景品表示法(景表法)とは、消費者向けの広告や、販売の際の景品提供について規制を設けており、事業者にとって注意を要する重要な法律の1つです。その内容は、主に、消費者向けの不当な広告を規制する内容と、消費者向けの販売における過大な景品の提供を禁止する内容の2つからなります。
例えば、2020年、東京都は、24000件のインターネット広告の景品表示法違反を監視し、329事業者に改善指導を行ったことを公表しています。
過去に景品表示法違反を理由に処分を受けているケースは、悪意があって虚偽の広告などをしているケースだけでなく、法律についての知識不足が原因で知らないうちに景品表示法(景表法)に違反してしまっているケースが多く見受けられます。
さらに、景品表示法違反は多種多様な商品の販売について問題になり、以下のように多額の課徴金納付が命じられる事例も相次いでいます。
- 参考例:エアコン販売に関する景品表示法違反で5180万円の課徴金の納付を命じられた事例
- 参考例:抱っこひもの販売に関する景品表示法違反で3億7478万円の課徴金の納付を命じられた事例(PDF)
そして、いったん処分を受けてしまうと、処分内容がインターネット上に公表され、社名や商品名を検索した消費者の目にもつきます。その結果、実際は知識不足が原因の処分であっても、消費者から悪徳業者であるかのような印象をもたれ、事業の重大な障害になるおそれも否定できません。
この記事では、景品表示法(景表法)の重要なポイントについてわかりやすく解説します。最後まで読んでいたただくことで、景品表示法の重要ポイントを理解し、景品表示法違反のリスクがある場面に自社で気づいて弁護士に相談していただくことができるようになります。
景品表示法への意識を高め、リスクを回避していくことが必要です。
それでは見てきましょう。
景品表示法違反により、企業の信用を損なうような事態を事前に防止するためには、広告の企画や景品提供の企画について、弁護士のリーガルチェックを受ける体制を整備しておくことが必要です。
新しいキャンペーンを行う際や新しい広告企画を行う際、あるいは商品のパッケージを検討する際は、必ず事前に弁護士のチェックを受けるようにしてください。
景品表示法に関して弁護士に相談すべき理由と弁護士費用などについては、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
▶景品表示法(景表法)に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
今回の記事で書かれている要点(目次)
1,景品表示法(景表法)とは?
景品表示法(景表法)は、企業が商品やサービスの販売にあたって「消費者を誤認させるような不当な広告をすること」と「消費者の判断を誤らせるような過大な景品の提供をすること」を禁止する法律です。前者は「不当な表示の禁止」、後者は「景品類の制限及び禁止」と呼ばれます。不当な顧客誘引の禁止を目的とする法律です。
消費者庁は景品表示法違反について消費者からの通報を受け付けており、違反事業者に対しては再発防止等を命じる措置命令や、課徴金の納付を命じる課徴金納付命令を出す権限を有しています。
▶参考情報:景品表示法違反については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にご覧ください。
(1)法律の正式名称について
景品表示法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」です。「景品表示法」あるいは「景表法」と略称されることが多くなっています。
景品表示法(景表法)は主に消費者向けに事業を行う企業で注意を要する法律です。ただし後述する「一般懸賞における景品金額の上限規制」については、事業者向け販売の場面でも適用されます。
▶参考動画:この記事の著者 弁護士西川 暢春が『「景品表示法(景表法)」とは?概要・規制・違反事例を弁護士が解説【前編】』と『景品表示法の重要ポイント!違反時の罰則や防止対策【後編】』について解説していますので、あわせてご参照ください。
2,景品表示法(景表法)の概要
景品表示法は、主に以下の2つの内容を含む法律です。
(1)不当な広告表示を禁止する内容
まず、主に消費者に向けて自社の商品やサービスを広告する場面において、企業による不当な広告表示を禁止する内容です。
(2)過大な景品の提供を禁止する内容
次に、企業が自社の商品やサービスを販売するにあたって景品を提供する場面で、過大な景品の提供を禁止する内容です。
