こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
X(旧Twitter)をはじめとするSNS上では、企業や事業者に対する誹謗中傷、事実と異なる情報の拡散、なりすましアカウントによる信用毀損などのトラブルが増えています。こうした投稿は、企業のブランド価値や取引先との信頼関係に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
このような違法な投稿をした者に対して損害賠償請求や刑事告訴をしたいと考えていても、相手が何者かがわからないと訴えることができません。そこで、まず問題の投稿をした者の氏名や住所などを特定する必要があります。この投稿者を特定するための法的手続きが、「発信者情報開示請求」です。
ただし、開示請求はどんな理由でも認められるわけではありません。投稿によって自社の権利が侵害されていることが要件とされるため、請求するにあたって適切な法的判断と証拠の確保が必要になります。また、開示請求は時間との戦いという側面があり、スタートが遅れたり、失敗を繰り返したりしてしまうと、投稿者特定に必要な情報の保存期間が経過し、特定ができなくなってしまうことがあります。
この記事では、企業や事業者がX(旧Twitter)上の誹謗中傷やなりすまし等の悪質な投稿に対応するための開示請求について、手続きの流れ、請求の要件、手続きにかかる期間や費用等を中心に、弁護士がわかりやすく解説します。この記事を最後まで読んでいただくことで、X(旧Twitter)での開示請求について具体的に理解し、注意点やリスクを把握したうえで、失敗なく開示請求を進めていくことができるようになるはずです。
それでは見ていきましょう。
X(旧Twitter)の投稿は簡単に拡散されてしまうため、誹謗中傷やなりすましの投稿が会社にとって大きな損害を与えるおそれがあります。悪質な投稿は放置せず、発見したときは直ちに適切な対応を取る必要があります。
咲くやこの花法律事務所では、X(旧Twitter)で違法な誹謗中傷や権利侵害の被害にあった事業者からのご相談をお受けしています。お困りの際は早めにご相談いただくようにお願いします。
咲くやこの花法律事務所の誹謗中傷被害への対応に関するサポート内容については以下で詳しくご紹介していますのでご参照ください。
▶参考情報:誹謗中傷トラブルに関する弁護士への相談サービスはこちら
※咲くやこの花法律事務所では、企業または事業者からのご相談のみお受けしています。
また、咲くやこの花法律事務所の誹謗中傷トラブルの解決事例もご紹介していますのであわせてご覧ください。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
- 1,X(旧Twitter)の開示請求とは?
- 2,X(旧Twitter)での誹謗中傷などの開示請求の成功率はどの程度か?
- 3,開示請求の手続きの流れ
- 4,開示請求にかかる期間はどのくらい?
- 5,X(旧Twitter)のアカウント削除後でも開示請求できる?タイムリミットはあるのか?
- 6,X(旧Twitter)の開示請求は難しい?自分でできるのか?
- 7,X(旧Twitter)の開示請求にかかる費用の目安は?
- 8,実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士がX(旧Twitter)の投稿の開示請求をサポートした解決事例
- 9,【参考】開示請求されたらどうなるのか?
- 10,X(旧Twitter)の開示請求について弁護士に相談したい方はこちら
- 11,まとめ
- 12,【関連】誹謗中傷に関するその他のお役立ち記事
1,X(旧Twitter)の開示請求とは?

X(旧Twitter)の開示請求とは、X社に対して、誹謗中傷やなりすましなどの投稿を行った者を特定するための情報(住所や氏名)を開示するよう求める手続きをいいます。正式には、情報プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)で定められた「発信者情報開示請求」という法的な手続きです。
企業や事業者がX上で被害を受けるケースとしては、事実と異なる内容の投稿による名誉毀損、商品・サービスに対する根拠のない悪評の拡散、公式アカウントを装ったなりすましによるブランド価値の毀損などが典型例です。これらの投稿を行った者に対して損害賠償を請求したり刑事告訴をしたりするためには、投稿者を特定する必要があります。
この投稿者を特定するために行う手続きが「開示請求(発信者情報開示請求)」です。Xに対する開示請求は、内容証明郵便等の方法では開示されず、裁判手続きが必要です。裁判所に申立てをして情報開示を受けることで、最終的に、X(旧Twitter)に問題の投稿をした者(発信者)の氏名や住所などを特定することが可能になります。
▶参考情報:「情報流通プラットフォーム対処法」は、正式名称を「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」といいます。
以前はプロバイダ責任制限法(正式名称「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)と呼ばれていましたが、2024年の法改正で法律の名称も変更されました。
2,X(旧Twitter)での誹謗中傷などの開示請求の成功率はどの程度か?
