医療費未払い問題に悩んでおられませんか?
未払い問題は、担当者にとってもストレスのたまる問題です。病院としてきちんとした解決手順を用意しておくことが必要です。
今回は督促状の発送による回収方法や裁判手続きの上手な利用方法などの医療費未払い対策について、病院の顧問弁護士もつとめる筆者がご説明します。
▶【関連動画】西川弁護士が「債権回収の重要ポイントを弁護士が解説【売掛金の入金がない時どうする?】」について詳しく解説中!
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,医療費未払いが発生したらすぐに督促状を送る
まず、医療費未払いが発生したらできるだけ日があかないうちに督促状を送ることが大原則です。
これまでご相談をお受けした医療機関のケースを見ると、支払いが遅れてもなんとか話し合いで解決しようとして督促状の送付が遅れていることが多いように思います。
しかし、話し合いは督促状を送った後でも可能です。
例えば、「口頭で督促しても10日以上払わない場合や10日以上連絡がつかない場合は督促状を送る」などといったルールを決めて、遅れずに督促状を送る対応をしていくことが必要です。
(1)督促状の送り方
督促状を「内容証明郵便」で送ることをすすめる弁護士も多いですが、むしろ「普通郵便」で送ったほうが良いケースも多いです。
普通郵便で送るメリットとしては以下の点があります。
●内容証明よりも安価
普通郵便なら82円で送れます。内容証明は最低でも1,252円かかります。
●発送が簡単
普通郵便なら近くのポストに投函するだけで送れます。内容証明は電子内容証明郵便の制度を導入していない限り、郵便局にいかなければ発送できません。
未払い医療費の1つ1つの金額が小さい場合は、発送に費用や手間をかけるべきではなく、普通郵便による発送がおすすめです。
督促状は最初は病院から送るのがよいです。ただし、1回目の督促状で支払いをしない場合は、次の督促状は弁護士の名前で送ることが効果的です。弁護士の名前で送付することで、医療費を未払いで済ませることはできないことを患者に理解させることができます。
病院の顧問弁護士の名前で発送すれば、支払を促す効果は普通郵便でも十分あるといえるでしょう。
2,督促しても支払わない場合は裁判手続きで回収する
督促しても支払いをしないときは、裁判手続きで回収する方法があります。
ただ、裁判手続きについてもできるだけ費用や手間をかけない方法で実行する仕組みを考える必要があります。
主な手段としては、「支払督促制度」と「訴訟手続き」があります。
以下で順番に見ていきましょう。
(1)支払督促で医療費を回収する
支払督促は、裁判所を通じた法的な回収手段です。
▶参考情報:支払督促について詳しくは以下の記事で詳しくご覧ください。
通常の訴訟よりも簡単な手続きで裁判所から債務者(患者)に対して書面で支払いを督促してもらうことができます。支払督促は、基本的に裁判所への出廷をする必要はなく、そのため、普通の裁判よりも手間がかかりません。また、支払督促に必要な実費の最低額は合計1,716円です。
請求額が10万円を超えると以下の表の通り費用が増えていきますが、費用面でも医療費未払いの回収手段として十分選択肢に入ると思います。
支払督促にかかる費用例
請求する医療費の額 | 支払督促にかかる実費 |
10万円まで | 1,716円 |
10万円を超えて20万円まで | 2,216円 |
20万円を超えて30万円まで | 2,716円 |
30万円を超えて40万円まで | 3,216円 |
40万円を超えて50万円まで | 3,716円 |
50万円を超えて60万円まで | 4,216円 |
60万円を超えて70万円まで | 4,716円 |
70万円を超えて80万円まで | 5,216円 |
80万円を超えて90万円まで | 5,716円 |
90万円を超えて100万円まで | 6,216円 |
(2)訴訟手続きで医療費を回収する
支払督促ではなく、訴訟手続きにより、医療費を回収する方法もあります。
訴訟による医療費の回収方法については、以下の記事で民事訴訟による債権回収のメリットやデメリット、具体的な手続の流れについてを解説していますので参考にご覧ください。
訴訟手続きは、裁判所への出廷が必要になる点がデメリットです。
しかし、複数の未払い患者がいる場合に同時に複数名に対して訴訟を起こすことで、効率的な回収を実現できるという側面もあります。
また、合計で60万円以下の請求に「少額訴訟」という制度を利用することにより、通常の訴訟より、手間をかけずに判決を得ることが可能な場合もあります。少額訴訟については、以下の記事でメリットやデメリットなどについて解説していますので参考にご覧ください。
複数の未払い患者がいる場合は、訴訟手続きも検討の余地があるといえるでしょう。
3,医療費未払いでも診療拒否はできない
医師は応召義務の観点から、医療費未払いでも診療拒否はできません。厚生労働省の昭和24年9月10日の通達でも、「医業報酬が不払いであっても直ちにこれを理由として診療を拒むことはできない。」とされています。
応召義務に違反したと判断されると、法律上は医師免許の取消または停止の理由になる可能性もゼロではありませんので、注意する必要があります(医師法第7条)。
