こんにちは。弁護士咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
名誉毀損について以下のような悩みを抱えていませんか。
- 虚偽の悪評を書き込まれたので削除したい
- 名誉毀損の投稿をした者を特定したい
- クチコミサイトへの書き込みが名誉毀損にあたるかどうか相談したい
個人が容易に発信できるようになったことも影響し、節度を超えたインターネット上の書き込みに苦慮する企業が少なくありません。クチコミやSNSなど、インターネット上の書き込みが会社に与える影響は大きく、マイナスイメージの書き込みが原因で、売上や採用、取引先との関係等に重大な支障が生じるケースもあります。
どのような内容が名誉毀損にあたるのか、どのように対応すべきかを知らなければ、対応が後手にまわり、悪評が拡散されて被害が拡大したり、投稿者を特定することが難しくなったりする可能性があります。名誉毀損によるダメージを最小限に抑えるためには、いち早く、発信者の特定や、投稿の削除請求、刑事告訴などの対応をとることが重要です。
この記事では、名誉毀損の要件や侮辱罪との違い、名誉毀損で訴える条件や刑事告訴の方法、慰謝料の相場や名誉毀損にあたる言葉の例について解説します。この記事を最後まで読んでいただくことで、名誉毀損がどのような場合に成立し、それに対してどのように対応していくべきかを理解していただくことができます。そして、現在、目の前で発生している名誉毀損トラブル、誹謗中傷被害に対して、毅然とした対応をとり、問題解決に向けて具体的な行動を起こせるようになるはずです。
企業や事業者における名誉毀損トラブル、誹謗中傷被害として特に多いのが、クチコミサイトや転職サイトへの投稿です。クチコミサイト等に会社に対する悪評が投稿されると、会社の社会的な信用が低下して、集客や採用などに深刻なダメージを与えることがあります。
すべてが名誉毀損にあたるわけではありませんが、正当な意見と名誉毀損の線引きを理解し、一線を超える投稿には厳しく対処していくことが必要です。
咲くやこの花法律事務所では、名誉毀損トラブル、誹謗中傷被害について数多くのご相談をお受けし、解決に導いてきました。名誉毀損トラブル、誹謗中傷被害でお悩みの方は早めにご相談ください。
企業や事業者の誹謗中傷被害に関する咲くやこの花法律事務所におけるサポート内容を以下で詳しくご紹介しております。ご参照ください。
▶参考情報:誹謗中傷トラブルに関する弁護士への相談サービスはこちら
※咲くやこの花法律事務所では、企業または事業者からのご相談のみお受けしています。
また、咲くやこの花法律事務所の誹謗中傷トラブルの解決事例もご紹介していますのであわせてご覧ください。
▼名誉毀損トラブル、誹謗中傷被害の対応について、弁護士の相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
今回の記事で書かれている要点(目次)
- 1,名誉毀損とは?
- 2,名誉毀損罪の成立要件とは?
- 3,侮辱罪や誹謗中傷との違いとは?
- 4,名誉毀損に時効はあるのか?
- 5,名誉毀損トラブルにおける基本的な対処法
- 6,名誉毀損で訴える条件とは?
- 7,名誉毀損で刑事告訴するには?
- 8,名誉毀損の慰謝料の相場はどのくらい?
- 9,どこからが名誉毀損?名誉毀損にあたる言葉とは?
- 10,名誉毀損に法的措置をとる場合の弁護士費用はどのくらい?
- 11,弁護士に早い段階で相談すべき理由
- 12,実際の名誉毀損被害に関して咲くやこの花法律事務所の弁護士がサポートした解決事例
- 13,名誉毀損トラブルや誹謗中傷被害に関して弁護士に相談したい方はこちら
- 14,まとめ
- 15,【関連】名誉毀損に関するその他のお役立ち記事
1,名誉毀損とは?

名誉毀損とは、不特定または多数の人が認識できる状態で、人や会社の社会的評価を害する具体的事実を示す行為のことです。読み方は「めいよきそん」です。「名誉棄損」と表記されることもありますが、法律用語としては「名誉毀損」が正しい表記です。この記事では、「名誉毀損」の表記に統一して記載します。
| 名誉毀損とは? | |
| 公然性 | 不特定または多数の人が認識できる状態で |
| 事実の摘示 | 人や会社の社会的評価を害する具体的事実を示すこと |
| 名誉の毀損 | 人の社会的評価を害するおそれのある状態を生じさせること |
名誉毀損にあたる可能性がある言動には以下のようなものがあります。
- SNSに「あの人は薬物を使用している」と書き込む
- 従業員が「会社はハラスメントの訴えに対応せずに放置している」と虚偽の書き込みをする
- 社内で「あの人には前科があるらしい」と噂をながす
- クチコミサイトに「この店の食べ物で食中毒になった」と虚偽の書き込みをする
2,名誉毀損罪の成立要件とは?