X(旧Twitter)の投稿についての発信者情報開示請求の成功率は公表されていませんが、発信者情報の開示請求は、以下の要件を満たす場合に認められています(情報流通プラットフォーム対処法第5条)。
- 開示請求者が権利を侵害された本人であること
- 権利が侵害されたことが明らかであること
- 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること
- 開示請求をする相手方が「コンテンツプロバイダ」か「アクセスプロバイダ」であること
- 開示を求める情報が発信者情報に該当すること
以下で順番にみていきましょう。
(1)開示請求者が権利を侵害された本人であること
X(旧Twitter)での投稿について発信者情報開示請求を行うことができるのは、その投稿によって権利を侵害された本人のみです。友人や関係者であっても第三者が開示請求を行うことはできません。
(2)権利が侵害されたことが明らかであること
X(旧Twitter)の投稿について発信者情報開示請求を行うためにまず必要となるのは、その投稿の内容が、開示請求者の権利を侵害していることが明らかであることです(権利侵害の明白性)。
単なる意見や論評にあたる投稿など、書かれた側の企業にとって不都合な内容であるというだけでは足りず、その投稿内容によって、名誉毀損、信用毀損、業務妨害、著作権や商標権の侵害などの法的な権利侵害が明白であると認められる必要があります。
権利侵害が認められるのは以下のような場合です。
- 事実と異なる内容を投稿され、企業の社会的評価が低下した場合(名誉毀損)
- 虚偽の情報により、取引上の信用が害された場合(信用毀損)
- 根拠のない悪評を投稿され、業務に支障が生じている場合(業務妨害)
- ブランドロゴや社名を無断使用して、公式アカウントを装ったなりすましが発生している場合(商標権侵害)
- 個人が運営するアカウントについて、本人のアカウントを装ったなりすましが発生している場合(人格権侵害)
- 自社が著作権をもつ画像等を、無断でX上にポストされている場合(著作権侵害)
実際に権利侵害の明白性が認められるかどうかについては、権利の内容によって様々な要件があり、それに基づいて判断されます。専門的な知識を持つ弁護士に相談することが必要です。
▶参考情報:なお、名誉毀損や商標権侵害、著作権侵害については以下でも解説していますのであわせてご参照ください。
・名誉毀損とは?要件、時効、訴える方法などを具体例付きで弁護士が解説
(3)発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること
X(旧Twitter)の投稿について発信者情報開示請求を行うために必要な2つ目の要件は、発信者情報の開示を受けることについての正当な理由があることです。
開示を受けるべき正当な理由とは、発信者情報を入手することについての合理的な必要性があることを意味します。権利侵害にあたる投稿によって生じた被害を回復するために、発信者に対して、損害賠償請求、削除請求(差止請求)、または刑事告訴などの法的措置を行う目的が必要とされます。
(4)開示請求をする相手方が「開示関係役務提供者」であること
発信者情報開示請求は、「開示関係役務提供者」に対して行う必要があります。
▶参考情報:開示関係役務提供者とは、次の2種類の事業者のことをいいます(情報プラットフォーム対処法第2条11号)。
- ① 当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(コンテンツプロバイダ)
- ② 当該特定電気通信に係る侵害関連通信の用に供される電気通信設備を用いて電気通信役務を提供した者(アクセスプロバイダ(経由プロバイダ))
「① 当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」はいわゆる「コンテンツプロバイダ」のことです。
・例)インターネット掲示板やSNS等のデジタルコンテンツを運営する事業者を指します。X社もコンテンツプロバイダです。
「② 当該特定電気通信に係る侵害関連通信の用に供される電気通信設備を用いて電気通信役務を提供した者」は「アクセスプロバイダ」「経由プロバイダ」と呼ばれる、インターネット接続サービスを提供する事業者のことを指します。
