こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
高齢化社会が加速するにつれて、身近なところでも「定年後の再雇用」や「嘱託社員」というような言葉をよく聞く機会が増えてきた経営者の方も多いのではないでしょうか。
平成25年4月に「高齢者雇用安定法」が改正され、企業には原則として従業員のうち希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えることが義務付けられました。
このころから、定年後の「再雇用」、「嘱託(しょくたく)雇用」をめぐる労働条件のトラブルが訴訟となることが増えています。
平成28年9月には、「トヨタ自動車」が定年後の再雇用をめぐるトラブルに関し、従業員に「約127万円」の賠償を命じられた判決が話題になりました。また、平成30年6月には、嘱託社員に対して精勤手当等を支給していなかった点を違法と判断して、会社に賠償を命じた最高裁判決が出ています(長澤運輸事件)。
そこで、今回は、定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件のルールと注意点について見ていきたいと思います。
それでは、以下で詳しく見ていきましょう。
▶参考動画:この記事の著者 弁護士 西川暢春が、「定年後再雇用の賃金の注意点!同一労働同一賃金なのに下がってよい?令和5年9月最新版【前編】」と「定年後再雇用の賃金相場!同じ仕事なのに賞与や手当なしは違法?令和5年9月最新版【後編】」の動画でも、定年後再雇用の労働条件について解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
▼【関連情報】定年後再雇用や嘱託社員の対応については、こちらも合わせて確認してください。
・定年した従業員の再雇用を拒否することは可能?重要な注意点を解説
▼定年後再雇用や嘱託社員の対応について弁護士の相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,嘱託社員とは?
定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件に関するルールと注意点についてご説明する前に、「嘱託社員」の定義(意味)を確認しておきたいと思います。
嘱託社員とは、法律上の用語ではなく、明確な定義はありません。一般的には、定年後に再雇用されて企業に所属する「定年後再雇用社員」や、既に定年を超えた年齢で「新規採用された従業員」を指します。そして、これらの「嘱託社員」は多くの場合、雇用期間を「1年」とするなどあらかじめ期間を定めた有期雇用です。嘱託社員は、定年を超えた年齢の従業員を指すことが通常であり、多くは有期雇用とされている点で正社員と異なることをまずおさえておきましょう。
2,定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件のルールと注意点まとめ

それでは、本記事のメインテーマでもある「定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件のルールと注意点」について、今回説明していく絶対におさえておくべきポイントを最初に全体的にまとめて確認しておきます。
はじめに、「定年後雇用社員や嘱託社員に関する労働条件のルール」については、以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
(1)「定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件のルール」について絶対におさえておくべき3つのポイント
- ルール1:企業は、原則として従業員のうち希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えなければならない。
- ルール2:定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件は、正社員と同じでなくても、さしつかえない。
- ルール3:定年後再雇用社員・嘱託社員を「有期雇用」とする場合には、正社員と比較して「不合理な労働条件」が禁止される。
これら3つのルールについては、重要なポイントですので、この後、詳しく解説していきます。次に、「定年後雇用社員や嘱託社員に関する労働条件の注意点」については、以下の4つのポイントをおさえておきましょう。
(2)「定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件の注意点」について絶対におさえておくべき4つのポイント
- 注意点1:定年後再雇用社員・嘱託社員の「給料」に関する注意点
- 注意点2:定年後再雇用社員・嘱託社員の「業務内容」に関する注意点
- 注意点3:定年後再雇用社員・嘱託社員の「社会保険」に関する注意点
- 注意点4:定年後再雇用社員・嘱託社員の「雇用契約期間」に関する注意点
これら4つの注意点については、前にご紹介した3つのルールと合わせておさえておくべき重要なポイントです。こちらの4つの注意点についても、この後、下記の段落で詳しい解説をしていますので必ずご覧下さい。
それでは、以下で順番に「定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件のルールと注意点」について詳しく解説をしていきたいと思います。
3,定年後の再雇用の労働条件に関するルールについて
まず最初に「定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件に関するルール」についてご説明します。
前項でご説明した通り、定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件に関するルールとして、重要なものは以下の3つのルールです。
- ルール1:企業は、原則として従業員のうち希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えなければならない。
- ルール2:定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件は、正社員と同じでなくても、さしつかえない。
- ルール3:定年後再雇用社員・嘱託社員を「有期雇用」とする場合には、正社員と比較して「不合理な労働条件」が禁止される。
以下で順番に見ていきましょう。
ルール1:
企業は、原則として従業員のうち希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えなければならない。
定年後再雇用に関するルールを定める重要な法律が、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称、「高齢者雇用安定法」)です。
