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私傷病休職とは?制度の内容と流れをわかりやすく解説

私傷病休職とは?制度の内容と流れをわかりやすく解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

私傷病休職についてわからないことがあって困っていませんか?

私傷病休職とは、業務を原因としない病気や怪我で従業員が就業できなくなった場面で、事業主が従業員の就業を免除して休ませることをいいます。多くの事業主において就業規則で私傷病休職の制度が定められています。事業主による休職命令で休職を開始し、復職が可能になれば復職を認め、休職期間中に復職に至らなければ雇用を終了する制度が一般的です。

私傷病休職は、その手続の進め方や、復職できるかどうかの判断をめぐってトラブルが起きやすいことに注意が必要です。

以下の例があります。

 

判例1:
京都地方裁判所判決平成28年2月12日

休職命令後に休職期間満了までに復職できなかった従業員を退職扱いとしましたが、休職命令の手続の不備を指摘され、会社が600万円を超える金銭の支払いを命じられました。

 

判例2:
市川エフエム事件 (東京高等裁判所判決平成28年4月27日)

うつ病で休職していた従業員を、会社が本人の強い意向により安易に復職させた結果、復帰後の就業により病状が悪化し、本人の自殺につながったとして、遺族から損害賠償請求を受け、会社は約3000万円の賠償を命じられました。

 

判例3:
株式会社綜企画設計事件(東京地方裁判所判決平成28年9月28日)

復職を希望した休職者について、会社は試し出勤を3か月行った結果、コミュニケーションに問題があるなどとして退職扱いとしましたが、裁判所は退職扱いは無効と判断し、会社に対して約500万円の支払いを命じました。

 

このようなトラブルを起こさないためには、休職開始、休職中、復職、休職期間満了の各場面で起こりやすいトラブルの内容や原因を知り、正しく対応することが必要です。

この記事を最後まで読んでいただくことで、私傷病休職制度の内容や流れ、さらに各場面で正しい対応をするための注意点を理解していただくことができます。

それでは見ていきましょう。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

ご紹介した裁判例からもわかるように私傷病休職についての対応に不備があった場合、休職者に負担をかけ、トラブルの原因となってしまう危険があります。

休職者とのトラブルが裁判に発展し、企業が多額の金銭の支払を命じられているケースも少なくありません。

私傷病休職については、その開始段階から、企業の労務管理に精通した弁護士に相談しながら行っていただくことをおすすめします。

 

▼【関連動画】西川弁護士が「私傷病休職とは?制度の内容や期間、手当などの金銭面、注意点について【前編】」と「私傷病休職について!復職希望の対応や、期間満了時の解雇・退職扱いについて【後編】」を詳しく解説中!

 

 

▶私傷病休職に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

 

1,私傷病休職とは?

私傷病休職とは、業務を原因としない病気や怪我で従業員が就業できなくなった場面で、事業主が従業員の就業を免除して休ませることをいいます。

労災事故による怪我や、業務に起因する病気などによる休業は、業務災害の問題であり、私傷病休職ではありません。

 

(1)目的

私傷病休職制度の目的は、一時的に病気や怪我で従業員が就業できなくなった場面でも、従業員を解雇するのではなく、一定期間就業を免除して休ませることで、病気や怪我を乗り越えて就業できる環境を整備することにあります。

 

(2)関連法令

このような私傷病休職制度の整備が法律上義務付けられているわけではありませんが、多くの会社で私傷病休職制度が設けられています。

会社が私傷病休職制度を設けた場合は、会社は従業員を雇用する際にその内容を明示する必要があります(労働基準法施行規則第5条11号)。

 

 

2,私傷病休職制度の内容や期間について

私傷病休職制度の内容や休職期間については、労働基準法やその他の法律に規定はありません。

各会社が就業規則で私傷病休職制度の内容を定めることになります。

私傷病休職の期間については、3か月程度の比較的短い期間を定めている会社から、1年半あるいは2年といった比較的長期の期間を定めている会社まで様々です。

また、休職する従業員の勤続年数に応じて私傷病休職の期間を設定するケースも多いです(例:勤続3年以内では6か月、5年以内では1年、それ以上では1年6か月など)。

この点については、就業規則の作成方法の記事でも解説していますのでご参照ください。

 