・例)携帯電話会社やインターネット通信会社等がアクセスプロバイダにあたります。
これらに該当しない事業者に対して発信者情報開示請求をすることはできません。
▶参考情報:改正前のプロバイダ責任制限法の解説ですが、改正法でもそのまま使われている用語の解説などが参考になりますのでご覧ください。
(5)開示を求める情報が発信者情報に該当すること
発信者情報開示請求の手続きで、開示を求めることができる情報は、「発信者情報」に該当する情報に限られます。
発信者情報とは、権利侵害にあたる投稿をした者(発信者)を特定するための情報のことをいい、総務省令で規定されています。
具体的には以下のようなものです。
- 氏名または名称
- 住所
- 電話番号
- 電子メールアドレス
- 投稿時のIPアドレスやポート番号
- 投稿時のインターネット接続サービス利用者識別符号
- 投稿に使った携帯電話端末のSIM識別番号
- 投稿のタイムスタンプ(年月日や時刻)
総務省令で定められた発信者情報に該当しない事項について開示を求めても認められませんので注意が必要です。
Xにおける投稿についての発信者情報開示請求では、以下の開示を請求することが適切です。
- ① 誹謗中傷の投稿をしたアカウントにログインした際のIPアドレスとタイムスタンプ
- ② Xにアカウント情報として登録されている電話番号、メールアドレス
(6)ダイレクトメッセージは開示の対象外
発信者情報開示請求を行うには、権利侵害を引き起こした投稿が「特定電気通信による情報の流通」でなければなりません(情報プラットフォーム対処法第5条1項、2項)。
「特定電気通信」とは、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信のことです(情報プラットフォーム対処法第2条1号)。つまり、インターネット掲示板やSNSなどで誰でも見ることができる公開された投稿のことを指します。
X(旧Twitter)のDM(ダイレクトメッセージ)のように、当事者同士しか見ることができない1対1のメッセージについては、基本的に発信者情報開示請求の対象外です。悪質なDMが届く場合は、DM自体の受け取りを制限するようにXの設定を変更するなどの対策をおすすめします。
3,開示請求の手続きの流れ

発信者情報開示請求には以下の2つの方法があります。
- 発信者情報開示命令申立て
- 発信者情報開示仮処分命令申立て + 発信者情報開示請求訴訟
いずれも裁判所を通じた手続きです。旧プロバイダ責任制限法が改正される以前は、後者の方法しかなく、まず、X社に対して発信者情報開示仮処分命令を申し立て、その後、インターネット接続事業者(プロバイダ)に対して発信者情報開示請求訴訟を提起する必要があり、発信者を特定するまでに複数の裁判手続きを行う必要がありました。
法改正により、この手続きが一つの裁判手続きで行える仕組みが新たに導入されました。2022年10月から運用が開始されたこの新しい裁判手続きが、「発信者情報開示命令申立て」です。
▶参考情報:発信者情報開示命令申立てについては、以下の裁判所のホームページもご参照ください。
発信者情報開示命令申立てを利用すれば、一つの手続きの中で必要な発信者情報の開示を受けることができるため、従来の方法に比べて、迅速に投稿者を特定できます。
従来の方法が廃止されたわけではなく、新しい方法と従来の方法のいずれを利用するかを選択することが可能です。事案によっては従来の手続きの方が有効なこともありますので、どちらの手続きを利用するのかは、専門的な知識を持つ弁護士に相談して決めることをお勧めします。
▶参考情報:発信者情報開示請求についての一般的な解説は以下をご参照ください。
以下では、X(旧Twitter)上の投稿についての発信者情報開示命令申立てと従来の訴訟による開示請求の方法について、それぞれの手続きの流れを解説します。
(1)X(旧Twitter)上の投稿についての発信者情報開示命令申立て

発信者情報開示命令申立ての手続きは次のような手順で行います。
- 手順1:証拠の保存
- 手順2:X社への発信者情報開示命令申立て+提供命令申立て
- 手順3:アクセスプロバイダへの発信者情報開示命令申立て+消去禁止命令申立て
- 手順4:開示命令の発令・投稿者の特定
