こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
派遣社員を休ませた場合の休業補償のことでトラブルになっていませんか?
休業補償の問題は派遣社員との深刻なトラブルに発展することがあり、ルールを正しく理解して正しい対応をすることが重要です。
この記事では、派遣社員の休業補償について、以下の場面ごとに派遣会社が理解しておくべきルールをご説明します。
- 派遣先から派遣社員の交代要請があった場面
- 派遣先から派遣契約を解除された場面
- 台風など天災により派遣先が休業した場面
- 労災により派遣社員が休業した場面
- 緊急事態宣言の影響により派遣先が休業となった場合
▼派遣分野における咲くやこの花法律事務所の解決実績や顧問先派遣会社のインタビュー動画はこちらをご覧ください。
派遣社員の休業補償の支払いをめぐって派遣社員とトラブルになり、外部の労働組合が介入して団体交渉に発展したり、労働局から指導を受けたり、あるいは以下のような訴訟トラブルに発展したりするケースが増えています。
●トルコ航空事件(東京地裁平成24年12月5日判決)
派遣社員13名が、派遣先により派遣契約が中途解除された場面で、派遣会社に休業期間中の賃金を請求し、約700万円の支払が命じられた事例
派遣社員との紛争は派遣先との関係も考慮しながら解決しなければならず、複雑化、長期化しやすい特徴があります。
トラブルの際は問題がこじれる前に弁護士にご相談いただくことが早期の解決につながります。
▼派遣社員の休業補償・休業手当の対応に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
【お問い合わせについて】
※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
今回の記事で書かれている要点(目次)
- 1,派遣の休業補償・休業手当とは?
- 2,場面1: 派遣先から派遣社員の交代を求められた場合の休業補償
- 3,場面2: 派遣契約が解除された場合の休業補償
- 4,場面3: 台風などの天災により派遣先が休業した場合の休業補償
- 5,場面4:労災により派遣社員が休業した場合の休業補償
- 6,場面5: 緊急事態宣言の影響により派遣先が休業となった場合
- 7,場面6: 病気の場面での休業補償は不要
- 8,咲くやこの花法律事務所なら派遣会社についてこんなサポートができます!
- 9,咲くやこの花法律事務所の派遣業に関する解決実績
- 10,派遣社員の休業補償・休業手当の対応について「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせする方法
- 11,派遣社員の休業補償・休業手当などに関連するお役立ち情報も配信中!(メルマガ&YouTube)
1,派遣の休業補償・休業手当とは?
派遣の休業補償・休業手当とは、派遣会社が派遣社員を休業させた場合に派遣社員に支払う金銭のことを言います。
労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業については、使用者が平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならないとされています。
以下で具体的な場面ごとに休業補償・休業手当についてみていきたいと思います。
2,場面1:
派遣先から派遣社員の交代を求められた場合の休業補償
派遣先から派遣社員の就業状況についてクレームがあり、派遣社員の交代を求められて派遣会社が応じた場合、その派遣社員について新しい派遣先が決まるまでの期間、休業補償、休業手当の支払が必要になることがあります。
この場合に休業補償、休業手当の支払義務が発生するかどうかの判断については、以下の通りです。
(1)派遣会社が派遣先との円満を重視して交代に応じた場合
派遣先からのクレームを受けて、派遣会社としてそのクレームの内容が事実かどうかなどの調査を特段行わないまま、円満解決のために交代に応じるという場合は、判例上、派遣社員に対する休業補償、休業手当の支払いが必要になります。
この場合の休業補償の額については、前述の労働基準法26条に基づく6割の計算による休業手当では足りず、給与全額の補償が必要であるという考え方が一般的です(東京地裁平成20年9月9日判決)。
(2)派遣社員に解雇理由がある場合
派遣先からの交代要請が、派遣社員の無断欠勤や能力不足あるいは業務上の不正など派遣社員側に問題があり、派遣社員を解雇すべき理由がある場合は、派遣社員を解雇すれば、以後、休業補償を支払う義務はありません。
ただし、派遣先からクレームを受けたことだけを理由に、その事情を十分調査せずに派遣社員を解雇することは不当解雇にあたりますので注意してください。
派遣社員の解雇には、正当な解雇理由があることが必要です。
正当な解雇理由がどのような場面で認められるかについては以下のそれぞれの記事や動画を参照してください。
▶参考情報:正当な解雇理由とは?15個の理由例ごとに解雇条件・解雇要件を解説
▶参考情報:派遣社員の解雇についてわかりやすく徹底解説!