 

厚生労働省のモデル就業規則では、以下のとおり規定が置かれています。

 

▶参考情報:厚生労働省のモデル就業規則の規定例第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

① 業務外の傷病による欠勤が〇か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき
〇年以内

② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき
必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。
3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

・参照:厚生労働省「モデル就業規則について」

 

このように就業規則の休職の項目には、最低限、私傷病休職の期間、期間中に復職可能になれば復職させること、期間満了まで復職ができなければ雇用が終了されることを記載することになります。

 

3,休職期間中の手当、その他の金銭面

私傷病休職期間中に会社から病気休暇手当、私傷病休暇手当等の手当を支給する内容の就業規則になっている会社では、それらの手当を就業規則に従い支給することになります。

一方、就業規則に手当の規定がない場合は、休職期間中は給与は支給されないことになります。

その場合、休職者は健康保険から傷病手当金の支給を受けることが可能です。健康保険から支給される傷病手当金は月給のおよそ3分の2が目安ですが、支給額に上限があります。

傷病手当金の詳細は以下を参照してください。

 

 

(1)社会保険料の扱いについて

私傷病休職期間中も社会保険料は発生し、会社負担分は会社が、従業員負担分は休職者が負担することになります。

従業員負担分は会社が免除しない限り、以下のいずれかの方法により、休職者に負担してもらうことになります。

 

  • 方法1:請求書を送付して休職者に送金してもらう
  • 方法2:前述の傷病手当金の支払先を会社の口座にしたうえで、従業員負担分の社会保険料を差し引いて休職者に送金する

 

4,休職の開始までの流れと注意点

休職の開始までの流れ

以下では私傷病休職における、休職の開始から休職終了までの流れを見ていきたいと思います。

まず休職の開始の場面からご説明します。

従業員が体調不良で休まなければならないときも、まずは本人の意向で有給休暇を利用し、有給休暇を消化しきった後に、会社から休職命令を出して休職期間をスタートさせるということが通常です。

これは、休職期間中は原則として給与が支給されないため、まずは有給休暇を使用したほうが、本人にとって有利であることが多いためです。

あわせて休職が必要かどうかの判断のために診断書の提出を求めることも必要です。

つまり、標準的には以下の流れになります。

 

  • 流れ1:有給休暇
  • 流れ2:従業員が診断書を提出
  • 流れ3:会社が休職命令
  • 流れ4:休職期間開始

 

ただし、以下の点に注意してください。

 

(1)有給休暇は本人の申請が必要

本人から有給休暇の申請がないのに、会社から有給休暇として処理することは原則としてできないことに注意してください。

また、従業員が有給消化ではなく休職を希望している場面では、会社の側から休職に入る前に有給休暇を消化してくれということもいうべきではありません。

裁判例では、部下がうつ病の診断書を提出し休職を申し出ているのに上司が有給休暇により対応するように告げた行為について、休職を妨害する不法行為と判断し、損害賠償を命じたものがありますので注意が必要です(サントリーホールディングスほか事件 東京地方裁判所判決平成26年7月31日)。

 

(2)就業規則の連続欠勤要件に注意

就業規則の中には、欠勤が一定期間続いた場合にはじめて休職命令の対象となる内容の定め方をしているものがあります。

前述の厚生労働省モデル就業規則も「業務外の傷病による欠勤が〇か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」に休職になるとしています。

このような規定がおかれている就業規則では、有給休暇を消化しきったらすぐに休職になるわけではなく、就業規則に記載された期間、欠勤が続いた後にはじめて休職期間がスタートすることに注意してください。

 

(3)休職命令書を交付する

就業規則では「休職を命じる」という文言が用いられ、会社が休職を命じた場合にはじめて休職期間がスタートする内容になっているものが多いです。

この場合、従業員が休んでいても、休職命令を会社から出さなければ休職がスタートしないことになりますので注意が必要です。

休職命令を出したことを明確にするために会社から休職命令書を交付しておくことが必要です。

休職命令については以下で詳しく解説しています。休職命令書のひな形も公開していますのでご参照ください。

 

