こんにちは咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
契約社員の解雇について悩んでいませんか?
契約社員の解雇は、正社員の解雇とは異なるルールが適用され、間違った方法で解雇すると以下のような重大なトラブルに発展する危険があります。
事例1:
障害者自立支援施設を運営する法人が契約社員2名を解雇し、裁判所から不当解雇として合計約740万円の支払いを命じられた事例(平成28年 8月 9日東京地方裁判所判決)
事例2:
警備会社が契約社員(警備員)を解雇し、裁判所から不当解雇として約400万円の支払いを命じられた事例(平成27年5月28日東京地方裁判所判決)
今回は、契約社員の解雇について、上記の裁判例のようなトラブルを回避するためにおさえておくべき重要な注意点を弁護士が詳しく解説します。
契約社員の解雇は、企業にとって大きなリスクを伴う場面です。前述の裁判例のように不当解雇と判断されると裁判所で数百万円の支払いを命じられることになります。
解雇してしまってから弁護士にご相談いただいても、とれる手段が限られてしまいます。「契約社員だから…」と安易に考えずに必ず事前に弁護士に相談してください。
従業員の解雇について会社が弁護士に相談する必要性や弁護士費用などについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
▼【関連動画】西川弁護士が「契約社員を解雇する場合!正社員とは異なる重要なルールを解説【前編】」「契約社員の解雇が例外的に認められたケースとは?4つの事例で解説【後編】」について詳しく解説中!
▶参考情報:解雇トラブルに関する咲くやこの花法律事務所の解決実績は、こちらをご覧ください。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,契約社員の雇用期間の途中での解雇は原則として不可
契約社員の解雇を検討する場合におさえておいてほしい重要なことがあります。
それは、契約社員については、雇用契約の期間の途中での解雇はよほどのことがない限り違法とされているという点です。
労働契約法第17条1項により、契約社員の期間途中での解雇は「やむを得ない事由」がある場合でなければできない、とされています。そして、この「やむを得ない事由」があるとして、期間途中の解雇を認めた判例はほとんどありません。
判例の大半が不当解雇と判断しています。
▶参考情報:労働契約法第17条1項
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
例えば、以下のケースではいずれも「やむを得ない事由」があったとはいえないとして不当解雇と判断されています。
●バスの運転手(契約社員)が1年に6回も事故を起こしたため、期間途中で解雇したケース(大阪地方裁判所平成25年 6月20日判決)
●契約社員が、同僚に対して台車をぶつける、胸ぐらをつかむなどの暴力事件を起こしたため、期間途中で解雇したケース(東京地方裁判所平成29年5月19日判決)
●パソコンのスキルがなく、会社の費用でパソコンスクールに通学させても向上しないため、パソコンを使用しない庶務的業務のみの担当に特化させるなどの対応をされていた男性契約社員が、軋轢のあった女性従業員に対して「無視するのもいい加減にしろ」などと大声で怒鳴るなどのトラブルを起こしたため、期間途中に解雇したケース(東京地方裁判所平成31年2月13日東京地方裁判所判決)
期間途中の解雇が原則として禁止されているのは、契約社員は正社員と違って、契約で決めた期間は企業としても雇用することを約束しているから、その約束を破ることは許されないという考え方によるものです。
(1)能力不足を理由とする契約社員の解雇は認められない
契約社員について、能力不足の解雇や協調性欠如を理由とした期間途中の解雇が適法と認められた判例は見当たりません。
例えば、福岡地方裁判所小倉支部平成29年4月27日判決は、ビルの管理などを事業とする会社が受付係として雇用した契約社員を他の従業員との人間関係の悪化などを理由に解雇した事案について、「やむを得ない事由」はないとして、不当解雇と判断しています。
能力不足や協調性欠如の場合は、契約期間の満了を待って雇用を終了すべきであり、期間途中での解雇は原則として認められないと考えるべきです。
▶参考情報:
上記の福岡地方裁判所小倉支部平成29年4月27日判決は、「本件労働契約は,期間の定めのある労働契約であるから,…期間途中において解雇するためには,「やむを得ない事由がある場合」でなければならず(労働契約法第17条1項),期間の定めの雇用保障的な意義や同条項の文言等に照らせば,…期間の定めのない労働契約の場合よりも厳格に判断するのが相当というべきである。」としています。
この「期間の定めの雇用保障的な意義」というのは、「契約期間を定めて雇用したのだから、その期間中は会社は雇用を保障する義務がある」という意味です。
このように、契約社員については、契約期間中は正社員以上に解雇が困難であることに注意が必要です。
このように契約社員については能力不足や協調性欠如などの問題で期間途中に解雇することは非常に難しいです。
そのため、契約期間との雇用契約では、最初から1年などといった長い契約期間を設定することはリスクが大きく、本人の人柄や能力がわからないうちは、より短めの契約期間を設定することが合理的です。
ただし、労働契約法第17条2項が「使用者は、有期労働契約について、…必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」としていることにも注意が必要です。
(2)【補足】コロナ危機を理由とする契約社員の解雇について
では、コロナ危機などの場面で、会社の経営難を理由とする契約社員の解雇は認められるのでしょうか?
