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怖い休職トラブル!休職期間満了を理由に従業員を退職扱いや解雇する際の注意点

休職期間満了を理由に従業員を退職扱いや解雇する時の注意点!怖い休職トラブル
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

「休職期間満了の際に起こるトラブルとは?」

従業員が病気やけがなどの理由で休職をすることがあると思います。

この「休職」においても、休職中の従業員の休職期間が満了し、従業員を退職扱いあるいは「解雇」する場面で、企業としての対応を誤り、重大な訴訟トラブルをかかえることがあります。

 

例えば、平成28年8月31日、裁判所は東芝に対して、東芝が休職期間満了により解雇した従業員について、約5200万円を支払うことを命じました。(東京高等裁判所平成28年8月31日判決)

 

この判決に限らず、休職期間満了による退職や解雇については、後日、訴訟トラブルに発展し、企業が多額の金銭支払いを命じられるケースがあります。

今回は、実は怖い「休職期間満了時の退職、解雇のトラブル」について、トラブルを防ぐために必ずおさえておくべき4つの注意点をご説明したいと思います。

それでは、以下で詳しく見ていきましょう。

 

▶【参考情報】解雇トラブルに関する「咲くやこの花法律事務所の解決実績」は、こちらをご覧ください。

 

▼【動画で解説】西川弁護士が「休職期間満了で休職者を退職扱いとする場合の注意点」を詳しく解説中!

 

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1,休職期間満了による退職や解雇とは?

休職期間満了による退職や解雇とは?

休職期間満了による退職あるいは解雇について必ずおさえておくべき注意点についてご説明する前に、まずは、「休職期間満了による退職あるいは解雇」についての基本的な内容を確認しておきましょう。

 

(1)休職期間満了による退職あるいは解雇とは?

休職期間満了による退職あるいは解雇とは、休職中の従業員との雇用関係を休職期間満了を理由に終了させることを指します。

多くの会社の就業規則で、例えば病気やけがによる就労不能の場合、一定期間の休職制度が設けられています。そして、休職期間満了までに復職できない場合は、雇用関係を終了することが就業規則に書かれていることがほとんどです。

具体的な就業規則のパターンとしては以下の2つのパターンがあります。

 

  • パターン1:「休職期間満了までに復職できない場合は退職扱いとする。」と書かれているケース
  • パターン2:「休職期間満了までに復職できない場合は解雇する。」と書かれているケース

 

▶参考情報:「就業規則」について詳しくはこちらをご覧下さい。

就業規則とは?義務や作成方法・注意点などを弁護士が解説

 

これらの就業規則の規定により、休職中の従業員との雇用関係を休職期間満了を理由に終了させるのが、「休職期間満了による退職あるいは解雇」です。

そして、「休職期間満了による退職あるいは解雇」について、最も重大なトラブルは、退職あるいは解雇について従業員が不当解雇であると主張し、訴訟に発展するトラブルです。

 

 

冒頭でご説明した、東芝の事件でも、休職期間満了による解雇が不当解雇であると判断されて、東芝が多額の金銭支払いを命じられました。

東芝の事例に代表されるような不当解雇トラブルのリスクは、先にご説明した「就業規則の規定の仕方の2つのパターン」でご説明したいずれのパターンでも発生します。

2つのパターンのうち、パターン1の「退職扱いとする」という規定の仕方は、そもそも「解雇」としないことにより、不当解雇と判断されるリスクを回避しようとしている側面がありますが、実際には、パターン1の定め方であっても、不当解雇であると判断されて企業が多額の金銭支払いを命じられる判決も出ています。

トラブルのリスクについては、パターン1の定め方であっても、パターン2の定め方であっても変わらないことをおさえておく必要があります。

以下では、これらの点をおさえたうえで、休職期間満了による退職あるいは解雇のトラブルを防ぐために必ずおさえておくべき注意点について、ご説明していきたいと思います。

 

▶参考情報:不当解雇トラブルを防ぐための「解雇方法について」

不当解雇トラブルが発生してしまうのは、解雇方法についての正しい知識を持たないことで発生しているケースがほとんどです。そのため、ここでは参考として、以下の「解雇方法について」の内容も関連情報としてチェックしておきましょう。

問題社員の円満な解雇方法を弁護士が解説

 