どのような場合に犯罪にあたるかは刑法等の法令で定められており、犯罪が成立する条件のことを構成要件といいます。
名誉毀損罪は、①公然性、②事実の摘示、③名誉の毀損という3つの要件をすべて満たしている場合に成立します。ただし、3つの要件を満たしていても、違法性阻却事由とよばれる特別な事情がある場合は、名誉毀損には該当しません。
名誉毀損罪は刑法230条に規定があり、以下のとおり定められています。
▶参考情報:刑法230条
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
・参照:「刑法」の条文はこちら
※刑法改正により、従来の懲役刑は、拘禁刑に変更されました。
ポイントになるのは、①公然性、②事実の摘示、③名誉を毀損の3点です。
ここからは、名誉毀損罪が成立するための条件について解説します。
(1)3つの要件
法律上、以下の3つの要件を充たしている場合に名誉毀損罪が成立します。
- 1.公然性があること
- 2.事実を摘示していること
- 3.人の名誉の毀損
それぞれについて、詳しく解説していきます。
1,公然性があること
公然性がある状態とは、不特定または多数の人が見聞きできる状態のことです。
<具体例>
- 多くの人が集まる公開の場
- 新聞記事や週刊誌等のメディア
- インターネット上のブログ記事や掲示板
- SNS(ソーシャルネットワークサービス)
など
1対1の状況や閉鎖的な環境での言動は名誉毀損にはあたらないのが通常ですが、特定かつ少人数しか見聞きしていない場所での発言・発信であっても、人づてに波及して、不特定又は多数人に伝わる可能性があれば、公然性が認められるとされています(伝播可能性説)。
2,事実を摘示していること
事実の摘示とは、人や会社の社会的評価を害する具体的事実を示すことです。内容が真実であるか嘘であるかは問いません。
例えば、「詐欺行為をしている」「不倫している」「前科がある」等の発言・発信が事実の摘示にあたります。
「バカ」「無能」「うそつき」のような具体性のない内容は、名誉毀損罪にはあたりません(ただし、侮辱罪等に該当する可能性があります。詳しくは「3,侮辱罪と誹謗中傷との違い」参照)。
言葉や文章での発信に限らず、絵や写真、ジェスチャー等で表現した場合も事実の摘示になります。また、「~らしい」「~という噂がある」というような断定していない言い方でも名誉毀損が成立することがあります。
3,人の名誉の毀損
「人」には、個人だけでなく、法人や団体も含みます。イニシャルや伏せ字等で個人名や法人名を直接的に出していなくても、個人や法人が特定できるようなものであれば、名誉毀損罪は成立します。
名誉毀損罪における「名誉」とは、人の品性や名声、信用などの社会から受ける客観的な評価(社会的評価)のことで、人の感情(名誉感情)は含まれません。
名誉を毀損するとは、社会的な評価を害するおそれのある状態を生じさせることをいいます。実際に社会的評価が下がったかどうかにかかわらず、その行為によって社会的評価が下がるおそれがあれば、名誉を毀損したと認められます。
(2)違法性阻却事由とは?
上記の3つの要件を充たしていても、例外的に名誉毀損罪として処罰されないケースがあります。それは、違法性阻却事由がある場合です。
違法性阻却事由とは、犯罪の構成要件を充たしている場合でも、例外的にその行為の違法性が否定される事情のことです。
つまり、本来であれば名誉毀損罪として処罰される行為だが、ある特別な事情(違法性阻却事由)がある場合は、例外的に処罰を免れるということです。
名誉毀損罪の違法性阻却事由は、刑法230条の2で定められており、以下の3つをすべて満たしている場合は、違法性が否定されることになります。
- 1.公共の利害に関する事実にかかわる内容であること(公共性)
- 2.専ら公益を図る目的で行われたこと(公益性)
- 3.内容が真実であることの証明があったこと(真実性)
違法性阻却事由が認められる典型的な事例としては、政治家の汚職や公的機関における不正に関する報道などがあげられます。
また、真実性の証明がなされない場合でも、「行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しない」とされています(最高裁判所判決昭和44年6月25日・夕刊和歌山時事事件)。
▶参考情報:刑法230条の2
(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
・参照:「刑法」の条文はこちら
3,侮辱罪や誹謗中傷との違いとは?
名誉毀損と混同されやすいものに侮辱罪と誹謗中傷があります。
(1)侮辱罪(刑法231条)
侮辱罪は、不特定または多数の人が認識できる状態で、人(法人も含む)を侮辱した場合に成立する犯罪です。「本罪の対象となる「人」の範囲について、判例通説の立場からは、名誉毀損罪の場合と同じであり、行為者以外の自然人及び法人その他の団体を含む。死者は含まれないと解される。」と解説されています(『条解刑法〔第2版〕』648頁)。
名誉毀損罪と類似していますが、名誉棄損罪と侮辱罪の違いは「事実の摘示」を伴うかどうかという点です。
名誉毀損罪は、客観的に評価できる具体的な内容(事実)を摘示した場合に成立しますが、侮辱罪にはこのような要件はなく、「バカ」「頭がわるい」「ブス」等の抽象的な内容で相手を侮辱した場合も成立します。
▶参考情報:どのような場合に侮辱罪が成立するかについては、法務省が作成した以下の事例集が参考になりますのでご参照ください。
▶参考情報:刑法231条
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
・参照:「刑法」の条文はこちら
(2)誹謗中傷
名誉毀損罪や侮辱罪は法律に定めがあり、その定義や要件が法律で規定されています。これに対し、誹謗中傷は法的な用語ではなく、法律上の定義はありません。
誹謗中傷は、一般的に悪口や侮辱等によって他者をおとしめる行為全般のことを指し、法的には名誉毀損罪や侮辱罪などの様々な犯罪に分類される行為の総称として使われることが多い言葉です。
誹謗中傷に対して、刑事告訴や損害賠償請求等の法的措置をとる場合は、まず誹謗中傷が、法的に、名誉毀損や侮辱など、どのような類型にあたるかを検討する必要があります。
4,名誉毀損に時効はあるのか?

