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従業員の副業(兼職)が発覚した場合の解雇の注意点

従業員の副業(兼職)が発覚した場合の解雇の注意点
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

無許可の副業や兼職が発覚した場面で、その従業員を解雇することには注意が必要です。

過去の判例で、無許可の副業や兼職を理由とする解雇について、不当解雇と判断し、多額の支払いを命じたケースも多いためです。

 

●東京高等裁判所平成31年3月28日判決

在職中に別会社の代表取締役に就任して多額の役員報酬を得ていた従業員に対する解雇が不当解雇とされ、会社に対して約2700万円の支払が命じられた事例

 

●東京地方裁判所平成30年9月27日判決

マーケティング会社が年俸1200万円で雇用していた部長代理を兼業禁止規定違反を理由に解雇したところ、不当解雇とされ、会社に対して約2200万円の支払が命じられた事例

 

今回は、従業員の副業、兼職が発覚した場合の解雇の注意点についてご説明します。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
副業や兼職を理由とする懲戒解雇は、後日不当解雇とされないかどうかについて、慎重に判断したうえで行う必要があります。

不当解雇として敗訴した事例では、上記の判例からもわかるように、2000万円を超える金銭支払が命じられており、会社経営に大きなダメージになりかねません。

必ず、懲戒解雇の前に専門の弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 

咲くやこの花法律事務所へのご相談方法はこちらをご覧下さい。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に関する解決実績は以下をご覧ください。

 

不正をした従業員について、弁護士が責任追及をし、退職してもらった事案

解雇した従業員から不当解雇であるとして労働審判を起こされ、1か月分の給与相当額の金銭支払いで解決をした事例

 

▶従業員の副業(兼職)が発覚した際の解雇に関連する情報は、以下の関連情報もあわせてご覧下さい。

「解雇とは?」わかりやすく解説しています。

懲戒解雇とは?6つのケース例とリスクや進め方を解説。

不当解雇とは?正当な解雇との違いを例をあげて弁護士が解説

 

▶従業員の副業(兼職)が発覚した際の対応に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

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1,無許可の副業や兼職を禁止する就業規則の有効性

懲戒解雇の注意点にご説明する前に、就業規則で副業や兼職を禁止することについての、裁判所の基本的な考え方をおさえておきましょう。

以下の参考判例にもあるように、裁判所は、副業は原則として自由であるという考えをとっています。

副業により本業に支障がある場合や、競業他社などで副業をすることで企業秘密が漏洩する危険がある場合にのみ、企業は副業を禁止できるという考え方をとっています。

 

▶参考:マンナ運輸事件(京都地方裁判所平成24年7月13日判決)

「労働者は,勤務時間以外の時間については,事業場の外で自由に利用することができるのであり,使用者は,労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを,原則として許されなければならない。
もっとも,労働者が兼業することによって,労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり,使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり得るから,このような場合においてのみ,例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許されるものと解するのが相当である。」

 

このような考え方から、無許可の副業や兼職を就業規則で禁止すること自体は問題ありませんが、本業に支障がない程度の副業を不許可としたり、就業規則違反として制裁を加えることは違法となります。

なお、平成30年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、社会的にも副業・兼業を認める流れが進んでいますが、上記の判例の考え方については現在も変更がないと考えて問題ありません。

 

 

2,兼業禁止違反の副業による解雇が違法となるケースとは?

本業に支障がない程度の副業は無許可のものであっても、これを理由に懲戒解雇することは違法であり、不当解雇であると判断されています。

実際に裁判で不当解雇とされたものは以下のようなケースです。

 

  • 副業による多額の収入があっても本業への具体的な支障を立証できなかったケース
  • 副業が年に1、2回のアルバイトで本業に支障がなかったケース
  • 副業を会社で黙認していたケース
  • 業務時間中の副業があっても業務に支障が生じる程度には至っていないケース

 

勤務先の就業時間内に副業をするなどといったことは、企業の秩序からも到底許されるべきことではないです。

ただし、そうであっても、副業の程度が本業に相当の支障が生じる程度でない限り、裁判所は、企業に対してまず副業の停止を注意、指導することを求めており、注意、指導を経ずに解雇すると不当解雇であるとしています。

以下で具体的なケースをあげてご説明します。

 

(1)副業による多額の収入があっても本業への具体的な支障を立証できなかったケース

従業員に副業による多額の収入があったことがわかっていても、会社側がそれによる本業への具体的な支障を立証できなかったケースでは、副業を理由とする解雇は違法と判断されています。

 

●東京高等裁判所平成31年3月28日判決

 