現在の高齢者雇用安定法は、一部の業種を除くすべての企業に対して、従業員のうち原則として希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えることを義務付けています。
かつては、高齢者雇用安定法においても、企業が従業員側と労使協定を締結した場合は、65歳までの雇用の対象とする従業員を、能力基準や出勤率などの基準を満たす従業員のみに限定することが許されていました。
しかし、平成25年4月に高齢者雇用安定法が改正され、改正日以前に65歳までの雇用の対象とする従業員を限定する労使協定を締結していた企業を除き、企業は原則として希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えることが義務付けられました。
そして、65歳までの雇用の機会を与える方法としては、「定年制の撤廃」、「定年の65歳までの引き上げ」などの方法もありますが、多くの企業においては定年を60歳としたうえで、65歳までの「再雇用制度」を設けることにより対応しています。
ここでは、法律上、希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えることが義務化されていることをまずおさえておきましょう。この義務に違反して、65歳までの雇用の機会を与えないことは、従業員からの損害賠償請求の対象となるリスクがありますので、注意が必要です。
ルール2:
定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件は、正社員と同じでなくても、さしつかえない。
「ルール1」でご説明した通り、企業は原則として希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えなければなりません。
しかし、高齢者雇用安定法は、定年前とまったく同じ労働条件で、定年後に従業員を再雇用することを義務付けているわけではありません。
定年後再雇用社員・嘱託社員の業務内容や給料、勤務日数などの労働条件については、定年前と同じでなくても、差し支えないとされています。
この点については、厚生労働省による解説でも、以下の点が指摘されています。
▶参考情報:厚生労働省による解説
・高齢者雇用安定法は、定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、再雇用希望者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に再雇用希望者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法に違反しない。
・例えば定年後の再雇用において出勤日数を減らし、ワークシェアリング形式として、週3日勤務などとすることも高年齢者雇用安定法に違反しない。
このように、定年後の再雇用の場合の業務内容や給料、勤務日数などの労働条件については、定年前と同じでなくても問題ありません。
ルール3:
定年後再雇用社員・嘱託社員を「有期雇用」とする場合には、正社員と比較して「不合理な労働条件」が禁止される。
「ルール2」で述べたように、業務内容や給料、勤務日数などの労働条件については、定年前と同じでなくてもよいのですが、一方で企業が完全に自由に労働条件を決めてもよいわけではありません。
この点について重要な法律がパートタイム有期雇用労働法第8条と第9条です。
まず、パートタイム有期雇用労働法第8条は、正社員と有期雇用労働者の間で不合理な待遇格差を設けることを禁止しています。次に、パートタイム有期雇用労働法第9条は、正社員と職務の内容や人事異動の範囲が同じ有期雇用労働者について、有期雇用労働者であることを理由とする差別的取り扱いを禁止しています。
定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用契約は、1年契約の更新制とするなど、大半のケースで有期雇用とされています。そのため、このパートタイム有期雇用労働法第8条と第9条との関係で、企業が定年後再雇用者に対して提示する労働条件が、正社員の労働条件と比較して不合理に低いものでないかを確認しておく必要があります。
これについても、定年後再雇用社員の労働条件が正社員と比べて不合理に低い労働条件であるとして、損害賠償を請求する訴訟が起きていますので、注意が必要です。
以上、まずは、定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件について、上記3つのルールをおさえておいてください。
以下ではこれらの3つのルールを踏まえたうえで、「定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件に関する注意点」についてご説明したいと思います。
4,給料に関する注意点
次に、絶対におさえておくべき定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件の注意点の一つ目として、「給料に関する注意点」について解説していきます。
「定年後再雇用社員・嘱託社員の給料に関する注意点」は、以下の4点を必ずおさえておきましょう。
- 注意点1:定年後再雇用社員・嘱託社員を有期雇用とする場合は、「正社員と比較して不合理に低い賃金」は禁止される。
- 注意点2:仕事の内容や責任の程度などが正社員とは違うことを理由に、合理的な範囲で、正社員の賃金と差をつけることは許される。
- 注意点3:仕事の内容や責任の程度などが正社員と同じ場合も、正社員と比べて年収ベースで2割程度の差であれば許容される。
- 注意点4:正社員に支給している手当について、合理的な理由なく、嘱託社員に支給しないことは禁止される。
以下で順番にご説明したいと思います。
注意点1:
定年後再雇用社員・嘱託社員を有期雇用とする場合は、「正社員と比較して不合理に低い賃金」は禁止される。
これは、「定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件に関する3つのルール」のルール3としてご説明したものです。
定年後再雇用社員については、雇用期間を1年間として更新制とするなど、大半のケースで、有期雇用契約が採用されています。そして、パートタイム有期雇用労働法第8条は、有期の雇用契約の場合の労働条件について、正社員の労働条件と比較して不合理に低いものであってはならないと定めています。
そのため、賃金についても「正社員と比較して不合理に低い賃金」は労働契約法違反となります。
注意点2:
仕事の内容や責任の程度などが正社員とは違うことを理由に、合理的な範囲で、正社員の賃金と差をつけることは許される。