名誉毀損で加害者の責任を追及できる期間には限りがあります。刑事の場合、民事の場合のどちらにも時効があるので、いち早く行動することが重要です。
刑事の場合と民事の場合の時効は、以下の通りです。
| 刑事の場合 | ・告訴期間:6か月(刑事訴訟法235条) ・公訴時効:3年(刑事訴訟法250条2項6号) |
| 民事の場合 | 被害者が損害および加害者を知った日から3年または不法行為が行われた時から20年(民法724条) |
刑事の場合と民事の場合にわけて、それぞれ詳しく解説していきます。
(1)刑事の場合
1,告訴期間:6か月
告訴期間とは、被害者等が加害者を刑事告訴することができる期間のことです。
名誉毀損罪のような親告罪の場合は、「犯人を知った日から6か月を経過するまで」と決められています(刑事訴訟法235条)。
ここでいう「犯人を知った日」というのは「犯罪行為終了後において犯人を知った日」と解釈されています。犯罪が継続している最中に犯人を知ったとしても、その時点から6か月ではなく、犯罪行為の終了時点から6か月間となります。
典型的なのが、SNSやインターネット上に名誉毀損記事を投稿しているケースです。このようなケースでは、SNSやインターネット上で名誉毀損記事が閲覧可能な状態で公開され続けている限り、犯罪は継続しているとみなされます。
そのため、告訴期間の起算日は、名誉毀損記事が投稿された日ではなく、名誉毀損記事が削除された日となります。
「犯人を知った」状態とは、犯人を他の人と区別して特定できる程度に認識できていればよく、氏名や住所などの詳細が分かっていなくてもよいとされています。犯人の氏名や住所などが不明でも告訴は可能ですが、告訴状の受理のハードルは高くなるので弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
2,公訴時効:3年
公訴時効とは、犯罪行為が行われた後、検察官が起訴する(刑事裁判にかける)ことができる期間のことです。
名誉毀損罪の公訴時効は3年と定められており(刑事訴訟法250条2項6号)、この期間を過ぎると、加害者を刑事裁判にかけることはできません。
▶参考情報:刑事訴訟法250条2項6号
第二百五十条 時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
(中略)
② 時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期拘禁刑に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の拘禁刑に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の拘禁刑に当たる罪については七年
五 長期十年未満の拘禁刑に当たる罪については五年
六 長期五年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
・参照:「刑事訴訟法」の条文はこちら
注意しなければならないのは、刑事告訴をしてから起訴までに時間がかかるという点です。
告訴状を提出してから起訴に至るまでには、警察での捜査→検察庁への送致→検察庁での捜査→起訴という段階があります。3年経過する直前に刑事告訴をしても、検察官が起訴するまでに3年が経過してしまうと、起訴できなくなってしまうのです。
起訴までにかかる捜査期間を考慮して、できる限り早く告訴することが必要です。
(2)民事の場合
民事上、名誉毀損は不法行為にあたり、加害者に対しては不法行為に基づく損害賠償請求ができます。不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は以下のとおりです(民法724条)。
被害者が損害および加害者を知った日から3年または不法行為が行われた時から20年
5,名誉毀損トラブルにおける基本的な対処法

名誉毀損トラブルに対する主な対応方法としては以下のものがあります。
- (1)削除請求
- (2)発信者情報開示請求
- (3)損害賠償請求
- (4)刑事告訴
それぞれについて、順番に解説していきます。
(1)削除請求
投稿記事の削除を求める手続きです。
投稿者に直接削除を求める方法や、名誉毀損が行われた媒体(SNS、クチコミサイトなど)の運営会社に削除を求める方法、裁判所の手続きの中で削除を求める方法などがあります。
▶参考情報:名誉毀損など誹謗中傷の記事を削除する方法は、以下の記事を参考にしてください。
(2)発信者情報開示請求
匿名での名誉毀損に対して発信者を特定する手続きです。
インターネット上で、匿名で行われた名誉毀損について、発信者の責任を追及するためには、まず発信者を特定する必要があります。発信者を特定するための手続きを「発信者情報開示請求手続き」と言います。
匿名で投稿可能なサイトの場合、投稿者を特定するためには、まずIPアドレスの開示請求を行い、プロバイダを特定した上で、プロバイダに対して契約者の住所・氏名などを開示請求する必要があります。
(3)損害賠償請求
名誉毀損によって生じた損害の補填や権利の回復を求める手続きです。
請求できるものとしては、名誉毀損行為によって精神的苦痛を受けた場合にその精神的な損害に対する慰謝料や、投稿者の特定に要した調査費用、弁護士費用などがあります。
(4)刑事告訴
加害者の処罰を求める手続きです。
名誉毀損罪は親告罪なので、加害者の処罰を求める場合は、被害者が刑事告訴をする必要があります。
具体的な手続きについては、「7,名誉毀損で刑事告訴するには?」で解説します。
▶参考情報:名誉毀損など誹謗中傷行為に対する削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求、刑事告訴などの法的措置の進め方や注意点については、以下の記事を参考にしてください。
名誉毀損トラブルに対する対応には様々な方法がありますが、名誉毀損が行われた媒体やその内容等、事案によってどのような対応が適しているかは異なります。
様々な選択肢の中から、何を優先するのか、どのような対応が有用かを見極め、ベストな選択を検討する必要があります。また、名誉毀損に対する責任追及をする際は、証拠が重要になります。時間の経過とともに消えてしまうものもあるため、早い段階で証拠を保全しておくことも必要です。
時間の経過とともにとれる対応が限られてくるので、名誉毀損と思われる事案が見つかったら、いち早く弁護士に相談することをおすすめします。
6,名誉毀損で訴える条件とは?
