【雛形ダウンロード有り】正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのポイント!

正社員の雇用契約書の作成方法

厚生労働省の統計によると、全国の労働局が実施している総合労働相談では、毎年、正社員から「9万件」を超える「労務トラブルの相談」があります。

そして、相談の中には、「雇用条件に関するトラブル」や、「転勤や異動に関するトラブル」など、雇用契約書をきちんと整備していれば防げた可能性の高いトラブルの相談も多く含まれています。

正社員は企業の主要メンバーであり、労務トラブルになってしまった場合の、精神的負担、経済的負担ははかりしれません。

そこで、今回は、労務トラブル防止の基本である「正社員の雇用契約書の作成について必ずおさえておきたいポイント」をご説明したいと思います。

 

今回の記事で書かれている要点(目次)

●最初に確認!「正社員」とは?
●重要!正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのポイント!
●ポイント1:雇用契約書に記載する必要がある項目を網羅する 。
●ポイント2:どの労働時間制を採用するかを検討する。
●ポイント3:転勤の有無を明確にする。
●ポイント4:人事異動、職種変更の有無を明確にする。
●ポイント5:試用期間を明記する。
●【補足】契約社員、パート社員の雇用契約書の作成方法について

 

最初に確認!「正社員」とは?

「正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのポイント」のご説明に入る前に、まずは前提として、「正社員の定義」を確認しておきましょう。

以下では、正社員の定義と他の雇用形態との比較についての解説です。

●正社員の定義

「正社員」とは、退職や解雇などの特別な事情がない限り、定年までフルタイムで雇用を継続する内容の雇用契約を企業と締結した従業員を指します。

正社員は、長期の雇用を前提に、企業内で育成され、キャリアをつむに従って賃金等も引き上げられることが通常です。

●他の雇用形態との比較

従業員の雇用形態としては、「正社員」のほかに、「契約社員」や「パート社員」などがあります。

・「契約社員」は、期間限定の雇用契約であり、定年までの雇用ではない点が、正社員と異なります。
・「パート社員」は、「正社員」よりも所定労働時間が短い従業員であり、フルタイムの雇用ではない点が、正社員と異なります。

このように、「パート社員」や「契約社員」との違いの観点からみると、「正社員」がまさに企業の中心メンバーであることがわかります。

ここでは、「正社員」が、定年までの長期の雇用を前提としたフルタイムの従業員であることをおさえておきましょう。

 

重要!
正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのポイント!

それでは、正社員の定義を踏まえたうえで、「正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのポイント」を見ていきましょう。

正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのポイントは以下の通りです。

正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのポイント!

ポイント1:
雇用契約書に記載する必要がある項目を網羅する 。

ポイント2:
どの労働時間制を採用するかを検討する。

ポイント3:
転勤の有無を明確にする。

ポイント4:
人事異動、職種変更の有無を明確にする。

ポイント5:
試用期間を明記する。

以下で順番に詳しく見ていきたいと思います。

 

ポイント1:
雇用契約書に記載する必要がある項目を網羅する。

正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたいポイントの1つ目は「雇用契約書に記載する必要がある項目を網羅する 」という点です。

正社員を雇用する際は、雇用条件に関し、法律で決められた項目を明示することが、労働基準法施行規則で義務付けられています。

そのうち、「書面で明示すること」が義務付けられている項目は以下の14項目です。

正社員を雇用する際に、書面で明示することが義務付けられている14項目

(1)労働契約の期間
(2)就業の場所
(3)従事する業務の内容
(4)始業時刻・終業時刻
(5)所定労働時間を超える労働の有無
(6)交替制勤務をさせる場合は交替期日あるいは交替順序等に関する事項
(7)休憩時間
(8)休日
(9)休暇
(10)賃金の決定・計算方法
(11)賃金の支払方法
(12)賃金の締切り・支払の時期に関する事項
(13)退職に関する事項 ※解雇事由を含む
(14)退職金制度がある場合は、退職金に関する以下の項目
・退職金が支給される従業員の範囲
・退職金の決定、計算の方法
・退職金の支払の方法
・退職金の支払の時期