順番に見ていきましょう。
手順1:証拠の保存
裁判所への申立てを行うにあたって、まず重要になるのが、問題となっている投稿の証拠を保存しておくことです。
権利侵害がされた投稿を具体的に特定できないと、開示請求を行うことが難しくなります。投稿URL、投稿内容、投稿日時、アカウント名が確認できるスクリーンショットなどの記録を残しておきましょう。X(旧Twitter)では、投稿が削除されたり、アカウント自体が消去されたりする可能性があるため、投稿を発見した段階で速やかに証拠を確保しましょう。
そのうえで、さらに権利侵害にあたることの証拠を確保することが必要です。例えば名誉毀損にあたることを主張する場合、投稿内容が虚偽であることの証拠が必要になることが多いです。
手順2:X社への発信者情報開示命令と提供命令を申し立てる
そのうえで、X社(コンテンツプロバイダ)への発信者情報開示命令と提供命令の申立てを、裁判所に対して行います。
X(旧Twitter)は、利用者がログインするときのアクセスログ(通信記録)のみを取得し、ログイン後の個々の投稿に関するアクセスログは取得しない仕組みになっています。また、Xのアカウント作成時には、利用者の氏名や住所の登録を行っていないため、X社はこれらの情報を保有していません。
そこで、以下の情報の開示を請求することが適切です。
- 誹謗中傷の投稿をしたアカウントにログインした際のIPアドレスとタイムスタンプ
(投稿が行われた日時と最も近い時刻にログインしたときのIPアドレスとタイムスタンプ) - Xにアカウント情報として登録されている電話番号、メールアドレス
このうち、電話番号が得られれば、携帯電話会社に照会をかけることにより、その電話番号を契約した契約者の住所、氏名を特定することができます。ただし、アカウント開設時に登録した電話番号が解約されているケースもあり、また、アカウントの開設時期によってはXが電話番号情報を保有していないこともあるようです。
電話番号によって投稿者の特定に至らない場合は、IPアドレスとタイムスタンプの情報をもとに次の「手順3」のステップに進む必要があります。
手順3:アクセスプロバイダへの発信者情報開示命令と消去禁止命令を申立てる
コンテンツプロバイダ(X社)に対する提供命令が発令されると、まず、投稿者が利用したインターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)が判明します。
アクセスプロバイダは、Xに問題の投稿をした投稿者が投稿時に利用したインターネット契約の契約者の氏名や住所等の情報を保有しています。そこで次に、判明したアクセスプロバイダへの発信者情報開示命令を裁判所に申し立てます。
このとき同時に、アクセスプロバイダへの消去禁止命令の申立ても行います。
消去禁止命令とは、開示命令が出るまでの間、発信者のアクセスログ(通信記録)を消さないように裁判所から命じるものです。アクセスログは、通常数ヶ月の保存期間を経過すると消えてしまいます。ログが消えると発信者を特定することができなくなってしまうので、消去禁止命令を申立てておくことが重要になります。
手順4:開示命令の発令・投稿者の特定
裁判所が審理を行い、要件を満たしていると判断されれば、アクセスプロバイダに発信者(契約者)の氏名・住所等の開示を命じる開示命令が発令されます。開示命令が発令され、アクセスプロバイダから契約者の氏名や住所が開示されると、投稿者を特定することができます。
(2)X(旧Twitter)上の投稿について訴訟により発信者情報の開示を求める方法(従来の方法)

X上の投稿について、発信者情報開示請求の訴訟を提起して開示請求を行う方法もあります。この方法を採用する場合は、判決で投稿が名誉毀損等の権利侵害にあたるという裁判所の判断を明確にすることができます。裁判所の判決で判断の理由が示されることで、その判断を、のちの損害賠償請求や刑事告訴の際の根拠資料とすることができます。
前述の発信者情報開示命令申立ての手続きでは、開示命令が発令されてもその理由は示されないので、権利侵害にあたることを明確にしたい場合などには、従来の訴訟による開示請求も有効といえます。
訴訟により開示を求める方法は次のような手順です。
- 手順1:証拠の保存
- 手順2:X社に対する発信者情報開示仮処分命令申立て