 

(4)従業員に休職制度の内容を説明して引継ぎは迅速にすませる

休職者に対しては、休職の期間や休職期間中の給与の扱い、社会保険料の負担や、休職中の会社との連絡方法などを就業規則の規定を踏まえて正しく説明することが必要です。

また、医師から自宅療養を指示されているのに、業務の引継ぎに期間がかかり、自宅療養の開始が遅れることは、本人の健康状態を悪化させる恐れがあります。

引継ぎが必要な場合は迅速にすませることが大切です。

この点については以下の記事で解説していますのでご参照ください。

 

 

5,休職期間中の対応と注意点

休職期間中は、休職者から例えば毎月1回などの頻度で定期的に病状の報告を受け、会社としても休職者の状況を確認するようにしましょう。

また、休職者が前述の健康保険の傷病手当金の支給を受けている場合は、その手続に会社も協力することになります。

傷病手当金の支給申請書には事業主証明欄があるため、休職者から申請書を送付してもらい、事業主証明欄を人事担当者が記入することが必要になります。

 

6,復職希望があった場合の対応

復職希望があった場合の手順

休職者から休職期間満了までの間に、復職の希望があった場合は、以下の手順で対応します。

 

  • 手順1:復職が可能か否かの診断書の提出
  • 手順2:人事担当者との復職面談
  • 手順3:主治医からのヒアリング
  • 手順4:復職可否の判断と復帰支援プランの作成

 

以下で順に見ていきたいと思います。

 

(1)復職が可能か否かの診断書の提出

休職者から復職の希望があったときは、まず、復職が可能かどうかについて、主治医の診断書を提出するように求めることが必要です。

主治医の診断書を確認しないまま、安易に復職させると、本人の病気が悪化する危険があります。また、その場合、会社の責任が問われることもあります。

主治医の診断書の確認は必ず行ってください。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

市川エフエム事件(東京高等裁判所 平成28年4月27日判決)は、うつ病で休職していた従業員が復職後に自殺した事件です。

遺族は、会社が本人の強い意向により主治医の診断書を確認しないまま復職させた結果、本人の自殺につながったとして、会社に損害賠償請求の訴訟を起こしました。

裁判所は、「専門的な立場からの助言等を踏まえることなく、漫然と職場復帰を決めた」として会社の安全配慮義務違反を認め、約3000万円の損害賠償を命じています。

安全配慮義務違反については以下で解説していますのでご参照ください。

 

▶参考情報:安全配慮義務違反とは?会社が訴えられる4つのケースと対応方法

 

(2)人事担当者との復職面談

休職者に診断書を求めるのと並行して、休職者に対する面談を実施します。

人事担当者は、復職判定の判断基準や復職にあたり企業として必要な配慮の程度について正しく理解したうえで面談に望む必要があります。

復職面談の進め方や、面談時に聴くべきことを以下の参考動画や参考記事でまとめていますのでご参照ください。

 

▶参考動画:西川弁護士が「病気休職者の復職面談のポイント!会社はどこまで配慮が必要?【前編】」を詳しく解説中!

 

 

(3)主治医からのヒアリング

人事担当者は休職者と一緒に主治医を訪問して、主治医に休職者の仕事内容を伝え、以下の点を確認することが必要です。

 

  • 休職者の仕事内容を踏まえても復職可と判断できるのかどうか
  • 復職可と判断した理由
  • 復職にあたり会社が休職者に対し配慮すべき点はないか

 

また、休職者が提出した主治医の診断書に、復職可とする条件や、復職にあたり配慮すべき内容等についての記載がある時は、その具体的な意味を主治医によく確認することが必要です。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、「主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限りません」「労働者や家族の希望が含まれている場合もある」と指摘されています。

主治医の判断に疑問がある時は、産業医等の意見も聴くことが必要です。

 

▶参考情報:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(PDF)

 

(4)復職可否の判断と復帰支援プランの作成

休職者からのヒアリング結果や、主治医からのヒアリング結果、休職者の体調を考慮して、会社として復職可否の判断を行います。

また、短時間勤務からはじめて徐々に通常勤務に復帰させる、復帰当初は業務を軽減するなど、復職にあたって必要な配慮があれば、職場復帰支援プランを作成します。

 