正社員と比較して不合理に低い労働条件を禁止した、パートタイム有期雇用労働法第8条においても、正社員と有期雇用契約社員の労働条件の格差が「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」とされています。
このように、仕事の内容や責任の程度が正社員と異なる場合に、合理的な範囲で正社員の賃金と嘱託社員の賃金との間に差をつけることは許されています。
注意点3:
仕事の内容や責任の程度などが正社員と同じ場合も、正社員と比べて年収ベースで2割程度の差であれば許容される。
嘱託社員の仕事の内容や責任の程度が定年前の正社員と変わらない場合であっても、正社員時と比べて年収ベースで2割程度の減額であれば違法とは言えないと判断されています(平成30年6月1日長澤運輸事件最高裁判決)。
判決はその理由として、「定年後の再雇用は長期雇用を前提としないため、長期雇用を前提とする正社員と労働条件が異なることは不合理とはいえないこと」、「再雇用後は一定の要件を満たせば老齢厚生年金が支給されること」などをあげています。
ただし、この判例は、「再雇用後の労働条件について労使間の協議がされていること」も重視して上記の結論に至っているため、再雇用後の労働条件について従業員と丁寧な話し合いをすることが必要です。
なお、嘱託社員の仕事の内容や責任の程度が定年前の正社員と異なる事例では、正社員時と比べて3割程度の年収であっても違法とは言えないと判断した判例があります(平成30年1月29日東京地方裁判所立川支部判決)。
注意点4:
正社員に支給している手当について、合理的な理由なく、嘱託社員に支給しないことは禁止される。
前述の通りある程度の年収減は許容されますが、その範囲内であっても、正社員に支給されている手当について、合理的な理由なく、嘱託社員に支給しないことは違法とされています(平成30年6月1日長澤運輸事件最高裁判決)。
合理的な理由なく不支給とすると、裁判で会社に対し損害賠償が命じられます。そのため、手当の一部を嘱託社員に支給しないときは、不支給とすることが手当の趣旨から考えて不合理とならないかどうか、検討することが必要です。
最終的には会社の内部事情なども踏まえた判断にはなりますが、「平成30年6月1日長澤運輸事件最高裁判決」では次の通り判断しており、参考になります。
1,皆勤手当あるいは精勤手当
嘱託社員であっても皆勤を奨励する必要性は変わらないため、嘱託社員のみ不支給は違法
2,住宅手当、家族手当
住宅費や家族を扶養するための生活費を補充するための手当であり、嘱託社員に支給しないことも適法
また、通勤手当についても、通勤の費用を補助する必要性は嘱託社員であっても変わらないため、嘱託社員のみ不支給とすることは通常は違法と判断されます。
このように手当ごとに嘱託社員と正社員の待遇差に違法性がないかチェックすることが必要です。
定年後再雇用の給与に関する詳しい解説は以下の動画も参考にご覧ください。
▶参考動画:この記事の著者 弁護士 西川暢春が、「定年後再雇用で給与3割減は違法か?」の動画でも定年後再雇用における給与の注意点を詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
5,業務内容に関する注意点
次に、絶対におさえておくべき定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件の注意点の二つ目として、「業務内容に関する注意点」について解説していきます。
「定年後再雇用社員・嘱託社員の業務内容に関する注意点」は、以下の点を必ずおさえておきましょう。
『定年前の業務内容と異なる業務内容とすることは許されるが、全く別個の職種とすることは原則として許されない』
例えば、デスクワークの事務職として勤務していた従業員を、企業が定年後の再雇用にあたり清掃業務に従事するように求めたことについて、違法と判断し、企業に賠償を命じた裁判例があります。
これについても実際の裁判例を見ていきましょう。
裁判例 :
トヨタ自動車事件控訴審判決(平成28年9月28日名古屋高等裁判所判決)
事案の概要
本件は「トヨタ自動車」が、定年までデスクワークの事務職として勤務していた従業員を、定年後に再雇用するにあたり、午前中のみの清掃業務に従事することを求めたところ、これを従業員が違法であると主張して、トヨタ自動車に訴訟を起こしたケースです。
なお、会社の主張によると、本件では、この従業員は業務態度に問題があり、また周囲との折り合いも悪かったという事情がありました。
裁判所の判断
裁判所は、会社が違法に継続雇用の機会を奪ったとして、トヨタ自動車を敗訴させ、「約127万円」の賠償を命じました。
裁判所の判断の理由
裁判所は、「定年を迎えた従業員に対して60歳以前の業務内容と異なった業務内容を示すことが許されることはいうまでもない」としながらも、「両者が全く別個の職種に属するなど性質の異なったものである場合には、もはや継続雇用の実質を欠いており、通常解雇を相当とする事情がない限り、そのような業務内容を提示することは許されない」としました。
そのうえで、本件について、「会社が清掃業務以外に提示できる事務職としての業務があるか否かについて十分な検討を行ったとは認め難い」、「定年後の業務として清掃業務等の単純労働を提示したことは、定年退職せざるを得ないように仕向けたものとの疑いさえ生じる」などとして、トヨタ自動車に対して、「約127万円」の損害賠償を命じました。
定年後の再雇用にあたり、定年前の業務内容と異なる業務内容としたり、定年前よりも責任の軽い業務とすることは問題ありませんが、従業員を退職させることを目的として定年前の業務内容と全く別個の職種を提示することは、違法と判断される可能性がありますので、注意しておきましょう。
なお、上記の事件では第1審の名古屋地方裁判所岡崎支部では全く逆の判断がされており、トヨタ自動車が勝訴しています。今後、最高裁判所がどのような判断をするか、注目されます。
6,社会保険に関する注意点
次に、絶対におさえておくべき定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件の注意点の三つ目として、「社会保険に関する注意点」について解説していきます。
「定年後再雇用社員・嘱託社員の社会保険に関する注意点」は、以下の点を必ずおさえておきましょう。
結論からご説明すると、嘱託社員も原則として、定年前と同様に、「健康保険、介護保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険」に加入することになります。
ただし、定年後再雇用において就業時間数を減らす場合は社会保険の加入対象から外れることがあります。
以下で各制度ごとに詳細を見ていきましょう。
(1)定年後再雇用における社会保険加入対象の解説
1,健康保険について
