こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
特別清算について、わからないことがあって悩んでいませんか?
特別清算の手続は債務超過になった株式会社を清算する方法の1つです。
債務超過になった株式会社の清算の方法としては、法律上、特別清算のほかに、「破産」があります。
場面に応じて、「特別清算」か「破産」のどちらかを適切に選択することが非常に重要です。
手続の選択を間違うと、特別清算の手続を途中まで進めていても、破産手続でやりなおすことが必要になるケースもあり、費用や手間が余分にかかることになってしまいます。
今回は、特別清算により会社を清算する場合のメリットや要注意事項、特別清算手続の流れなどについてわかりやすくご説明します。
会社の債務整理や清算については弁護士にご依頼いただいた後に以下のようなご感想をよくいただきます。
●「債権者の督促がきつく、家にも帰れない日が続いたが、弁護士に依頼して通知を出したことにより、督促が止まり、家に帰れるようになった。」
●「一人で悩んでいないでもっと早く相談すれば、家族にも迷惑をかけなかった。」
悩んでおられる場合は早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
【注】財産を隠して清算手続をすることは法律上厳罰が科されます。咲くやこの花法律事務所ではご依頼後に財産を隠していたことが判明した場合は、委任契約を解除していますので、ご承知おきください。
▼企業倒産の分野の咲くやこの花法律事務所の解決実績は以下をご参照ください。
▼【関連情報】特別清算に関連する情報は、こちらも合わせて確認してください。
・会社の解散から清算まで。会社の廃業の流れをわかりやすく解説
▼特別清算に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
今回の記事で書かれている要点(目次)
1,特別清算とは?
特別清算とは、債務超過になった株式会社を破産手続よりも簡易な方法で清算する手続です。
特別清算を行うことにより、会社の資産と負債は消滅し、会社自体も消滅します。
2,特別清算と破産の違い
特別清算と破産は、どちらも債務超過になった会社を清算し、会社自体を消滅させる手続である点で、手続の目的やゴールは同じです。
特別清算手続を利用するためには、債権者の3分の2以上の同意が必要であり、この点が破産手続との大きな違いです。
これに対し、破産手続も特別清算と同様に債務超過になった会社を清算する手続ですが、債権者の誰からも同意を得られなくても、進めることができます。
また、特別清算は株式会社のみの制度のため、特例有限会社や合同会社は破産手続きを選択する必要があります。
3,特別清算か破産かを適切に選択することが重要
特別清算を進めるためには、債権者の3分の2以上の同意が得られることが必要です。
そのため、特別清算は債権者が少数で、かつ、3分の2以上の債権者の協力が得られる場合にのみ選択するべき手続です。
例えば、以下のような場面が主な利用場面です。
- 債権者が親会社や取引先など少数に限られ特別清算に同意してくれている場合
- 債権者である金融機関が特別清算に同意してくれている場合
一方、債権者の数が多い場合は3分の2以上の賛成を得ることが事実上難しいです。
そこで、債権者の数が多い場合や、あるいは債権者の数が少なくても3分の2以上の同意を得ることが難しい場合は、破産の手続をとる必要があります。
法人の破産手続についてはこちらをご覧ください。
統計上、法人の破産が毎年約7000件程度に対し、特別清算は約300件程度にすぎません。このことからもわかるように、特別清算を利用できる場面は限定されており、ほとんどの場合は破産手続を利用する必要があります。特別清算を利用しようとしても、債権者の3分の2以上の同意が得られなければ、結局は破産手続に移行することになり、二度手間になってしまうため注意が必要です。
4,特別清算のメリット
特別清算手続を利用するメリットは、債務超過の株式会社を法的に正しく清算し、債務を消滅させることができる点になります。
ただし、この点は破産手続をとる場合も同じです。
破産手続と比べた特別清算のメリットとしては、以下の点をあげることができます。
(1)破産に比べてマイナスイメージが少ない
「特別清算」という用語に対する世間的なマイナスイメージが少なく、「破産」よりも世間への聞こえがよいということが言われます。
(2)早期に手続を完了しやすい
裁判所での特別清算の手続きは全体7割以上が6ヶ月以内に終わっています(平成29年度司法統計)。
これに対して、破産手続を利用した場合、裁判所での手続が6ヶ月を超えることが多いです。
手続が簡略化されていて、早期に清算を完了しやすいことが特別清算の主なメリットです。
(3)自社が頼んだ弁護士に手続を依頼できる