名誉毀損にあたる行為について相手を訴える方法には、以下の2つの手段があります。
- (1)刑事上の責任を追及する場合
- (2)民事上の責任を追及する場合
それぞれ順番に詳しく解説しています。
(1)刑事上の責任を追及する場合
刑事告訴をして、相手の処罰を求める方法です。
名誉毀損罪は親告罪といって、被害者が刑事告訴をしない限り、起訴できない犯罪です。警察に対して、被害を受けたことを申告し、犯人の処罰を求める手続のことを、「刑事告訴」といいます。
名誉毀損罪で有罪となると、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金か科されます(刑法230条1項)。
刑事告訴をする前提として、名誉毀損罪の成立要件を充たしていること、加害者の行為が名誉毀損罪に該当することの証拠が必要になります。
刑事告訴の手続きの流れについては、「7,名誉毀損で刑事告訴するには?」で解説します。
(2)民事上の責任を追及する場合
名誉毀損行為によって生じた損害の補填や権利の回復を求める方法です。
民事上、名誉毀損は不法行為に該当します。不法行為とは、故意または過失によって、他者の権利または利益を侵害し、損害を生じさせる行為のことです(民法709条)。
名誉毀損によって侵害される権利のことを「名誉権」といいます。
▶参考情報:民法709条
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
・参照:「民法」の条文はこちら
具体的には、相手に対して、交渉や訴訟などの方法で、投稿記事の削除や謝罪文の掲載、損害賠償などを請求します。インターネットやSNSの匿名の発信の場合も、発信者情報開示請求という手続きで、発信者を特定することが可能です。
▶参考情報:名誉毀損記事の削除請求や匿名の投稿について発信者を特定するための情報開示請求については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
(3)名誉毀損の刑事上と民事上の責任の違いとは?
名誉毀損について、刑事上の責任の成立範囲と民事上の責任の成立範囲が異なることにも注意が必要です。
1,名誉毀損の刑事上の責任
刑事上の責任が発生するのは故意で名誉毀損が行われた場合のみです。刑事上の責任が発生するためには具体的事実の摘示が要件となります。
2,名誉毀損の民事上の責任
一方で、民事上の責任は過失の場合でも発生します。また、民事上の責任は、具体的事実を摘示しない意見・論評についても名誉毀損として責任が認められることがあります。
7,名誉毀損で刑事告訴するには?
名誉毀損で刑事告訴する場合のおおまかな流れは以下のとおりです。
- (1)告訴状を作成する
- (2)警察に告訴状を提出する
- (3)警察の捜査・取り調べ
- (4)検察庁への送致・検察庁での捜査
- (5)起訴・不起訴の決定
- (6)刑事裁判・処罰の決定
それぞれについて、順番に詳しく解説していきます。
(1)告訴状を作成する
刑事告訴は、告訴状という書類を警察に提出して行います。
告訴状の作成に当たっては、犯罪事実の特定のため、名誉毀損に該当する行為について「いつ、だれが、誰と、どこで、誰に対して、何をしたのか」を明確かつ具体的に記載する必要があります。
作成には専門的な知識が必要となるため、弁護士に依頼することが一般的です。
(2)警察に告訴状を提出する
告訴状を提出する警察署に特に決まりはないので、どの警察署にでも提出することができます。告訴状が受理された後の捜査のことを考えて管轄区域の警察署へ提出することが一般的です。
▶参考情報:管轄の警察署は、警察庁のホームページで調べることができます。
警察は、告訴状の内容から、犯罪に該当しないと判断した場合や、証拠が足りない場合、犯罪事実が不明確な場合等は、告訴状を受理しないことがあります。そのため、告訴状の内容は非常に重要です。
また、告訴状を受理する前に、警察から告訴状に関する聴取や打ち合わせを求められる場合もありますので、告訴をする前に、経緯や情報を整理し、証拠を準備しておくことも必要になります。
名誉毀損罪については、告訴状を受理してもらわないことには捜査が始まりませんので、まず告訴状を受理してもらうことが第一目標になります。
(3)警察の捜査・取り調べ
告訴状が受理されると警察が捜査を行います。捜査段階では、警察からの取り調べや証拠資料の提供に協力することが必要です。
警察は数多くの事件を抱えており、捜査が思うように進まないことも少なくありません。スムーズに捜査をしてもらうためには、警察からの協力要請には速やかに、かつ適切に対応することが必要です。また、定期的に捜査状況の確認をすることも重要です。
(4)検察庁への送致・検察庁での捜査
警察での捜査が終了すると、事件が検察庁へ送致されます。事件が検察庁へ送致されることを「送検」といいます。事件が送致されると、検察庁で再度捜査が行われます。ここでも、検察からの聴取や証拠の提出等、捜査への協力が必要です。
(5)起訴・不起訴の決定
検察での捜査が終了すると、検察庁が、加害者を起訴するか、不起訴にするかを決定します。捜査の段階で、証拠が不十分と判断されたり、被害が大きくない等と判断されたりすると、不起訴となることがあります。
(6)刑事裁判・処罰の決定
起訴されると、裁判所で刑事裁判が行われ、裁判で有罪となった場合は加害者に刑が科されます。
8,名誉毀損の慰謝料の相場はどのくらい?