上記の14項目を網羅しておくことが、正社員の雇用契約書を作成するうえでの基本的なポイントになりますのでおさえておきましょう。

 

ポイント2:
どの労働時間制を採用するかを検討する。

正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたいポイントの2つ目は「どの労働時間制を採用するかを検討する」という点です。

「労働時間制」とは労働時間に関する制度のことです。

法律上、「通常の労働時間制」(原則的制度)のほか、「変則的な労働時間制」を採用できるケースがあり、どの労働時間制を採用するかは、雇用契約書を作成する際の重要なポイントです。

また、「ポイント1」で(4)として、ご説明した通り、雇用契約書には、「始業時刻・終業時刻」を記載する必要がありますが、始業時刻・終業時刻を決める上でも、「どの労働時間制を採用するか」を検討しておくことが必要です。

まずは、「通常の労働時間制」(原則的制度)の内容を確認し、その後、「変則的な労働時間制」の内容を見ていきましょう。

●通常の労働時間制(原則的制度)について

労働基準法上、企業は、従業員の所定労働時間を「1日8時間以内、1週間40時間以内」で設定し、少なくとも週1日以上の休日を与えなければならないとされています。

1日8時間労働、週休2日がその典型です。
そして、実際の労働時間が、「1日8時間、1週間40時間」を超えるときは、それは「残業」になります。

残業が発生するときは、以下の2つの対応が必要です。

1,36協定の締結

企業は、従業員を、「1日8時間、1週間40時間」を超えて就業させるときは、時間外労働・休日労働に関する労使協定を締結し、労働基準監督署に提出することが必要です。

この労使協定は、労働基準法36条で義務付けられていることから、「36協定」(サブロク協定)と呼ばれます。

2,残業代の支払い

企業が所定労働時間を超えて、従業員を就業させるときは、残業代の支払いが必要です。

 

以上が「通常の労働時間制」の内容です。

それでは次に、「変則的な労働時間制」について見ていきましょう。

●変則的な労働時間制について

労働基準法で認められる変則的な労働時間制6種類

1,専門業務型裁量労働制
2,管理監督者制度
3,事業場外のみなし労働時間制
4,特例措置対象事業場制度
5,変形労働時間制
6,フレックスタイム制

これらの6つの制度を、残業代の面からみると、6つのうち、「1」から「3」までの3つの制度は原則として残業代が発生しない制度となります。一方、「4」から「6」については、残業代は発生しますが、一部残業代の発生を減らすことができる可能性がある制度といえます。

以下では6つの制度について順番に、制度の概略や制度採用時のメリットとデメリットを説明していきたいと思います。

1,専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、一部の専門的な職種について、実労働時間にかかわらず、あらかじめ決めた時間を労働したとみなす制度です。

専門業務型裁量労働制のメリット、デメリットは以下の通りです。

・メリット:

労使協定で「1日8時間労働したものとみなす」と定めておけば、実労働時間にかかわらず、残業代の支払いをする必要がありません。ただし、深夜割増賃金、休日割増賃金の支払いは必要です。

・デメリット:

厚生労働省が定める19の専門的な職種(システムコンサルタントやコピーライター、デザイン考案業務など)にしか採用できず、制度を採用できる場面がかなり限定されています。

2,管理監督者制度

管理監督者制度は、一般の従業員を管理、監督する立場の管理職について残業代の支払い対象から除外する制度です。

管理監督者制度のメリット、デメリットは以下の通りです。

・メリット:

実労働時間にかかわらず、残業代の支払いをする必要がありません。ただし、深夜割増賃金の支払いは必要です。

・デメリット:

裁判所では、労務管理上の重要な権限があって、かつ経営方針に関与する立場にあり、出退勤の自由が認められ、相応の待遇を受けている従業員のみが、管理監督者と認められています。

そのため、必ずしも社内の管理職全員に適用できるわけではないという制約があります。

また、会社内で管理監督者であるとして残業代を支給しない扱いをしていても、後日裁判所で、「管理監督者にはあたらない」と判断されて、残業代支払いを命じられる危険があります。

▶参考:管理監督者制度と残業代についてはこちらに詳しく記載していますので、あわせてご参照ください。

 

3,事業場外のみなし労働時間制

事業場外のみなし労働時間制は、社外で働く従業員について、実際の就業時間にかかわらず、あらかじめ定めた一定時間を働いたものとして賃金計算をすることを認める制度です。

事業場外のみなし労働時間制のメリット、デメリットは以下の通りです。

メリット:

事業場外のみなし労働時間制を採用し、社外で働く従業員について「所定労働時間労働したものとみなす」旨を定めれば、実労働時間にかかわらず、原則として残業代の支払いをする必要がありません。

ただし、深夜割増賃金、休日割増賃金の支払いは必要です。

デメリット:

事業場外のみなし労働時間制については、社外で業務に従事する従業員について、「会社による就業時間の管理が難しい場合」にのみ適用が認められています。

そして、「会社による就業時間の管理が難しい場合」にあたるかどうかは裁判所でかなり厳格に判断されており、必ずしも、社外で仕事をする従業員一般に適用できるわけではないという制約があります。また、会社内で事業場外のみなし労働時間制を適用する扱いをしていても、後日裁判所で、「会社による就業時間の管理が難しい場合」には当たらないと判断されて、残業代支払いを命じられる危険があります。

▶参考:事業場外のみなし労働時間制と残業代についてはこちら詳しく記載していますので、あわせてご参照ください。

 

このように、「1「から「3」は原則として残業代が発生しない制度ですが、いずれも適用できる場面が厳格に制限されていることに注意が必要です。

では、続いて、「4」から「6」の制度についてご説明していきたいと思います。

「4」から「6」は、残業代は発生するが、会社によっては残業代の発生対象時間を減らすことができる可能性がある制度です。

4,特例措置対象事業場制度

特例措置対象事業場制度は、一定の条件を満たす小規模事業所については、従業員の就業時間が1日8時間週44時間を超える場合に限り残業代が発生するとする制度です。

通常の労働時間制では、1週間の労働時間が40時間を超えると残業代が発生しますが、従業員が10名未満の事業所で、対象業種(商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業)に該当する場合は、特例措置対象事業場として、週44時間労働制が認められています。

例えば、小売店、美容院、病院、保育園などで利用することが可能です。

特例措置対象事業場制度のメリット、デメリットは以下の通りです。

メリット:

従業員の就業時間が1日8時間週44時間を超えるまでは残業代が発生しません。

デメリット:

従業員が10名未満の事業所で、対象業種(商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業)に該当する場合のみ、利用が可能です。

5,変形労働時間制

変形労働時間制は、1年あるいは1か月などあらかじめ定めた期間について、週あたりの平均労働時間が週40時間以内であれば、特定の日に8時間以上あるいは特定の週に40時間以上の就業になっていても残業代が発生しないようにできる制度です。

変形労働時間制のメリット、デメリットは以下の通りです。

メリット:

変形労働時間制を採用することにより、会社によっては残業代の発生対象時間を減らすことができる可能性があります。

たとえば、週のうち「月・火・水」は1日7時間労働で対応可能だが、「木・金」は残業があるという場合に、「月・火・水」の就業時間が8時間に満たない1時間分、合計3時間を、「木・金」に回して、「木・金」の所定労働時間を9時間30分とすることができます。

このようにすれば、毎週3時間分、残業代を削減することができます。

デメリット:

変形労働時間制は業種を問わず広く採用可能な制度ですが、労使協定や労働基準監督署への届出が必要になります。

6,フレックスタイム制

フレックスタイム制は、始業時刻、終業時刻を一定のルールのもとに従業員が自由に決定することができる制度です。

フレックスタイム制のメリット、デメリットは以下の通りです。

メリット:

フレックスタイム制を採用することにより、会社によっては残業代の発生対象時間を減らすことができる可能性があります。

通常の労働時間制では、1日9時間働いた場合、その時点で1時間分の残業代の発生が確定します。これに対して、フレックスタイム制では、例えば1か月といった清算期間を設け、その清算期間全体を平均して1日8時間週40時間を超えて働いたときにはじめて残業代が発生します。

そのため、1日9時間働く日もあれば、7時間働く日もあるといった場合、1か月といった清算期間の単位で平均して1日8時間を超えていなければ残業代が発生しないことになります。

デメリット:

始業時刻、終業時刻を各従業員が自由に決定するため、従業員のマネジメントが困難になったり、社内のコミュニケーションが希薄化するおそれがあります。

 

以上、「通常の労働時間制」と「6種類の変則的な労働時間制」についてご説明しました。

それぞれのメリット、デメリットを踏まえて、どの労働時間制を採用するかを検討したうえで、雇用契約を作成することが重要なポイントです。

 

ポイント3:
転勤の有無を明確にする。

正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたいポイントの3つ目は「転勤の有無を明確にする」という点です。

「ポイント1」の(2)でご説明したように、「就業の場所」は雇用契約で明示するべき項目の1つです。

そして、雇用契約の際に就業の場所の明示が義務付けられているのは、「就業の場所がどこか」が、従業員にとって重要な事柄であるためです。特に、「転勤がある雇用契約か、転勤がない雇用契約なのか」は、従業員にとっても大きな違いであり、場合によっては、就職先を選ぶ際の重要な判断材料になり得ます。

そして、最近は、企業からの転勤命令に対して、従業員が転勤を拒否して、訴訟トラブルに発展するケースも増えており、会社が従業員に対して「3,200万円」を超える支払いを命じられた裁判例も出ています。(東京高等裁判所平成12年11月29日判決)

このような転勤をめぐるトラブルを防ぐために、転勤がある雇用契約の場合は、以下の2点に注意しておきましょう。

転勤がある雇用契約の場合の2つの注意点

注意点1:
会社の転勤命令には従う必要があることを、雇用契約書にも明記する。

就業規則に転勤に関する規定がある企業が多いと思いますが、トラブル防止のためには、雇用契約書にも「会社の転勤命令に従う必要があること」を明記しておくことが必要です。

できれば、「大阪、名古屋、その他現在の本支店所在地に限らず新設支店への転勤を命じることがあり、従業員はこれに従わなければならない」などと想定される転勤先を具体的に明記しておくことをおすすめします。

注意点2:
採用面接の際にも転勤があることの説明をする。

転勤があることについては、雇用契約書に記載するだけでなく、採用面接の際も明確に説明をしておくことが、採用後の転勤トラブルの回避につながります。

採用面接の際には転勤があることを説明するのを忘れないようにしましょう。

 

また、面接担当者が「雇用契約書では転勤命令ありとなっているが、実際には転勤がないように配慮する」などと説明して、あとでトラブルになるケースがありますので、雇用契約書の内容と、採用面接時の説明にずれがないように、面接担当者に徹底しましょう。

このように、転勤については、雇用契約書でその有無を明確にし、採用面接の際も明確に説明することが、トラブル防止のための重要なポイントですので、おさえておきましょう。

▶参考:転勤をめぐるトラブル対策についてはこちらで詳しくご説明していますので、あわせてご参照ください。

 

ポイント4:
人事異動、職種変更の有無を明確にする。

正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたいポイントの4つ目は「人事異動、職種変更の有無を明確にする」という点です。

