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業務上横領が起きたときの会社の対応は?発覚時の適切な対処が重要

業務上横領が起きたときの会社の対応は?発覚時の適切な対処が重要
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
社内で従業員や会社役員による業務上横領があった場合、会社はどのように対応すべきでしょうか。

実は業務上横領の事案では発覚の初期段階で適切に対処できたかどうかが非常に重要になります。被害が発覚した最初の段階で適切な弁護士に相談しないまま、自己流で対応してしまうと、被害回復ができなくなったり、被害回復のために長期間の訴訟を要することになってしまう例が少なくありません。そして、一度自己流で誤った対応をしてしまった場合、後で適切な弁護士に相談したとしても、回復が難しいことも多いです。

この記事では、会社が従業員や役員による業務上横領の被害に遭った場合の対応について、ご説明します。この記事を読んでいただくことにより、横領被害を回復するための正しい方法がわかるはずです。

それでは見ていきましょう。

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所では、業務上横領の被害について、事業者側の立場で多数の相談をお受けし、被害の回復、懲戒解雇、刑事告訴等の対応を行ってきました。

業務上横領の被害にお困りの事業者の方はご相談いただきますようにお願い致します。咲くやこの花法律事務所の業務上横領被害に関する事業者向けサポート内容は以下をご参照ください。

 

▶参考情報:横領・業務上横領に強い弁護士への相談サービス

 

また、咲くやこの花法律事務所の業務上横領に関する解決実績も参考にご覧ください。

 

▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の業務上横領の解説実績はこちら

 

▶関連動画:西川弁護士が「会社で業務上横領が起きた時の対応のまとめ【弁護士が教えます!】」を詳しく解説中!

 

▼業務上横領に関する企業側の相談について、今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

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「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

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1,業務上横領について

業務上横領についての法律上の正確な定義は、「業務上自己の占有する他人の物を横領すること」です。従業員が会社から預かって管理している金品を流用したり、自分のものにしてしまったりということが典型例です。これに対し、会社の金品を自分のものにしてしまう場合でも、その金品がその従業員が預かったものではないときは、窃盗になります。

業務上横領と窃盗は法律上区別されます。業務上横領(刑法第253条)には10年以下の懲役刑が科されるのに対し、窃盗(刑法第235条)には10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑が科されます。

ただし、世間一般では、業務上横領と窃盗を厳密に区別せずにどちらも横領と呼んでいるケースも少なくありません。この記事でも会社の現金や商品、備品の窃盗もあわせて業務上横領と呼んで解説します。

 

▶参考情報:業務上横領についての詳しい説明は以下をご参照ください。

業務上横領とは?わかりやすく徹底解説

 

2,業務上横領被害が発覚した場合に会社がとるべき対応

業務上横領被害が発覚した場合に会社がとるべき対応

従業員や会社役員による業務上横領被害が発覚した場合に会社がとるべき対応は、以下の通りです。

 

  • ① 調査をして証拠を確保する
  • ② 本人からの事情聴取により横領を認めさせる
  • ③ 懲戒解雇・普通解雇・退職勧奨等により雇用を終了する
  • ④ 返済方法を協議する。返済に応じないときは訴訟を提起する。
  • ⑤ 必要に応じて刑事告訴を検討する
  • ⑥ 社内・社外への説明をする
  • ⑦ 再発防止策を策定・実行する

 

この中でも最重要のステップが、②の「本人からの事情聴取により横領を認めさせる」という点です。②の事情聴取で本人に業務上横領を認めさせておくことで、次の③の「懲戒解雇・普通解雇・退職勧奨等により雇用を終了する」のステップで行う解雇等について本人により争われてトラブルになることがなくなります。

また、④の「返済方法を協議する。返済に応じないときは訴訟を提起する。」のステップについても本人が業務上横領を認めることが、返済に向けた協議をする前提となります。さらに、⑤の「刑事告訴」についても、本人が業務上横領を認めていれば、スムーズに告訴状が受理され、警察による捜査も円滑にすすみます。

このように、②の「本人からの事情聴取により横領を認めさせる」ことに成功するかどうかが、その後の会社の対応を円滑・迅速に進められるかの分かれ目になります。

 