特別清算では、自社が頼んだ弁護士にすべての手続を依頼できるため、部外者の関与を受けないという意味で不安なく手続を進めることが可能です。
これに対して、会社の破産手続では、自社が依頼する弁護士以外に、裁判所から破産管財人として選ばれた弁護士が、手続に関わります。
つまり、弁護士が2人関わることになりますが、そのうち1人は裁判所が選んだ弁護士、いわば部外者です。
この裁判所が選んだ破産管財人が、会社の財産の調査や売却、債権者への配当を行うことになります。
破産管財人の関与に不安があるときは、特別清算の手続にメリットがあることもあります。
(4)費用面でのメリットは疑問
「特別清算」にかかる主な費用としては、「裁判所に納める予納金」と「弁護士費用」の2つがあります。
「特別清算」については、「裁判所に納める予納金」は5万円程度ですむことが多いですが、一方で弁護士費用は100万円程度となることが多いです。
そのため、トータルで見ると、破産に比べて費用面でのメリットがあるとは言えません。
下記の表のように、破産手続きの方がトータルの費用が少なくて済む傾向にあります。
●特別清算と破産の一般的な費用の比較
裁判所に納める予納金 | 弁護士費用(税別) | 合計(税込) | |
特別清算 | 5万円程度 | 100万円程度 | 120万円程度 |
破産 | 21万円程度 | 50万円程度 | 80万円程度 |
なお、破産の費用については、以下で詳しく解説していますので併せてご参照ください。
5,特別清算を検討する場合の2つの要注意事項
特別清算を検討する場合は以下の2点に注意してください。
(1)特別清算を利用できる場合はかなり限定されている
1つ目の要注意事項は、特別清算を利用できる場面はかなり限定されていることです。
具体的には以下の全ての点を満たす場合のみ、特別清算が可能です。
条件1:
債権者の3分の2以上の同意が得られること
債権者の頭数の過半数かつ総議決権額の3分の2以上の同意が得られることが必要です。
つまり、「債権者の過半数の同意」を得たうえで、「債権額ベースで見たときに合計で3分の2以上の債権額に相当する債権者」が、特別清算手続による清算に同意しなければ、特別清算手続を進めることができません。
▶参考例:債権者が10社で、債権額が合計で3000万円の場合
過半数にあたる6社以上の同意を得たうえで、賛成債権者の債権額の合計が2000万円以上であれば、特別清算手続を進めることができます。
債権者の3分の2以上の同意が得られない場合は、特別清算の手続きを開始しても、途中で進めることができなくなり、破産手続に切り替えることが必要になります。これは手続的に二度手間になり、デメリットが大きいですので、同意を得られない場合ははじめから破産の申し立てをするべきです。なお、破産手続は債権者の同意が全くなくても進めることが可能です。
条件2:
債権者に一定の支払いができること
特別清算による手続をするためには、会社の資産から税金や社会保険料、労働債権等などを支払った後も支払余力があり、債権者に対し、未払いになっている債権の一部を弁済することができることが必要です。
税金や社会保険料、労働債権等を支払えば会社の資産がなくなってしまい、債権者への弁済が全くできない場合は、特別清算手続によることはできません。
債権者に全く支払ができない場合は、特別清算手続ではなく、破産手続をとる必要があります。破産手続は債権者に全く支払いができない場合でも進めることができます。
条件3:
債権額に争いがある債権者がいないこと
清算する会社と、債権者の一部の間で債権の額についての意見の対立がある場合は、特別清算の手続きによることはできません。
一部の債権者との間で債権額に争いがある場合は、特別清算手続ではなく、破産手続をとる必要があります。破産手続は、債権額に争いのある債権者がいる場合でもすすめることができます。
条件4:
株式会社であること
法律上、特例有限会社や合同会社、個人事業主は特別清算の手続は利用できません。
破産手続は特例有限会社や合同会社、個人事業主も利用することができます。
(2)社長が連帯保証している場合は別途社長の債務整理が必要
2つ目の要注意事項は、社長が連帯保証人になっている場合の扱いです。
会社を特別清算すると、会社の債務が連帯保証人である社長に請求されることになります。
そのため、通常、別途、社長について自己破産などの債務整理手続きをとることが必要になります。
なお、会社について特別清算ではなく破産手続をとった場合でも、連帯保証をしている社長の債務整理が必要になることは同じです。ただし、会社について破産手続をとった場合は、会社の破産手続と社長の破産手続を同時に進めることができ、費用や手間の面で、特別清算よりも優れています。そのため、社長が連帯保証になっている場合は、特別清算ではなく、破産手続きをとったほうが良いことが多いです。
会社破産時の代表者の債務整理については以下の記事をご参照ください。
▶参考情報:法人が破産した場合に代表者はどうなる?代表者も破産が必要か?