以下では、商品やサービスについて「不当な表示を禁止する規制」についてまず解説し、次に、景品を提供する場面において「過大な景品提供を禁止する規制」について解説します。
3,不当表示を禁止する規制と違反事例
景品表示法の「不当な表示を禁止する規制」は、「消費者を誤認させるような不当な広告や表示をすること」を禁止しています。
その内容には、「優良誤認表示の禁止」、「有利誤認表示の禁止」、「その他誤認させるおそれがある表示の禁止」の3つがあります。
(1)優良誤認表示の禁止について
優良誤認表示とは、商品やサービスの品質等について、「実際よりも著しく優良であるかのような表示をするケース」や、「事実に反して競合他社の商品、サービスよりも著しく優良であるかのような表示をするケース」をいいます。
優良誤認表示は、景品表示法第5条1号により禁止されています。
▶参考:「景品表示法第5条1号」
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
・参照元:「景品表示法」の条文はこちら
また、優良誤認表示については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
1,虫コナーズの優良誤認表示の事例
例えば、平成27年2月、大日本除蟲菊株式会社の「虫コナーズ玄関用」やアース製薬株式会社の「パボナ虫よけネットW」が、商品パッケージ上の表示について、消費者庁の措置命令を受けました。
これは、商品パッケージに記載された虫よけ効果について、その根拠を確認できず、商品の品質について実際よりも著しく優良であるかのように表示する優良誤認表示にあたると判断されたことが原因です。
2,不実証広告規制
この優良誤認表示の規制については、「不実証広告規制」という重要なルールがあります。
1,不実証広告規制ルールとは?
このルールは、広告で宣伝されたり、あるいはパッケージに表示された商品の効果や性能について、事業者が消費者庁から根拠資料の提出を求められた後15日以内に根拠資料を提出できない場合は、優良誤認表示と判断されるというルールです。
このルールのもとでは、商品の効果や性能について事実に基づく記載をしていたとしても、15日以内にその根拠を消費者庁に提出できなければ、違法と判断されてしまうことに注意が必要です。
前述の虫コナーズの事例も、パッケージに記載した虫よけ効果の根拠として会社が消費者庁に提出した資料が、消費者庁により、虫よけ効果を十分に根拠づけるものではない判断された結果、不実証広告規制に基づき、処分をうけました。
不実証広告規制については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
(2)有利誤認表示の禁止について
有利誤認表示とは、価格や商品の量、アフターサービスなどの取引条件について「実際よりも著しく有利であるかのように誤認させる表示をするケース」や、「競合他社の商品、サービスの取引条件よりも著しく有利であるかのように誤認させる表示をするケース」をいいます。
有利誤認表示は、景品表示法第5条2号により禁止されています。
▶参考:「景品表示法第5条2号」
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
・参照元:「景品表示法」の条文はこちら
また、有利誤認表示については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
以下では有利誤認表示の例として、「期間限定キャンペーンの事例」、「返金保証広告の事例」、「オンラインゲームのガチャの確率表示についての事例」を例としてとりあげてご説明します。
1,期間限定キャンペーンの事例
期間限定のキャンペーンとうたいながら、実際には繰り返し同じキャンペーンを行うことは、景表法の「有利誤認表示」に該当する場合があります。
繰り返し行われているキャンペーンでありながら、「期間限定」とうたっている点が、「実際よりも著しく有利であるかのように誤認させる表示」に該当する可能性があるからです。
参考例:
アディーレ法律事務所
※画像は、消費者庁ホームページより
例えば、アディーレ法律事務所は、期間限定のキャンペーンをうたいながら、実際には1ヶ月おきに同じキャンペーンを繰り返していた点が有利誤認表示にあたるとして、平成28年2月、消費者庁から措置命令を受けています。
2,返金保証広告の事例
消費者が商品やサービスに満足しない場合に代金を返金することを訴求する広告を返金保証広告といいます。
この返金保証広告についても、広告ではあたかも無条件で返金をうけられるかのようにうたいながら、実際には契約書や利用規約で「会社が承認した場合に限る」とか「〇日以内に連絡した場合に限る」などと返金について条件を設けている場合は、景表法の「有利誤認表示」に該当する場合があります。