嘱託社員についても、75歳までは健康保険に加入することが原則です。ただし、定年後再雇用を機に就業時間を減らした場合は、健康保険の加入の対象から外れることがあります。
具体的には、以下の場合は、健康保険の加入対象とはなりません。
●嘱託社員について健康保険の加入対象から外れるケース
- ケース1:従業員500名以下の企業において、嘱託社員の所定労働時間及び所定労働日数が正社員の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3未満の場合
- ケース2:従業員501名以上の企業において、嘱託社員の週の所定労働時間が20時間未満あるいは1か月の所定内給与が88,000円未満の場合
2,介護保険について
嘱託社員についても、65歳の誕生日の前日までは定年前と同様に介護保険料を給与から天引きします。ただし、定年後再雇用を機に就業時間を減らして、健康保険の加入の対象から外れたときは、65歳の誕生日の前日までは介護保険料の負担はありません。
3,厚生年金保険について
嘱託社員についても、70歳の誕生日の前日までは厚生年金保険に加入することが原則です。
ただし、定年後再雇用を機に就業時間を減らして、健康保険の加入の対象から外れたときは、厚生年金保険の加入対象からも外れます。
●【補足】定年後再雇用の場合の健康保険料、厚生年金保険料の変更について
健康保険料や厚生年金保険料は、原則として毎年9月に変更されます。
そのため、定年後の再雇用にあたり、定年前より給与の額が下がったときでも、手続きを行わなければ、9月に保険料が変更されるまでは、定年前の高い給与で計算された健康保険料、厚生年金保険料を支払うことになってしまいます。
この問題を解決するためには、定年後再雇用の際に、年金事務所に定年退職による「資格喪失届」と再雇用による「資格取得届」を同時に提出する手続を行えば、再雇用された月から再雇用後の賃金を基準とした年金保険料、健康保険料に引き下げることが可能です。
この手続きは、従業員、会社の双方にとって負担の軽減になりますので、忘れないようにしておきましょう。
4,労災保険
嘱託社員についても、年齢にかかわらず、労災保険の対象となります。
5,雇用保険
嘱託社員についても、64歳になった年の3月までは、定年前と同様に雇用保険料を給与から天引きします。ただし、定年後再雇用を機に就業時間を減らして、週の所定労働時間が20時間未満となったときは、その期間は、雇用保険料の負担はありません。
このように、定年後の再雇用の場合も、少なくとも60歳から64歳までは、定年前と同様に社会保険に加入することが原則ですが、就業日数や就業時間を減らした場合は対象外となることがありますので、確認しておきましょう。
7,雇用契約期間に関する注意点
最後に、絶対におさえておくべき定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件の注意点の四つ目として、「雇用契約期間に関する注意点」について解説していきます。
「定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用契約期間に関する注意点」は、以下の点を必ずおさえておきましょう。
結論からご説明すると、定年後再雇用社員・嘱託社員について有期雇用契約とする場合は、「無期転換ルールの特例」制度の認定を受けておかれることをおすすめします。
以下では、「1,無期転換ルールの内容」、「2,無期転換ルールの特例制度の内容」と「3,企業において行うべき手続き」について順番にご説明したいと思います。
(1)「無期転換ルール」とは?
「無期転換ルール」とは企業が従業員との雇用契約を有期雇用契約としている場合であっても、有期雇用契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、従業員の申込みがあれば、期間の定めのない雇用契約に転換するというルールをいいます。
このルールは、平成24年8月の労働契約法改正により、労働契約法第18条1項で定められました。
このルールにより、期間の定めのない雇用契約となった後は、雇用期間満了を理由に従業員の雇用を終了することはできなくなります。そして、従業員が無期転換ルールにより期間の定めのない雇用契約に転換させることを申し込む権利は「無期転換権」と呼ばれています。
▶参考情報:無期転換ルールについては以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧下さい。
(2)無期転換ルールの特例制度とは?
無期転換ルールの特例制度とは、定年後の再雇用については、都道府県労働局の認定を受ければ、上記の無期転換ルールの対象外とすることができるという制度をいいます。
企業が、60歳の定年で従業員を再雇用した場合、例えば1年契約の有期雇用にするケースがあります。
この場合、企業は高齢者雇用安定法により65歳までの雇用の機会を提供することが義務付けられていますので、65歳になるまで更新を繰り返すケースが多いと思われます。
ところが、65歳まで更新を繰り返すと、「有期雇用契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合」にあたりますので、前述の無期転換ルールにより、無期転換権が発生し、従業員からの無期転換の申し込みがあれば、企業は雇用期間満了を理由に従業員の雇用を終了させることができなくなります。
そこで、このような事態を避けるために、「都道府県労働局の認定を受ければ無期転換ルールの対象外とすることができる」としたのが、無期転換ルールの特例制度です。
この特例制度は、「有期雇用特別措置法」という法律により、平成27年4月から施行されています。
▶補足:有期雇用特別措置法とは?
有期雇用特別措置法は、無期転換ルールの特例制度を定めるために制定された法律で、正確には、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」という名前の法律です。
この法律は、この記事でご説明する、定年後再雇用者について無期転換ルールを除外する特例制度について定めているほか、年収1075万円以上の高度専門職として雇用される有期雇用社員についても無期転換ルールを除外する特例制度を定めています。
この2つの特例制度は、いずれも、企業がこれらの従業員の雇用に関して配慮する特別の措置をとり、労働局の認定を受けることを条件に、これらの従業員を無期転換ルールの対象から除外することができるという内容です。
この法律では、年収1075万円以上の高度専門職の有期雇用社員についての無期転換ルールの特例認定制度を「第一種計画の認定」、定年後再雇用者についての無期転換ルールの特例認定制度を「第二種計画の認定」と呼んでいます。
この記事では、定年後再雇用者についての第二種計画の認定についてご説明します。
(3)企業において行うべき手続きとは?