▶参考情報:本人に横領を認めさせることができた場合とできなかった場合の違い

事情聴取により横領を認めさせることができた場合 事情聴取で横領を認めさせることができなかった場合
雇用の終了 横領を認めている以上、解雇しても不当解雇だとして争われることはない。また、自主退職をうながせば本人が応じる。 本人が横領を認めていない以上、自主退職をうながしても応じないことが多い。解雇した場合は不当解雇だとして争われる危険がある。
返済請求 横領を認めている以上、返済義務があることを前提とした協議が可能。訴訟をしなくても解決できる可能性がある。 本人が横領を認めていない以上、返済の協議ができず、訴訟が必要になる。
刑事告訴 警察による捜査が円滑にすすみやすい。 本人が認めてないことから、警察による捜査の長期化が予想される。

 

3,横領の証拠を確保する

横領の証拠を確保する

そして、事情聴取により業務上横領を認めさせることに成功するためには、本人からの事情聴取の前に会社側で十分調査を行い、証拠をしっかり集めておくことが大切です。証拠の集め方は事案によってさまざまです。安易にこれで十分と即断してしまわず、証拠の集め方について弁護士に相談することが大事です。

 

▶参考:業務上横領についての証拠の集め方の例

※以下の事例は厳密には法律上は窃盗または詐欺となるものも含まれています。またあくまで概要であり個別事案の内容に応じたより緻密な証拠確保が必要です。

 

●レジの金銭を横領した事案

→ 原則として防犯カメラによる動画撮影により証拠を確保する

 

●店舗の商品や会社の備品などの持ち帰りの事案

→ 原則として防犯カメラによる動画撮影により証拠を確保する

 

●店舗の商品や会社の備品を横領して不正に転売して代金を得る事例

→ 転売先や転売に利用されたサイトのアカウントを調査し転売の履歴について証拠を確保する

 

●顧客から集金した現金を横領する事例

→ 顧客を回って本人が集金した事実を領収証等で確認する、本人が顧客に渡した領収証を顧客から回収する

 

●顧客に請求する料金等について個人の銀行口座を入金先に指定し横領する事例

→ 顧客に連絡して請求書の内容や料金の支払先を確認する

 

なお、会社が証拠の確保を進める過程で、会社が調査を進めていることを本人に知られる危険があります。本人に知られることで証拠を隠ぺいされるおそれもあるため、証拠確保のための活動は、まずは本人に知られるリスクが低い活動から始め、徐々に本人に知られるリスクがある活動にも取り組むという順番で進める必要があります。

ただし、一方で、証拠を確保しようと思えば、一定程度本人に知られるリスクを冒さざるを得ないことも事実です。リスクを過大視して、必要な証拠収集活動をためらうことがないようにしなければなりません。

具体的な証拠の集め方は、以下でも解説していますのでご参照ください。

 

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

弁護士に依頼することで弁護士会照会という弁護士独自の調査方法を活用することが適切な例もあります。弁護士会照会の制度を活用して証拠の確保を行った事例の1つを以下で紹介していますのであわせてご参照ください。

 

▶参考情報:弁護士会照会を活用した調査をもとに6000万円超の横領を自白させ、支払いを誓約させた事例

 

4,本人からの事情聴取を行う

本人からの事情聴取を行う

会社側でできる証拠の確保がすべて終わった段階で、本人を呼びだして事情聴取を行います。前述の通りこの事情聴取で本人に業務上横領を認めさせることが重要です。具体的には、業務上横領の事実を認めて返済を約束する内容の支払誓約書を本人から取得することが目標になります。

この事情聴取のときに本人に業務上横領の事実を否認されてしまうと、その後、認めさせることは簡単ではありません。そして、本人が認めない場合は返済を求めるために訴訟が必要になり、解決までに長期間を要することになってしまいます。そのため、本人からの事情聴取は、できれば業務上横領被害についての会社側対応に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。

 

▶参考情報:弁護士が本人からの事情聴取を行い、業務上横領を認めさせ、被害額全額を回収した事例の1つを以下で紹介していますのでご参照ください。

弁護士がレジ金横領の証拠を確保し被害全額の回収に成功した事例

 

5,会社の対応のよくある失敗例

事情聴取で業務上横領の事実を本人に認めさせることに失敗した場合、以下のデメリットがあります。

 