参考例:
プライベートジムを運営するRIZAP株式会社
例えば、プライベートジムを運営するRIZAP株式会社が行った「30日間全額返金保証」をうたった広告について、実際には会則で返金には会社の承認が必要とされており、有利誤認表示の疑いがあるとして、神戸の消費者団体から指摘を受け、同社が会則を変更するなどにより対応したことが報道されました。
広告で返金保証をうたう際の注意点については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
3,オンラインゲームのガチャの確率表示についての事例
オンラインゲームの分野でも、アワ・パーム・カンパニー・リミテッドが「THE KING OF FIGHTERS’98 ULTIMATE MATCH Online」で行った5日間の期間限定の「ガチャ」の確率表示について、消費者庁の措置命令を受けました。
この事例で、同社はガチャで特定のキャラが3%の確率で当たると表示していましたが、実際の確率は0.33%だったという点が「有利誤認表示」にあたるとされています。
(3)その他の誇大広告やおとり広告の禁止
ここまでご説明した「優良誤認表示」、「有利誤認表示」の2つが、景表法の表示についての主な規制ですが、そのほかにも、以下の6つの規制が業種に応じて設けられています。
▶参考情報:無果汁の清涼飲料水等についての表示
▶参考情報:商品の原産国に関する不当な表示
▶参考情報:消費者信用の融資費用に関する不当な表示
▶参考情報:不動産のおとり広告に関する表示
▶参考情報:おとり広告に関する表示
▶参考情報:有料老人ホームに関する不当な表示
4,ステルスマーケティング(ステマ)規制が法改正により導入される
ここまでご説明したもののほか、令和5年10月には日本で初めてステルスマーケティングに関する法規制が導入されました。
実際は事業者による広告であるにもかかわらず、事業者による広告であることを一般消費者が判別することが困難であるものはステルスマーケティング規制により違法になり得ます。
例えば、事業者がインフルエンサーや消費者等に依頼して、報酬を支払って、事業者が指定する内容のクチコミをSNSやクチコミサイトに投稿してもらうことが典型例です。
消費者庁は、どのような場合にステルスマーケティング規制の対象になるか等の基本的な考え方を、「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準(pdf)」に定めています。
ステルスマーケティング規制については、以下で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
5,過大な景品類の提供を禁止する規制
次に、景表法の2つ目の柱である「消費者の判断を誤らせるような過大な景品の提供をすること」を禁止する規制についてご説明します。
景品表示法では、景品(おまけ)の提供は消費者が景品に注目することにより、消費者の判断を誤らせる原因になるとされ、このような観点から過大な景品の提供を禁止する規制が設けられています。
具体的には主に、「一般懸賞」、「共同懸賞」、「総付懸賞」の3つの規制が設けられ、そのほかにも不動産業など特定の業種について業種に応じた特別な規制が設けられています。
(1)「くじ」などの一般懸賞における景品金額の上限規制
一般懸賞とは、「くじ」や「抽選」、クイズの回答の正誤、競技や遊戯の優劣などにより、購入者のうち一部にのみ景品を提供することをいいます。
このような一般懸賞については、景品の金額について以下の上限規制が設けられています。
取引価格 | 景品の最高額 | 景品の総額の上限 |
取引価格が 5,000円未満の場合 |
取引価格の20倍まで | 懸賞を提供する取引による 売上予定総額の2%まで |
取引価格が 5,000円以上の場合 |
10万円まで | 懸賞を提供する取引による 売上予定総額の2%まで |
(2)共同懸賞における景品金額の上限規制
共同懸賞とは、商店街や一定の地域内の同業者が共同して景品を提供することをいいます。
共同懸賞については、景品の金額について以下の上限規制が設けられています。
景品の最高額 | 景品の総額の上限 |
取引価格にかかわらず30万円まで |
懸賞を提供する取引による |
(3)総付景品における景品金額の上限規制
総付景品とは、商品の購入者や来店者全員に景品を提供することをいいます。
総付景品については、景品の金額について以下のとおり上限が設けられています。
