも、退職事由を「定年退職」として扱うことができる措置が取られています。

 

(2)退職手当の計算方法について

退職手当の計算方法は、基本的に「1.退職時の給料月額 × 2.支給率 × 3.調整率」で求められ、退職時の給与の額が高ければ高いほど、退職手当の金額も高くなります。

しかし、60歳以降に定年退職する職員について、7割水準の額で計算すると、職員の退職手当が減ってしまうという不利益が生まれてしまいます。そこで、そのような不利益がないように、7割水準となる前と後で、分けて計算するようになっています。

そのため、「1.特定減額前俸給月額(7割水準となる前、特定日前の最も高かった俸給月額)」と「2.退職日俸給月額(7割水準が適用された、退職日の俸給月額 + 管理監督職勤務上限年齢調整額)」に、それぞれ支給率と調整率を計算した合計額が、退職金となります。

 

▶参考:退職手当の基本額の計算方法の特例(ピーク時特例)

退職手当の基本額の計算方法の特例(ピーク時特例)

 

・参照元:内閣官房内閣人事局:「国家公務員の60歳以降の働き方について」(pdf)17ページ

 

つまり、定年延長になっても退職金が減ることはなく、むしろ増えることになります。職員に不利益がないように計算される仕組みとなっています。

 

▶参考情報:定年延長で退職金はどうなるか?について詳しく説明した以下の記事でも、公務員の退職金について解説していますのであわせてご参照ください。

定年延長で退職金はどうなる?カットは可能?事例付きで解説

 

9,定年延長のメリットとデメリット

ここまで、定年延長の内容についてご説明致しました。次に、定年延長のメリット・デメリットとして考えられる点をご紹介いたします。

 

(1)定年延長のメリット

定年延長のメリットとしては、以下のものが考えられます。

 

  • 1.年金受給開始まで収入が得られることで、高齢の公務員の経済的安定を図ることができる
  • 2.優秀な人材を確保することができる
  • 3.人材不足の緩和が期待できる

 

(2)定年延長のデメリット

定年延長のデメリットとしては、以下のものがあげられます。

 

  • 1.若い世代の雇用機会が減る可能性がある
  • 2.人件費が増える
  • 3.退職金を受け取るタイミングが変わり、人生設計に影響が出る
  • 4.仕事内容は変わらないのに給与が下がることでモチベーションが下がることが懸念される

 

このように、定年延長にはデメリットもありますが、年金の受給開始まで無収入の期間がない、というメリットは、これらのデメリットを超える、重要なポイントだといえるでしょう。

 

▶参考情報:定年延長のメリットとデメリットについては、以下の記事でも詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

定年延長のメリット・デメリットとは?わかりやすい解説まとめ

 

10,再任用制度の違いについて

再任用制度とは、定年などにより一度退職した職員を、改めて採用することができる制度のことです。再任用制度には、「1.定年前再任用短時間勤務制」と「2.暫定再任用制度」の2種類があります。

簡単に言うと、「1.定年前再任用短時間勤務制」は、60歳以降の退職後から本来の定年退職日まで、「2.暫定再任用制度」は、定年退職日以降から65歳までの間で採用することができる制度です。

以下の表は、この2つの再任用制度を分かりやすく対比したものです。

 

▶参考:再任用制度の比較表

再任用制度の比較表

・参照元:内閣官房内閣人事局:「国家公務員の60歳以降の働き方について」(pdf)25ページ

 

それぞれについて詳しくご説明いたします。

 

(1)定年前再任用短時間勤務制について

定年前再任用短時間勤務制とは、60歳に達した日以降に退職した職員を、定年退職日まで短時間勤務職員として採用することができる制度です。

例えば、63歳で定年退職となる職員が、60歳を迎え定年退職日前に退職をした場合、定年前再任用制により63歳まで短時間勤務職員として採用が可能となります。

 

▶参考:定年前再任用短時間勤務制のイメージ

定年前再任用短時間勤務制のイメージ

・参照元:内閣官房内閣人事局「国家公務員の60歳以降の働き方について」(pdf)19ページ

 

1.勤務時間について

定年前再任用短時間勤務職員の勤務時間は、週15時間30分~31時間までの範囲内で定めることができ、原則として1日の勤務時間は7時間45分以内としています。また、週休日については、土日を含む2日以上と定められています。

 

▶参考:定年前再任用短時間勤務職員の勤務時間の割振り例

定年前再任用短時間勤務職員の勤務時間の割振り例

・参照元:内閣官房内閣人事局「国家公務員の60歳以降の働き方について」(pdf)20ページ

 

上記の表は、定年前再任用短時間勤務職員の働き方の例です。

このように、週休日を4日として1日の勤務時間を長くしたり、週休日を2日として、1日の勤務時間を短めに設定したりなど、多様な勤務体系を選択することができます。

 

