芸能事務所の顧問弁護士の選び方がわからずに困っていませんか?
芸能事務所では、日頃から弁護士に相談して、出演先やタレントとの契約内容を整備し、また、出演先やタレントとの間でトラブルが起きたときは、早い段階で弁護士に相談して適切な対処をすることが重要です。また、タレントに対する誹謗中傷や名誉毀損、タレントの私生活上のトラブルについての対応が必要になることもあるでしょう。
この記事では、芸能事務所、芸能プロダクションの顧問弁護士の役割や選び方についてご説明いたします。
「知り合いの紹介だから」、あるいは「安いから」といった理由で、適任ではない弁護士と契約してしまうと、顧問契約をしていても、実情に即した具体的な助言を受けられなかったり、発生したトラブルを解決できなかったりすることになります。
契約後に、適任ではないとわかって後悔することをなくすために確認すべき点についてもご紹介します。
この記事を最後まで読んでいただくことによって、芸能事務所をトラブルなく運営していくためにはどのような点を顧問弁護士に依頼すべきなのかということや、顧問料の目安、顧問弁護士の選び方について具体的に理解することができます。
それでは見ていきましょう。
▶参考情報:顧問弁護士の必要性などの基礎知識については、以下の記事で解説していますので、こちらを参考にご覧ください。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,芸能事務所における顧問弁護士の役割
芸能事務所においては、出演先や所属タレントとのトラブル、また場合によっては週刊誌報道やネット上の誹謗中傷によるトラブルが発生します。
これらのトラブルの際に顧問弁護士にすぐに連絡を取り、初動についてアドバイスを受け、場合によっては顧問弁護士に対応を委任することが必要です。
また、トラブルを防止するためには、日頃から顧問弁護士に相談しながら、出演先との契約関係や所属タレントとの契約関係の整備、契約書のリーガルチェックに取り組むことが重要です。
以下で顧問弁護士の役割を見ていきましょう。
(1)出演先との契約関係の整備や契約書のリーガルチェック
出演先との契約を整備することも、芸能事務所の顧問弁護士の役割の1つです。
例えば所属タレントが広告に出演する際の広告出演契約では、以下の項目を定めることが基本的な内容になります。
- 出演媒体
- 広告物の使用期間
- 広告物の使用地域
- 広告物の使用方法
- 出演料
- 撮影等に要する経費の負担についての取り決め
- 出演のスケジュール
- 出演が不能になった場合の処理
- 契約の解除事由
- 所属タレントが移籍する際の処理
さらに、所属タレントの問題行動など、広告主のイメージを悪化させるような言動に対して、芸能事務所がどこまで責任を負うのかといった問題についても契約書で定めておくことが必要です。
あわせて、広告主に対して、起用タレントのイメージを毀損しないこと、起用タレントのイメージが毀損されるような事態が発生したときは、契約の解除事由になることも定める必要があります。
また、出演先から契約書を提示された時は、顧問弁護士にリーガルチェックを依頼し、自社にとって不利益な内容や実現できない契約条項が含まれていないかどうかを、確認することが必要です。契約書のリーガルチェックも顧問弁護士の重要な役割です。
契約書の作成やリーガルチェックについては以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
(2)所属タレントとの契約関係の整備
芸能事務所と所属タレントとの契約関係を法的に問題のない適切なものに整備していくことや、芸能事務所の運営に支障がない内容に整備していくことも、芸能事務所の顧問弁護士の役割です。
特に重要になるのは以下の点です。
1,労働者かどうかの判断
所属タレントとの契約については、所属タレントが労働者であり雇用契約なのか、それとも労働者ではなく個人事業主なのかが、まず重要になります。
労働者であり雇用契約であれば、以下のルールに従う必要があります。
●雇用契約では退職の自由が保障されています。契約に期間を定めた場合でも、タレントは1年以上経過した後は契約期間中であってもいつでも退職することができます(労働基準法附則第137条)。
そのため、タレントが1年経過後に契約を解除し、その後の業務に対応しなかった場合も、芸能事務所からタレントに対する損害賠償等の請求はできません。
●就業が1日8時間、週40時間を超える場合は割増賃金を支払う必要があります(労働基準法第37条)。
●事務所側からの契約の解除は、「解雇」という扱いになり、合理的な理由がない限り、無効となります(労働契約法第16条)。
そのため、事務所側からの契約解除は難しいことを踏まえて対応する必要があります。
●最低賃金のルールを遵守する必要があります。
地域別の最低賃金の情報は、以下の厚生労働省のホームページを参考にご覧ください。
所属タレントが労働者なのかどうかという点を正確に判断したうえで、タレントの待遇を決めることが重要です。
労働者かどうかについて、裁判所は、契約書の表題で判断するのではなく、芸能事務所と所属タレントとの関係の実態によって判断しています。そのため、マネジメント契約、エージェント契約などといった名称を使用した場合でも労働者と判断されることがあります。