この点についても、原則として認められず、期間満了を待って雇用を終了させるべきということが結論になります。
この点について参考になるのがアンフィニ事件(東京高等裁判所平成21年12月21日決定)です。
▶参考情報:アンフィニ事件(東京高等裁判所平成21年12月21日決定)
この事例は、派遣会社が、リーマンショックの時期に有期雇用の契約を締結していた派遣社員を期間途中で解雇した事例です。
裁判所は、派遣先からの発注額が半減したなどの理由があったとしても、契約期間中の解雇は認められないと判断しています。
2 例外的に雇用期間の途中での契約社員の解雇が認められたケースとは?
契約社員について、例外的に「やむを得ない事由」があるとして、期間途中での解雇を認めた数少ない判例の以下のものがあります。
(1)採用時の年齢詐称を理由とする契約社員の解雇のケース
裁判例:
東京地方裁判所平成20年3月28日判決
70歳までという年齢条件で清掃作業員を募集し、契約社員として雇用したが、あとで年齢詐称が発覚したため、雇用期間の途中で解雇したケースです。
この契約社員は実際には80歳なのに、面接で66歳と嘘をついた結果採用されていました。
裁判所は、仮に面接で真の年齢を申告していれば採用されていなかったことや、清掃は体力が必要な仕事であり高齢であれば作業能率が低下するおそれがあることなどを指摘して、解雇を有効と判断しました。
(2)配転命令の拒否や無断欠勤を理由とする契約社員の解雇のケース
裁判例:
共栄セキュリティサービス事件(令和元年5月28日東京地方裁判所判決)
警備会社が、契約社員として雇用した警備員を契約期間の途中で解雇した事件です。
裁判所は、この契約社員が指示された警備現場への配転を拒否し、無断欠勤を続けたことを理由に解雇を有効と判断しました。
(3)無断欠勤を隠したうえ副業をしていた契約社員の解雇のケース
裁判例:
東京地方裁判所平成30年2月26日判決
マンション管理会社が、契約社員として雇用したマンション管理人を契約期間の途中で解雇した事件です。
裁判所は、この契約社員が勤務日も無断で出勤せず、しかも出勤しなかったことを隠そうとしたうえ、勤務時間中に他社のマンションで管理人と就業していたことが発覚したことなどを理由に解雇を有効と判断しました。
(4)顧客への暴言等を理由とする契約社員の解雇のケース
裁判例:
メディカル・ケア・サービス事件(令和2年3月27日東京地方裁判所判決)
グループホームを運営する介護事業者が、契約社員として雇用した職員を契約期間の途中で解雇した事件です。
裁判所は、この契約社員が入居者に対する著しい暴言を繰り返し、また、他の職員に対しても壁を叩く、こぶしを振り上げるなどの威圧的な言動をとり、事業者から指導されても改めなかったことを理由に解雇を有効と判断しました。
このように、契約社員の期間途中での解雇が認められるのは、採用時に年齢等について嘘をついていた、背信的な無断欠勤を続けたなど、懲戒解雇に値するような極端なケースに限定されます。
このように契約社員の期間途中での解雇が判例上認められるケースは極めて限定されています。
一方で、仮に、期間途中の解雇が不当解雇と判断される場合であっても、判例は、その契約社員について雇用期間終了のタイミングで雇用を終了することを認めるかどうかについては、別途判断をするべきであるとしています(最高裁判所令和元年11月7日判決)。
3,契約期間中は解雇せず雇用期間終了を待つのが原則
このように雇用契約期間中の解雇はほとんど認められませんので、契約社員の解雇は、雇用契約期間が終了したタイミングで、次の契約をしないことにより行うことが通常です。
これは、正確には「解雇」ではなく「雇止め」と呼ばれます。
契約社員を雇止めする場合は、まず、雇用契約書で、雇用契約期間が終了するタイミングがいつなのかを確認する必要があります。
(1)雇止め法理が適用される場合は雇止めに合理的な理由が必要
ただし、雇用契約期間が終了したタイミングであれば自由に雇止めができるわけではありません。
「雇止め法理」が適用される場合は、雇止めには重要な制約があります。
▶参考情報:雇止め法理とは?