無期転換ルールの特例制度の適用を受けるためには、企業は定年後再雇用者の「雇用管理に関する計画」を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
なお、無期転換の申し込みがあった後で認定を受けても、すでに無期転換を申し込んだ従業員については、特例は適用されません。
無期転換ルールの「5年」は、平成25年4月以降に開始した有期雇用契約からカウントされますので、平成25年4月に再雇用して1年間の雇用契約を更新している場合、平成30年4月に無期転換権が発生することになります。
そのため、定年後の再雇用について1年契約の更新制とするケースでは、平成30年3月までに、無期転換ルールの特例制度の認定を受けておくことをおすすめします。
この特例制度の適用を受けることは定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用管理におけるポイントの1つとなりますので、次の項目で、実際に無期転換ルールの特例制度の適用を受けるための認定を申請する際の申請手続きのポイントについてさらに詳しくご説明したいと思います。
8,無期転換ルールの特例制度の申請手続きのポイント
定年後の再雇用について、無期転換ルールの特例制度の適用を受けるためには、企業は定年後再雇用者の「雇用管理に関する計画」(第二種計画)を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
この手続きについておさえておかなければならないポイントは以下の4つです。
- ポイント1:無期転換ルールの特例申請のための事前準備事項について
- ポイント2:無期転換ルールの特例申請のための就業規則の整備について
- ポイント3:無期転換ルールの特例申請の手続きの流れについて
- ポイント4:無期転換ルールの特例認定を受けた後の「雇用契約書」記載上の注意点
以下で順番に見ていきたいと思います。
8−1,無期転換ルールの特例申請のための事前準備事項について
まず、無期転換ルールの特例制度の申請手続きの1つ目のポイントとして、特例申請のための事前準備事項について見ていきましょう。
特例申請のための事前準備事項として、以下の2つが必要です。
- (1)「高年齢者の雇用管理に関する措置」の実施
- (2)「従業員に65歳までの雇用を確保する制度」の実施
以下で詳細をみていきましょう。
(1)「高年齢者の雇用管理に関する措置」の実施
ここでいう「高年齢者」とは55歳以上の従業員を指します。
無期転換ルールの特例の認定を受けるためには、55歳以上の従業員にとって働きやすい職場をつくるために、「高年齢者の雇用管理に関する措置」を実施することが必要です。
具体的には、以下の8つの選択肢の中から会社の実情にあった適切な措置をいずれか1つ以上選択して実施することが必要とされています。
- 1,高年齢者雇用推進者の選任
- 2,教育訓練の実施等
- 3,作業施設・方法の改善
- 4,健康管理、安全衛生の配慮
- 5,職域の拡大
- 6,知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
- 7,賃金体系の見直し
- 8,勤務時間制度の弾力化
以下で順番に内容を見ていきましょう。
1,高年齢者雇用推進者の選任
「高年齢雇用推進者」とは、55歳以上の従業員が働きやすい作業施設の改善や条件の整備などを担当する従業員をいいます。
知識や経験を考慮してふさわしい従業員を選任すればよく、特に、公的な資格は必要ありません。
2,教育訓練の実施等
55歳以上の従業員を対象に、仕事の知識や技術を身につけるための教育訓練を自社で実施することや、他社が提供する教育訓練の受講の機会を与えることがこれにあたります。
3,作業施設・方法の改善
55歳以上の従業員が職業能力を発揮することを可能にするために作業施設や作業方法を改善することがこれにあたります。
4,健康管理、安全衛生の配慮
55歳以上の従業員が働きやすい職場をつくるために、体力等の低下を踏まえて職場の安全性を確保したり、従業員の健康状態に配慮して担当する職務内容を決めることを指します。
5,職域の拡大
55歳以上の従業員が働きやすい職場をつくるために、身体能力の低下による影響が少なく、高年齢者の能力を活用しやすい職種を新たに設けたり、整備することを指します。
6,知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
55歳以上の従業員の知識や経験を活用できる配置を推進するための、評価制度や専門職制度の整備がこれにあたります。
7,賃金体系の見直し
55歳以上の従業員の働きやすい職場をつくるための賃金体系の見直しがこれにあたります。
8,勤務時間制度の弾力化
55歳以上の従業員の希望の多様化や体力の個人差に対応するために勤務時間制度を弾力化し、短時間勤務や隔日勤務、フレックスタイム制、ワークシェアリングなどの選択肢を認めることがこれにあたります。
これらの8つの選択肢の中から1つ以上を選択して実施することが、事前準備事項の1つ目として必要な内容です。
(2)「従業員に65歳までの雇用を確保する制度」の実施
次に、事前準備事項の2つ目として必要な「従業員に65歳までの雇用を確保する制度」の実施について見ていきましょう。
「定年後の再雇用の労働条件に関するルールについて」の項目の「ルール1」でご説明した通り、高齢者雇用安定法により、企業は、原則として従業員のうち希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えなければなりません。
そのために、企業としては以下の3つのうちいずれかの措置を実施しなければならないとされています。
- 1,定年を65歳以上に引き上げる
- 2,定年制を撤廃する
- 3,定年を60歳などとしたうえで、定年後の再雇用により65歳まで雇用の機会を与える
このうち、「3」の「定年を60歳などとしたうえで、定年後の再雇用により65歳まで雇用の機会を与える」措置は、「継続雇用制度」と呼ばれるもので、最も多くの企業に選択されています。
これらの3つの措置のうちいずれかの措置がとられていることが、事前準備事項の2つ目の項目である「従業員に65歳までの雇用を確保する制度」の実施の内容として必要です。