芸能事務所とタレントの関係については、タレントは労働者であるとした裁判例(東京地方裁判所判決 平成28年7月7日、東京地方裁判所判決 平成28年3月31日等)が多く存在する一方で、労働者ではないと判断した裁判例(東京地方裁判所判決 平成28年9月2日等)も存在します。
労働者ではないと扱う場合は、それにふさわしい関係を実質的に作っていくことが必要です。
2,所属タレントの問題行動に対する対応
所属タレントとの契約の中で、無断営業(闇営業)の禁止や、私生活上の留意事項、その他所属タレントの問題行動について、適切に規律することも必要です。
なお、所属タレントにファンとの交際や異性との交際を禁止する契約条項については、タレントの自己決定権に対する著しい制約であるとして違反したタレントに対する損害賠償請求を認めなかったもの(東京地方裁判所判決 平成28年1月18日)と、交際禁止条項の効力を認めて違反したタレントへの損害賠償請求を認めたもの(東京地方裁判所判決 平成27年9月18日等)にわかれています。
3,移籍の場合の取り決め
所属タレントの移籍を想定して、移籍後の芸名の使用の可否や、芸能事務所において開設、運営している「X(旧:Twitter)」や「Instagram」などのアカウントの取扱いを契約書で定めておくことも重要です。
所属タレントのと契約については、一度ひながたを作ったらそれをずっと使えばよいというものではありません。
ひながたを作った後も、日々のマネジメントで出てくる課題を顧問弁護士に伝え、それを踏まえて、契約書の内容を継続的に改善し、磨き上げていくことが重要です。
(3)週刊誌等による名誉毀損やプライバシー侵害への対応
週刊誌等により、所属タレントの名誉を毀損された際の対応も顧問弁護士の役割の1つです。
民法上、名誉毀損があった場合は、損害賠償や謝罪広告等を出版社に求めていくことが可能です(民法第723条)。
名誉毀損に当たるかどうかの判断にあたっては、まず、報道内容が、証拠などによって存在を確定することができる「特定の事実」を報道したものなのか、それとも、「意見や論評」なのかという点が問題になります。
特定の事実の報道については、それが、公共の利害に関する事実に関わり、かつ、報道の目的が専ら公益を図ることにあり、報道された事実が重要な部分について真実であることの証明があったときは、違法ではないという判断基準が採用されています(最高裁判所判決 昭和41年6月23日)。
これに対し、意見や論評については、それが公共の利害に関する事実に関わり、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあり、意見や論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見や論評としての域を逸脱したものでない限り、違法ではないという判断基準が採用されています(最高裁判所判決 昭和62年4月24日)。
一方、タレントのプライバシー侵害が問題になることもあります。
プライバシー侵害については、「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」が侵害されたか否かという点を判断していくことになります(宴のあと事件 東京地方裁判所判決 昭和39年9月28日)。
このように名誉毀損やプライバシー侵害の判断基準は複雑なものですので、まずは、顧問弁護士に相談して、名誉毀損やプライバシー侵害に該当するかどうかを正確に判断したうえで、適切な対応をすることが必要です。
(4)インターネット上での誹謗中傷への対応
「X(旧:Twitter)」や「YouTube」で行われる所属タレントに対する誹謗中傷への対応を顧問弁護士に依頼することが必要になることもあるでしょう。
中傷行為を行った者の氏名や住所が特定できないときは、発信者情報開示請求という手続により、氏名や住所を特定し、そのうえで、損害賠償請求することが可能です。
発信者情報開示請求については、以下で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
(5)知的財産権の処理
知的財産関係についても顧問弁護士への相談が必要になることがあります。
まず、タレントによる創作活動については、実演家としての権利(著作隣接権や実演家人格権)が発生します。また、芸名やグループ名については、商標権を取得することが可能であり、実際にもグループ名や芸名が多数、商標登録されています。
商標登録することにより、芸名やグループ名を芸能事務所が独占的に使用し、他者に使用されないようにすることが可能です。
芸能事務所とタレントの契約関係、芸能事務所と出演先の契約関係を整備する場面でも、これれらの知的財産の処理を常に意識することが必要です。
なお、商標登録については以下で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
(6)まとめ
このように、芸能事務所や芸能プロダクションの顧問弁護士には、以下の役割があります。
- 出演先との契約関係の整備
- 所属タレントとの契約関係の整備
- 週刊誌等による名誉毀損やプライバシー侵害への対応
- インターネット上での誹謗中傷への対応
- 知的財産権の処理
2,顧問弁護士の探し方
では、顧問弁護士を探す場面でどのように弁護士を選べばよいのでしょうか?