- 手順3:アクセスプロバイダの特定
- 手順4:アクセスプロバイダに対する発信者情報消去禁止仮処分命令申立て
- 手順5:アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟の提起
- 手順6:開示請求の認容・投稿者の特定
順番に見ていきましょう。
手順1:証拠の保存
発信者情報開示命令申立てと同じく、まずは問題となっている投稿の証拠(投稿のURLやスクリーンショットなど)を保存しておきます。また、権利侵害にあたることの証拠を十分集めます。
手順2:X社への発信者情報開示仮処分命令を申し立てる
X社(コンテンツプロバイダ)に対して、問題の投稿が行われた日時と最も近い時刻にログインしたときのIPアドレスとタイムスタンプを開示するよう求める仮処分命令を裁判所に申し立てます。
手順3:アクセスプロバイダの特定
X社から開示されたIPアドレスとタイムスタンプをもとに、ログイン時に投稿者が利用したアクセスプロバイダをWhois検索などを用いて特定します。
手順4:アクセスプロバイダに対する消去禁止の仮処分命令を申し立てる
アクセスプロバイダが保有するアクセスログ(通信記録)が消えてしまうと、発信者情報が特定できなくなってしまいます。
開示請求訴訟中にログが消えてしまうおそれがあるため、アクセスプロバイダが判明したときは、まず、アクセスプロバイダに対してログの保存を求める発信者情報消去禁止仮処分命令を申し立てます。
手順5:アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟を提起する
アクセスプロバイダに対して契約者の氏名・住所の開示を求める訴訟を提起します。裁判所が訴えを認めれば、契約者の氏名や住所が開示されます。
開示請求をするにあたっては、まず、どのような権利の侵害を理由に発信者情報の開示を求めるのがよいかを適切に判断したうえで、権利の侵害についての証拠を確保することが重要です。これが正しくできていなければ、手続を進めても開示は認められません。
そのうえで、発信者情報開示命令申立てと発信者情報開示請求訴訟の2つの方法のどちらを選定するべきかについて、目指すゴールを見据えて適切に判断しなければなりません。また、どちらの方法で進める場合も、ログが消えてしまうまでに手続を進めなければなりませんので、スピードが求められます。
このように法的な判断が必要になるうえ、できる限り速やかに進める必要性があり、自社で対応しようとして時間を浪費してしまうと開示を得られない結果になる危険があります。早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
4,開示請求にかかる期間はどのくらい?

開示請求にかかる期間の目安は、発信者情報開示命令申立てを行う場合は3ヶ月程度、発信者情報開示請求訴訟を提起する方法の場合は約半年〜1年程度です。
ただし、開示命令申立てでも、X社の動きが遅くて開示まで半年以上かかるというケースもあります。
5,X(旧Twitter)のアカウント削除後でも開示請求できる?タイムリミットはあるのか?
X(旧Twitter)では、アカウント削除後30日間は、アカウントを復元することが可能です。この復元可能期間中は、X社に当該アカウントのログイン履歴などが保存されていますが、30日を過ぎるとログが消去されていくようです。
そのため、アカウントが削除された場合は1日でも早く開示請求の手続きを進める必要があります。
なお、アカウント削除後30日以内に開示命令の申立てをしても、X社の対応が遅いせいでログの保存期限に間に合わないケースも考えられます。可能な限り、アカウントが削除される前に開示請求の手続きを始めるようにしましょう。
また、X社だけでなくアクセスプロバイダにも通信ログの保存期間があります。アクセスプロバイダのログ保存期間は、事業者によって異なりますが、大体3〜6ヶ月程度です。この期間を過ぎるとログが消去されてしまい、発信者情報の特定が不可能になります。
明確なタイムリミットは確認できないものの、必ず期限があるので、発信者情報の開示請求を考えている場合は、問題の投稿がされた後できる限り早く着手することが重要です。
6,X(旧Twitter)の開示請求は難しい?自分でできるのか?