以上、まとめると、「高齢者の雇用管理に関する措置」を8つの選択肢の中から1つ以上選択して実施することと、「従業員に65歳までの雇用を確保する制度」を3つの選択肢の中から1つ選択して実施することが、特例申請のための事前準備として必要になりますので、確認しておきましょう。
8−2,無期転換ルールの特例申請のための就業規則の整備について
次に、無期転換ルールの特例制度の申請手続きの2つ目のポイントとして、特例申請のための就業規則の整備について見ていきましょう。
無期転換ルールの特例制度の申請手続きにおいては、前の項目でご説明した、以下の2つの点が就業規則等に反映され、実施されていることが労働局によって確認されることが必要です。
- 1,「高年齢者の雇用管理に関する措置」の実施
- 2,「従業員に65歳までの雇用を確保する制度」の実施
そのため、現在の就業規則においてこれらの点について対応ができていない場合は、就業規則の整備、改訂が必要です。
具体的な就業規則の整備の内容は、「1」の「高年齢者の雇用管理に関する措置」として8つの選択肢のうちどれを実施するか、「2」の「従業員に65歳までの雇用を確保する制度」として3つの制度のうちどれを実施するかによって異なります。
例えば、「高年齢者の雇用管理に関する措置」として「勤務時間制度の弾力化」を選択し、「従業員に65歳までの雇用を確保する制度」として「定年を60歳などとしたうえで、定年後の再雇用により65歳まで雇用の機会を与える制度(継続雇用制度)」を採用した場合、就業規則の規定例としては以下のような内容が考えられます。
(1)「勤務時間制度の弾力化」に関する規定例
第〇条(高年齢者の短時間勤務制度)
1.満55歳以上の従業員は、あらかじめ所定の様式により申し出ることにより、1日の労働時間を6時間まで短縮し、あるいは所定外労働の免除を受けることができる。
2.前項により短縮された労働時間については無給とする。
(2)「継続雇用制度」に関する規定例
第〇条(定年と継続雇用制度)
1.従業員の定年は満60歳とし、満60歳に達する月の翌月の末日をもって退職とする。
2.定年に達することとなる従業員が、会社の指定する業務,勤務場所において継続雇用を希望するときは、会社は当該従業員を満65歳に達する月の末日まで嘱託社員として雇用する。
3.嘱託社員の雇用条件については、定年時の賃金、勤務時間、勤務日数、職務内容にかかわらず、従業員ごとに適性、意欲、健康状態等を勘案して、個別に賃金、勤務時間、勤務日数、職務内容を定める。
このように、具体的に選択する措置の内容に応じて就業規則を変更して整備し、特例申請の際に整備内容が確認できる就業規則を資料として労働局に提出することが必要です。
8−3,無期転換ルールの特例申請の手続きの流れについて
続いて、無期転換ルールの特例制度の申請手続きの3つ目のポイントとして、特例申請の手続きの流れについて見ていきましょう。
「ポイント1」でご説明した事前準備を終え、さらに、「ポイント2」でご説明した就業規則の整備も終われば、いよいよ、特例申請の手続きが可能になります。
特例申請の手続きの流れは以下の通りです。
1,「第二種計画認定・変更申請書」を作成する。
この「第二種計画認定・変更申請書」は、無期転換ルールの特例申請をするための申請書です。
厚生労働省ホームページの「高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について」解説PDFの15ページに「第二種計画認定・変更申請書」の記載例が掲載されていますのでご参照ください。
2,「第二種計画認定・変更申請書」に資料を添えて、本社所在地を管轄する労働局または労働基準監督署に郵送する。
資料として添付するのは、会社が「高年齢者の雇用管理に関する措置」、「従業員に65歳までの雇用を確保する制度」を実施していることを確認できる就業規則等の写しです。
3,申請後、労働局において、認定の可否について審査を行う。
4,審査終了後、労働局から認定をする旨の連絡があれば、労働局を訪問し、認定通知書の交付を受ける。
以上の流れになりますのでおさえておきましょう。
就業規則の届出などが事業所ごとの手続であるのに対し、この特例申請の手続きは本社所在地で一括して行う手続きになります。
8−4,無期転換ルールの特例認定を受けた後の「雇用契約書」記載上の注意点
続いて、無期転換ルールの特例制度の申請手続きの4つ目のポイントとして、特例認定を受けた後の「雇用契約書」記載上の注意点を見ていきましょう。
特例認定を受けた場合、特例の対象となる従業員に特例の内容を書面で明示することが法律上義務付けられています。
これは、従業員に無期転換ルールが特例により適用されないことを理解しておいてもらう必要があるためです。
特例の内容を明示しなければならない対象者、明示する内容、明示の方法、記載方法は、以下のとおりです。
1,特例の内容を明示しなければならない対象者
特例認定を受けたことにより無期転換ルールが適用されないことになる定年後再雇用社員・嘱託社員
2,明示する内容
特例により定年後の再雇用期間については無期転換権が発生しないことを明示する必要があります。
3,明示の方法
書面による明示が必要です。具体的には、雇用契約書に記載する方法、労働条件通知書に記載する方法、個別の書面で明示する方法が考えられます。
4,具体的な記載方法
労働条件通知書や個別の書面で明示するときは、「有期雇用特別措置法により、定年後引き続き雇用される期間については、無期転換権が発生しません。」と書けば十分です。
また、雇用契約書で明示するときは、「有期雇用特別措置法により、定年後引き続き雇用される期間については、無期転換権が発生しない。」と入れておきましょう。
この記事の一番最後に、「定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用契約書の雛形(テンプレート)」を掲載しています。
▶参考情報:
この雛形を使用する場合は、「第10条(無期転換ルールの特例)」という条文を新たに設けて、「有期雇用特別措置法により、乙が定年後引き続き雇用される期間については、無期転換権が発生しない。」と記載しておきましょう。