以下で注意点や具体的な探し方をご説明します。
(1)弁護士の専門分野や経験を確認する
弁護士といっても専門分野は様々です。
離婚や相続などの個人向けの法務を中心に扱う弁護士から、中小企業向け法務を中心に扱う弁護士、大企業向け法務を中心に扱う弁護士などがあります。全ての分野に精通した弁護士というのはいないと考えるのが現実的でしょう。
その中で、前述の通り、芸能事務所の顧問弁護士としては、契約書のリーガルチェックや、労働法関連、名誉毀損、誹謗中傷、知的財産の処理などに精通していることが望ましく、中小企業向け法務を中心に扱う弁護士に依頼することが適切であることが通常です。
中小企業向けの弁護士については、以下で詳しくおすすめの探し方なども解説していますのであわせてご参照ください。
また、契約内容や知的財産の処理については芸能事務所特有の慣行も理解した弁護士が望ましく、その意味では、芸能事務所の顧問弁護士の経験がある弁護士が最適といえます。
「今すぐ相談したい項目」があって顧問弁護士を選ぶときは、とりあえず目先の相談事項に対応してくれる弁護士に依頼するという視点になりがちです。
ただ、長期的にみれば、芸能事務所の顧問弁護士への相談事項は、契約書関連から知的財産の処理まで多岐にわたりますので、これらの相談に幅広く対応してくれる弁護士に依頼するという視点も重要になることに注意してください。
(2)インターネットで探すことが近道であることが多い
弁護士の探し方としては、自社の社労士や税理士、あるいは経営者仲間に紹介してもらうという方法と、インターネットで探すという方法のどちらかが多いのではないかと思います。
ただ、紹介で探す方法については、芸能事務所で起きる問題を業務として取り扱っている弁護士は、弁護士全体から見ればわずかであるため、紹介してもらった弁護士が適任者であるという可能性はかなり低いということが問題点としてあげられます。
また、紹介を受けると、紹介者の手前、あまり適任でないと思っても、断りづらいということも考えられます。
そう考えると、芸能事務所で起きる問題を相談する顧問弁護士を探す場面では、インターネットで探すことが一番近道だといえるでしょう。
(3)担当弁護士に直接確かめるべきこと
顧問弁護士を依頼する弁護士の候補が決まったら、弁護士と面談の機会を予約しましょう。
面談の際に、自社の取引内容や現在の課題や懸念点、今後予想される相談事項などを弁護士に伝えて、そのような相談に対応可能かどうかを確認することが必要です。
また、自社が相談を予定している分野について、その弁護士にどの程度、取扱経験があるかも尋ねるのがよいでしょう。
3,芸能事務所・芸能プロダクションに最適な顧問弁護士契約プラン
多くの法律事務所が複数の顧問契約のプランを設定しており、プランによって、対応範囲や顧問料が異なります。そのため、弁護士を選んだ後に自社に最適な顧問契約のプランを選ぶことも重要です。
顧問契約のプラン内容や顧問料は、弁護士や法律事務所によって大きく違ってきます。顧問契約のプランを選ぶ際は、顧問料だけでなく、その顧問料でどの範囲まで対応してくれるのかをしっかり確認することが必要です。
筆者が代表弁護士をつとめる咲くやこの花法律事務所では、顧問先からの相談の頻度に応じて、以下の顧問契約プランを提供しています。
(1)ミニマムプラン:月額顧問料3万円
月1回~2回程度を目安に弁護士への相談が可能なプランです。土日や夜間の相談には対応しておりません。
(2)スタンダードプラン:月額顧問料5万円
週1回程度を目安に弁護士への相談が可能なプランです。土日や夜間の相談にも対応します。
(3)しっかりサポートプラン:月額顧問料10万円
週2回程度を目安に弁護士への相談が可能なプランです。土日や夜間の相談にも対応します。
(4)プレミアムプラン:月額顧問料15万円
週3回以上のご相談をお考えの方向けのプランです。土日や夜間の相談にも対応します。
咲くやこの花法律事務所の顧問契約プランの詳細は以下をご参照ください。
また、顧問弁護士の費用の相場については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
4,咲くやこの花法律事務所に顧問弁護士を依頼いただく方法