▶参考情報:応召義務について詳しい解説は以下の記事をご覧下さい。
4,入院保証金制度の導入や連帯保証人制度の利用も有効
死亡のリスクがある患者や外国人など、医療費未払いのリスクが高いと思われる患者については事前に医療費未払いの対策をしておくことが必要です。
仮に、患者が亡くなった場合、法律上は相続人に請求できますが、相続人が相続放棄をすると法的にも請求ができなくなることに注意する必要があります。また、外国人で未払いのまま母国に帰国してしまった場合も回収は難しいのが現実です。
これらの点を踏まえてケースごとに適切な対策をしておくことが必要です。主な対策方法としては以下のような選択肢があります。
(1)入院保証金制度
入院保証金をあらかじめ預かることは、未払い医療費対策の有効な手段です。
入院保証金については、「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」(最終改正 平成20年9月30日 保医発第0930007号)という厚生労働省の通達があります。
その中で、「医療機関は、患者側への十分な情報提供、同意の確認や内容、金額、精算方法等の明示などの適正な手続を確保すること。」とされています。そのため、これらの点をきっちりクリアした書面を作成し、患者に説明し、捺印をもらうことが必要です。
(2)連帯保証人制度
入院で医療費が高額になることが見込まれるときは、連帯保証人を付けることを患者に依頼することも有効な対策の1つです。
連帯保証人をつけるときは、資力や収入がある人に連帯保証人になってもらうことが重要です。連帯保証人をつけていれば、仮に患者が亡くなった時であっても、相続放棄されて医療費を誰にも請求することができなくなるといったことを防ぐことができます。
なお、連帯保証人制度については、2020年4月の民法改正で重要な改正があります。民法改正の内容については以下をご参照ください。
(3)クレジットカードの利用
クレジットカード番号を患者に登録してもらい、万が一未払いが生じた場合はカードで決済できるようにしておくことも有効な方法の1つです。
ただし、患者が亡くなってしまった場合はカードは使えません。また、いざ決済しようとしたときに限度額を超えていて決済できないということにならないように、クレジットカードの利用限度額に注意する必要があります。
5,訪日外国人の医療費未払い問題対策について
訪日外国人については、日本人よりも医療費未払いのリスクが高いことが統計上明らかになっています。
訪日外国人については母国に帰ってしまうと連絡も取りにくく、また、督促状や裁判制度による請求も難しくなってしまいます。そのため、以下の点に注意してできる限り未払いを発生させない対策が必要になります。
- パスポートをコピーし、身元を確実に把握する
- 医療費の金額をできる限り早い段階で患者やその同伴者に説明し、支払方法をどうするかについて確認する
- クレジットカード番号を患者または患者の同伴者に登録してもらい、クレジットカードでの決済ができるようにしておく
- 入院保証金を預かり、退院時に精算する
- 海外旅行保険への加入を確認する。もし、加入している場合は、患者が病院にいるうちに保険会社に連絡をとらせて、保険会社から確実に支払いがされるかどうかを確認する。
これらの対策を複合的に組み合わせて、未払い問題の発生のリスクを減らしていくことが必要です。
6,医療費の時効について
現在の民法(2020年4月以降)では、医療費の時効期間は5年です(民法第170条1号)。治療から5年が経過するまでに回収できないときは「時効中断措置」をとらなければ時効にかかってしまいます。(※民法改正前の2020年4月以前は、医療費の時効期間は3年でした。)
「時効中断措置」としては主に以下のものがあります。
- 患者に対して訴訟あるいは支払督促を起こす
- 患者に支払義務を認める書面を書かせる
- 患者に未払い医療費の一部を支払ってもらう
これらのいずれかの時効中断措置をとれば、それまでに経過した時効期間をリセットすることができます。なお、よく誤解がある点ですが、内容証明郵便で医療費を請求しただけでは時効中断にはなりません。
内容証明郵便による請求は、「内容証明郵便が届いた後6か月間がたつまでは時効にかからない」という効果があるだけです。その6か月間に訴訟を起こすなど、上記の時効中断措置のどれかをとらなければ最終的には時効になってしまいますので注意してください。
ただし、医療費の未払いは、時間がたてばたつほど回収が難しくなります。時効が5年だからといって安心せずに、未払いが発生したら早急に督促状の送付や支払督促など手段をとる必要があります。
▶参考情報:医療費の未払いなど債権回収の時効については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
7,医療費未払い問題に関して弁護士に相談したい方はこちら
最後に、咲くやこの花法律事務所における医療費未払い問題に関するサポート内容をご紹介したいと思います。
咲くやこの花法律事務所のサポート内容は以下の通りです。
- (1)医療費回収方法に関するご相談
- (2)医療費回収のための督促状の発送代行
- (3)医療費回収のための支払督促・訴訟
- (4)入院保証金制度や連帯保証制度利用のための書面作成
- (5)医療機関向け顧問契約