特例の内容の明示は、法律上の義務でもあり、明示を忘れると法律違反になるだけでなく、無期転換ルールが除外されることを知らなかった定年後再雇用社員との間でトラブルに発展するおそれもありますので注意が必要です。
以上、無期転換ルールの特例制度の申請手続きについてご説明しました。
▶参考情報:無期転換ルールの特例制度については、更に詳しく以下の記事で解説していますので、あわせてご参照ください。
9,【雛形あり】定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用契約書のポイントについて

最後に、「定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用契約書のポイント」について補足しておきたいと思います。
定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用契約書のポイントとしては、以下の4つのポイントをおさえておいてください。
- ポイント1:雇用契約の期間を明記する。
- ポイント2:法定の記載事項を網羅する。
- ポイント3:就業規則の労働条件を下回ってはならない。
- ポイント4:正社員と比較して「不合理な労働条件」にならないように注意する。
以下で順番に見ていきましょう。
ポイント1:
雇用契約の期間を明記する。
定年後再雇用社員・嘱託社員については、有期の雇用契約とされることが通常です。これは、定年後再雇用の際に無期の雇用契約にすると再雇用社員について定年がなくなってしまうためです。
そして、有期の雇用契約にする場合は、雇用契約書に必ず契約期間を記載しておくことが重要です。
ポイント2:
法定の記載事項を網羅する。
雇用主は従業員を採用する際には、労働条件に関して一定の項目を従業員に明示することが法律上義務付けられています。これについては、定年後再雇用の場合も同じ義務が課されます。そのため、法律上明示が義務付けられる項目を網羅した雇用契約書を作成することが重要です。具体的には以下の項目について明示が義務付けられており、これらを「雇用契約書」に記載しておきましょう。
1,定年後再雇用社員の雇用契約において必ず明示しなければならない項目
- (1)労働契約の期間
- (2)就業の場所
- (3)従事する業務の内容
- (4)始業時刻・終業時刻
- (5)所定労働時間を超える労働の有無
- (6)休憩時間
- (7)休日
- (8)休暇
- (9)賃金の決定・計算方法
- (10)賃金の支払方法
- (11)賃金の締切り・支払の時期に関する事項
- (12)退職に関する事項 ※解雇事由を含む
- (13)昇給に関する事項
- (14)契約更新の有無、及び、契約更新ありの場合は更新するか否かの判断基準
2,制度を設ける場合は明示しなければならない項目
- (15)交替制勤務をさせる場合は交替期日あるいは交替順序等に関する事項
- (16)退職金の定めが適用される労働者の範囲、退職金の決定、計算・支払の方法、支払時期に関する事項
- (17)臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
- (18)労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
- (19)安全・衛生に関する事項
- (20)職業訓練に関する事項
- (21)災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
- (22)表彰、懲戒処分に関する事項
- (23)休職に関する事項
3,定年後再雇用社員の1週の所定労働時間が正社員より短い場合は明示しなければならない項目
- (24)昇給の有無
- (25)賞与支給の有無
- (26)退職金支給の有無
- (27)短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
- (28)通常の労働者との待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨
このように、「定年後再雇用社員の雇用契約において必ず明示しなければならない項目」、「制度を設ける場合は明示しなければならない項目」、「定年後再雇用社員の1週の所定労働時間が正社員より短い場合は明示しなければならない項目」の3つがありますのでおさえておきましょう。
▶参考情報:労働条件の明示義務については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
・労働条件の明示義務とは?労働基準法15条の明示事項やルール改正を解説
また、「(28)通常の労働者との待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」の項目については、令和8年10月施行の法改正で新たに義務付けられた内容になります。この点については、説明を求められた場合に、待遇の相違等についてどう答えるかもセットで準備しておくことが重要になります。この点は以下の動画で解説していますのであわせてご参照ください。 サムネイルではパート社員をテーマに取り上げていますが、有期雇用される定年後再雇用社員・嘱託社員についても同様のことがあてはまります。
ポイント3:
就業規則の労働条件を下回ってはならない。
就業規則はその会社の労働条件の最低ラインを決める役割があります。
そのため、定年後再雇用社員・嘱託社員に適用される就業規則がある場合は、「雇用契約書に記載する内容は就業規則の労働条件を下回ってはならないこと」に注意が必要です。
例えば、定年後再雇用社員・嘱託社員に適用される就業規則に従業員の昇給があることが記載されているのに、定年後再雇用社員の雇用契約書で「昇給はない」と定めることはできません。
▶参考情報:就業規則については以下も参考にご覧下さい。
・就業規則の作成について!詳しい作り方や作成料金を弁護士が解説
ポイント4:
正社員と比較して「不合理な労働条件」にならないように注意する。
これは、この記事の、『定年後再雇用社員・嘱託社員の「給料」に関する注意点』の項目でご説明した点ですが、雇用契約書の書き方に関連して、以下の2点に注意しましょう。