取引価格 | 景品の最高額 |
取引価格が 1,000円未満の場合 |
200円まで |
取引価格が 1,000円以上の場合 |
取引価格の10分の2まで |
1,総付景品における取引金額について
一定購入額以上の購入者全員に景品を提供する場合は、その最低購入額が取引金額となります。
これに対して、購入額を問わずに購入者全員に景品を提供する場合や、購入の有無を問わずに来店者全員に景品を提供する場合は、一番安い商品、サービスの代金を取引金額とすることが通常です。
また、特定の商品やサービスについてダイレクトメールを送り、それに応じて来店した来店者に景品を提供する場合は、ダイレクトメールに掲載された商品やサービスの代金を取引金額とします。
総付景品について規制の詳細については、以下の告示及び運用基準を御覧ください。
(4)不動産業における景品金額の上限規制
総付景品における一般的な景品金額の上限規制は上記の通りですが、不動産取引の分野では、上記の計算方法では金額が大きくなりすぎるので、例外として、「取引額の10分の1または100万円のいずれか低い金額」を総付景品における景品金額の上限とすることが定められています。
その他にも業種によって、特別な景品規制のルールが設けられているケースがあり、注意が必要です。
▶参考情報:業種別景品規制の詳細については、以下の告示を御覧ください。
・新聞業における景品類の提供に関する事項の制限(告示)(PDF)
(5)ノベルティなどを提供する場合の景品の金額についての考え方
景品としてノベルティなどを提供する場合、その景品をいくらと評価するのかが問題になります。景品について金額評価ができてはじめて、景品規制の上限の範囲内かどうかを判断できることになるためです。
この景品の価格については、景品と同じものが市販されている場合は、その市販されている金額で評価することが原則とされています。
一方、オリジナルのノベルティなどで市販されていない場合は、類似品の価格や仕入れ原価などから市販された場合の価格を想定したうえで、その価格で評価することになっています。
景品の価格の算定基準については以下をご参照ください。
景品の価格は、景品類の提供を受ける消費者が、それを通常購入するときの価格により算定するとされていることから、消費税を含んだ金額で評価します。
そのため、景品の提供にあたっては、景品価格の税込み額が上限規制の範囲内であるかどうかを確認する必要があります。
(6)割引、値引きは景品にはあたらないことがある
正常な商慣習に照らして割引、値引きと認められる経済上の利益の提供は、「景品」にはあたらないとされ、景品表示法の規制の対象外とされています。
値引きについて景品に該当する場合と該当しない場合が以下の通り例示されています。
1,景品に該当しないケース
① いわゆる値引きのケース
「×個以上買う方には、○○円引き」、「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」、「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」など
② いったん支払った代金をキャッシュバックするケース
「レシ ート合計金額の○%割戻し」、「商品シール○枚ためて送付すれば○○円キャッシュ バック」など
③ 購入者に対して同じ商品をおまけするケース
「コーヒー5回飲んだらコーヒー一杯無料券をサービス」など
2,景品に該当し景品表示法の適用を受けるケース
① 値引き分やキャッシュバック分の金銭の使途が制限されているケース
参考例:値引き分を旅行代金に充てさせる場合
② 値引きと景品の提供を同時に行うケース
参考例:購入者にキャッシュバックか、景品の提供かを選択させる場合
③ 購入者に対して同じ商品ではなく他の商品を提供するケース
参考例:「コーヒー○回飲んだらジュース一杯無料券をサービス」など
割引、値引きについて景品表示法の適用を受けるかどうかに関しては、詳細な基準が設けられています。
詳細は以下の告示等を御覧ください。
(7)ポイントの付与と景品表示法の規制
商品の購入者に対して、自店での次回以降の購入の際に支払いの一部に充てることができるポイントを付与することは、通常は、前述の「値引き」に該当し、景品表示法の規制の対象外です。
これに対して、自店だけでなく他店でも使えるポイントを付与する場合は景品に該当し、原則として景品表示法の適用を受けます。また、付与されたポイントを値引きに利用するだけでなく、景品との交換も選択できるようなケースについても景品表示法の適用を受けます。
これらの場合は、付与されるポイントを金額評価した場合に、景品規制の上限内である必要があります。