開示請求は、権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)などの要件を満たしていなければ認められません。そのため、請求する前の段階で、要件を満たすための証拠を確保したうえで行わなければなりません。どのような権利を侵害したと主張すべきか、そのためにどのような証拠を確保すべきかについては、専門的な知識が必要ですので、専門的な知識を持つ弁護士に相談することが重要です。
また、開示請求の要件を満たす場合、発信者情報開示命令と発信者情報開示請求訴訟のいずれの手段を取るべきかを適切に判断した上で、手続きを正確に進めていかねばなりません。判断や手続きにミスがあると、時間を無駄に消費してログ保存期間を過ぎてしまい、開示請求ができずに終わるという事態につながりかねません。
専門的な知識を持つ弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
X(旧Twitter)の開示請求では、裁判所によって、開示命令の申立てが却下されるケースも少なくありません。しかし、咲くやこの花法律事務所では、裁判所に発信者情報開示命令の申立てが却下された後に異議の訴えを提起し、最終的に発信者情報の開示を実現した実績もあります(▶参考情報:「8,実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士がX(旧Twitter)の投稿の開示請求をサポートした解決事例」を参照)。
このような経験を活かして、Xにおける権利侵害に悩んでおられる事業者からの、開示請求のご相談に取り組んでいます。Xの開示請求をご検討の場合は、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
7,X(旧Twitter)の開示請求にかかる費用の目安は?
裁判所を通じてX(旧Twitter)上の投稿について発信者情報開示申立てを行う場合の手数料と、開示請求を弁護士に依頼した場合の弁護士費用について説明します。
(1)申立手数料
裁判所に発信者情報開示申立てをする場合、手数料を収入印紙で納付する必要があります。
金額は以下のとおりです。
- コンテンツプロバイダへの発信者情報開示命令申立て:1,000円
- 提供命令の申立て:1,000円
- アクセスプロバイダへの発信者情報開示命令申立て:1,000円
- 消去禁止命令の申立て:1,000円
それぞれの手続きは、手数料の他に郵便料もかかります。郵便料の納付額や納付するタイミングについては、事案によって異なりますので、申立時に裁判所に確認が必要です。
(2)弁護士費用
弁護士に依頼する場合、一般的に、着手金と報酬金が必要になります。
金額は事案によって大きく異なりますが、目安としては以下のとおりです。
- 着手金:30万円+税程度
- 報酬金:開示成功時に30万円+税程度
開示請求する投稿の数が複数の場合や、投稿内容についての権利侵害の立証の難易度が高い場合など、事案にかかる労力が大きい場合は、その分、弁護士費用が高額になる可能性があります。
8,実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士がX(旧Twitter)の投稿の開示請求をサポートした解決事例
咲くやこの花法律事務所では、X(旧Twitter)の投稿の開示請求に関する相談や依頼を事業者からお受けし、事業者側の立場で解決してきました。ここでは、咲くやこの花法律事務所が実際に対応した解決事例をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
(1)Xで依頼会社を誹謗中傷した投稿について、損害賠償請求訴訟等を起こすために発信者情報開示命令申立等を行い、投稿者を特定することができた事例
本件は、Xに投稿された依頼会社の名誉権を侵害する投稿の発信者に対して、損害賠償請求や記事削除差止め請求等をするために、発信者情報開示命令申立てを行った事例です。
咲くやこの花法律事務所の弁護士が、まず、X社に対して、依頼会社の権利を侵害していると思われる投稿について発信者情報開示命令申立てをしました。しかし、裁判所はこれを却下し、X社から発信者情報の開示を受けることができませんでした。
そこで、咲くやこの花法律事務所の弁護士は、発信者情報開示命令の申立て却下決定に対する異議の訴え(訴訟)を提起しました。その結果、問題の投稿によって依頼会社の名誉権が侵害されていることが認められ、開示命令の却下決定が取り消されて、X社に対して発信者情報を開示するよう命じる判決が出ました。
判決を受けて、X社から当該投稿を行ったアカウントの電話番号及びメールアドレス等が開示されたので、電話番号から判明した携帯電話会社に照会を行ったところ、契約者の氏名と住所について回答を得ることができ、投稿者の特定に至りました。投稿者が特定できたので、投稿者に対して損害賠償請求訴訟を提起しました。
この件では、X社に対する発信者情報開示命令申立てから裁判所の開示命令が出るまでに約8か月かかりました。また、開示命令が出てからX社が実際に発信者情報(アカウント開設時に登録された電話番号やメールアドレス)を開示するまでには、X社の対応が遅く、約2か月かかりました。さらに、X社から開示された電話番号をもとに携帯電話会社への照会によって発信者の特定に至るまでには約3か月かかりました。これは、携帯電話回線が転出していたりMVNO回線であったりしたため、照会を複数回要したためです。
上記のX(旧:Twitter)の開示請求関連の他にも誹謗中傷関連の事件についてのサポート事例をご紹介していますので、以下からご参照ください。
9,【参考】開示請求されたらどうなるのか?