注意点1:
定年後再雇用社員の仕事の内容や責任の程度などが正社員とは違う場合の注意点
仕事の内容や責任の程度などが正社員とは違うことを理由に、賃金の面でもそれに応じた合理的な差をつけることは許されます。
その場合は、定年後再雇用社員の仕事の内容や責任の程度について、正社員と異なることが雇用契約書でわかるように記載することが重要です。
注意点2:
定年後再雇用社員の仕事の内容や責任の程度などが正社員とは同じ場合の注意点
仕事の内容や責任の程度などが正社員と同じ場合は、正社員と比べて年収ベースで2割程度までの差であれば許容されるとするのが現在の判例ですので、雇用契約書に賃金を記載する際の目安としておさえておきましょう。
また、通勤手当や皆勤手当など正社員に支給している手当がある場合は、合理的な理由なく嘱託社員に支給しないことは禁止されています。手当についてはこのように支払いが義務付けられる部分があることも踏まえて、嘱託社員の基本給の額を決める必要があります。
このように、「定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用契約書のポイント」として、上記の4つのポイントは必ずチェックしておきましょう。
▶参考情報:また、参考として「定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用契約書の雛形(テンプレート)」をダウンロードしていただけますので、自由にご利用下さい。
10,定年後再雇用や嘱託社員の対応に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務所では、「労働問題に強い弁護士」が雇用契約書関連のご相談を担当しています。具体的な、咲くやこの花法律事務所における再雇用契約書に関するサポート内容とおおまかな費用の目安は以下の通りです。
(1)社内事情にあわせた再雇用契約書の作成
今回の記事に、再雇用契約書の一般的なひながたをアップロードしていますが、実際の雇用契約書の作成にあたっては、具体的な勤務体系や仕事の内容、賃金体系を考慮したうえで、それらを踏まえた内容で作成することが必要です。
また、この記事でもご説明したように「正社員との待遇の差がある場合、正社員と比較して不合理な労働条件にならないようにしておくこと」にも十分配慮する必要があります。
定年後の再雇用については最近裁判トラブルが増えており、要注意の分野です。咲くやこの花法律事務所においては、労務問題に精通した実績豊富な弁護士が、各企業の具体的な事情に適合する再雇用契約書の作成を行っております。
咲くやこの花法律事務所における再雇用契約書作成の弁護士費用例
●初回ご相談料:30分5000円(税別)
●再雇用契約書作成費用:3万円(税別)〜
(2)自社で作成した再雇用契約書のリーガルチェック
咲くやこの花法律事務所では、すでに自社で再雇用契約書を作成されている企業のために、作成された内容について弁護士がリーガルチェックを行うサービスも行っております。
労務トラブル防止のための基本的な書類である再雇用契約書について、弁護士のチェックを受けることは、労務に関する法的な整備をすすめるうえで必要不可欠です。
咲くやこの花法律事務所における再雇用契約書のリーガルチェックの弁護士費用例
●初回ご相談料:30分5000円(税別)
●再雇用契約書のリーガルチェック費用:2万円(税別)~
(3)再雇用制度の見直しや再雇用社員の就業規則の作成のご相談
平成30年6月1日の長澤運輸事件の最高裁判決は、再雇用社員に対する手当の不支給について一部違法と判断し、会社に賠償を命じました。
咲くやこの花法律事務所では、これらの最新の判例の傾向も踏まえた再雇用制度の見直しのご相談や就業規則作成のご相談もお受けしています。
再雇用制度については正社員との待遇差の問題が今後クローズアップされることが確実です。問題が大きくならないうちにぜひ早めに対策をしておいてください。
咲くやこの花法律事務所における弁護士費用例
●初回ご相談料:30分5000円(税別)
●就業規則の作成費用:20万円(税別)~
(4)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士へのお問い合わせ方法
定年後再雇用社員・嘱託社員の再雇用契約書に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるサポート内容については「労働問題に強い弁護士のサポート内容」をご覧下さい。また、お問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
11,まとめ
今回は、まず、「嘱託社員とは何か」について確認したうえで、「定年後の再雇用に関する労働条件に関するルール」として以下の点をご説明しました。
- ルール1:企業は、原則として従業員のうち希望者全員に65歳までの雇用の機会を与えなければならない。
- ルール2:定年後再雇用社員・嘱託社員の労働条件は、正社員と同じでなくても、さしつかえない。
- ルール3:定年後再雇用社員・嘱託社員を「有期雇用」とする場合には、正社員と比較して「不合理な労働条件」が禁止される。
そのうえで、定年後の再雇用に関する労働条件に関する注意点として、「給料、業務内容、社会保険、雇用契約期間」に関する4つの注意点をご説明しました。
さらに、定年後再雇用社員・嘱託社員の雇用管理におけるポイントの1つとなる、無期転換ルールの特例制度の申請手続きについて、ピックアップしてご説明しました。
冒頭でもご説明した通り、定年後の再雇用に関する労働条件をめぐるトラブルが増えていますので、注意しておきましょう。
万が一、「定年後の再雇用社員」や「嘱託社員」とのトラブルが発生した際や、トラブルの心配がある場合は、できるだけ早い段階で労働問題について弁護士に相談ができる「咲くやこの花法律事務所」までご相談下さい。
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記事更新日:2026年6月13日
記事作成弁護士:西川 暢春
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