こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士の西川暢春です。
特定継続的役務のルールについてわからないことがあり悩んでいませんか?
特定継続的役務に該当するサービスを提供している場合、書面の記載事項など、法律に定めるルールを守らなければ、特定商取引法違反として罰則が科されます。
また、営業停止処分など重大なペナルティを科される危険もあります。
そこで、今回は、どのような契約が特定継続的役務に該当するかをご説明したうえで、特定継続的役務提供にあたる場合に必要な企業側の対応をご紹介します。
それでは見ていきましょう。
エステや美容医療、語学教室などのサービスでは特定継続的役務提供のルールを確実に守る体制を整えることが事業を運営するうえでの必須事項になります。自社がルールを守れているかどうかについては必ず弁護士の事前チェックを受けておいてください。咲くやこの花法律事務所へのご相談の流れは以下をご覧ください。
▼【関連情報】特定継続的役務提供など契約書の作り方については、こちらの関連情報も合わせてご覧下さい。
・契約書作成で必ずおさえておくべき6つのポイント【ひな形集付き】
▼特定継続的役務提供と契約書に精通している弁護士に今スグ相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
今回の記事で書かれている要点(目次)
1,特定継続的役務提供とは?
特定継続的役務提供とは、エステや学習塾など一般消費者に対して継続的なサービスを提供する金額5万円以上の契約について、事業者にクーリング・オフなどに応じる義務を課す、特定商取引法の規制です。
2,特定継続的役務提供にあたるのは7種類の契約
現在、特定継続的役務提供のルールが適用されるのは、以下の7種類の契約です。
下の表に記載した期間を超える契約で、かつ、金額が5万円を超えるという両方の条件にあてはまるもののみが、特定継続的役務提供にあたります。
●特定継続的役務提供にあたる7種類の契約一覧
(注)「家庭教師」および「学習塾」には、小学校または幼稚園に入学するためのいわゆる「お受験」対策は含まれません。
(注)「学習塾」には、浪人生のみを対象にした役務(コース)は対象になりません(高校生と浪人生が両方含まれるコースは全体として対象になります)。
ただし、事業者と消費者の契約ではなく、事業者間の契約である場合や、事業者とその従業員の間の契約である場合は、特定継続的役務提供のルールの適用は除外されます。
3,特定継続的役務提供にあたる場合に必要な企業側の対応
特定継続的役務提供にあたる場合に企業が守らなければならない重要なルールが4つあります。
以下で順番に見ていきましょう。
(1)契約後8日間はクーリング・オフに応じる義務がある
まず、特定継続的役務提供にあたる場合、契約後8日間は、消費者から通知があれば、クーリング・オフつまり契約の取り消しに応じる義務があります。
クーリング・オフの通知があった場合、企業は以下の通り対応することが義務付けられています。
1,クーリング・オフの通知を受けた場合の企業の対応
- 既にエステの1回目を終えていたり、学習塾の講義を受けていたとしても、その分の料金は請求できません。もし、料金を受け取っている場合はすぐに返すことが必要です。
- 消費者に対してキャンセル料その他の金銭を請求することはできません。
- サービスに関連して販売した関連商品(エステの場合は美顔器や脱毛器など、学習塾の場合は書籍や教材類)がある場合、関連商品についても、代金を請求できません。もし、代金を受け取っている場合はすぐに返すことが必要です。また、関連商品の返還を受けることは可能ですが、その場合も返還に必要な費用は企業側が負担することが必要です。ただし、健康食品や化粧品など開封すると商品価値がほとんどなくなる消耗品について、すでに開封して使用している場合は、このルールは適用されず、代金の請求が可能です。
つまり、すでに開封して使用した消耗品を除いて、代金を一切受け取ることはできず、もらっている代金があればすぐに返還しなければならないというのが、クーリング・オフの通知を受けた場合のルールです。
(2)契約後8日過ぎても中途解約に応じる義務がある
次に、契約後8日が過ぎた後も中途解約に応じる義務があります。
ただし、8日が過ぎた後はクーリング・オフではないため、既にサービスを提供した分の料金はもらうことができます。また、キャンセル料(中途解約の場合の違約金)を請求することは可能です。
ただし、キャンセル料は以下の範囲内で契約書に記載していた金額が上限となります。
●キャンセル料の上限について
※上記において「契約残額」とは、契約したサービス代金の総額から、すでに提供したサービス分の対価を差し引いた残額を指します。
なお、キャンセル料の設定については以下の記事でも解説していますので合わせてご参照ください。
(3)概要書面、契約書面の作成が義務付けられる
特定継続的役務提供のサービスを提供するためには、契約の締結前に「概要書面」を消費者に交付し、契約の締結後に「契約書面」を消費者に交付することが企業に義務付けられています。