ここまで開示請求をする側の説明をしてきました。では反対に、自社が行ったX(旧Twitter)上の投稿について開示請求されたらどうなるでしょうか。開示請求を受けた場合の流れについて説明します。
Xの投稿で自己の権利を侵害された者が、発信者情報開示請求を行ったとき、投稿に使用されたスマホやパソコンのインターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)は、契約者に対して、開示に同意するかどうか、開示を拒否する場合はその理由について意見照会をします(情報プラットフォーム対処法第6条1項)。
会社としてはXに誹謗中傷にあたるような投稿をした覚えが無くても、従業員が社内のインターネット回線や社用携帯などの端末を使って問題のある投稿をした場合、会社名義で契約しているプロバイダから、会社に対して意見照会書が届くことになるのです。
会社に意見照会書が届いた場合の対応について検討しましょう。
(1)開示請求に応じるかどうか?
プロバイダから意見照会を受けた場合、まずは発信者情報の開示に同意するか否かを回答する必要があります。
問題の投稿をした従業員が特定できれば、事実関係の聞き取りをして判断するとよいでしょう。
契約者である会社が開示に同意した場合、アクセスプロバイダから開示請求の申立人に対して、契約者の名義や住所、つまり会社の名称や所在地が開示されます。
ただし、契約者が開示を拒否した場合でも、裁判所が開示請求を認めて開示命令を出せば、アクセスプロバイダから開示請求の申立人に対して、会社の名称や所在地が開示されることになります。
(2)開示に応じない場合はその理由も書く
開示を拒否する場合は、その理由も回答しましょう。
開示が認められる要件は「権利侵害の明白性」や「開示を受ける正当な理由があること」なので、これらの要件を満たしていないと思われる場合は具体的に理由を書いて回答すると良いでしょう。
従業員が勝手にしたことなので会社には関係ない、身に覚えがない等の理由では、拒否したところで最終的に開示される可能性が高いです。
(3)開示を拒否した場合の流れ
前述の通り、契約者が開示を拒否した場合でも、裁判所が開示請求を認めて開示命令を出せば、アクセスプロバイダから開示請求の申立人に対して、契約者の名義や住所、つまり会社の名称や所在地が開示されます。
会社の情報が開示されたとしても、誹謗中傷行為が従業員が私的に行ったものであれば、それについて会社が責任を負う可能性は低いと考えられます。ただし、業務上の行為にあたると判断された場合は、使用者責任を根拠に会社が責任を問われる可能性もあります。
▶参考情報:使用者責任については以下もご参照ください。
また、報道で会社名が出てしまうとイメージダウンにつながりかねません。会社にXから意見照会書が届いたときは、弁護士に相談して、今後の流れやリスクについて検討した上で対応することをお勧めします。
10,X(旧Twitter)の開示請求について弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務所では、X(旧Twitter)の開示請求について、事業者側の立場からのご相談をお受けしています。以下では咲くやこの花法律事務所の事業者向けサポート内容をご紹介いたします。
(1)開示請求できるかどうか、開示請求する場合の対応についてのご相談
咲くやこの花法律事務所では、会社の権利を侵害したり、会社を誹謗中傷するX上の投稿についての発信者情報開示請求のご相談を承っています。
開示請求はどんな投稿でもできるわけではなく、権利侵害の明白性や開示請求をする正当な理由などの要件を満たしている必要があります。要件を満たしているかどうかの判断には、専門的な知識が必要です。
咲くやこの花法律事務所にご相談いただくことで、X上の投稿が開示請求できるケースかどうか、弁護士から具体的な見解を得ることができます。また、開示請求が可能な場合は、具体的にどの手続きで開示請求をするべきか、事案に応じた適切な対応と証拠の確保を助言します。Xの開示請求は迅速に行うことが重要です。早めにご相談、ご依頼いただくことをおすすめします。
咲くやこの花法律事務所の弁護士への相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
(2)損害賠償請求、刑事告訴などの法的措置に関する相談
咲くやこの花法律事務所では、開示請求によって投稿者が特定できた場合、損害賠償請求や刑事告訴に関するご相談もお受けしています。