「ポイント1」の(3)でご説明したように、「従事する業務の内容」は雇用契約で明示するべき項目の1つです。

そして、どのような業務に従事するのかは、従業員にとって、給与や就業場所と同様に重要な項目です。
例えば、「営業職として採用した従業員が、成績が上がらないので、営業事務への異動を命じたところ、異動を拒否された」などというように、会社からの職種変更の命令に対して、従業員がこれを拒否して、訴訟トラブルになるケースも発生しています。

このような、人事異動、職種変更をめぐるトラブルの防止のために、正社員の雇用契約書で「従事する業務の内容」について記載するときは、以下の点を注意しておきましょう。

●人事異動、職種変更をめぐるトラブルを防止するための雇用契約書作成に関する注意点

『様々な職種への配属がありうるのか、それとも特定の職種のみに配属される専門職なのかを、雇用契約書で明確にする。』

以下では、「様々な職種への配属がありうるケース」と「特定の職種のみに配属される専門職のケース」にわけて、注意すべきポイントをさらに詳しく見ていきたいと思います。

1,「様々な職種への配属がありうるケース」における雇用契約書作成上の注意点

例えば、新卒者を正社員採用するケースでは、様々な職種への配属がありうることが一般的です。

このようなケースでは、「入社後最初に配置される職種」や「従業員の希望職種」に限らず、様々な職種への配属がありうることを雇用契約書にも明記しておくことがトラブル防止につながります。

また、判例上、「事務系の職種から労務系職種への異動」あるいは「その逆の異動」については、「就業規則等に異動に関する規定があったとしても、企業が一方的に異動を命ずることはできない」とされています。そのため、自社の職種として、事務系の職種と労務系の職種の両方があり、事務系の職種から労務系職種への異動、あるいはその逆の異動もありうるという場合は、雇用契約書にその点も含めて明記しておくことをおすすめします。

▶参考:この点については、「職種限定契約でない場合も職種変更には制約がある。」で詳しく書きましたので、併せてご参照ください。

 

2,「特定の職種のみに配属される専門職のケース」における雇用契約書作成上の注意点

過去に長期間特定の職種で働いてきた人を中途採用するケースや、特定の資格の有資格者であることに着目して採用したケースでは、特定の職種のみに配属される専門職として採用するケースも多いでしょう。

例えば、同業他社で営業経験が長い人を自社の営業職として中途採用するケースや、介護保険施設でケアマネージャーが必要になった場合に有資格者を採用するケースがこれにあたります。このような場合は、営業職なら営業職以外の職種への配属は予定されていないことが多いですし、ケアマネージャーならケアマネージャー業務以外の職種への配属は予定されていないことが多いと思います。

そこで、特定の職種のみに限定して配属されることを雇用契約書に明記しておくことをおすすめします。

雇用契約書への記載をおすすめするのは、記載しておかなければ、万が一、その従業員が会社の期待する水準の仕事ができずに解雇等を検討する場合に支障が生じることがあるためです。

特定の職種のみに配属される専門職として採用したことが雇用契約書で明確になっていない場合、解雇の前に他の職種への配置転換をして他職種での雇用継続可能性を検討するステップを踏まなければ、不当解雇であると判断する判例が多くなっていますので、注意が必要です。

雇用契約書で特定の職種のみに配属される専門職であることを明記しておけば、このような事態にはなりません。

以上、「様々な職種への配属がありうるのか、それとも特定の職種のみに配属される専門職なのかを明確にする」ことが、雇用契約書の重要ポイントの1つとなりますのでおさえておきましょう。

 

ポイント5:
試用期間を明記する。

正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたいポイントの5つ目は「試用期間を明記する」という点です。

「試用期間」の制度は、新しく採用した従業員を一定期間実際に就労させて、従業員としての適格性を判断したうえで、本採用するかどうかを決める制度です。

実際に一緒に働いてみないと、従業員としての適格性を判断できないということも現実にありますので、雇用契約書には試用期間を明記して、試用期間の制度を設けておくことをおすすめします。