慰謝料とは、名誉毀損行為によって精神的苦痛を受けた場合に、その精神的な損害に対して支払われる損害賠償金のことです。
名誉毀損行為による慰謝料の金額の決まり方に明確な基準はなく、個別の事案の事情によって大きく異なります。そのため、相場を示すことは難しいですが、目安としては数十万円~100万円程度になることが多いです。
慰謝料の金額を決める際に考慮される事情としては、内容の悪質性、頻度や期間、名誉毀損行為によって生じた被害の程度、被害者の社会的な立場等があります。また、テレビや新聞、週刊誌等のより多くの人の目に触れる媒体で名誉毀損行為が行われた場合は、慰謝料が高額になる可能性があります。
事案によりますが、慰謝料以外に加害者の特定のために要した調査費用や弁護士費用等の支払いが命じられることもあります。
参考として、名誉毀損で慰謝料の支払いを命じられた裁判例をいくつか紹介します。
裁判例1:インターネット上の掲示板等に、歯科医院が、詐欺行為を行っている、患者から不当に高額な治療費を得ているという印象を与える書き込みをした事案(名古屋地方裁判所令和2年10月1日判決)
●賠償額240万円
→慰謝料200万円+その他被害者が負担した弁護士費用の一部として40万円
▶参考情報:この判決の全文は裁判所のホームページで確認することができます。
裁判例2:転職サイトに精神的な治療が長期間必要となるほどのパワハラが存在するという内容の記事を投稿した事案(東京地方裁判所令和7年1月15日判決)
●賠償額36万円
→慰謝料30万円+その他被害者が負担した弁護士費用の一部として6万円
裁判例3:X(旧ツイッター)上で、「ヤブ医者」「人殺し」「犯罪者」等と投稿した事案(大阪地方裁判所令和5年12月19日判決)
●賠償額34万5000円
→慰謝料30万円+その他被害者が負担した調査費用、弁護士費用の一部として4万5000円
▶参考情報:この判決の全文は裁判所のホームページで確認することができます。
▶参考情報:誹謗中傷被害を受けたときの損害賠償額や慰謝料については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
9,どこからが名誉毀損?名誉毀損にあたる言葉とは?
実際にどのような言葉が名誉毀損にあたるのでしょうか。ここからは名誉毀損にあたる言葉の例や、名誉毀損に関する裁判例をご紹介します。
(1)名誉毀損にあたる言葉の例
名誉毀損にあたる可能性がある言葉とは、以下の2つが判断基準になります。
- ①具体的な状態や行為等について言及されていること
- ②世間一般の人が聞いて、その人や会社に否定的な印象をもつ可能性が高いこと
その言葉を発した状況や経緯等にも左右されますが、例えば以下のようなものが名誉毀損にあたる可能性があります。
▶参考情報:名誉毀損にあたる可能性がある言葉の例
- 「○○という会社は暴力団と関係がある」
- 「○○という会社は詐欺行為をしている」
- 「○○という会社は倒産寸前らしい」
- 「○○の社長は薬物使用の前科がある」
- 「○○という飲食店の食事に異物が混入していた」
- 「○○で食事をして食中毒になった」
- 「○○病院で医療ミスをされた」
- 「○○という会社では残業代が支払われない」
- 「○○は不倫している」
- 「○○は横領をしている」
- 「○○という店は高額な商品を売りつけてくる」
ただし、公共性、公益性、真実性の要件を満たす場合は、違法性が阻却されることは前述したとおりです。また、民事上の責任は、具体的な状態や行為等について言及しない意見・論評についても名誉毀損として責任が認められることがあります。
(2)名誉毀損に関する判例
名誉毀損に関する裁判例をいくつかご紹介します。
1,Googleマップ上のクチコミについて名誉毀損が認められた事例(東京地方裁判所令和5年10月16日)
歯科医院がGoogleマップのクチコミ欄に「かなりの金額のお金が倍かかるのはひどすぎる」「普通に医療ミスだと思います」「大した治療もしないくせにしょっちゅう通わされて…ぼったくりとしか思えない」「どうやって患者から稼ぐかを考えすぎている」等と投稿されたことについて、口コミの投稿者の情報開示を求めた事案です。
裁判所は、クチコミの内容は、歯科医院の社会的評価を低下させるものであり、その内容が真実であることの証明はなく、また真実と信じる相当の理由があったと認めるだけの証拠もないとして、クチコミによる名誉毀損を認め、Googleに対して発信者情報の開示を命じました。
▶参考情報:Googleマップ上のクチコミの名誉毀損など誹謗中傷被害でお困りの方は、以下の記事も参考にしてください。
2,転職サイトへの書き込みについて名誉毀損が認められた事例(令和7年1月15日判決)
転職サイトに、会社内に長期間の精神的な治療を要する程度のパワハラが存在するという内容の記事を投稿されたことについて、会社が元従業員に対して記事の削除と損害賠償を請求した事案です。
裁判所は、本件投稿は会社の社会的価値を低下させるものであり、実際に会社内にパワハラがあったとは認められないので記事の内容は真実ではなく違法性は阻却されないと判断し、元従業員に対して損害賠償の支払いと記事の削除を命じました。
この事例では、転職サイトへの書き込みには、公共性と公益性があると判断されている点に注意が必要です。
投稿内容が会社の社会的評価を低下させるものであっても、公共性と公益性があり、その内容が真実と認められる場合、違法性阻却事由が認められ、名誉毀損にはなりません。
この事例では、投稿内容が真実ではないと判断されたため、転職サイトへの書き込みは名誉毀損にあたると判断されましたが、仮に投稿内容が真実であれば、名誉毀損にはあたらないと判断された可能性が高いです。
3,転職サイトへの書き込みについて名誉毀損が認められなかった事例(東京地方裁判所令和5年9月27日判決)
会社が転職サイトを管理運営する会社に対して、投稿された記事の削除と損害賠償請求を求めた事案です。
この事案では、元従業員によって転職サイトに以下のような記事が投稿されていました。
①「営業職だと毎日の残業が当たり前。ノー残業の日もありますが、毎日21時、22時まで会社に残って仕事をされている方もいます。基本的には毎日残業です。」
②「プライベートが全く充実しないと感じました。残業が多く、仕事内容も精神的にくるものが私は多かったです。また、休みも普通の会社と比べると少ないと感じます。売り上げを作るためなら情は一切捨てる。給料がよければなんでも良いという方でしたら、むしろ最適な会社ではあると思います。」
裁判所は、「①」は業務が多忙であるとの印象は受けるにしても法に抵触するような残業を強いているなどの印象を受けるものではないこと、「②」は投稿者の主観的な感想・意見を述べたものであることから会社の社会的評価を低下させるものであるとはいえないとして、名誉毀損を否定し、記事の削除と損害賠償を認めませんでした。
このように投稿された会社としては社会的評価を低下させる名誉毀損のクチコミだと感じても、裁判所がそう認めないこともあります。法的措置をとる前に、過去の裁判例も踏まえた慎重な検討が必要です。
(3)悪口を言いふらすことは名誉毀損にあたるか?