2,休職期間満了による退職や解雇について絶対におさえておくべき4つの注意点

休職期間満了による退職や解雇について絶対におさえておくべき4つの注意点

休職期間満了による退職あるいは解雇についての注意点のまとめとして、以下の4つをおさえておきましょう。

 

  • 注意点1:不当解雇トラブルを防ぐための注意点
  • 注意点2:退職時の雇用保険の手続、離職理由の記載に関する注意点
  • 注意点3:退職時の退職金に関する注意点
  • 注意点4:退職時の退職通知、解雇通知に関する注意点

 

以下で順番に見ていきたいと思います。

 

注意点1:
不当解雇トラブルを防ぐための注意点

休職期間満了による退職あるいは解雇について必ずおさえておくべき4つの注意点のうち、1つ目の注意点として、「休職期間満了時の不当解雇トラブルを防ぐための注意点」を見ていきましょう。

前述のとおり、「休職期間満了による退職あるいは解雇」について、最も重大なトラブルは、休職期間満了により退職扱いあるいは解雇された従業員が「不当解雇」であると主張し、会社との訴訟に発展するトラブルです。

休職期間満了時の不当解雇トラブルを防ぐためにおさえておいていただきたいことは、以下の3点です。

 

ポイント1:
従業員が休職期間満了までに復職できなかった場合は、多くの裁判例で、退職扱いあるいは解雇は適法と判断されている。

ポイント2:
「ポイント1」の例外として、セクハラ、パワハラ、長時間労働、退職強要などによる精神疾患を原因とする休職のケースでは、退職扱いあるいは解雇は不当解雇となる。

ポイント3:
「ポイント1」の例外として、医師が復職可能と診断しているのに会社が復職を認めずに休職期間を満了したケースでも、不当解雇と判断している裁判例が多い。

 

以下で上記の3つのポイントについて順番にご説明していきたいと思います。

 

ポイント1:
従業員が休職期間満了までに復職できなかった場合は、多くの裁判例で、退職扱いあるいは解雇は適法と判断されている。

過去の裁判例をみると、休職期間満了による退職扱いあるいは解雇の場面で、「不当解雇である」として従業員から訴訟を起こされたケースは少なくありません。

しかし、「ポイント2」、「ポイント3」でご説明する例外的な事情があるケースを除けば、就業規則に定めた休職期間を経過した後も復職できなかった場合は、退職扱いあるいは解雇について「適法」と判断する裁判例が多くなっています。

以下であげるように、休職期間「1年6か月」程度での退職扱いを適法と判断した裁判例が多くなっていますが(裁判例1、2)、入社2年目の従業員について休職期間「90日」での退職扱いを適法と判断した裁判例も存在します(裁判例3)。

 

1,休職期間満了による退職扱いあるいは解雇について「適法」と判断する裁判例

 

裁判例1:
東京地方裁判所平成26年2月7日判決

自律神経失調症で休職中の入社6年目の従業員について、就業規則に定めた1年6か月の休職期間を終えても復職しなかったことを理由に退職扱いとしたことを適法と判断した事例。

 

裁判例2:
東京地方裁判所平成27年7月29日判決

アスペルガー症候群で休職中の入社6年目の従業員について、就業規則に定めた1年6か月の休職期間を終えても復職しなかったことを理由に退職扱いとしたことを適法と判断した事例。

 

裁判例3:
東京地方裁判所平成24年3月9日判決

適応障害で休職中の入社2年目の従業員について、就業規則に定めた90日の休職期間を終えても復職願を提出しなかったことを理由に退職扱いとしたことを適法と判断した事例。

 

このように、まずは、就業規則に定められた休職期間を経過した後も復職できなかった場合は、退職扱いあるいは解雇することも適法と判断している裁判例が多いことをおさえておきましょう。

 

ポイント2:
「ポイント1」の例外として、セクハラ、パワハラ、長時間労働、退職強要などによる精神疾患を原因とする休職のケースでは、退職扱いあるいは解雇は不当解雇となる。

「ポイント1」の例外として、セクハラ、パワハラ、長時間労働、退職強要などによる精神疾患を原因とする休職のケースでは、休職期間満了時の退職扱いあるいは解雇を不当解雇と判断されています。

このケースは、いわば、精神疾患を発病し、あるいは悪化させた原因が会社にあると判断されるケースです。

 

例えば以下の様な裁判例があります。

 