試用期間中も雇用契約が成立していますので、試用期間経過後に、本採用するかどうかを自由に決めることができるわけではなく、不当に本採用を拒否すれば不当解雇と判断されることはありえます。

しかし、試用期間経過後に本採用を拒否することは、試用期間を設けていない場合の通常の解雇と比べれば、判例上、正当な解雇と認めてもらうためのハードルが若干低くなっています(三菱樹脂事件最高裁判所判決)。

その意味でも、万が一、新しく採用した従業員に適性がないという場合に備え、試用期間を雇用契約書に定めておくほうがよいといえます。

▶参考:試用期間と解雇についての注意点はこちら

 

なお、試用期間の長さについては、あまり長く設定しすぎると裁判所で試用期間の規定が無効と判断されてしまいます。
3か月から6か月程度の期間にしておかれることをおすすめします。

 

【補足】
契約社員、パート社員の雇用契約書の作成方法について

また、補足としてここでは正社員以外の「契約社員」や「パート社員」の雇用契約書について少しご説明しておきます。

契約社員、パート社員については、正社員の雇用契約書とは別の注意が必要です。

こちらについては、以下で注意点となるポイントだけ掲載しておきます。

詳しくは「契約社員の雇用契約書を作成する方法」「パート社員の雇用契約書を作成する方法」で詳しく解説していますので、契約社員を採用する際やパート社員を採用する際に、必ずチェックしておいてください。

契約社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい注意点

1,所定労働時間は1日8時間以内かつ週40時間以内が原則。
2,雇用契約書の内容は就業規則の労働条件を下回ってはならない。
3,5年で無期契約に転換できる5年ルールに注意!
4,期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止のルールに注意!
5,労働条件の明示義務のルールによる法定の記載事項に注意!

契約社員の雇用契約書を作成する際は、この5つの注意点をおさえておく必要があります。

次に、パート社員の雇用契約書についてご説明いたします。

パート社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい注意点

1,パート社員の雇用契約書に記載する必要がある項目を網羅する
2,無期の雇用契約か有期の雇用契約かを決める
3,賃金の決め方については、就業規則、パートタイム労働法、最低賃金法に注意!
4,始業時刻・終業時刻の記載についての注意点

パート社員の雇用契約についても、この4つの注意点をおさえておく必要があります。

それぞれの雇用形態で雇用契約書の作成方法とおさえておくべき注意点はかわりますので、自社で人材を採用する際は注意しておきましょう。

 

まとめ

今回は、正社員の雇用契約書を作成する際に必ずおさえておきたい5つのポイントとして、以下の点をご説明しました。

ポイント1:
雇用契約書に記載する必要がある項目を網羅する 。

ポイント2:
どの労働時間制を採用するかを検討する。

ポイント3:
転勤の有無を明確にする。

ポイント4:
人事異動、職種変更の有無を明確にする。

ポイント5:
試用期間を明記する。

以下で、正社員の雇用契約書のテンプレート書式を掲載しますので、雛形をダウンロードしてご利用ください。

正社員の雇用契約書のテンプレート書式の雛形ダウンロードはこちら

正社員の雇用契約書の雛形をダウンロードする

 

なお、この記事では触れませんでしたが、正社員の賃金の記載について「固定残業代制度」を設ける場合は、この点についても雇用契約書の記載の仕方に注意が必要です。

これについては、「固定残業代に関する就業規則や雇用契約書の作成についての注意点」で詳しく解説していますので、ご確認ください。

雇用契約書の作成やリーガルチェックについては、咲くやこの花法律事務所の「労務分野の相談」のご相談の中でも大変多くなっています。トラブルが発生する前に正しい対策をしておく「予防法務」について、労務に特に強い弁護士が雇用契約書関連のご相談を担当しています。

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