このように見ていくと、破産よりも特別清算の手続きをとったほうがメリットがある場面は決して多くないことに注意しておきましょう。
6,特別清算手続きの流れ
特別清算の手続きの流れは以下の通りです。
※上記は、特別清算のフロー図です。
(1)弁護士に相談する
特別清算の手続は通常は弁護士に依頼して行います。
まず、弁護士に相談し、特別清算の手続を進めることについての問題点、デメリットの説明を受けたうえで、判断することが必要です。
(2)株主総会で解散を決議する
特別清算の手続を進めることを決めたら、まず、株主総会を開き、会社の解散を決議します。
会社の解散は、「特別決議」といって、過半数の株主が出席したうえで3分の2以上の賛成を得ることが必要です。
また、従業員を整理解雇し、事務所を借りている場合は退去する必要があります。
従業員の整理解雇については以下で詳しく説明していますのでご参照ください。
(3)清算人が資産の売却などを進める
解散決議の後は清算人が特別清算の手続を進めることになります。
清算人には経営者(社長)あるいは会社が依頼した弁護士が就任することが通常です。
会社の資産を売却して換金し、まだ支払われていない取引債権があればそれを回収します。
(4)債権の届け出を求める官報公告を行なう
官報公告により、債権者に会社の解散を知らせて、債権の届出をするように促します。
官報公告というのは、国の広報誌である官報に掲載することにより公けに告知することを言います。
また、会社が把握している債権者に対しては、官報で知らせるのとは別に、個別に債権届出を求める通知を送ることが法律上必要です。
(5)裁判所に特別清算の申し立てをする
必要書類をそろえて裁判所に特別清算の申し立てをします。
特別清算の申し立てをすると、裁判所が特別清算開始決定を行います。
(6)債権額を確定し、裁判所に協定案を提出する
債権者からの届け出をもとに各債権者の債権額を確定します。そのうえで、債権者との協定案を作成して裁判所に提出します。
協定案には、換金した会社の資産を原資に、債権者に対する債務について未払い額の何パーセントを支払うか(弁済率)や支払期日(弁済期日)を記載します。
また、協定による支払を終えた後は残りの債務は免除されることも協定案に定めます。
特別清算には協定型と個別和解型があり、上記は協定型のケースの流れです。
個別和解型の場合は、債権者全員との間で個別に支払額や支払期日について合意し、かつ、その支払いを終えた後は残りの債務が免除されることについて同意を得る必要があります。
和解型で進めるためには、債権者全員と合意する必要がありますが、その分、迅速に手続を進めることができます。
(7)債権者集会で協定を可決し、裁判所に協定を認可してもらう
協定案提出後に裁判所で債権者集会が行われます。
ここで、債権者の3分の2以上の同意を得て、協定を可決することが最も重要になります。
そのうえで、協定案を裁判所に認可してもらいます。
(8)協定に従って債権者に弁済をする
認可された協定に従って債権者への弁済を行います。
(9)裁判所が終結決定を行い、法人格が消滅する。
協定に基づく弁済が終われば、裁判所が終結決定を行います。
これにより、残りの債務は消滅し、また法人格も消滅します。
以上が特別清算の手続きの流れです。
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咲くやこの花法律事務所では会社の特別清算や破産に関するご相談を常時、会社経営者の方々から承っています。
特別清算や破産を考える場面では不安が大きいと思いますが、ご相談いただくと不安が解消され、進むべき道が明確になります。
まずは、弁護士に依頼して債権者に特別清算や破産の手続きをすることを知らせる通知をだすことが必要です。
弁護士が通知を出した後は、債権者への支払いを止めることができ、金銭的、心理的な余裕を取り戻したうえで手続を進めることができます。
咲くやこの花法律事務所では、経営者が連帯保証している場合の対応や、経営者個人の生活についてもあわせてご相談いただくことが可能です。
特別清算や破産をお考えの方はぜひ早めにご相談ください。
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記事作成弁護士:西川 暢春
記事作成日:2020年03月24日