悪口を言いふらすことが名誉毀損にあたるかどうかは、悪口の内容や悪口を言った状況や頻度等によって個別に判断されることです。悪口を言うことが、一律に名誉毀損にあたる・あたらないということはできません。
悪口の態様からして名誉毀損の要件にあてはまっていれば、名誉毀損が成立することになります。一方で、具体的な事実を示さずに、単に「あいつは馬鹿だ」「金のことしか考えていない」「人間的におかしい」などという悪口は、少なくとも刑法上の名誉毀損にはあたらず、別途侮辱罪にあたるかどうかが問題になります。
10,名誉毀損に法的措置をとる場合の弁護士費用はどのくらい?
名誉毀損に対して法的措置をとろうとする場合、それにかかる弁護士費用も気になるところだと思います。弁護士費用は、個々の弁護士あるいは法律事務所ごとに報酬基準が定められており、個別の事案を考慮して設定されるものなので、一律に弁護士費用はいくらと示すことはできません。
弁護士に依頼する場合は、どのような場合に費用が発生するのか、総額でどの程度の費用が必要になるのか、事前によく確認した上で依頼することが必要です。
弁護士に支払う費用の内容や、弁護士費用を決定する際に考慮される要素、費用の目安は以下のとおりです。
(1)弁護士に支払う費用の費目
弁護士に支払う費用としては、一般的には以下のようなものがあります。
| 相談料 | 法律相談の対価として支払う費用 |
| 着手金 | 弁護士に事件を依頼した段階で支払う費用 (※事件の結果に関係なく返還されません) |
| 報酬金 | 事件の解決時に、その結果の成功の程度に応じて支払う費用 |
| 日当 | 弁護士が移動や出張をする際の時間的拘束に対して支払う費用 |
| 実費 | 裁判所に納める印紙や切手代、通信費、交通費等の費用 |
(2)弁護士費用に考慮される要素
名誉毀損被害への対応についての弁護士費用を決定する際に考慮される要素としては、以下のようなものがあります。
1,記事やクチコミの数
名誉毀損の被害を主張する記事やクチコミが複数ある場合、1つずつの記事やクチコミについて、名誉毀損にあたることの主張、立証が必要になります。そのため、記事やクチコミの数が多ければ多いほど、その労力も大きくなり、その分、弁護士費用がかかることが通常です。
2,相手方に求める内容や方法
法的措置をとるといってもその方法は様々です。名誉毀損罪にあたるとして刑事告訴をするのか、投稿記事の削除を求めるのか、損害賠償請求をするのか、相手方の特定(発信者情報開示)が必要かどうか等、どのような方法で相手方の責任を追及するのかによって、弁護士費用が左右されます。
3,事案の難易
刑事告訴や発信者情報の特定が必要な場合、記載された内容が事実でないことの証明が求められることがあります。そのため、証明を要する項目の数や証明の難易度も考慮して、弁護士費用が設定されることが多いです。
4,交渉か訴訟か
訴訟など法的手続きは、交渉での解決を目指す場合と比べて、対応にかかる手間が大きく、対応期間も長くなることが多いです。その分、交渉よりも訴訟などの法的手続きを用いる場合の方が弁護士費用が高くなることが一般的です。
(3)弁護士費用の目安
咲くやこの花法律事務所でも、会社や医療機関、その他の事業者から誹謗中傷による被害、名誉毀損による被害への対応についてご依頼をお受けしています。
以下では、参考情報として、咲くやこの花法律事務所が、会社や医療機関、その他の事業者からご依頼を受ける場合の弁護士費用の目安をご紹介します。
●初回相談料
30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
●名誉毀損記事の削除請求
内容証明郵便等による削除請求(交渉):着手金15万円+税~
●刑事告訴
刑事告訴の代行手続き:着手金35万円+税~
●損害賠償請求
損害賠償請求手続き:着手金15万円+税~
●発信者情報開示請求
投稿者特定のための裁判所への発信者情報開示命令申立て:着手金30万円+税~
11,弁護士に早い段階で相談すべき理由
誹謗中傷や名誉毀損の被害をうけたときは早期に弁護士に相談すべきです。その理由は、被害拡大の防止と、時間が経つにつれて対応方法が限られてくるためです。
インターネット上に投稿された内容は、削除されない限り残り続けて多くの人の目に触れることになり、投稿が転載されたり、拡散されたりすると、被害がより拡大していきます。対応が遅くなればなるほど、会社が受けるダメージは大きくなるのです。
また、匿名の投稿に対して発信者情報の開示などを検討する場合、投稿から時間が経つと、投稿者の特定に必要な記録が消去され、特定が難しくなってしまうケースもあります。また、刑事告訴や民事上の損害賠償請求をする場合も、時効によって、一定の期間を超えると、投稿者に対する責任追及が難しくなってしまいます。
早めの相談がよりよい解決につながることが多いので、名誉毀損トラブルが発生したときは、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
12,実際の名誉毀損被害に関して咲くやこの花法律事務所の弁護士がサポートした解決事例
咲くやこの花法律事務所でも事業者の方からの名誉毀損被害に対するご相談、ご依頼をお受けしています。
以下では、咲くやこの花法律事務所における名誉毀損被害に関する解決事例の中から一例をご紹介します。
(1)インターネット上に名誉毀損記事を掲載した者を刑事告訴し、刑事罰の確定を成功させた事例
1,経緯
依頼者は、元知人から複数のブログ上で、「詐欺行為をしている」「平気でうそをつく」「複数人と男女関係を持っている」等の事実無根の誹謗中傷記事を20件以上掲載され、依頼者は強い精神的苦痛を受けていました。
依頼者は何とかこのような状況を脱したいと考え、咲くやこの花法律事務所へご相談いただきました。