  • 返済を求めるためには訴訟が必要になり、解決までに長期間を要する
  • 本人を解雇した場合も、事実無根の不当解雇だと主張されて訴訟等に発展することがある
  • 刑事告訴した場合も、本人が否認している場合は、警察による捜査が円滑にすすまないことがある

 

そして、このような失敗に至る原因として以下の例があげられます。一度失敗するとリカバリーが困難なことも多いので確認しておきましょう。

 

(1)証拠の確保が不十分なまま事情聴取を行ってしまう

証拠の確保には労力と期間を要することも多いです。例えば、顧客から集金した現金を横領する事例の場合、顧客を回って本人が集金した事実を領収証等で確認することで横領の証拠を入手する必要があります。

このような地道な活動を面倒がって行わないまま事情聴取に入ってしまうと、本人にも、会社が十分に事実関係を把握しておらず嘘をついても見抜けないことを見透かされてしまいます。その結果、事情聴取で本人に業務上横領の事実を認めさせることができない危険があります。

 

(2)準備不足のまま事情聴取を行ってしまう

本人からの事情聴取の前に準備すべきことは、証拠の確保だけではありません。本人が素直には認めない可能性も想定したうえで、本人に対してどのような順番で何を質問することにより業務上横領の全貌を白状させるかについて事前に作戦を立てておくことが必要です。また、業務上横領を認めた場合に本人に署名捺印させる支払誓約書を事前に準備しておくことも必要になります。

 

(3)本人が嘘をつく場合に事実を認めさせることができない

事情聴取の際に本人が嘘をついて横領を認めないことがあります。これについてはあらかじめどのような嘘がありうるかを事前にリストアップしたうえで、その嘘に対して会社側からどのように切り返すかを決めておく必要があります。

本人が嘘をつく場面で、事実を白状させるためには、不合理な言い訳がされた場合にすぐに反論して追及するのではなく、しばらくはあえて不合理な言い訳を重ねさせることも必要です。不合理な言い訳を重ねさせた上で、それと矛盾する資料を示すと、言い逃れができなくなります。このあたりは事情聴取のテクニックも必要になってきます。

 

(4)支払誓約書をとる前に返済方法の話をしてしまう

本人が業務上横領を認めたら支払誓約書に署名押印させることが必要です。この支払誓約書は、横領の事実を認めさせたうえで横領金額を確定してその返済を約束させる内容にすれば十分です。

その額をどのようにして支払うかという点はいったんおいておくことが適切です。支払誓約書を本人に書かせる前に返済方法の話をすべきではありません。これをしてしまうと、本人に資力がないなどの事情で返済方法について話がまとまらなかった場合に、業務上横領を認める書面が残らない状態で事情聴取を終えてしまうことになりかねません。

 

(5)事情聴取をせずに内容証明郵便等を送ってしまう

業務上横領について社内調査により証拠を集めた段階で、本人に対する事情聴取をせずに内容証明郵便等を送ってしまうというのも失敗例の1つです。

例えば本人が既に退職している場面ではこのような対応をしがちです。しかし、内容証明郵便等を送ってしまうと、本人が弁護士に相談のうえ、業務上横領の事実を否認してくる可能性があります。

本人に横領を認めさせることができなくなり、返済を求めるために長期の訴訟を要することになる危険があります。退職後に業務上横領が発覚したという場合でも、まずは本人を呼びだして事情聴取し、本人に横領を認めさせることを目指すべきです。内容証明郵便等による請求は本人が呼び出しに応じない場合にはじめて検討すべき手段です。

 

6,解雇や退職勧奨により雇用関係を終了する

本人に事情聴取を行って業務上横領の事実を認めさせ、支払誓約書を取得することができれば、次は雇用を終了することを検討する必要があります。本人を会社に在籍させたままにしておくとその期間中も賃金を支払う必要があります。そのため、早い段階で雇用を終了させることが合理的です。雇用の終了の仕方については、懲戒解雇や普通解雇、退職勧奨などの方法があり、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて検討する必要があります。

 