「雇止め法理」というのは、「法律で定める一定の場合には、合理的な理由がない限り雇止めは許されない」というルールです。
この「雇止め法理」が適用されるのは以下の2つの場面です。
- ケース1:契約社員の雇用契約の更新手続きがルーズで実質的に見て正社員との雇用契約と同視できる状態にある場合
- ケース2:契約社員が雇用契約の更新を期待することについて無理もないといえるような事情がある場合
この2つのいずれかのケースに当たる場合は、雇用期間が終了したからといって、自由に雇止めはできず、雇止めには「合理的な理由」が必要になるというのが、「雇止め法理」です。
どのような場合がこの2つのケースにあたるかについては、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
雇止め法理が適用される場合の注意点(参考例)
●能力不足を理由に雇止めをする場合
雇止め法理が適用される場合、例えば、能力不足を理由に雇止めをする場合は、会社が十分指導をしてきたが業務が改善されず今後も改善の見込みがないことが「雇止めの理由 」として必要です。
●遅刻を繰り返すことを理由に雇止めしたいという場合
また、例えば、遅刻を繰り返すことを理由に雇止めしたいという場合は、会社が遅刻について指導をしてきたが改善されず今後も改善の見込みがないことが「雇止めの理由 」として必要です。
このように、雇止め法理が適用されるときは、契約社員だからと言って簡単に雇止めすることはできませんので注意してください。
(2)雇止め法理が適用されない場合は雇止めが可能
一方、上記の2つのケースのいずれにも該当しない場合は雇止め法理は適用されません。
その場合は、雇用期間が終了した時点で特に理由を示さなくても、契約社員を雇止めをすることが可能です。
ただし、以下のいずれかのケースに該当する場合は、「雇止めの30日前に予告すること」が法律上義務付けられていますので注意してください。
- ケース1:契約社員について1年を超えて雇用を継続している場合
- ケース2:3回以上更新した後に雇止めする場合
なお、あらかじめ更新しないことを契約社員に明示していた場合は、雇止めの予告義務の対象外です。
例えば、3年契約だが更新はないことを雇用契約書に明記したうえで採用したような場合がこれにあたります。
雇止めの予告は口頭でも可能ですが、予告をしたことを明確にするためにも雇止め通知書を本人に交付することをおすすめします。
4,解雇トラブルに関する咲くやこの花法律事務所の解決実績
咲くやこの花法律事務所では、解雇に関して多くの企業からご相談を受け、サポートを行ってきました。
咲くやこの花法律事務所の実績の一部を以下でご紹介していますのでご参照ください。
・契約社員に弁護士から解雇ではなく期間満了による労働契約の終了であると説明して紛争解決した事案
・成績・協調性に問題がある従業員を解雇したところ、従業員側弁護士から不当解雇の主張があったが、交渉により金銭支払いなしで退職による解決をした事例
・解雇した従業員から不当解雇であるとして労働審判を起こされ、1か月分の給与相当額の金銭支払いで解決をした事例
・元従業員からの解雇予告手当、残業代の請求訴訟について全面勝訴した事案
5,契約社員の解雇に関して弁護士に相談したい方はこちら
最後に、契約社員の雇止めについての咲くやこの花法律事務所におけるサポート内容をご紹介したいと思います。
咲くやこの花法律事務所におけるサポート内容は以下の通りです。
- (1)契約社員の解雇や雇止めに関するご相談
- (2)契約社員の解雇・雇止めに関するトラブルの対応
- (3)契約社員の解雇や雇止めに関する労働審判や裁判への対応
以下で順番にご説明したいと思います。
(1)契約社員の解雇・雇止めに関するご相談
この記事でもご説明したとおり、契約社員の期間途中での解雇は法律上不当解雇となるおそれが極めて高いのが実情です。