誹謗中傷記事に対する対応としては、発信者情報開示請求や損害賠償請求、記事の削除請求等の方法がありますが、今回のケースでは、記事を掲載した者の氏名・住所はすでに判明していたこと、相手方が経済的に困窮しており損害賠償請求をしても支払いの見込みがないこと、次々に新しい誹謗中傷記事を掲載し続けているため相手に刑事罰を与えた方が新たな書き込みの防止につながる可能性が高いと思われることから、刑事告訴が適していると判断しました。
●告訴状の作成
刑事告訴をするためには、その記事の内容が、刑事罰の対象となる犯罪行為でなければなりません。
まず、弁護士は誹謗中傷記事についてどのような犯罪が成立するか検討しました。その上で、多数掲載されている誹謗中傷記事の中から、名誉毀損罪に該当する可能性の高い記事をピックアップし、告訴状を作成しました。
告訴状の作成に当たっては、犯罪事実の特定のため、「いつ、だれが、誰と、どこで、誰に対して、何をしたのか」について具体的に記載をする必要があります。
今回のケースでは、名誉毀損罪に該当する可能性の高い記事の数が多く、すべての記事を告訴の対象とすると、告訴状が複雑になり、告訴状の受理が遅れる原因になることが懸念されました。そのため、迅速に告訴状を受理してもらうことを第一に、告訴の対象とする記事を絞って、わかりやすくまとめることを意識して告訴状を作成しました。
●告訴状の提出
告訴状を警察に提出した後、警察からは「告訴期間を経過しているのではないか」との指摘がありました。名誉棄損罪のような親告罪の場合、告訴期間は「犯人を知った日から6か月を経過するまで」と決められています。
この事例では、最初に名誉毀損記事が掲載されたのが6か月以上前であるため、警察は告訴期間を経過しているのではないかと考えたようでした。
しかし、裁判例上、「犯人を知った日」は「犯罪行為終了後の日で犯人を知った日」と解釈されているため、インターネット上の記事は、掲載されている限り犯罪が終了することはなく、告訴期間は経過しないことになります。
この点について、弁護士から警察に説明したところ、告訴状は無事に受理されました。
2,解決結果
告訴後、滞りなく捜査が進み、相手方は名誉毀損罪で送検・起訴され、相手方の刑事罰が確定しました。これによって相手方からの新たな書き込みはなくなり、刑事罰が確定したことで名誉毀損記事をすべて削除することに成功しました。
3,対応のポイント
名誉毀損罪で刑事告訴するためには、まず、当該行為が名誉毀損罪の法律上の要件を満たしていることが必要です。内容によっては、侮辱罪など、名誉毀損罪以外の犯罪に該当する可能性もあります。弁護士は、本件について、記事の内容を吟味し、名誉毀損罪の要件を満たしていると判断しました。
刑事告訴をするにあたって欠かせない告訴状ですが、告訴状は、要点を押さえて作成することが非常に重要です。必要な情報が欠けていたり、余計な情報が含まれていると、告訴状が受理されなかったり、受理が遅れる原因になってしまいます。
この事例では、要件をおさえたわかりやすい告訴状を作成した結果、告訴状を警察に送付してから1週間という短期間で受理してもらうことができました。
また、警察は数多くの事件を抱えているため、告訴状が受理されても、なかなか捜査が進まないことが少なくありません。この事例では、告訴状の受理後も弁護士から定期的に進捗確認を行ったことが、迅速な捜査・送検・起訴につながりました。
▶参考情報:この解決事例については以下で詳しく解説していますので併せてご参照ください。
(2)「転職会議」への誹謗中傷の投稿者を特定し、損害賠償請求に成功した事例
1,事案の概要
この事例では、転職者向けの企業のクチコミサイトに「ボーナスが支給されない」「詐欺的な営業をしている」などの会社の名誉を毀損する内容が投稿されました。実際には、会社はボーナスを支給しており、営業活動も正当なもので、投稿は事実とは異なる虚偽の内容でした。
2,咲くやこの花法律事務所の弁護士の対応
咲くやこの花法律事務所では、まず、この記事の投稿者を特定するため、発信者情報開示請求手続を行いました。裁判所での手続きにおいて、情報開示が認められるためには、「書き込まれた内容が法的に名誉毀損に該当すること」を証明しなければなりません。そして、名誉毀損に該当するかどうかの判断の中で特に問題となるのが、書き込みの内容が「真実がどうか」という点です。
この点が立証できなければ、名誉毀損に該当すると認められず、投稿者の情報の開示は認められません。
投稿内容のうち、「ボーナスがない」という点は、客観的な資料でボーナスを支払っていることを証明することが比較的容易です。
一方で、「詐欺的な営業をしている」という点については、どのような証拠があれば「詐欺的な営業をしていない」と認められるのかが明確でなく、立証のハードルが高くなります。
このケースでは、弁護士が検討の上、以下のような資料を提出し、会社が詐欺的な営業をしていないことを証明しました。
- 営業手法についての陳述書
- 実際の契約案件についての営業担当の従業員の報告書
- コンプライアンス研修の資料
- 顧客に提出した見積書(価格が適正であることを示す資料)
3,解決結果
結果として、書き込みの内容は名誉毀損に該当すると判断され、口コミの投稿者の情報が開示されました。そして、弁護士が投稿者に対して損害賠償請求を行い、投稿者による謝罪と損害賠償金を支払わせることに成功しました。
▶参考記事:この解決事例については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
・「転職会議」への誹謗中傷の投稿者特定と損害賠償請求の成功事例
上記の他にも誹謗中傷関連の事件についての解決事例をご紹介しています。
13,名誉毀損トラブルや誹謗中傷被害に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務所では、事業者側の立場で、名誉毀損に関するトラブルについてご相談をお受けしております。