(1)懲戒解雇

懲戒解雇は、解雇の中でも、従業員の「規律違反」に対する制裁として行われる解雇です。業務上横領の場面で懲戒解雇を選択することは、会社が重大な規律違反行為があった場合にそれに対して制裁を科すことを社内に示し、規律を維持する意味があります。一方で、以下の点に注意が必要です。

 

  • ・懲戒解雇をするためには就業規則が整備されて社内に周知されていることが必要です。就業規則が周知されていない会社では懲戒解雇をすることはできません。
  • 懲戒解雇をする場合は、30日前の解雇予告解雇予告手当の支払い、または労基署における解雇予告除外認定手続きが必要になります。

 

▶参考情報:懲戒解雇については、以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。

懲戒解雇とは?事例をもとに条件や進め方、手続き、注意点などを解説

従業員の業務上横領での懲戒解雇に関する注意点!支払誓約書の雛形付き

 

(2)普通解雇

業務上横領があった場面で、懲戒解雇せずに普通解雇することも可能です。普通解雇は、懲戒解雇とは異なり、就業規則が周知されていない場合でも、民法の条文を根拠に行うことができます(民法第627条1項)。

ただし、懲戒解雇の場合と同様に、普通解雇においても、30日前の解雇予告か解雇予告手当の支払い、または労基署における解雇予告除外認定手続きが必要になります。

 

▶参考情報:普通解雇については、以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。

普通解雇とは?わかりやすく徹底解説

 

(3)退職勧奨

業務上横領を認めた従業員に対して自主退職するように促し、退職届を提出させることで雇用を終了することも可能です。これは退職勧奨と呼ばれます。退職勧奨による解決は、以下のとおり最もお金がかからず、最も簡単な手続で雇用契約を終了する方法である点でメリットがあります。

 

参考1:金銭面について

懲戒解雇や普通解雇はどのような方法を採っても以下のように余分の賃金が発生します。

 

  • 30日前に解雇予告する場合 → 予告後雇用終了までの賃金支払が必要になります。
  • 解雇予告手当を支払う場合 → 30日分の支払が必要になります。
  • 解雇予告除外認定手続をする場合 → 労働基準監督署長の認定を得るまで通常2週間程度かかるため、その期間中は賃金支払が必要になります。

 

これに対し、自主退職を促す場合は当日に退職させることも可能です。

 

参考2:手続面について

懲戒解雇や普通解雇は、解雇通知書等の作成と送達が必要になります。これに対して、退職勧奨により自主退職を促す場合は、従業員から退職届の提出を受けて会社がそれを承諾するのみで済み、手続的にも簡単です。

 

▶参考情報:退職勧奨については、以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。

退職勧奨(退職勧告)とは?適法な進め方や言い方・注意点を弁護士が解説

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

業務上横領があった場面で、懲戒解雇・普通解雇といった手段をとるか、それとも退職勧奨により自主退職させるかは、社内・社外への説明が必要な事案かどうかも踏まえて検討しましょう。

社内・社外に対して「解雇」という形で対応したことを説明する必要がある場合は、懲戒解雇あるいは普通解雇により対応することが合理的です。一方、そのような説明の必要がないのであれば、最もお金がかからず、最も簡単な手続きで雇用契約を終了できる退職勧奨によることも検討すべきでしょう。

なお、退職金については、実際に懲戒解雇しなくても、懲戒解雇事由があれば不支給とできるように退職金規程を整備しておきましょう。この点の整備については以下の書籍で解説していますのでご参照ください。

▶参考情報:書籍「労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック」

 

7,返済を求める

雇用関係の終了と並行して、本人との間で支払誓約書で誓約した額の返済方法について協議する必要があります。本人が一括では返せない場合も、家族等の支援による一括返済ができないか、自宅の売却や生命保険の解約による一括返済ができないか、身元保証人への請求ができないかといった点を検討すべきでしょう。一括返済できない部分が残る場合は、分割払いについて強制執行認諾文言付公正証書にしておくべきでしょう。一方、本人が返済に応じないときは訴訟を提起する必要があります。

 

▶参考情報:従業員に着服・横領された金銭の返済請求のポイントを以下で解説していますのでご参照ください。

従業員に着服、横領された金銭の返済請求の重要ポイント【合意書 雛形付き】

 