6,景品表示法違反となった場合の罰則等
景品表示法違反があった場合、事業者には以下の制裁が科されます。
(1)措置命令
消費者庁や都道府県は、景品表示法違反に対して、措置命令を出すことができます。
措置命令では、一般消費者に与えた誤認を排除することや、再発防止策を講ずること、違反行為をやめることなどが事業者に命じられます。
また、その内容は消費者庁のWebサイトなどで公表されることになります。
(2)課徴金
優良誤認表示や有利誤認表示については、課徴金納付命令の対象にもなります。
課徴金納付命令では、原則として、不当な表示があった商品・サービスの売上額の3%相当額の納付を命じられます。
▶参考例:日本マクドナルドが「東京ローストビーフバーガー」等の商品について
例えば、令和元年には、日本マクドナルドが「東京ローストビーフバーガー」等の商品について、実際には成形肉を使用しているのにブロック肉を使用しているかのような表示をしたとして、これが優良誤認表示に該当するとされ、合計2171万円の課徴金納付命令を受けています。
ただし、不当な表示があった商品・サービスの売上額が5000万円未満の場合や、事業者が表示の根拠となる情報を確認するなど通常必要な注意をしていたが不当表示に該当してしまったような場合は、課徴金納付命令の対象外とされています。
(3)自主返金措置について
課徴金納付命令については、命令を受けた事業者が命令の対象となった商品やサービスの購入者に対して、購入額の3%以上を返金した場合、その返金分を課徴金から差し引く「自主返金措置」の制度が設けられています。
この返金は事業者の義務ではありませんが、返金した事業者には課徴金を減額することで、事業者に対して自主的な返金を促すものです。
(4)消費者からの通報について
消費者庁は、景品表示法違反の事例について、消費者庁自身の調査のほかに、一般消費者からの通報窓口を設けて、情報収集をしています。
7,景品表示法(景表法)に関するガイドライン
景品表示法に関しては、多数の告示やその運用基準が消費者庁から出されており、これらを確認のうえ、対応することが重要です。
各ガイドラインについては以下をご参照ください。
以下では特に重要なガイドラインである原産国表示に関するガイドラインと、二重価格表示に関するガイドラインについてご紹介します。
(1)原産国表示に関するガイドライン
外国産商品について、原産国以外の地名を商品に表示するなどした結果、商品の原産国について消費者に誤認させるような表示になっている場合は、「商品の原産国に関する不当な表示」に該当します。
商品の産地について虚偽の記載をした場合に違法になることは当然ですが、産地としての記載であることを明記せずに商品に地名や国旗を表示した場合であっても消費者に誤認させるような場合は、上記の基準により違法とされるケースがあります。
1,原産国表示に関する処分事例
例えば、消費者庁は、岩手県盛岡市の会社が販売する蜂蜜について、「品質保証 いわて・もりおか 藤原養蜂場」などと記載されたシールを商品に貼って販売した事例について、実際には国内産の蜂蜜だけでなく、中国産、ハンガリー産の蜂蜜が混合されていた点が、「商品の原産国に関する不当な表示」に該当するとして措置命令を出しました。
この事例では、上記のシールのほかに、商品のラベルにも、以下の記載がありました。
※画像は、消費者庁ホームページより
この事例では「岩手産」あるいは「国産」と表示されていたわけではないですが、「品質保証 いわて・もりおか 藤原養蜂場」などと記載したことから措置命令を受けており、注意が必要です。
原産国についての表示についての基準の詳細は以下をご参照ください。
▶参考情報:商品の原産国に関する不当な表示(PDF)
▶参考情報:「商品の原産国に関する不当な表示」の運用基準について(PDF)
(2)二重価格表示に関するガイドライン
二重価格表示とは、例えば、「当店通常価格1000円のところ、本日限り600円」と記載する場合のように、値引き前の価格と、値引き後の価格を併記して表示する価格の表示方法をいいます。二重価格表示についての基礎知識については、以下でわかりやすく解説していますので、こちらをご覧ください。
このような二重価格表示において、値引き前の価格として表示される価格が実態のないものであると、一般消費者に販売価格が安いという誤認を与える「有利誤認表示」に該当し、処分の対象となります。
二重価格表示に関する規制の概要は以下の通りです。
1,セール価格とは別に「当店通常価格」など過去の自店における販売価格を表示する場合