7,休職期間満了時の解雇や退職扱いについて

休職者が、休職期間が満了するまでに復職できないときは、解雇または退職扱いとなることが就業規則に定められていることが通常です。

そのため、就業規則の規定に基づき、休職期間満了時に雇用を終了することが原則となります。

従業員が復職を希望しているけれども、会社として復職不可と判断し、休職期間が満了した場合は、雇用が終了されることをめぐって従業員と紛争になるケースも多いです。

トラブルを避けるための注意点を以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

休職期間満了までに復職できない場面の対応について、就業規則で「退職扱い」になることが定められているときは、「解雇」の手続きは必要ありません。

しかし、就業規則で、「休職期間満了までに復職できない場合は解雇する」と定めている場合は、解雇の手続きが必要になります。

この場合の解雇の方法については、以下で解説していますのでご参照ください

 

 

8,休職に関する就業規則の規定の内容

私傷病休職に関する就業規則の規定も整備しておきましょう。

2,私傷病休職制度の内容や期間について」で厚生労働省のモデル就業規則をご紹介しましたが、企業の実務では、より詳細な規定を定めておく必要があります。

例えば以下のような条項を定めておくべきです。

 

▶参考情報:就業規則の規定例

病状の確認に関連する規定

  • 休職時や復職時に休職者に自己の費用負担での診断書の提出を義務付ける規定
  • 会社から主治医に診断書の内容等について確認する必要がある場面において、休職者に主治医に対する確認に必要な同意書の提出等、必要な協力を義務付ける規定
  • 休職開始あるいは復職可否の判断などの場面で必要に応じて会社指定医の受診や産業医との面談を義務付ける規定

 

休職者の待遇に関連する規定

  • 短期間の間に休職を繰り返す場合の休職期間は、前回休職した期間を差し引いた残りの期間とする内容の通算規定
  • 休職期間中の病状の定期報告を休職者に義務付ける規定
  • 休職期間中の給与についての規定
  • 休職期間中の社会保険料の負担についての規定

 

復職に関連する規定

  • 復職可能かどうかの判断のために行う「試し勤務」の内容を定める規定
  • 復職時の配慮として短時間勤務を命じることがあり、その場合短縮時間分の賃金は支払われない旨の規定

 

就業規則の変更については、従業員に不利益な変更は原則として効力が生じないことに注意を要します(労働契約法第9条)。

私傷病休職の制度についての就業規則変更の場面でも、この不利益変更にあたらないかどうかを確認しなければなりません。

ただし、不利益な変更であってもそれが合理的なものであり、企業が変更後の就業規則を従業員に周知した場合は効力が認められます(労働契約法10条)。

就業規則の変更については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

9,うつ病その他精神疾患の場合の注意点

以下ではうつ病その他精神疾患での休職に特有の注意点をご説明します。

 

(1)本人の病識がない場合の休職命令

被害妄想や幻聴などの症状で職場内でトラブルを起こすものの、本人に病識がなく、休職に応じないというケースがあります。

その場合は、まず、本人に心療内科の受診を進めることになりますが、本人が拒否する場合は、主治医の診断が出ていなくても、産業医の意見を聴いたうえで、会社として休職を命じることを検討する必要があります。

ただし、この場合、休職命令が無効であるとして、従業員から訴訟を起こされる可能性があります。

会社としては休職命令の根拠として、就労不可と判断した産業医の意見の内容や、精神疾患の兆候と思われる従業員の問題行動の内容について、記録を残しておくことが必要です。

 

(2)休職期間中の連絡を控えるべき場合もある

一般論としては前述の通り、休職期間中も休職者と定期的に連絡を取ることが適切ですが、精神疾患での休職では主治医から、会社関係者からの休職者への連絡を控えるように求められることがあるため、注意が必要です。その場合は主治医の指示に従う必要があります。

ワコール事件(京都地方裁判所判決 平成28年2月23日)は、主治医から会社関係者との接触を控えるように指示されたことを休職者から聴いたにもかかわらず、休職者の上司が雇用契約の更新について休職者に電話連絡や面談を行ったことが問題になった事案です。