▶【動画で解説】西川弁護士が「安易な解雇は厳禁!派遣社員の解雇の注意点」を弁護士が詳しく解説中!
3,場面2:
派遣契約が解除された場合の休業補償
次に、2つ目の場面として、派遣先から派遣契約を解除された場合にも、新しい派遣先が決まるまでの期間、休業補償、休業手当の支払が必要になることがあります。
この場合は以下の3通りにわけて考えることが必要です。
(1)派遣先側の事情で派遣契約が解除された場合
派遣先の事業の縮小や業務が減ったことなど、派遣先側の事情で派遣契約が解除された場合、派遣会社は派遣社員に労働基準法26条により6割の計算による休業補償を支払う義務があります。
ただし、派遣契約書の記載に基づき、派遣会社は派遣先に対し、支払った休業補償分の費用を請求することが可能です。
労働者派遣法29条の2でも、派遣先に対し、派遣先都合の派遣契約の解除については休業手当等の支払に要する費用を派遣先で負担するなどの措置をとることが義務付けられています。
(2)派遣先からクレームがあり派遣契約解除に応じた場合
派遣先から派遣社員の就業状況についてクレームがあり、派遣会社としてそのクレームの内容が事実かどうかなどの調査を特段行わないまま、円満解決のために派遣契約の解除に応じるという場面では、派遣社員に対して休業補償、休業手当の支払いが必要になります。
この場合の休業補償の額についても、労働基準法26条の6割の計算による休業手当では足りず、給与全額の補償が必要であるという考え方が一般的です。
(3)派遣社員に解雇理由がある場合
派遣契約の解除が、派遣社員の無断欠勤や能力不足など派遣社員側に問題があり、解雇理由がある場合は、派遣社員を解雇すれば、休業補償を支払う義務はありません。
ただし、派遣契約が解除されたことのみを理由に派遣社員を解雇することは派遣法上禁止されており、派遣社員の解雇には、正当な解雇理由があることが必要であることに注意してください。
なお、正当な解雇理由がどのような場面で認められるかについては以下の記事を参照してください。
派遣会社による派遣社員の解雇もトラブルになりやすい場面の1つです。派遣会社の解雇トラブルが裁判になった事例として以下の判例が参考になります。
●派遣契約の解除のみを理由に派遣社員を解雇したことを不当解雇と判断した判例
(横浜地裁平成23年1月25日判決、宇都宮地裁栃木支部平成21年4月28日決定など)
●派遣労働者が、派遣先の研修に2日連続遅刻したうえ、研修中に他の派遣社員とトラブルになるなどしたことなどを理由に解雇したケースについて、解雇有効と判断した判例
(東京地裁平成18年1月27日判決)
4,場面3:
台風などの天災により派遣先が休業した場合の休業補償
3つ目の場面として、台風などの天災により派遣先が休業した場合にも、派遣会社は休業補償を派遣社員に支払う義務があります。
この場合、労働基準法26条により、給与額の6割相当で足りるという考え方が一般的です。
なお、派遣先が休業したからと言って、派遣社員の同意なく、派遣会社からこの休業日に有給休暇をとらせることは法律上はできません。
5,場面4:労災により派遣社員が休業した場合の休業補償
最後に4つ目の場面として、労災により派遣社員が休業した場合でも、派遣社員から休業補償の支払を求められるケースがあります。
労災からの休業補償は従業員の給与額満額の約6割しか支給がされないため、派遣社員から残りの4割部分の支払いを求められるケースです。
ただし、この場合も労災からの支給では足りない4割部分の休業補償については、派遣先に支払義務があると判断されるケースが多くなっています。
▶参考情報:平成5年5月28日浦和地方裁判所判決の判例
労災の場面で派遣社員から派遣先への請求を認めた判例として、平成19年6月28日横浜地方裁判所判決、平成5年5月28日浦和地方裁判所判決などがあります。
一方、派遣会社としては、労災事故が予想されるような危険な業務であることを予想できたような事情がない限り、労災事故の際の休業補償の支払義務を負わないことが通常です。
▶参考情報:平成25年2月4日東京地方裁判所判決の判例
この点については、平成25年2月4日東京地方裁判所判決が、「派遣元は、日常的に労働者に接しておらず、多数の派遣先を抱えていることから、派遣労働者の就業状況を常に把握し、管理することは不可能ないし困難である。したがって、派遣元の注意義務としては、‥仮に派遣先に労働基準法違反の過重な労働等の事実があれば、その事実を認識した場合に、その是正を求める等の限度で雇用契約上の注意義務を負うにすぎないと解すべきである。」としており参考になります。
