こんにちは、咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
事業承継にあたって、「株式の承継方法」や「金融機関や取引先との関係」あるいは「後継者の育成方法」に悩んでいませんか?
先代から後継者に事業承継をしようとしたが、幹部社員が従わずに独立してしまったり、後継者と幹部社員との間でトラブルが起こるケースも増えています。
事業承継には「株式の承継」、「金融機関や取引先との関係」、「後継者の育成」という3つの課題があります。
そして、これらの課題は弁護士から事業承継についてのサポートを受けることで解決可能です。
今回は、事業承継の課題についての弁護士の役割を解説します。
▼【関連情報】会社の事業承継に関連する情報は以下の情報も重要です。
・持株会社方式、ホールディングス化による事業承継について解説
▼事業承継に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
今回の記事で書かれている要点(目次)
この記事を読めばわかること。
最初にこの記事を読めばわかることを一覧でご紹介しておきます。
気になる項目は記事内の詳しい解説をご覧下さい。
●株式の承継に関する弁護士の4つの役割がわかります。
●金融機関との関係についての弁護士の役割がわかります。
●取引先との関係についての弁護士の役割がわかります。
●後継者の育成に関する5つの弁護士の役割がわかります。
●咲くやこの花法律事務所なら事業承継について、「こんなサポートができます」
●事業承継に詳しい「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせする方法
●事業承継に関連するお役立ち情報も配信中!無料メルマガ登録について
それでは「株式の承継に関する弁護士の役割」について詳しく見ていきましょう。
1,株式の承継に関する弁護士の役割
後継者が経営権を掌握し、経営基盤を確立するためには、株式の議決権を後継者に集約することが重要です。
先代の死後に相続により議決権が後継者以外の親族に分散されてしまうと、後継者が自由な経営を行うことができず、立場が不安定になります。
場合によっては株主総会で後継者が解任されてしまうという事態も生じますし、そこまで至らなくても重要事項について逐一、株主の賛成を取り付けないと意思決定ができないことになります。
この問題には、以下の4つの方法により対処が可能です。
方法1:
自社株をできるだけ後継者に集中させる
方法2:
遺留分対策を行う
方法3:
後継者以外の相続人には議決権のない株式を分配する
方法4:
後継者以外が相続した自社株を会社が買い取れるようにしておく
そしてこれらの方法は弁護士のサポートを受けながら実行していくことが必要です。
以下で順番に概要を見ていきましょう。
以下でご説明する対策は、できる限り早めに着手することが重要です。
対策が遅れるととれる手段も限られてきます。
少しでも不安がある方は早めに弁護士にご相談ください。
(1)自社株をできるだけ後継者に集中させる
まず、売買あるいは贈与、遺言などの方法により後継者に自社株を承継させることが必要です。
但し、このうち遺言による承継については、後述する遺留分との関係が問題になりやすく、できれば売買あるいは贈与による承継が望ましいです。
先代が売買や贈与により株式を後継者に承継させる場合、一般的に必要な手続きとしては、「株式譲渡契約書の作成」と「取締役会または株主総会で株式譲渡の承認を得ること」の2つです。
▶参考情報:「株式譲渡契約書の作り方」については、以下を参考にしてください。
しかし、これらの手続きを第三者が確認することなく、社内の手続きあるいは先代と後継者間の手続きで終わらせてしまうと、後でトラブルになるケースが増えています。
典型的には、以下のようなトラブルがあります。
典型的なトラブル事例
●後継者以外の相続人が、「先代の印鑑を後継者が勝手に持ち出して書類を作成したのではないか」と主張してくるケース
●後継者以外の相続人が、「先代がよくわかっていないのに無理やり書かせたのではないか」と主張してくるケース
このようなトラブルを起こさないためには、「株式譲渡契約書の作成」と「取締役会または株主総会で株式譲渡の承認を得ること」の2つについて弁護士に依頼して確実な方法で行うことが必要です。
▶補足情報:株券発行会社の場合の注意点
会社には株券発行会社と株券不発行会社があります。そして、株券発行会社の場合は、会社法128条1項で「株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。」とされていますので注意が必要です。
2006年5月1日より前に設立された会社については、定款で株券を発行しないことが書かれていなければ、実際には株券を発行していない場合でも、株券発行会社として扱われます。株券を紛失してしまった場合は、定款変更をして株券不発行会社にすることによって、株券がなくても有効に株式を譲渡することができます。
株券発行会社になっていると株式の承継の場面でも不便が生じます。
早いタイミングで株券不発行会社に変更しておかれることをおすすめします。
(2)遺留分対策を行う
自社株をすべて後継者に承継させようとする場合、遺留分が問題になります。
遺留分とは、相続人が相続財産に対して法律上最低限請求できる部分のことです。
例えば、先代が亡くなったときに子供3人が相続人になる場合、それぞれの子供には法律上、相続財産の6分の1の遺留分があります。
そして、オーナー社長の場合、自社株の評価額が相続財産の多くの部分を占めることが少なくありません。そのため、自社株をすべて後継者に承継させることにより、他の相続人の遺留分を侵害してしまうことになりがちです。
その結果、後継者が先代の死後に遺留分として多額の金銭を請求される危険があります。
この遺留分についての対策として利用が検討できる制度として、いわゆる「除外合意制度」があります。
▶参考情報:「除外合意制度」とは?