・事案の概要

在職中に勤務先の許可を得ずに不動産会社の代表取締役に就任して年間1920万円の役員報酬を得ていた従業員を、就業規則の兼職禁止規定に違反するとして解雇したケースです。

 

・裁判所の判断

裁判所は、以下の点を指摘して不当解雇であると判断し、会社に対して約2700万円の支払をしたうえでこの従業員を復職させることを命じました。

 

  • 従業員が勤務時間中に具体的にどのような副業をどの程度行っていたのかについて的確な証拠がないこと
  • 勤務時間中に副業についてのメールを見ていたという程度を超えて、会社の業務に対する具体的な支障が生じたとは認められないこと
  • 勤務時間中に他の従業員に投資用不動産の購入を勧めるメールを相当数送信するなどしており、就労意欲を疑わせる事実ではあるものの、それにより勤務先の事業に具体的な支障が生じたことを示す証拠はないこと

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

この事例のように、従業員が勤務先に許可を得ずに副業で多額の収入を得ていたことが発覚したケースでは、会社として十分な検討をせずに懲戒解雇を選択しがちであり、特に注意が必要です。

 

「副業を行っていた時間が具体的にどの程度か」や「本業への具体的な支障がどの程度あったのか」を調査したうえで解雇について判断することが必要です。

 

解雇理由にまで至らない場合は、まずは注意、指導を行い、態度を改めさせる方向性を目指すこと、あるいは退職勧奨を行い合意により退職させることが必要です。

 

(2)年に1、2回のアルバイトで本業に支障がなかったケース

年に1、2回のアルバイトにすぎないケースなど、副業の程度がごくわずかである場合も、解雇は認められていません。

例えば以下のような事例があります。

 

●東京地方裁判所平成13年6月5日判決(十和田運輸事件)

 

・事案の概要

貨物運送業者が運送ドライバー2名の副業アルバイトを理由に従業員を解雇したケースです。

本件では、運送ドライバーは、勤務先の会社の顧客(運送先)の小売店の要望を受けて、運送先において不要となった家電製品の払い下げを受け、これをリサイクルショップに販売して収入を得るという副業を行っていました。

 

・裁判所の判断

裁判所は、以下の点を指摘して不当解雇であると判断し、会社に対して、解雇した2名について合計約1500万円の支払をしたうえでこの従業員を復職させることを命じました。

 

  • 従業員が副業として行っていたのは、年に1、2回程度にすぎないこと
  • 副業により勤務先の業務に具体的な支障が生じたことはなかったこと

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
従業員の無許可の副業に対して懲戒を検討する際は、副業がどの程度の時間、どの程度の回数行われていたかを確認したうえで判断することが必要です。

 

(3)副業を会社で黙認していたケース

会社が無許可の副業についてこれまで十分な対応をしておらず、黙認してきたようなケースでは、副業について注意や指導を行わないまま、突然これまでの黙認をひるがえして懲戒解雇することは、不当解雇とされています。

例えば以下のような事例があります。

 

●広島地方裁判所昭和59年12月18日決定(都タクシー事件)

 

・事案の概要

タクシー運転手が輸出車の移送、船積み等をするアルバイトを無許可で行っていたことを理由に解雇した事件です。

この運転手は勤務先での就業時間が午前8時から翌日午前2時までで、勤務終了の日に午前8時から午後4時45分まで輸出車の移送、船積み等をするアルバイトを月平均7~8回行っていました。

 

・裁判所の判断

裁判所は社内で管理職も含めて長年、半ば公然と副業が黙認されている状況にあったことを指摘して、「何らの指導注意をしないまま直ちになした解雇は余りに過酷」であるとして、不当解雇と判断しています。

 

 

(4)業務時間中の副業があっても業務に支障が生じる程度には至っていないケース

業務時間中の副業があっても勤務先の業務に支障が生じる程度には至っていないケースでは、副業を理由とする解雇は不当解雇と判断されています。

 

●東京地方裁判所平成30年9月27日判決

 

・事案の概要

マーケティング会社が年俸1200万円で雇用していた部長代理を兼業禁止規定違反を理由に解雇したケースです。

 

・裁判所の判断

裁判所は不当解雇と判断し、会社に対して、約2200万円の支払をしたうえでこの従業員を復職させることを命じました。

 

・裁判所の判断の理由

裁判所が不当解雇であると判断した理由は以下の2点です。

 

  • 従業員が副業として行っていた業務は「不動産の管理」や「人を紹介する手数料収受」が中心であり現実に従事する業務はわずかだったこと
  • 業務時間中に私用通話や業務目的外のウェブサイト閲覧をしていたことは事実であるが業務に支障を生じる程度のものでもなかったこと

 

(5)解雇すれば不当解雇となることが予想される場合の対応

では、上記のような解雇すれば不当解雇となるような場面ではどのように対応すればよいのでしょうか?