1,セクハラ、パワハラ、長時間労働、退職強要などによる精神疾患を原因とする休職のケースで、休職期間満了時の退職扱いあるいは解雇した場合の裁判例

 

裁判例4:
京都地方裁判所平成26年2月27日判決

 

事案の概要:

精神疾患で休職中の従業員について、就業規則に定めた「3か月」の休職期間を終えても復職しなかったことを理由に退職扱いとしたケースです。

 

裁判所の判断:

裁判所は、退職扱いは無効であり、現在も雇用関係は継続していると判断し、退職扱いとされたことにより支払われなかった賃金等「約840万円」を従業員に支払うことを命じました。

 

裁判所の判断の理由:

裁判所は、従業員が復職できなかったのは、会社から「退職しなければ解雇する」などと退職勧奨された「退職強要行為」により精神疾患を悪化させたことが理由であるとして、退職扱いは違法であると判断しました。

 

退職勧奨とは、以下でわかりやすく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

裁判例5:
東芝事件(東京地方裁判所平成20年4月22日判決)

 

事案の概要:

東芝が、うつ病により休職中の従業員について、1年6か月の休職期間を終えても復職しなかったことを理由に解雇したケースです。なお、この裁判例は冒頭でご紹介した、東京高等裁判所平成28年8月31日判決の第一審です。

 

裁判所の判断:

裁判所は解雇は無効であり、現在も雇用関係は継続していると判断し、東芝に、解雇されたことにより支払われなかった賃金等「約2900万円」を従業員に支払うことを命じました。

 

裁判所の判断の理由:

裁判所は、時間外労働の平均が約70時間にのぼっており、うつ病の発症は長時間労働が原因であるとして、会社が長時間労働が原因となったうつ病で治療中の従業員を解雇することは不当解雇であると判断しました。

 

これらの裁判例からもわかるように、精神疾患による休職者への対応の場面では、社内でのハラスメントや長時間労働が休職の原因となっていないかをチェックしておくことが、不当解雇トラブルを避けるための重要なポイントです。

 

ポイント3:
「ポイント1」の例外として、医師が復職可能と診断しているのに会社が復職を認めずに休職期間を満了したケースでも、不当解雇と判断している裁判例が多い。

「ポイント2」でご説明した退職強要や長時間労働のケースのほかに、医師が復職可能であると診断しているのに会社が復職を認めずに休職期間を満了したケースでも、休職期間満了時の退職扱いあるいは解雇を不当解雇と判断している裁判例が多くなっています。

典型的な裁判例として以下のものがあります。

 

1,医師が復職可能であると診断しているのに会社が復職を認めずに休職期間を満了したケースで、休職期間満了時の退職扱いあるいは解雇した場合の裁判例

 

裁判例6:
キャノンソフト情報システム事件(大阪地方裁判所平成20年1月25日判決)

 

事案の概要:

自律神経失調症で休職していた従業員について、従業員が復職を希望し、医師も復職可能と判断していたが、会社が復職を認めずに休職期間満了により退職扱いとしたケースです。

 

裁判所の判断:

裁判所は、復職が可能であるのに退職扱いとしたことは不当解雇であると判断し、現在も雇用関係は継続していると判断したうえで、退職により支払われなかった賃金等「約1100万円」を従業員に支払うことを命じました。

 

この裁判例からもわかるように、休職中の従業員が復職を希望し、医師も復職可能であると診断しているケースでは、解雇や退職扱いとするのではなく、復職に向けたサポートを会社で行うことが必要です。

復職に向けた具体的な手順については、以下の記事で詳細に説明していますので、ご確認ください。

 

 

「ポイント2」、「ポイント3」でご説明した通り、セクハラ、パワハラ、長時間労働、退職強要などが休職の原因となっているケースや、医師により復職可能と診断がされているケースでは、退職扱いあるいは解雇することは、後日、不当解雇と判断されて多額の支払いを命じられる危険があります。

不当解雇トラブルを避けるためにはこれらの点を事前にチェックしておくことが必要です。

 

注意点2:
雇用保険の手続、離職理由の記載に関する注意点

次に、休職期間満了による退職あるいは解雇について必ずおさえておくべき4つの注意点のうち、2つ目の注意点として、「休職期間満了による退職時の雇用保険の手続、離職理由の記載に関する注意点」を見ていきましょう。