除外合意制度は、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」で認められた、自社株やその他の事業用財産を遺留分の算定対象から除外する制度です。これは実現できれば大変有用ですが、「他の相続人の合意が必要である点」や「経済産業大臣への申請と裁判所の許可が必要な点」が課題となります。
除外合意制度について詳しくは以下をご覧ください。
・http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/160401shoukei.html
・http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_29/index.html
「除外合意制度」を利用する場合は弁護士に依頼すれば、裁判所の許可をスムーズに得ることが可能になります。
(3)後継者以外の相続人には議決権のない株式を分配する
前述の「除外合意制度」の活用のためには後継者以外の相続人の同意が必要です。
そのため、同意が得られず、遺留分対策ができないときは、後継者以外の相続人に自社株を分配することは避けられないケースもあります。
このような場合でも、会社法を活用して後継者以外の相続人が相続する自社株の議決権を制限することが可能です。
典型的には、先代の自社株を「議決権のある株式」と「議決権のない株式」にわけ、後継者以外の相続人には「議決権のない株式」を分配する方法があります。
後継者以外の相続人が自社株をもつことになってもそれが議決権のない株式であれば、後継者による経営に大きな支障は生じません。
この「議決権のない株式」を活用するためには、通常は会社の定款変更のための株主総会が必要になります。株主総会の手続きに誤りがあると、あとで大きなトラブルに発展しますので、弁護士に依頼して確実に株主総会と定款変更の手続きを行うことをおすすめします。
(4)後継者以外が相続した自社株を会社が買い取れるようにしておく
後継者以外の相続人が相続した自社株を会社が強制的に買い取れるようにしておくことも可能です。
この方法も、先代の死後に株式の議決権を後継者に集約するための手段の1つになります。
後継者以外の相続人から強制的に買い取れるようにするためには、通常、会社の定款変更のための株主総会が必要になります。株主総会の手続きに誤りがあると、あとで大きなトラブルに発展しますので、弁護士に依頼して確実に株主総会と定款変更の手続きを行うことをおすすめします。
このほか、現在、行方不明であったり連絡がとれない株主がいる場合は、その株主の株式を会社が買い取ってしまうことも自社株の分散を防ぐために有効な対策です。これには会社法上の「所在不明株主の株式売却制度」の利用が効果的です。
この制度については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
2,金融機関との関係についての弁護士の役割
金融機関との関係を円滑に次の世代へ引き継ぐことも重要です。
金融機関に対する債務について先代が個人保証をしている場合は、後継者も個人保証を引き継ぐことが金融機関から要求されることが通常です。
しかし、特に親族以外の従業員を後継者にする場合は個人保証を求めると従業員が後継者を引き受ける上での大きなハードルになります。
そこで、個人保証を外してもらうための金融機関との交渉を弁護士を通じで粘り強く行うことが重要です。
3,取引先との関係についての弁護士の役割
取引先との関係を円滑に次の世代へ引き継ぐことも重要です。
まずは、先代が元気なうちに後継者と一緒に、主要な取引先に挨拶に回っておくことが必要です。
次に、取引先との契約書の整備も必要です。
契約書がないということではトラブルの際に対応ができません。また、契約書がないと、先代がいなくなったら、契約内容の詳細がわからなくなってしまうというケースもあります。
弁護士のサポートを受け、以下の点を整備していきましょう。
- これまで契約書がなかった取引先との契約書を整備する。
- 契約書がないという事態をなくすために、自社のひな形を整備する。
- 自社で作った契約書や、取引先から提案があった契約書をリーガルチェックする体制を整える。
▶参考情報:契約書のリーガルチェックについてのご相談は、以下をご覧ください。
また、先代に万が一のことがあったときにすぐに対応できるようにするためには、先代が元気なうちから、先代に加えて後継者も代表取締役に就任しておくということも1つの方法です。
4,後継者の育成に関する弁護士の役割
最後に、後継者教育の育成に関する弁護士の役割をご紹介します。
(1)後継者が新しい時代に対応するための課題
まず、前提として、後継者が新しい時代に対応して経営していくための課題を確認しておく必要があります。
この点は、企業によってさまざまですが、多くの企業で共通するのが以下の3点です。
1,法令を遵守する後継者でなければ存続できない
法律を正しく理解し、コンプライアンス、法令遵守に取り組まなければ企業が存続できない時代になっています。
後継者はもちろん幹部社員が正しく法律を理解し、社内全体のコンプライアンス意識を高めることが必要です。
2,労務環境を整備しなければ存続できない
人手不足が進み、人が会社を選ぶ時代になることが確実です。
選ばれる企業になるための労務環境の整備が企業存続のために不可欠です。
3,後継者に明確なビジョンがなければ存続できない
人が会社を選ぶ時代に必要なことは労務環境の整備だけではありません。
後継者が従業員をひきつける明確なビジョンを示すことが重要です。
これらの課題を踏まえたうえで、以下で弁護士による後継者教育や後継者に対するサポートの内容をご紹介します。