2.退職金について

定年前再任用短時間勤務職員が退職金を受け取るタイミングは、1回目の退職時で、定年前再任用後は退職金は支給されません。なお、前述の通り、60歳以降に退職する場合、定年日前であっても、退職金の計算にあたっては、退職事由は「定年退職」として扱われます。

 

(2)暫定再任用制度について

暫定再任用制度は、定年の引上げの期間中において、定年退職後に65歳までの間で再任用できる制度です。

勤務時間は、定年前再任用短時間勤務制と同様、週15時間30分~31時間までの範囲内で定めることができ、原則として1日の勤務時間は7時間45分以内となっており、退職金も支給されません。

一方で、任期については、定年前再任用短時間勤務制では再任用されてから定年退職相当日までが任期となっていますが、暫定再任用制度の場合は、1年を超えない範囲内で任期を更新することができます。任期の更新は、職員の更新直前の任期における勤務実績を考慮したうえで、あらかじめ本人に同意を得たうえで行うことができるとしています。

この制度は、65歳まで勤務し続けられるよう設置されたものであるため、定年の引き上げが完了した令和14年4月以降、廃止となります。

 

11,海外における定年延長についての動き

最後に、世界における定年制度についてご紹介いたします。意外にも、多くの主要国で定年制はなく、定年制がある国においても、定年の引き上げが進んでいる状況です。

定年制がない国は、例えば以下の国です。

 

  • アメリカ
  • イギリス
  • オーストラリア
  • カナダ
  • イタリア
  • ロシア
  • ブラジル
    など

 

以下の表では、各国の定年と年金の受給開始年齢等を比較しています。

 

▶参考:各国の国家公務員の定年・年金制度比較表

各国の国家公務員の定年・年金制度比較表

・引用:日本経済新聞「公務員定年、欧米は撤廃・延長 日本も65歳へ上げ検討」

 

この表からも分かる通り、アメリカとイギリスは定年制はなく、イギリスでは年金の受給開始年齢の引き上げが予定されています。

一方で、ドイツ、フランス、日本については定年の引き上げがされ、ドイツと日本においては年金の受給開始年齢も引き上げられています。

また、日本は世界で最も平均寿命が長い国の1つであるにもかかわらず、この表から分かる通り年金受給額は他の国と比べて少なくなっています。こういった事情からも、日本における定年の引き上げが必要であったことが読み取れます。

 

12,公務員の定年延長に関して弁護士に相談したい自治体の方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

咲くやこの花法律事務所では、自治体の人事担当者から定年延長に関するご相談を承っています。

 

(1)定年延長に関するご相談

咲くやこの花法律事務所では、定年延長に関するご相談をお受けしています。

定年延長により、60歳以降の働き方について、本人に対して適切な説明をする必要があります。特に、給与体系や勤務時間については、本人にとってとても重要な事柄です。十分な説明ができていなかったり、間違ったことを伝えてしまうと、後に聞いていたことと違う、としてトラブルになるケースも考えられます。そういったことがないように、あらかじめ弁護士に相談し、人事担当者側に不安がない状態で、本人に情報提供ができるようにすることが大切です。

 

(2)職員とトラブルになった際のご相談

また、定年延長に関して、職員トラブルになった場合のご相談もお受けしています。早い段階でご相談いただくことで、弁護士が取れる手段が多くなり、より迅速で円満な解決につなげることができます。

 

(3)顧問契約サービス

また、咲くやこの花法律事務所では、継続的に弁護士のサポートが受けられる、自治体向けの顧問弁護士サービスを提供しております。

自治体向けの顧問弁護士サービスについては、以下をご参照ください。

 

 

(4)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

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13,まとめ

この記事では、公務員の定年延長について解説致しました。

まず、公務員の定年延長は、近年日本で問題となっている少子高齢化の影響のもと、年金の受給開始年齢が引き上げられたことに伴って、必要になったものです。定年延長により、年金の受給開始までの間に無収入の期間がなくなることで、高齢の公務員の経済的な安定が期待できます。

この定年の引き上げは、令和13年までに段階的に行われ、2年毎に1歳引き上げられることとなります。そして、60歳以降から定年までは、給与が今までの7割水準となりますが、退職金は7割水準となる前の部分と7割水準になった後の部分を分けて計算されるため、職員に不利益がないような仕組みとなっています。また、60歳以降であれば、定年前であっても退職事由を「定年」とすることができ、退職後は、定年前再任用制度によって短時間勤務者として採用されることも可能です。

咲くやこの花法律事務所でも、定年延長についての対応でお困りの地方自治体からのご相談をお受けしていますので、ご相談ください。

 

記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年3月26日

 

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
    池内 康裕 弁護士
    池内 康裕(いけうち やすひろ)
    大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
    片山 琢也 弁護士
    片山 琢也(かたやま たくや)
    大阪弁護士会/京都大学法学部
    堀野 健一 弁護士
    堀野 健一(ほりの けんいち)
    大阪弁護士会/大阪大学
    所属弁護士のご紹介

    書籍出版情報


    労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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