8,刑事告訴を検討する

会社が業務上横領について本人に刑事罰を受けさせたいと考える場合は、刑事告訴を検討することになります。特に本人が誠実に返済に応じないときは刑事告訴が必要になることも多いでしょう。また、上場企業における多額の業務上横領は、株主への説明のためにも刑事告訴が必要になることが通常です。

ただし、刑事告訴については、会社側も被害者として警察の事情聴取を受けることになり、手間と労力を負担することになることも踏まえた検討が必要です。また、刑事告訴することで本人が実刑になることが予想される場合は、本人は服役期間中働けません。そのため、本人が横領した額を一括返済できず今後仕事をして得る収入などからの分割返済を求める場合は、刑事罰を受けさせることと返済をさせることのどちらを優先するかを検討することが必要です。

 

▶参考情報:以下の記事で、従業員の業務上横領があった場面における刑事告訴・刑事告発のポイントについて解説していますのでご参照ください。

従業員による業務上横領や着服の刑事告訴・刑事告発のポイント

 

9,業務上横領と時効について

横領された金銭についての民事での返済請求についての時効期間は「被害者が被害の事実と犯人を知ったときから3年間」あるいは「横領されたときから20年間」のいずれか早いほうです(民法第724条)。この期間が過ぎると、犯人が時効を主張した場合に、民事上、返済を請求することができなくなります。

一方、業務上横領罪について刑事事件として立件される可能性があるという意味での刑事上の時効期間は横領から7年(刑事訴訟法250条2項4号)です。時効がすぎると、犯人に対する処罰を求めることはできません。

 

▶参考情報:業務上横領の時効については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

業務上横領の時効は何年?民事・刑事での違いや起算点についても解説

 

10,社内・社外への説明と再発防止策の策定・実行

横領事件が起きた場合に社内・社外への説明が必要になることもあります。この点については、その説明の仕方によっては、説明内容が事実であっても本人に対する名誉毀損の問題が生じ得ることに注意して行う必要があります。以下の記事では懲戒処分の公表と名誉毀損の関係について説明していますのでご参照ください。

 

 

また、再発防止策も検討する必要があるでしょう。以下の記事で経理部門における横領防止策を解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

11,咲くやこの花法律事務所の業務上横領に関する解決実績

咲くやこの花法律事務所では、業務上横領被害があった場合の会社側の対応について、企業のご相談者から多くのご依頼をいただき、横領された金銭の回収等を実現してきました。以下で、咲くやこの花法律事務所の実績の一部をご紹介していますのでご参照ください。

 

横領した従業員に損害賠償を求め、給料の差押えにより回収した成功事例

EC通販会社の在庫品の横領事件、横領した取締役からの回収に成功した事例

横領の疑いがある従業員に対して、弁護士が調査を行って横領行為を認めさせ、退職させた解決事例

 

12,業務上横領被害に遭った場合の会社側の対応について弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

咲くやこの花法律事務所では、従業員や会社役員による業務上横領被害に関する会社側の対応についてのご相談を企業から承っています。最後に、咲くやこの花法律事務所における、業務上横領被害に関する企業向けサポート内容をご紹介したいと思います。

 

(1)従業員・会社役員による業務上横領被害に関するご相談

従業員や会社役員による業務上横領事件が発生してしまった場合は、迅速に、事実関係の調査や本人に対する返済請求、懲戒解雇、刑事告訴などの対処をすることがとても大事です。そして、この記事の冒頭でもご説明した通り、発覚した段階で適切な弁護士に相談しないまま、自己流で対応してしまうと、被害回復ができなくなったり、横領した従業員と長期間の紛争になってしまうことが少なくありません。

咲くやこの花法律事務所では、業務上横領被害が遭った場面における会社側の対応について多くの解決経験があります。ご相談いただければ、これまでの経験を踏まえて迅速適切に対応策をご提案し、また実行していくことができます。お悩みの企業様はぜひご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の業務上横領被害に関するご相談の弁護士費用例

●初回相談料:30分5000円+税

 

(2)事実関係の調査、本人からの事情聴取

業務上横領被害が発生してしまった場合、まずは事実関係を詳細に調査し、その結果を踏まえて本人からの事情聴取をする必要があります。ここで本人に横領を認めさせることができるかが、その後の会社側の対応を円滑に進めることができるかの分かれ目になります。そのため、事実関係の調査や事情聴取は弁護士に依頼することがベストです。