その他、労災が認定された場合の会社としての対応や責任については、以下の記事でも詳しくご説明していますのであわせてご参照ください。
上の説明では、労災からの休業補償は給与額の約6割とご説明しました。
より正確には、労災の休業補償には「待機期間」と呼ばれる制度があり、休業の初日から3日目までの3日間については、労災の休業補償給付の対象外です。4日目以降の休業について、給与の6割相当額が支給されます(別途、休業特別支給金の支給あり)。
6,場面5:
緊急事態宣言の影響により派遣先が休業となった場合
派遣先が休業になった場合、まず、派遣先が緊急事態宣言に基づく営業の制限を受けて休業しているのか、それとも自主休業なのかを確認する必要があります。
(1)自主休業の場合
映画館やライブハウス、劇場などといった特殊な業種を除き、一般の派遣先では、緊急事態宣言に基づき営業の制限を受けることはなく、派遣先の自主的な判断で自主休業しているにすぎません。
その場合は、派遣先は自主休業したとしても、派遣会社に対して、派遣契約終了までの期間に対応する派遣料金の支払義務があり、派遣会社も派遣社員との雇用契約終了までは、休業補償の支払義務があるというのが労働基準法の従前の解釈に基づく通常の結論になると考えられます。
派遣会社としてはまずは、休業中の派遣料金の支払について派遣先と交渉する必要があります。
(2)都道府県知事から要請・指示等を受けた休業の場合
「派遣先が、緊急事態宣言下で、都道府県知事から要請・指示等を受け、事業を休止した場合の対応」については、厚生労働省のウェブサイトで厚生労働省の見解が示されています。
その記載によると、要請・指示等により派遣先が休業になる場合でも、派遣先は原則として派遣会社に対し休業手当分の費用負担義務を負うという内容になっています。
また、派遣会社は、派遣社員に対して、「休業手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすことが必要です。」と記載されています。
▶参考情報:厚生労働省ウェブサイトからの抜粋
問1 (派遣先の方)改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下で、都道府県知事からの要請・指示等を受け、事業を休止したことを理由として、労働者派遣契約を中途解除せざるをえない場合、派遣先は、労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる必要はありますか。
「労働者派遣法第29条の2により、派遣先は、自らの都合により労働者派遣契約を解除する場合には、新たな就業の機会の確保や休業手当等の支払に要する費用の負担等の措置を講じなければなりません。」
問3 (派遣元事業主の方)改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下における都道府県知事からの要請・指示等を受けて事業を休止した派遣先から、労働者派遣契約の中途解除を申し込まれているが、派遣元としてどのような対応を行うべきでしょうか。
「派遣先とも協力しながら派遣労働者の新たな就業機会の確保を図り、それができない場合はまずは休業等を行い雇用の維持を図るとともに、休業手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすことが必要です。」
7,場面6:
病気の場面での休業補償は不要
派遣社員の私的な病気の場面では休業補償を派遣会社が支払う必要は通常ありません。
ただし、就業規則で、私的な病気についても手当を支払うことを定めている派遣会社では、手当の支給が必要になります。
就業規則に特に記載がなければ、派遣社員側の事情で仕事ができていない以上、無給という扱いで問題ありません。
なお、派遣社員が病気で働けず、派遣会社から給与が支給されない場合、派遣社員は健康保険から傷病手当金を受け取ることが可能です。
傷病手当金の制度については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
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8,咲くやこの花法律事務所なら派遣会社についてこんなサポートができます!