投稿者に対する損害賠償請求の交渉や訴訟の代理あるいは刑事告訴できるかどうかの検討・証拠の収集・告訴状の作成についてもご相談をお受けしています。
Xでの誹謗中傷に対する法的対応を考えておられる場合は、咲くやこの花法律事務所の弁護士にご相談ください。
咲くやこの花法律事務所の弁護士へのご相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
▶参考情報:誹謗中傷に関する損害賠償請求については以下の記事でも解説していますのであわせてご参照ください。
(3)顧問弁護士サービス
咲くやこの花法律事務所では、事業者向けに日々のご相談に対応する顧問弁護士サービスを提供しています。顧問弁護士サービスをご利用いただき、日頃から継続的にご相談いただくことで、X上で問題のある投稿がされたときに素早く対応したり、法的措置を適切に進めたりすることができます。また、日頃から弁護士の助言を受けながら、誹謗中傷対策に取り組むことで、誹謗中傷トラブルに強い企業を作っていくことができます。
▶参考情報:企業が取り組むべき誹謗中傷対策については以下で解説していますのであわせてご参照ください。
顧問契約をご検討中の方は、無料で弁護士との面談(オンラインや電話も可)を実施しておりますので、気軽にお問い合わせください。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの費用例
●月額3万円+税~15万円+税
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの内容は以下をご参照ください。
(4)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
弁護士の相談を予約したい方は以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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11,まとめ
X(旧Twitter)の開示請求とは、X上の投稿によって名誉毀損などの権利侵害を受けたときに、その投稿を行った者を特定するために、X社やアクセスプロバイダに対して、発信者に関する情報を開示するよう裁判所を通じて求める手続きのことをいいます。
発信者情報開示命令申立てによる方法と、発信者情報開示請求訴訟による方法の2種類があり、事案に応じて、適切な手続きを選択することが可能です。
開示請求の手続きは、プロバイダのログ保存期間のうちに行う必要があります。また、投稿者がアカウントを削除すると、アクセスログが1か月程度で消えてしまう場合があり、権利侵害の投稿がされたらすみやかに開示請求を進めることが重要です。
早期の対応が重要な上、手続きが複雑ですので、開示請求を検討する場合は、早急に専門的な知識を持つ弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
12,【関連】誹謗中傷に関するその他のお役立ち記事
この記事では、「X(旧Twitter)の開示請求のやり方は?成功させるための注意点を解説」についてわかりやすく解説しました。X(旧Twitter)の投稿に関する誹謗中傷トラブル発生時の対応については、その他にも知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ対応が後手にまわり、投稿者を特定することが難しくなったり、被害が拡大してしまったりするリスクがあります。
以下ではこの記事に関連する誹謗中傷のお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。
・どこからが誹謗中傷?法律上の判断基準を具体例付きでわかりやすく解説
・ネットの誹謗中傷や名誉毀損記事を削除依頼する方法とは?詳しく解説
・誹謗中傷のコメントや口コミをされたら?具体例をあげて対処法を解説
・誹謗中傷で訴えるには?裁判など法的措置の進め方や注意点を弁護士が解説
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記事作成日:2026年1月22日
記事作成弁護士:西川 暢春
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