裁判所は上司からの連絡や面談の実施は安全配慮義務違反にあたると判断し、会社に損害賠償を命じています。

 

(3)体調が安定してきたらリワークプログラムの案内も検討する

休職者の体調が安定してきたら、「リワークプログラム」の利用を休職者に案内することも検討しましょう。

リワークプログラムは、精神疾患による休職者に対し、職場復帰に向けた支援を行うプログラムです。クリニック等の医療機関で実施されるリワークプログラムのほか、各県に1か所以上設置されている地域障害者職業センターが実施しているリワークプログラムもあります。決まった時間に施設に通い軽作業をしたり、再発防止のための教育を受けることになります。

主治医の医療機関でリワークプログラムを実施していないときは、主治医にリワークプログラムを紹介してもらうことも検討してみてください。

「試し出勤」「リハビリ出勤」など、会社に試験的な出勤をさせてその中で復職可否の判断をする制度を設けている企業も多いですが、そういった制度よりも、再発防止のための教育を社外でうけることができるリワークプログラムの利用が適切です。

 

(4)復職判断

復職の判断にあたってはリワークプログラムの資料も取り寄せて検討することが必要です。

東京電力パワーグリッド事件(東京地方裁判所判決 平成29年11月30日)は、主治医が復職可能と診断した休職者について、会社の代理人弁護士がリワークプログラムの資料を取り寄せたところ、リワークプログラムへの出席率が低く、リワークプログラムの担当医師もまだ復職は難しいと判断していたことがわかり復職を認めなかった事案です。

裁判所は会社の判断は正当であるとしています。

一方、リワークプログラムを利用しなかった休職者については、前述の「試し出勤 」「リハビリ出勤」によって復職判断を行うということも検討に値します。

「試し出勤 」「リハビリ出勤」の期間中に、安定して始業時刻までに出勤することができるかを確認して復職可否の判断に活かすことは可能です。

ただし、「試し出勤 」「リハビリ出勤」の期間中に休職者に通常業務とは異なる作業をさせている場合は、仮にその作業について能力や積極性の面で問題があったとしても、その作業は休職者の本来の業務でない以上、復職判断の材料にはなりにくいことに注意する必要があります(株式会社綜企画設計事件 東京地方裁判所判決 平成28年9月28日参照)。

うつ病などの精神疾患で休職していた従業員を復職させるときの方法については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

10,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます!」

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

ここまで私傷病休職制度について注意が必要な点をご説明しました。

実際に休職を命じる場面では、就業規則の確認、休職命令の手続、復職判断、休職期間満了時の対応をそれぞれ適切に進めていく必要があります。

これらの点について不備があると、会社が安全配慮義務違反として損害賠償を命じられたり、従業員が復職できずに雇用を終了する場面で、雇用の継続を求める従業員との間で重大なトラブルに発展する恐れがあります。

不備なく対応するためには、休職開始の段階から弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

咲くやこの花法律事務所では、労務管理、休職者対応に精通し、経験を積んできた弁護士が、企業からの以下のようなご相談を承っています。

 

  • 休職命令の手続、休職後の対応のご相談
  • 休職中のトラブルに関するご相談
  • 復職可否の判断、復職支援に関するご相談
  • 休職期間満了後の退職扱いまたは解雇をめぐるトラブルのご相談

 

お困りの際は、自己流の対応をする前に、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の労務トラブルに強い弁護士への相談費用

●30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

咲くやこの花法律事務所の労働問題・労務トラブルに強い弁護士へのご相談については以下もご参照ください。

 

 

また、私傷病休職については、休職の際の対応、休職期間中の対応、復職段階または雇用終了段階の対応と長期にわたる対応が必要です。そして、私傷病休職制度の整備も進めていく必要があります。

このような継続的な相談については、咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスで対応しております。

顧問弁護士サービスについては、以下をご参照ください。

 

 

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記事作成日:2022年1月5日
記事作成弁護士:西川 暢春(にしかわのぶはる)

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    著者:弁護士 西川 暢春
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