以下の2つの対応が考えられます。

 

1,本人に注意、指導し、本業に支障を生じさせないようにさせる

まず、勤務先の就業時間中に副業をするなど、勤務先での就業に支障が生じる場合は、まずは本人に対し、注意、指導を行い、勤務先の業務に支障を生じさせないようにさせることが必要になります。

必要に応じて、懲戒処分を科すことも検討すべきです。

懲戒処分は、最初は軽い処分にとどめ、問題が解消しない場合は、徐々に重くしていくことが原則です。

懲戒処分については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

2,解雇ではなく、退職勧奨を検討する

2つ目の方法として、その従業員のことを信用できない、やめてほしいという場合は、解雇するのではなく、退職勧奨を行うことにより、合意により退職させることが必要です。

退職勧奨については、以下の動画や記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

▶【動画で解説】西川弁護士が「問題社員の退職勧奨」違法にならないための注意点と進め方を詳しく解説中!

 

 

3,兼職禁止違反の副業が解雇理由になるケースとは?

一方で、勤務先の業務に大きな支障が生じるような副業が無許可で行われた場合は、従業員を懲戒解雇することも正当であると認められています。

例えば以下のようなケースです。

 

  • 競業他社での兼業により勤務先に具体的な損害を生じさせる恐れがあるケース
  • 深夜に及ぶアルバイトによる肉体疲労で本業に支障が生じるケース
  • 連日にわたる副業による肉体疲労で本業に支障が生じるケース
  • 病気休業で休業手当受領中の副業など信義に反するケース

 

(1)競業他社での兼業により勤務先に具体的な損害を生じさせる恐れがあるケース

競業他社での兼業については、企業の機密情報が漏洩する危険があることから、正当な解雇理由となることが認められています。

たとえば以下のような裁判例があります。

 

●東京地方裁判所平成3年4月8日判決(東京メデカルサービス事件)

特定の医療法人グループに医療用機器などを販売する会社の経理部長が、同業他社の代表取締役となり、勤務先と取引をしていたことが発覚し、懲戒解雇された事例です。

 

・裁判所の判断

懲戒解雇を有効と判断しました。

 

・裁判所の判断の理由

裁判所は、解雇された従業員が、会社の経理部長であることを指摘して、「許可を得ることなく、他の会社の代表取締役となり、勤務先に関連する取引をして利益をあげるということは、重大な義務違反行為である」と判断しています。

 

また、その他の同種事例として以下のものがあります。

●ナショナルシューズ事件(東京地方裁判所平成2年3月23日判決)

靴小売業者において商品部長という要職にありながら、副業として靴小売店を自営し、勤務先の仕入先から自営店舗の仕入れも行うなどしたことを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例

 

●橋元運輸事件(名古屋地方裁判所昭和47年4月28日判決)

会社の取締役副社長の地位にありながら、同業の別会社の取締役に就任していたことなどを理由とする解雇が有効とされた事例

 

●東京貨物社事件(東京地方裁判所平成12年11月10日判決)

営業課長として在職中に同業他社で副業し、勤務先の会社の受注の一部を横流ししていたことなどを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
前述の4つの判例にはいずれも、以下の点に共通点があります。

 

  • 本業の会社で要職にある従業員が解雇対象者となっている点
  • 単に同業他社で副業をしたというだけでなく、その同業他社を通じて本業の勤務先と取引をしたり、本業の勤務先の顧客に営業をかけるなど、本業の勤務先の事業との関係で具体的な支障を生じさせかねない行為に及んでいる点

 

例えば、本業の会社で平社員の立場にあるに過ぎない者が、同業他社で副業をするようなケースは、必ずしもこれらの判例の事例と同様に考えることはできないことに注意を要します。

 

(2)深夜に及ぶアルバイトによる肉体疲労で本業に支障が生じるケース

副業が深夜に及び、肉体疲労による支障が本業に生じると考えられるケースでは、副業を理由とする懲戒解雇は正当と判断されています。

たとえば以下のような裁判例があります。

 

●日通名古屋製鉄作業所事件(名古屋地方裁判所平成3年7月22日判決)

 

・事案の概要

製鉄作業所を経営する会社が、自社に勤めていたトラックドライバーを、深夜を含むタクシー運転の副業をしていたことを理由に懲戒解雇したケースです。

 