咲くやこの花法律事務所では、従業員による業務上横領事件に精通し、豊富な経験をもつ弁護士が随時ご相談を承っています。ご相談いただければ、弁護士が事案に応じて最適な方法で調査や事情聴取、証拠収集を行います。

 

咲くやこの花法律事務所の業務上横領被害に関するご相談の弁護士費用例

●初回相談料:30分5000円+税
●調査費用:15万円+税~

 

(3)横領についての損害賠償請求、返済請求

従業員による業務上横領事件が発生した場合は、従業員に対し返済や損害賠償を請求することが必要です。また、従業員への請求方法についても、さまざまな方法があり、事案に応じて適切な方法を選択して迅速に実行する必要があります。

横領についての損害賠償請求、返済請求については、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。業務上横領被害回復について経験豊富な弁護士が、事案を適切に検討し、横領をした従業員とすみやかに交渉を行うなど横領金の返済請求、損害賠償請求をいたします。

 

咲くやこの花法律事務所の業務上横領被害に関するご相談の弁護士費用例

●初回相談料:30分5000円+税
●交渉着手金:15万円+税~

 

(4)横領を理由とする解雇のトラブルの対応

咲くやこの花法律事務所では、横領による懲戒解雇後に従業員が不当解雇であると主張してきてトラブルになった場合の交渉や、裁判の対応について多くの実績があります。

懲戒解雇した従業員とのトラブルでお悩みの場合は、解雇トラブルの解決に精通した咲くやこの花法律事務所にぜひご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の解雇トラブルに関するご相談の弁護士費用例

●初回相談料:30分5000円+税
●労働審判対応着手金:45万円+税~
●労働裁判着手金:45万円+税~

 

(5)業務上横領の刑事告訴手続き

横領をした従業員について刑事告訴をすることには、従業員にプレッシャーをかけ、返済をうながす効果もあります。また、刑事告訴をすることによって、社内に一定のけじめをつけ、他の従業員のモラルの低下を防ぐことができます。

咲くやこの花法律事務所では、従業員の横領に関する刑事告訴についてのご相談を承っております。刑事告訴についてお困りの企業の方は、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の業務上横領被害に関するご相談の弁護士費用例

●初回相談料:30分5000円+税
●刑事告訴手続き着手金:30万円+税~

 

(6)業務上横領を未然に防ぐための予防策

社内の業務上横領被害は、未然に防ぐに越したことはありません。咲くやこの花法律事務所では、過去の経験も踏まえ、従業員による横領を防ぐための実践的なアドバイス、サポートを提供します。

従業員による業務上横領を未然に防ぐための予防策についてご検討中の企業の方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

業務上横領を未然に防ぐための予防策に関するご相談の弁護士費用例

●初回相談料:30分5000円+税
●書類作成:5万円+税~

 

(7)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士へのご相談はこちら

今すぐお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

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13,まとめ

この記事では、業務上横領被害が発覚した場合に会社がとるべき対応についてご説明しました。対応の概要は、以下の通りです。

 

  • ① 調査をして証拠を確保する
  • ② 本人からの事情聴取により横領を認めさせる
  • ③ 懲戒解雇・普通解雇・退職勧奨等により雇用を終了する
  • ④ 返済方法を協議する。返済に応じないときは訴訟を提起する。
  • ⑤ 必要に応じて刑事告訴を検討する
  • ⑥ 社内・社外への説明をする
  • ⑦ 再発防止策を策定・実行する

 

そして、この中でも最重要のステップが、②の「本人からの事情聴取により横領を認めさせる」です。②の事情聴取で本人に業務上横領を認めさせることができるかどうかによって、その後の会社側対応が円滑に進むかどうかが大きく左右されます。自己流でやろうとして失敗する例も多いため、自己流で対応する前に業務上横領被害回復に精通した弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

咲くやこの花法律事務所でもご相談をお受けしています。企業の業務上横領被害について多くの解決実績があり、実績に基づくノウハウで円滑・迅速な被害回復を実現します。

 

記事作成日:2024年5月28日
記事作成弁護士:西川 暢春

 

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    労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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