このように2つの書類を作成することが必須です。
しかも、それぞれの書面については法律で記載事項が細かく定められており、法律で決まっている記載事項をすべて網羅した書面を渡すことが必要です。
各書面の具体的な記載事項は以下の通りです。
なお、以下で「役務」とあるのは、その契約で事業者が提供するサービスのことを指しています。
1,概要書面の記載事項
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
- 役務の内容
- 購入が必要な商品がある場合にはその商品名、種類、数量
- 役務の対価そのほか支払わなければならない金銭の概算額
- 上記の金銭の支払い時期、方法
- 役務の提供期間
- クーリング・オフに関する事項
- 中途解約に関する事項
- 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
- 前受金の保全に関する事項
- 特約があるときには、その内容
2,契約書面の記載事項
- 役務の内容、購入が必要な商品がある場合にはその商品名
- 役務の対価そのほか支払わなければならない金銭の額
- 上記の金銭の支払い時期、方法
- 役務の提供期間
- クーリング・オフに関する事項
- 中途解約に関する事項
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
- 契約の締結を担当した者の氏名
- 契約の締結の年月日
- 購入が必要な商品がある場合には、その種類、数量
- 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
- 前受金の保全措置の有無、その内容
- 購入が必要な商品がある場合には、その商品を販売する業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
- 特約があるときには、その内容
(4)決算書の閲覧に応じる必要がある
最後に消費者にサービスを提供する前に5万円を超える金額を前払いさせる場合は、消費者から決算書を閲覧したいという要望があれば、企業は応じなければならず、応じることができるように決算書を用意しておくことが義務付けられています。
以上、「契約後8日間はクーリング・オフに応じる義務がある」、「契約後8日過ぎても中途解約に応じる義務がある」、「概要書面、契約書面の作成が義務付けられる」、「決算書の閲覧に応じる必要がある」という4点が、特定継続的役務提供にあたる場合に必要な企業側の対応になります。
▼特定継続的役務提供と契約書に精通している弁護士に今スグ相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
4,ルールを守らない場合の罰則・制裁
ここまでご説明してきた特定継続的役務提供のルールを守らない場合に科される罰則・制裁は以下の通りです。
(1)科される罰則・制裁
- 営業停止命令や業務禁止命令の対象となります。
- 刑罰の対象となる場合があります。例えば、概要書面、契約書面を渡さなかった場合、100万円以下の罰金が科されます。
- クーリング・オフができる8日間の期間ですが、これは法律上必要な記載事項をすべて網羅した概要書面、契約書面を消費者に渡した時から8日間です。そのため、概要書面、契約書面を渡していなかったり、あるいは渡していても不備がある場合、正しい書面を渡してから8日がたつまではいつでもクーリング・オフができることになってしまいます。
5,咲くやこの花法律事務所なら「特定継続的役務提供についてこんなサポートができます。」
咲くやこの花法律事務所では、エステや美容医療、学習塾などの特定継続的役務提供に関するご相談を企業の経営者、担当者の方から承っています。
これらの事業に関連して消費者からクレームを受けた場合、適切な対応をしなければ、営業停止の処分を受けたり、逮捕されて刑事罰を科される危険があります。
また、この記事でご説明した概要書面、契約書面の作成ももちろん重要です。
咲くやこの花法律事務所では、エステや美容医療、学習塾などの特定継続的役務提供に関する顧問先も多く、各弁護士がこれらの業種のクレーム対応や契約書の作成に精通しています。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問先や顧問弁護士に関する情報は以下をご覧ください。
契約書の作成やクレーム対応、その他特定商取引法への対応でお困りの場合はぜひご相談ください。
咲くやこの花法律事務所の企業法務に強い弁護士による弁護士費用例
- 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
- 契約書面、概要書面の作成費用 各10万円程度~
- 弁護士によるクレーム対応の代行 10万円程度~
- 営業停止処分や刑事裁判への対応 15万円程度~
6,特定継続的役務提供と契約書について「咲くやこの花法律事務所」に問い合わせる方法
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記事作成弁護士:西川 暢春
記事作成日:2019年05月08日