以下で順番にご説明します。
(1)医療費回収方法に関するご相談
医療費の回収で一番重要なことは、支払が遅れたときにすぐに対策をうつことです。治療してから時間がたてばたつほど、回収の可能性が低くなっていくことが現実です。
そして、回収に向けてアクションを起こすためには、早い段階で弁護士に相談することが重要な第一歩になります。咲くやこの花法律事務所にご相談いただければ、債権回収に精通した弁護士が、債権の額や、未払いになっている事情に応じて適切な対策や回収方法をご提案し、迅速に対応いたします。
医療費の回収でお悩みの場合は早めにご相談ください。
咲くやこの花法律事務所の債権回収に強い弁護士による弁護士費用例
●初回相談料:30分5000円+税
(2)督促状の発送代行
医療費の支払いが遅れている患者について、話をしても解決できる見込みが立たないときは、早めに督促状を発送することが必要です。この記事でもご説明したとおり、病院から督促状を送っても効果がないときは、弁護士に依頼して弁護士名で督促状を送付することが効果的です。
咲くやこの花法律事務所では、顧問契約をしていただいている病院やクリニックについては、成功報酬制で督促状の発送を代行しています。未払い医療費回収にお困りの方はぜひご依頼ください。
咲くやこの花法律事務所の債権回収に強い弁護士による弁護士費用例
●初回相談料:30分5000円+税
●督促状の発送代行:入金額の25%程度+税(成功報酬制は顧問先のみ)
(3)医療費回収のための支払督促、訴訟
督促状を送っても効果がない場合は、支払督促や訴訟の制度を利用することが効果的です。支払督促や訴訟は裁判所を通じた手続となりますので、弁護士にご依頼いただくことをおすすめします。
咲くやこの花法律事務所では、債権回収の経験豊富な弁護士が、これまでの経験で得たノウハウを生かした最適な方法で支払督促または訴訟手続を遂行し、医療費を回収します。
咲くやこの花法律事務所の債権回収に強い弁護士による弁護士費用例
●初回相談料:30分5000円+税
(4)入院保証金制度や連帯保証制度利用のための書面作成
医療費未払い問題を未然に防ぐために、入院保証金制度や連帯保証制度を整備することも重要です。特に入院保証金制度については、厚生労働省の通達を踏まえた適切な内容で整備することが必要になります。また、連帯保証人を付けてもらう場合も、法律上有効な書面を準備しておかなければ、いざというときの回収の際に役に立ちません。
咲くやこの花法律事務所では、医療機関からご相談を受け、弁護士が、医療費未払い対策のために必要になる書面の整備を行います。
咲くやこの花法律事務所の債権回収に強い弁護士による弁護士費用例
●初回相談料:30分5000円+税
(5)医療機関向け顧問契約
医療機関を経営するうえで起こる様々な問題を解決するためには、顧問弁護士制度を活用することが必要です。顧問弁護士制度を利用することで以下のような問題にスムーズに電話やメールでもご相談が可能になります。
顧問弁護士制度を利用した相談例
- 医療費未払い問題への対応
- 患者からのクレーム・トラブルについての相談対応
- 従業員との労務トラブルの相談
- 広告規制への対応
- 病院や医師に対するネット上の誹謗中傷への対応や風評被害対策
- 病院の刑事事件の対応(医師法違反や医療ミスによる業務上過失致死など)
- 契約書のリーガルチェック(病棟の建築に関する契約や、病院所有の不動産に関する契約など)
- 病院の経営者が所有する不動産の管理に関するご相談
- 従業員の私生活上のトラブルに対するご相談(交通事故や刑事事件、離婚など)
弁護士にすぐに相談できる体制を整えることで、トラブルを未然に防いでなくしていく施策を日ごろから行うことができます。
また、トラブル発生時も、すぐに弁護士に相談することで、間違った対応をすることを防ぐことができますし、またトラブルに対応するスタッフの安心感にもつながります。
▶参考情報:病院の顧問弁護士の役割や病院にあった顧問契約プランについては以下の参考記事でも解説していますので合わせてご参照ください。
・病院・クリニック・医療法人の顧問弁護士。患者トラブルや労務問題を解決
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについては、以下をご覧下さい。
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10,【関連情報】医療費未払いなど債権回収に関するお役立ち記事一覧
この記事では、「医療費未払いの回収方法と対策!督促状や裁判での解決を弁護士が解説」について、わかりやすく解説いたしました。
医療未払いなどの債権回収については、この記事で説明してきた回収方法や対策についての解説以外にも、債権回収について全般的に正しく理解しておく必要があります。そのため、他にも基礎知識など知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ債権回収は成功せず失敗に終わってしまいます。
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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2023年2月10日