最後に、咲くやこの花法律事務所に顧問弁護士をご依頼いただく方法についてもご紹介しておきたいと思います。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについて詳しく解説した動画も公開中です。あわせてご参照くださ。
咲くやこの花法律事務所では、顧問弁護士契約の申込み方法として以下の3つの方法を用意しています。
- 担当弁護士から電話で顧問契約の内容をご説明する方法
- 担当弁護士とZoomでの面談を行う方法
- 事務所にお越しいただいて担当弁護士に会っていただく方法
いずれの方法も、実際に弁護士と話をして相性を確かめてから、顧問弁護士契約をしていただくことが可能です。また、顧問弁護士契約ご検討のための面談や説明については料金もかかりません。
具体的には以下の通りです。
(1)事務所にお越しいただいて担当弁護士に会っていただく方法
事務所にお電話またはメールでお問い合わせいただきましたら、担当弁護士と会っていただく日時を設定します。面談は平日の午前9時半から午後7時までの間でご都合のよい時間を選んでいただくことができます。
事務所の場所は大阪市営地下鉄四つ橋線あるいは中央線の本町駅から徒歩1分です。以下のページに事務所までの地図や相談室の写真を掲載していますのでご参照ください。
面談いただいた担当弁護士が貴社の取引先や取引内容、事業内容、現在の問題点やお困りごと、主なご相談事項などをヒアリングしたうえで最適な顧問契約のプランをご提案します。また、顧問契約をして整備を進めていくべきポイントについてもお話しします。
お越しいただいた当日に顧問契約書をお渡ししますので、ご検討いただき、ご返送いただければ顧問弁護士サービスをスタートすることができます。
(2)担当弁護士から電話で顧問契約の内容をご説明する方法
咲くやこの花法律事務所では、遠方でお越しいただけない芸能事務所、芸能プロダクションの方のために電話での顧問契約のご説明も行っております。全国からのご要望に対応しています。
事務所にお電話またはメールでお問い合わせいただきましたら、担当弁護士から電話でご説明させていただく日時を設定します。平日の午前9時半から午後7時までの間でご都合のよい時間を選んでいただくことができます。
担当弁護士がお電話で貴社の取引先や取引内容、事業内容、現在の問題点やお困りごと、主なご相談事項などをヒアリングしたうえで最適な顧問契約のプランをご提案します。また、顧問契約をして整備を進めていくべきポイントについてもお話しします。
お電話でのご説明の後に貴社に顧問契約書を郵送しますので、これをご返送いただければ来所いただかなくても、顧問弁護士サービスをスタートすることができます。
(3)担当弁護士とZoomやMicrosoft Teams等のWeb会議ツールでの面談を行う方法
咲くやこの花法律事務所では、ZoomやMicrosoft Teams等のWeb会議ツールでの面談にも対応しております。
ZoomやMicrosoft Teams等のWeb会議ツールでの面談をご希望の場合は、お問い合わせいただいた際にその旨をお伝えください。担当弁護士の予定と貴社のご予定を調整し、面談日時を設定いたします。
貴社のメールアドレスをおたずねしたうえで、ZoomやMicrosoft Teams等のWeb会議ツールでのミーティングを設定し、ミーティングに必要なURLリンクをお送りします。
面談では、担当弁護士がお電話で貴社の取引先や取引内容、事業内容、現在の問題点やお困りごと、主なご相談事項などをヒアリングしたうえで最適な顧問契約のプランをご提案します。また、顧問契約をして整備を進めていくべきポイントについてもお話しします。
ご説明の後に貴社に顧問契約書を郵送しますので、これをご返送いただければ来所いただかなくても、顧問弁護士サービスをスタートすることができます。
5,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士と無料面談の予約方法
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7,まとめ
今回は、まず、芸能事務所や芸能プロダクションの顧問弁護士の役割として以下の点をご説明しました。そのうえで、芸能事務所や芸能プロダクションにとって最適な顧問弁護士の選び方や顧問契約のプランの選び方についてもご説明しています。
この記事がお役に立てば幸いです。
記事更新日:2024年9月7日
記事作成弁護士:西川 暢春