・裁判所の判断

懲戒解雇を有効と判断しました。

 

・裁判所の判断の理由

裁判所は懲戒解雇を有効とする理由として、以下の点を指摘し、副業が本業への誠実な労務の提供に支障を来たす蓋然性が極めて高いと判断しています。

 

  • 副業のタクシー運転が時に深夜にも及ぶものであったこと
  • 場合によっては副業の就業時間が本業の就業時間と重複するおそれもあったこと

 

また、その他の同種事例として以下のものがあります。

 

●小川建設事件(東京地方裁判所昭和57年11月19日判決)

午前8時45分から午後5時15分まで会社で勤務後に、午後6時から午前0時までキャバレーで勤務するということを約11ヶ月間行っていたことを理由に懲戒解雇したケースで、裁判所は解雇を有効と判断しています。

 

(3)連日にわたる副業による肉体疲労で本業に支障が生じるケース

副業が連日にわたり、肉体疲労による支障が本業に生じると考えられるケースでは、副業を理由とする解雇は正当と判断されています。

たとえば以下のような裁判例があります。

 

●永大産業事件(大阪地方裁判所昭和32年11月13日判決)

 

・事案の概要

ほとんど毎日長時間の副業を行っていた従業員を懲戒解雇したケースです

 

・裁判所の判断

懲戒解雇を有効と判断しました。

 

・裁判所の判断の理由

裁判所は懲戒解雇を有効とする理由として以下の点から、副業が「会社の就労に当然差支えを及ぼす程度のものであつた」としています。

 

  • ほとんど毎日長時間の副業を行っていたこと
  • 本業である勤務先の勤務についても12時間勤務の夜勤などもあり疲労度が高いものであること

 

また、その他の同種事例として以下のものがあります。

 

●阿部タクシー懲戒解雇事件(松山地方裁判所昭和42年8月25日判決)

ダンプカーを購入して建設工事現場で副業を始めたことが発覚した従業員について、副業が一時的なアルバイトとは違い相当期間継続する予定のもとに始められたものであること、本業について欠勤が継続していることなどを指摘して懲戒解雇を有効とした事例

 

(4)病気休業で休業手当受領中の副業など信義に反するケース

勤務先を病気休業して休業手当をもらっている期間に副業を行うなど、副業を行うこと自体が信義に反するケースでも、副業を理由とする懲戒解雇は正当と判断されています。

たとえば以下のような裁判例があります。

 

●ジャムコ立川工場事件(東京地方裁判所八王子支部平成17年3月16日判決)

体調不良による休職中に勤務先から本給の6割の金額を支給されていたにもかかわらず、オートバイ店を自営したことを理由に懲戒解雇した事例です。

裁判所は、「体調不良による休職中であるとして本給の6割の金額を支給されていたのであるから、早期に復帰できるよう療養に専念すべき」として、副業は雇用契約における信頼関係を損なうものであるとして、懲戒解雇を有効と認めています。

 

4,就業規則の周知性や懲戒解雇の手続きは要確認

無許可の副業に対して懲戒解雇を検討する場合、ここまでご説明した通り、「副業が本業の勤務に具体的な支障を及ぼす程度のものであったかどうか」が最も重要な判断基準となります。

そのほかにも、就業規則の周知性や懲戒解雇の手続きについても注意を払う必要があります。

 

(1)就業規則の周知性について

多くのケースでは、許可のない副業、兼職を禁止することが就業規則で定められています。

そのため、無許可の副業や兼職を理由に解雇する前提として、そもそも副業や兼業を禁止している就業規則が有効と言えるのかも確認しておかなければなりません。

特に注意を要するのが、裁判例では、従業員に周知されていない就業規則は無効であるとされている点です。

就業規則が作成されてはいるものの、従業員に周知されていない場合は、そもそも副業や兼職を禁止した就業規則が有効とは言えない状況であり、副業や兼職を理由とする解雇が不当解雇と判断される危険があります。

就業規則の周知については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

(2)懲戒解雇の手続きについて

懲戒解雇については、就業規則に定められた手続を守ることも重要です。

例えば、以下の点に注意しましょう。

 

  • 就業規則で懲戒については懲戒委員会を開いて決める旨の規定があるときは、必ず懲戒委員会を開くことが必要です。
  • 就業規則上、懲戒については対象者に弁明の機会を与える旨の規定があるときは、必ず、対象者の弁明を聴くことが必要です。

 

なお、弁明の機会を与えることについては、就業規則に特に定めがなくても、与えるべきであるとした裁判例も多いです。

そのため、懲戒解雇をする際は、必ず本人に弁明の機会(本人の言い分をいう機会)を与えるようにしましょう。

懲戒解雇の具体的な進め方や手続き面の注意点は以下をご参照ください。

 