まず、休職期間満了による退職時の雇用保険の手続に関する注意点について見ていきます。

 

1,休職期間満了による退職時の雇用保険の手続について

休職期間満了の際に退職者に対する雇用保険の手続が遅れると、退職者が雇用保険の失業給付をスムーズに受給できず、会社との紛争のきっかけとなることがあります。

そこで、休職期間満了による退職時の雇用保険の手続の注意点として、会社が必要な手続をすみやかに行い、休職期間満了により退職した従業員がスムーズに失業給付を受給できるように配慮する必要があります。

従業員の退職時の雇用保険に関する手続きの手順を確認しておくと以下の通りです。

 

2,従業員退職時の雇用保険に関する手続きの手順

  • 手順1:会社は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を会社の事業所所在地を管轄するハローワークに提出する。
  • 手順2:ハローワークは、「離職証明書」のうち、「離職票」の部分に必要な記載と捺印をして会社に返送する。
  • 手順3:会社は、ハローワークから返送された離職票を退職者に交付する。
  • 手順4:退職者は離職票を退職者の住所地を管轄するハローワークに提出する。
  • 手順5:退職者の住所地を管轄するハローワークが、離職票の記載などをもとに離職理由を判断し、失業給付の給付日数などを決定する。

 

この手続きの流れは、休職期間満了による退職あるいは解雇の場合でも同じですので、おさえておきましょう。

次に、休職期間満了による退職時の離職理由の記載に関する注意点をみていきましょう。

 

3,休職期間満了による退職時の離職理由の記載について

上でご説明した「手順1」で会社がハローワークに提出する離職証明書には、「離職理由欄」と呼ばれる部分があります。

休職期間満了による雇用保険の手続きの中で退職者が最も気にする点が、この離職証明書の離職理由欄に会社が記載する「離職理由」です。

なぜなら、「離職理由」によって退職者が受給できる失業給付の給付日数が異なるためです。

そのため、休職期間満了による退職あるいは解雇の場面で、退職者との間で紛争を起こさないためには、正確な離職理由を離職証明書に記載することが必要です。

なお、離職理由と失業給付の給付日数の関係については、よく「自己都合か、会社都合か」という議論がされますが、これは正確ではなく、法律上は、自己都合であっても、例えば病気による離職の場合は、「正当な理由のある自己都合退職」として、給付日数について優遇を受けることができます。

 

では、具体的に、休職期間満了による退職あるいは解雇の場面で、離職証明書の離職理由欄をどのように記載すればよいかを見ていきましょう。

 

4,休職期間満了による退職あるいは解雇の場合の「離職証明書」の「離職理由欄」の記載について

結論としては、前述の「就業規則の規定の仕方の2つのパターン」に応じてわけて考える必要があります。

 

パターン1:
就業規則に「休職期間を満了しても復職できない場合は退職扱いとする。」と書かれているケース

「離職証明書」の「離職理由欄」は、大きく分けて「1~6」の6つの選択肢から、離職理由を選択する書式になっています。

就業規則に「休職期間を満了しても復職できない場合は退職扱いとする。」と記載されているケースでは「6」の「その他」に〇を付けます。そして、「理由を具体的に」とある欄に、「休職期間満了による退職」と記載します。

そのうえで、さらにその下の具体的事情記載欄に、「私傷病により休職していたが、休職期間満了により退職となった。」と記載します。また、離職証明書には、ハローワークが離職理由を確認するための資料を添付して提出する必要があります。

パターン1のケースでは、「就業規則の写し」と会社から退職者に送付した「退職通知書の写し」を添えて、ハローワークに提出しましょう。

 

パターン2:
就業規則に「休職期間を満了しても復職できない場合は解雇する。」と書かれているケース

就業規則に「休職期間を満了しても復職できない場合は解雇する。」と記載されているケースでは、6つの選択肢の中から、4の(1)の「解雇(重責解雇を除く。)」に〇を付けます。

そのうえで、下の具体的事情記載欄に、「私傷病により休職していたが、休職期間満了により解雇した。」と記載します。

このように記載したうえで、資料として、「就業規則の写し」と会社から退職者に送付した「解雇通知書の写し」、そして解雇予告通知書がある場合はその写しも添えて、ハローワークに提出しましょう。

 