咲くやこの花法律事務所の弁護士によるサポート内容をご紹介します。
※事業に関係しない誹謗中傷被害に関するご相談や、個人からのご相談は咲くやこの花法律事務所ではお受けしていません。
(1)名誉毀損への対応に関するご相談
咲くやこの花法律事務所では、名誉毀損に関して以下のようなご相談・ご依頼をお受けしています。
- 名誉毀損記事の削除請求
- 加害者の刑事告訴
- 名誉毀損行為に対する損害賠償請求
等
SNSやインターネット上に投稿された内容は、削除されない限り残り続けて多くの人の目に触れることになり、対応が遅くなればなるほど、会社が受けるダメージは大きくなります。状況によっては、投稿が転載される、投稿が多くの人に拡散されるなどして、被害がより拡大していきます。
また、匿名の投稿に対して発信者情報の開示などを検討する場合、投稿から時間が経つと、相手の特定に必要な記録が削除されてしまい、特定が難しくなってしまうケースもあります。そのため、誹謗中傷被害や名誉毀損の被害についてお困りの方は早めにご相談いただくことをおすすめします。
咲くやこの花法律事務所の弁護士へのご相談費用
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
▶参考情報:名誉毀損行為など誹謗中傷トラブルに関する咲くやこの花法律事務所のサポート内容、解決実績、選ばれている理由、相談するメリットなど、以下で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
(2)顧問弁護士サービスのご案内
咲くやこの花法律事務所では、誹謗中傷トラブルの対応はもちろん、企業法務全般をサポートするための顧問弁護士サービスを提供しています。企業側の立場で数多くの事案に対応してきた事務所の経験を活かし、弁護士がトラブルの予防、そしてトラブルが発生してしまった場合の早期解決に尽力します。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスのご案内は以下をご参照ください。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについては、以下の顧問弁護士サービスサイトで詳しく説明していますので、ご覧ください。
(3)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
弁護士の相談を予約したい方は以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
【お問い合わせについて】
※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
14,まとめ
この記事では名誉毀損についてご説明しました。
名誉毀損とは、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損することをいい、①公然性、②事実の摘示、③人の名誉の毀損の3つが成立要件となっています。
「公然と」とは不特定または多数の人が見聞きする状態、「事実の摘示」とは人や会社の社会的評価を害する具体的事実を示すこと、「名誉の毀損」とは人の社会的評価を害するおそれのある状態を生じさせることを指します。
例えば、多くの人が目にするインターネット上の掲示板に、○○という会社は顧客をだまして商品を買わせていると書き込むことなどが名誉毀損にあたります。ただし、公共性・公益性が認められ、内容が真実であるときは、違法ではないとされています。
侮辱罪と名誉毀損罪の違いは、事実が摘示されているかどうかという点です。事実の摘示があれば名誉毀損罪、事実の摘示がなければ侮辱罪です。
名誉毀損で訴える方法には、刑事上の責任として相手の処罰を求める方法と、民事上の責任として名誉毀損行為によって生じた損害の賠償や記事の削除などを請求する方法があります。もちろん両方の方法を並行して行うことも可能です。
名誉毀損罪は親告罪ですので、刑事上の責任追及をする場合は、警察に対して被害を受けたことを申告し、犯人の処罰を求める手続き(刑事告訴)をする必要があります。刑事告訴は「犯人を知った日から6か月を経過するまで」の間に行わなければなりません。
名誉毀損の被害は放置していてもなくなることはなく、むしろ拡大する危険があります。名誉毀損の被害でお困りの企業の方、事業者の方は、早めに咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
15,【関連】名誉毀損に関するその他のお役立ち記事
この記事では、「名誉毀損とは?要件、時効、訴える方法などを具体例付きで弁護士が解説」についてわかりやすく解説しました。名誉毀損など誹謗中傷トラブルに関する問題発生時の対応については、その他にも知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ対応が後手にまわり、投稿者を特定することが難しくなったり、被害が拡大してしまったりするリスクがあります。
以下ではこの記事に関連するお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。
・どこからが誹謗中傷?法律上の判断基準を具体例付きでわかりやすく解説
・誹謗中傷のコメントや口コミをされたら?具体例をあげて対処法を解説
・転職会議の口コミを削除したい!3つの削除申請方法を弁護士が解説
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記事作成日:2025年11月28日
記事作成弁護士:西川 暢春
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