 

5,副業を理由とする解雇の場合の退職金の扱いについて

副業を理由とする懲戒解雇が認められる場合でも、必ずしも退職金を不支給あるいは減額することが認められるわけではありません。

 

▶参考例:東京地方裁判所平成18年5月31日判決等

裁判所は、退職金規程において、懲戒解雇の場合に退職金の不支給あるいは減額することが記載されている場合であっても、「それまでの勤続の功を抹消または減殺するほどの著しい背信行為」がなければ、不支給あるいは減額とすることを認めないという態度をとっています(東京地方裁判所平成18年5月31日判決等)。

 

(1)退職金の不支給あるいは減額が認められないケース

このような判例の立場を前提にすると、副業による肉体疲労で本業に支障が生じるようなケースでは、「それまでの勤続の功を抹消または減殺するほどの著しい背信行為」とまではいえず、不支給あるいは減額とすることは認められないと考えなければなりません。

 

(2)退職金の不支給あるいは減額が認められるケース

一方で、競業他社での兼業のケースでも特に悪質と言えるケース、例えば、重要な機密情報を兼業先に提供したり、あるいは自社の従業員を兼業先に引き抜いたようなケースでは、「それまでの勤続の功を抹消または減殺するほどの著しい背信行為」にあたり、退職金を不支給あるいは減額とすることが認められる可能性が高いといえます。

 

6,副業を理由とする解雇の場合の失業保険について

副業を理由に解雇された場合は、副業をしている以上、「失業状態」とはいえず、失業保険(雇用保険)の給付対象外とされるケースが多いです。

週20時間未満の副業の場合に限り、失業状態という認定になり、失業保険(雇用保険)の支給対象となります。

また、副業が週20時間未満の場合であっても、副業禁止違反を理由とする解雇は、給付日数について優遇される「特定受給資格者」(いわゆる「会社都合退職」)には該当せず、自己都合退職扱いになることが多いです。

自己都合退職扱いの場合、失業保険の基本手当の給付日数は以下の通りです。

 

自己都合退職扱いの場合、失業保険の基本手当の給付日数一覧

雇用保険の被保険者であった期間 給付日数
1年以上10年未満の場合 90日
10年以上20年未満の場合 120日
20年以上の場合 150日

 

失業保険の給付日数の詳細は、以下をご参照ください。

 

 

また、会社都合退職(「特定受給資格者」)になるか否かの判断基準については以下をご参照ください。

 

 

7,咲くやこの花法律事務所なら「こんなサポートができます!」

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に、咲くやこの花法律事務所におけるサポート内容を以下の順にご紹介したいと思います。

 

  • (1)副業を理由とする解雇や退職勧奨に関するご相談
  • (2)従業員の解雇に関する労働審判や裁判への対応

 

以下で順番にご説明したいと思います。

 

(1)副業を理由とする解雇や退職勧奨に関するご相談

この記事でもご説明したとおり、無許可の副業を理由とする懲戒解雇については法律上注意点も多く、対応を誤ると不当解雇となるおそれが高いです。

咲くやこの花法律事務所では、無許可の副業についての対応を検討されている企業からのご相談について、問題社員対応に精通した弁護士が対応し、会社の事情を踏まえ、的確でわかりやすいアドバイスを行ないます。

解雇を検討されている場合は、解雇を正当付ける具体的な証拠の収集が必要です。

副業が本業に支障を及ぼす程度のものであったことについての証拠は、解雇した後で集めることは難しく、必ず解雇前に集めておく必要があります。

また、解雇すると不当解雇となるリスクが高い場面では、会社から本人に退職を促し、合意により退職させること(退職勧奨)が必要です。

解雇してしまった後のご相談ではとれる手段がかなり限られますので、必ず解雇の前にご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士への相談料

●初回相談料:30分あたり5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

(2)従業員の解雇に関する労働審判や裁判への対応

咲くやこの花法律事務所では、解雇が労働審判や裁判になってしまった場合についても、企業側から裁判対応の依頼をお受けしています。

咲くやこの花法律事務所では、これまで多数の労働審判、労働裁判のご依頼を企業からお受けしてきました。過去の事例で積み重ねたノウハウと経験を武器に、弁護士が、御社にとって最大限有利な解決を実現します。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士による労働審判や裁判の対応料金

●初回相談料:30分あたり5000円+税(顧問契約の場合は無料)
●着手金:45万円+税~

 

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事作成日:2023年6月13日

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