(2)弁護士による社内研修の実施
まず、後継者は法律を守りながら、社内を統制し、トラブルを事前に予防し、事業で利益を出すことを身につけなければなりません。
例えば以下の点について弁護士が後継者や後継者を支える幹部社員候補者を対象に社内研修を実施して、後継者や幹部社員を育成してことが効果的です。
弁護士による社内研修の例
- 従業員への指導の方法
- 労務関係の法律の基礎知識
- 問題社員への対応方法
- クレームに対する正しい対応方法
- 各種事業に関する法律の必要知識
▶参考情報:後継者や後継者を支える幹部社員候補者向けのコンプライアンス研修の実施方法については、以下の記事を参考にご覧下さい。
(3)企業のビジョンの明確化
企業経営のためには、従業員をひきつけ、統合するビジョンが必要です。
ビジネスに精通する弁護士のサポートを受けながら企業ビジョンを明確化していくことが可能です。
(4)就業規則、雇用契約書の整備
労務環境の整備も必要です。「就業規則」や「雇用契約書」の整備は弁護士や社労士などの専門家に依頼することが可能です。
▶参考情報1:就業規則については、以下を参考にご覧ください。
▶参考情報2:雇用契約書については、以下を参考にご覧ください。
(5)トラブル時もすぐに相談できる体制を整備
事業承継では、幹部社員との衝突や取引先からの契約の打ち切りなどさまざまな問題が起こります。
トラブルの兆候があればすぐに気軽に顧問弁護士に相談できる体制を整えておき、問題を小さいうちに解決することが重要です。
▶参考情報:事業承継など企業法務に強い顧問弁護士サービスについては以下をご覧ください。
・【全国顧問先200社以上】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら
・【大阪の企業様向け】顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)について詳しくはこちら
▼事業承継に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
5,咲くやこの花法律事務所なら事業承継について、「こんなサポートができます」
最後に、咲くやこの花法律事務所において行っている、中小企業の事業承継についてのサポート内容をご紹介したいと思います。
(1)事業承継に関するご相談
咲くやこの花法律事務所では、後継者の育成方法や、株式の承継方法、金融機関や取引先との関係の調整など、事業承継の各種課題についてのご相談をお受けしています。
事業承継の成功のためには早めに正しいスタートを切ることがまず重要です。
早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
(2)後継者、幹部社員向けの社内研修の実施
咲くやこの花法律事務所では、事業承継の重要な課題となる後継者の育成、幹部社員の育成のための社内研修を積極的にお引き受けしています。
内容は以下の通り多岐にわたります。
咲くやこの花法律事務所の社内研修におけるテーマ例
- 従業員への指導の方法
- 労務関係の法律の基礎知識
- 問題社員への対応方法
- クレームに対する正しい対応方法
- 各種事業に関する法律の必要知識
社内研修については以下の記事で詳しくご紹介しておりますのでご覧いただきますようにお願いいたします。
▶咲くやこの花法律事務所の企業向け「社内研修、講演、法律セミナー」プランについて
(3)就業規則、雇用契約書の整備
労務環境の整備も企業によっては事業承継の重要な課題になります。
咲くやこの花法律事務所では、就業規則や雇用契約書の整備についてのご相談を常時承っています。
詳しくは以下でご紹介していますのでご覧いただきますようにお願いいたします。
▶咲くやこの花法律事務所の「就業規則、雇用契約書」など労務に強い弁護士ついて
(4)取引先との契約書の整備
取引先との契約書の整備も重要な課題の1つです。
咲くやこの花法律事務所では契約書の整備について企業からのご相談を常時承っています。詳しくは以下でご紹介していますのでご覧いただきますようにお願いいたします。
▶咲くやこの花法律事務所の「契約書の整備」について
(5)金融機関との交渉
金融機関との交渉が事業承継の重要な課題となる場面もあります。
咲くやこの花法律事務所の弁護士が金融機関と粘り強く交渉しますので、ぜひご相談ください。
(6)顧問弁護士制度
咲くやこの花法律事務所では、いつでも経営者から気軽にご相談いただける体制を整えるため、顧問弁護士制度を準備しています。
事業承継をめぐるご相談はもちろんですが、後継者が企業を経営していかれるにあたって、いつでも相談できる体制を用意し、後継者をサポートします。
咲くやこの花法律事務所では、企業にとって利用しやすい形態の顧問弁護士制度を整備するため、月3万円の契約から月20万円の契約まで5つのコースを設定しています。
顧問弁護士について詳しくは以下のページをご覧ください。
▶咲くやこの花法律事務所の企業法務に強い「顧問弁護士サービス」について
6,事業承継に詳しい「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせする方法
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8,まとめ
今回は、事業承継についての弁護士の役割についてご説明しました。
株式の承継や後継者の育成には相応の時間がかかりますので、できるだけ早めに事業承継の取り組みをスタートすることが必要です。
記事更新日:2019年12月1日
記事作成弁護士:西川 暢春