「当店通常価格」を表示するためには、原則として、セール開始時からさかのぼって8週間のうち、「当店通常価格」で販売されていた期間が4週間を超えることが必要とされています。
ただし、この条件を満たす場合でも、「当店通常価格」で販売された最後の日から2週間以上経過している場合は、セールにあたってその価格を「当店通常価格」として表示することはできません。
例えば、通販大手Amazonが直販していた「クリアホルダー(100枚入り)」で「参考価格9720円(90%オフ)」などと表示する二重価格表示を行ったケースについて、消費者庁は、この「参考価格」は販売実績のある価格ではなく根拠がないとして、「有利誤認表示」であると指摘し、措置命令を出しています。
2,発売開始キャンペーンなどで、将来の予定価格を表示する場合
販売当初のPRを目的に、将来予定している価格よりも安いキャンペーン価格で販売していることを表示する場合には、実際に将来その価格で販売することが原則として必要です。
実際に将来その価格で販売するかどうかが不確定であるにもかかわらず、キャンペーン時に将来の販売予定価格を表示することは不適切であるとされています。
3,タイムサービスなどで、値引き前の価格を表示する場合
特定のサービス時間帯に値下げするタイムサービスのケースで、値下げ前に実際に販売されていた値引き前の価格として表示して値引きをアピールすることは、有利誤認表示にあたりません。
二重価格表示に関するルールの詳細は、以下の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」で詳しく定められていますので、参照してください。
8,景品表示法に関して弁護士に相談したい方はこちら
最後に咲くやこの花法律事務所における景表法に関するサポート内容についてご紹介したいと思います。
(1)景品表示法(景表法)に関するご相談
咲くやこの花法律事務所では、景品表示法に関する以下のご相談を企業からお受けしています。
- 自社の広告表示が法的に問題がないかどうかのご相談
- 自社の景品企画が法的に問題がないかどうかのご相談
- 景品表示法違反を指摘された場合の対応方法に関するご相談
広告表示のコンプライアンスや景品表示法に精通した弁護士がご相談を承ります。
弁護士費用例
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
(2)顧問弁護士サービスによるサポート
景品表示法違反を起こしてしまうと、課徴金納付命令による金銭的なペナルティだけでなく、消費者庁の処分が公表されることにより、企業の信用について重大なダメージを受けます。
特に消費者庁の処分はインターネット上に公表されますので、企業名や商品名を検索する消費者の目にもとまることになります。悪質な業者であるとの印象を与えてしまい、売上、利益にも大きく影響します。
しかし、実際には、景品表示法違反は悪意を持って行われるというよりは、広告担当者の知識不足、準備不足が原因であることがほとんどです。
知識不足や準備不足により景表法に違反して処分を受けてしまうトラブルを防ぐには、事前に自社の広告企画や景品企画について法的なチェックする予防法務の観点が非常に重要です。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスでは、日ごろから、広告企画や景品企画について顧問弁護士のリーガルチェックをうけることが必要です。
いつでも予約なしで、その都度電話やメールで弁護士に相談していただくことが可能になります。
このように弁護士に日ごろから相談する体制を整えることで、景品表示法に違反して処分を受けてしまうトラブルを防ぐことが可能です。
顧問弁護士サービスの費用
●スタンダードプラン(月額顧問料5万円:週に1~2回程度のご相談をご希望の企業様向け)
プラン内容について
- いつでも弁護士に電話やメールでご相談いただくことができます。
- 契約前に担当弁護士との無料面談で相性をご確認いただくことができます(電話・テレビ電話でのご説明or来所面談)
- 来所していただかなくても、電話あるいはテレビ電話でお申込みいただけます。
咲くやこの花法律事務所のその他の顧問弁護士プランの詳細や顧問弁護士サービスの実績については以下のページをご参照ください。
(3)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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記事作成弁護士:西川暢春
記事更新日:2024年10月6日
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