また、期間終了で雇止めする場合でも、雇止め法理に照らして問題がないかを十分に検討する必要があります。
これらの検討を怠ると、裁判で不当解雇あるいは不当な雇止めと判断されてしまい、多額の金銭を支払うことにもなりかねません。
咲くやこの花法律事務所では、解雇や雇止めに関する企業からのご相談を随時承っております。
労務に精通した弁護士が、御社の事情を踏まえ、的確にアドバイスいたします。
解雇や雇止めをしてからのご相談ではとれる手段がかなり限られますので、解雇や雇止めの前にご相談にお越しください。
咲くやこの花法律事務所の労務管理に強い弁護士への相談料
●初回相談料:30分あたり5000円+税
(2)契約社員の解雇・雇止めに関するトラブルの対応
契約社員の解雇や雇止めがトラブルになった場合、適切に対処しなければ、裁判にまで発展し、会社に大きな損害を及ぼすことも起こり得ます。
裁判前に弁護士に相談し、できれば裁判を回避して、交渉で解決することが重要です。
咲くやこの花法律事務所では、契約社員の解雇や雇止めについて、裁判になる前のクレーム段階から、弁護士が依頼を受け、企業側の交渉を担当しています。
裁判前にご依頼いただくことにより、会社に有利な解決が可能になり、また弁護士費用などの出費も最小限に抑えることができます。
咲くやこの花法律事務所の労務管理に強い弁護士によるトラブル対応料金
●初回相談料:30分あたり5000円+税
●着手金:15万円+税~
(3)契約社員の解雇や雇止めに関する労働審判や裁判への対応
咲くやこの花法律事務所では、契約社員の解雇や雇止めのトラブルが労働審判や裁判になってしまった場合についても、企業側から裁判対応の依頼をお受けしています。
咲くやこの花法律事務所では、これまで多数の労働審判、労働裁判のご依頼を企業からお受けしてきました。
過去の事例で積み重ねたノウハウと経験を武器に、弁護士が、御社にとって最大限有利な解決を実現します。
咲くやこの花法律事務所の労務管理に強い弁護士による労働審判や裁判の対応料金
●初回相談料:30分あたり5000円+税
●着手金:45万円+税~
6,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
咲くやこの花法律事務所の解雇の対応については、「労働問題に強い弁護士への相談サービス」もご覧下さい。
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8,まとめ
今回は、契約社員の解雇について、まず、雇用期間中の解雇は不当解雇と判断される可能性が極めて高いことをご説明しました。
そのうえで、雇用契約の期間が終了するタイミングで雇止めをすることは可能であるが、「雇止め法理の適用」と、「雇止めの予告のルール」に注意する必要があることをご説明しました。
契約期間途中での解雇はできる限り避け、雇用期間が終了するタイミングでの雇止めを検討するようにしてください。
9,【関連情報】契約社員の解雇など解雇に関するお役立ち情報
今回の記事では、「契約社員を解雇するには?絶対におさえておくべき重要な注意点」について解説いたしました。
解雇については、その他にも知っておくべき情報が多数あります。そのため、以下で解雇関連の情報をまとめておきますので、あわせてチェックしておきましょう。
・労働基準法による解雇のルールとは?条文や解雇が認められる理由を解説
注)咲くやこの花法律事務所のウェブ記事が他にコピーして転載されるケースが散見され、定期的にチェックを行っております。咲くやこの花法律事務所に著作権がありますので、コピーは控えていただきますようにお願い致します。
記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年2月14日