以上、6つの場面について休業補償、休業手当についての考え方をご説明しました。
最後に、咲くやこの花法律事務所における派遣会社向けサポート内容についてもご紹介したいと思います。
(1)派遣会社からのご相談
咲くやこの花法律事務所では、派遣会社から以下のようなご相談を常時お受けしています。
- 派遣社員の労務管理や派遣社員とのトラブルに関するご相談
- 派遣先とのトラブル、クレーム、派遣料金不払いに関するご相談
- 派遣法改正への対応についてのご相談
- 派遣契約書や就業規則の作成、その他派遣業で使用する各種書類についてのご相談
派遣法のルールを守れていない場合、労働局から指導を受けるなどのおそれがあり、場合によっては次回の許可が得られないこともありますので、確実な対応が必要です。
また、派遣社員とのトラブルについても深刻なものに発展するケースが増えており、弁護士に相談したうえで正しい対応をしていくことが必要です。
咲くやこの花法律事務所では、派遣会社の顧問先も多く、これまでの対応経験も豊富なため、安心してご相談いただけます。
咲くやこの花法律事務所の派遣法、労働法に強い弁護士による相談料
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の際は無料)
●電話による初回相談料:30分10000円+税(顧問契約の際は無料)
(2)派遣法、労働法に強い弁護士による顧問契約
派遣社員の労務管理や派遣社員とのトラブルのほか、派遣先とのトラブル、派遣法改正への対応などについて、対策に悩まれている派遣会社経営者の方は多いと思います。
咲くやこの花法律事務所では、これらの問題についてスムーズにいつでもご相談いただくことを可能にするために、顧問契約をおすすめしています。
顧問契約をしていただくと、必要に応じて、派遣法、労働法に強い弁護士によるサポートを受けることが可能です。
咲くやこの花法律事務所では顧問契約をご希望の派遣会社の方に対して、無料で弁護士が面談して顧問契約のご案内を差し上げています。
ぜひ咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスをご利用ください。
咲くやこの花法律事務所の派遣法、労働法に強い弁護士による顧問契約の料金
●顧問料:毎月5万円+税~(スタンダードプラン)
顧問弁護士サービスについて詳しい情報は以下もご覧下さい。
▶【全国顧問先200社以上】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら
▶【大阪の企業様向け】顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)について詳しくはこちら
なお、派遣会社における顧問弁護士の役割について以下の動画や記事で詳しくご説明していますのであわせてご参照ください。
▶【動画で解説】西川弁護士が「派遣会社における顧問弁護士の5つの役割」を詳しく解説中!
▶派遣会社における弁護士の役割とは?派遣法や労務問題の対応が可能
9,咲くやこの花法律事務所の派遣業に関する解決実績
咲くやこの花法律事務所では、多くの派遣会社から顧問契約のご依頼をいただき、改正法の対応や派遣社員とのトラブル、派遣先とのトラブルについて実際に解決をしてきた実績があります。
また、契約書の整備などについても派遣会社からご依頼いただき、実施してきました。
以下では咲くやこの花法律事務所の派遣業に関する実績の一部を紹介しておりますのであわせてご参照ください。
・ 派遣会社から労働者派遣契約書のリーガルチェックの依頼を受けた事例
・人材派遣会社の依頼により、求人サイトの「利用規約」を作成した事例
弊事務所の顧問先派遣会社様と担当顧問弁護士の対談動画もアップしておりますので、もしよろしければご覧ください。
・「顧問先派遣会社様の顧問先の声」はこちらからご覧ください。
10,派遣社員の休業補償・休業手当の対応について「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせする方法
咲くやこの花法律事務所の派遣社員の休業補償・休業手当の対応に関するお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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記事作成弁護士:西川 暢春
記事作成日:2020年04月15日