なお、いずれのパターンでも、病気による離職の場合は、退職者は失業給付の給付日数について優遇を受けることができます。

退職時の雇用保険の手続を速やかに進めて、離職証明書の離職理由欄に正しい記載をすることが、休職期間満了による退職あるいは解雇のトラブルを防ぐためのポイントの1つになりますのでおさえておきましょう。

 

注意点3:
退職金に関する注意点

次に、休職期間満了による退職あるいは解雇について必ずおさえておくべき4つの注意点のうち、3つ目の注意点として、「休職期間満了による退職時の退職金に関する注意点」を見ていきましょう。

退職金規程を定めている会社や規程はなくても退職金支払いの慣行がある会社では、休職期間満了による退職者に正しく退職金を支払うことが必要になります。

休職期間満了による退職時の退職金に関する注意点としては、以下の3点をおさえておきましょう。

 

  • ポイント1:退職金の支払期限を確認する。
  • ポイント2:休職期間が勤続年数に含むかを確認する。
  • ポイント3:退職理由が自己都合か会社都合かを正しく把握する。

 

以下で順番に見ていきましょう。

 

ポイント1:
退職金の支払期限を確認する。

会社が就業規則や退職金規程で退職金について規定を設ける場合は、「退職金の支払時期について定めること」が労働基準法で義務付けられています。

そのため、就業規則や退職金規程で退職金の支払時期を確認しておきましょう。

支払いが遅れると退職者との間でトラブルになる恐れがありますので、就業規則や退職金規程で支払時期を確認したら、退職者にも連絡しておくことをおすすめします。

 

ポイント2:
休職期間が勤続年数に含むかを確認する。

大半の会社の退職金規程には、退職金の計算式に「勤続年数」に関する項目が入っています。通常、勤続年数が長くなれば長くなるほど、退職金が高額になるように設定されています。

そのため、退職金の額の計算にあたって、勤続年数を確定する必要がありますが、休職期間満了による退職の場合、休職期間を勤続年数に含めるかどうかを確認しなければなりません。

この点については法律で規定されているものではありません。

そのため、退職金規程あるいは就業規則を確認して、休職期間を勤続年数に含むかどうかについて規定があれば、それに従うことになります。

特段の規定がなければ、休職期間も勤続年数に含めて退職金を計算することが適切です。退職金の計算に誤りがあると退職者との間でトラブルになる恐れがありますので注意しておきましょう。

 

ポイント3:
退職理由が自己都合か会社都合かを正しく把握する。

大半の会社の退職金規程では、退職理由が自己都合か会社都合かによって、退職金の支払額が異なります。

通常、会社都合の退職の場合は、自己都合の退職の場合よりも退職金が高くなるように設定されています。

休職期間満了による退職あるいは解雇の場合について、「自己都合として扱うか、会社都合として扱うか」について退職金規程や就業規則に規定があるかを確認し、規定があればそれに従いましょう。

特に規定がない場合は、休職期間満了による退職あるいは解雇については、ハラスメントや過重労働が休職の原因になったというような事情がなければ、自己都合による退職と扱うことで問題ありません。

 

以上、「休職期間満了による退職時の退職金に関する注意点」についてご説明しました。

退職金の支払いが遅れたり、計算方法を間違うと、それがきっかけとなって、退職者と会社との紛争に発展することがあります。

休職期間満了による退職時の退職金の計算や支払いを正しく行えるように確認しておきましょう。

 

注意点4:
退職通知、解雇通知に関する注意点

続いて、休職期間満了による退職あるいは解雇について必ずおさえておくべき4つ目の注意点として、「休職期間満了による退職通知、解雇通知に関する注意点」を見ていきましょう。

休職期間満了により雇用関係が終了となる場合、従業員にその旨の「通知」を出しておく必要があります。

そして、どのような通知書をだすべきかは、就業規則における条文の規定の仕方によって異なってきます。

具体的には前述の「就業規則の規定の仕方の2つのパターン」に応じてわけて考える必要があります。
以下では、各パターンごとに見ていきましょう。

 

1,従業員に休職期間満了による退職あるいは解雇の「通知」を出す際の「2つのパターン」

 

パターン1:
就業規則に「休職期間を満了しても復職できない場合は退職扱いとする。」と書かれているケース

この場合、「貴殿の休職期間は平成〇年〇月〇日に満了し、就業規則第〇条〇項により、〇月〇日付で退職扱いとなりましたので、通知します。」という内容の通知書を送ります。

 

パターン2:
就業規則に「休職期間を満了しても復職できない場合は解雇する。」と書かれているケース

この場合、「貴殿の休職期間は平成〇年〇月〇日に満了しました。弊社は貴殿を就業規則第〇条〇項により、〇月〇日付で解雇しますので、通知します。」という内容の通知書を送ります。

通知書については、以下の関連記事も参考にご覧下さい。

 

 

また、この場合、あわせて、解雇予告手当を支払う必要があります。

ただし、解雇の日の30日以上前に、「復職できなければ解雇になること」を予告して通知していた場合は解雇予告手当の支払いは必要ありません。

 

▶参考情報:解雇予告手当について

労働基準法により、会社が従業員を解雇する場合は、原則として30日以上前に予告しなければなりません。ただし、30日分の平均賃金を支払えば予告しないで解雇することができ、このときに支払う金銭を解雇予告手当と呼びます。

解雇予告手当の計算方法、支払日、所得税、源泉徴収票の処理について

 

以上のように、就業規則の規定の仕方によって、通知書の内容が異なりますので、まずは就業規則を確認することが必要です。

なお、通知書は、注意点2でご説明した通り、ハローワークへの提出の資料にもなりますので、発送前に写しをとっておきましょう。

発送方法は、通常は普通郵便で問題ありませんが、退職者との間でトラブルが生じているときは、内容証明郵便で送ることも検討しましょう。

 

3,休職期間満了により退職する従業員のための社会保険給付について

最後に、補足情報として休職期間満了により退職する従業員に案内できる社会保険給付として以下の3つがありますので、その内容を確認しておきましょう。

 

  • 1,健康保険の傷病手当金制度
  • 2,障害年金制度
  • 3,雇用保険の失業給付

 

以下で順番にその概要をご説明します。

 

(1)健康保険の傷病手当金制度

業務外の事由による病気や怪我のために仕事ができない場合、最長で1年6か月の間、健康保険から傷病手当金の支給を受けることができます。

支給開始から1年6か月が経過しない時点で、退職した場合は、退職後も支給を受けることが可能です。支給額はおおむね在職中の給与の3分の2程度です。

 

(2)障害年金制度

病気のために仕事ができない場合、一定の要件のもと、障害年金という国の年金を受給することができます。

受給には、最初にその病気で病院にかかった時点で年金を支払っていたことや、病気の程度が国が定める基準より重いこと等一定の要件があります。

請求先は最初に病院にかかった時点で加入していた年金が国民年金の場合は国民年金、最初に病院にかかった時点で加入していた年金が厚生年金の場合は厚生年金となります。

会社員の場合、厚生年金に請求することになるケースが多いですが、その場合、厚生年金からの平均支給額は月約10万円程度となっています。

 

(3)雇用保険制度の失業給付

病気による休職で、休職期間満了により退職するケースでは、「正当な理由のある自己都合により離職した者」という扱いになり、最大で離職日から360日間、失業給付を受給することができます。

失業給付の額は、最大で退職前の給与の8割相当額ですが、法律上の上限が定められています。

ただし、失業給付はあくまで仕事ができるけれども仕事が見つからない人のための給付ですので、病気で仕事ができないケースでは支給されません。

 

休職期間満了により退職する従業員については、これらの社会保険給付をご案内いただくことをおすすめします。

 

4,解雇トラブルに関する咲くやこの花法律事務所の解決実績

咲くやこの花法律事務所では、解雇に関して多くの企業からご相談を受け、サポートを行ってきました。

咲くやこの花法律事務所の実績の一部を以下でご紹介していますのでご参照ください。

 

 

5,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます」

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に、咲くやこの花法律事務所において行っている、従業員の休職に関するご相談やトラブル対応についてのサポート内容をご紹介したいと思います。

咲くやこの花法律事務所におけるサポート内容は以下の通りです。

 

(1)休職中の従業員の退職や解雇に関するご相談

咲くやこの花法律事務所では休職中の従業員の退職や解雇に関する企業からのご相談をお受けしています。

この記事でもご説明した通り、休職中の従業員を退職扱いあるいは解雇する場面で、企業としての対応を誤ると、重大な訴訟トラブルをかかえることになります。退職扱いあるいは解雇する前の段階でご相談いただくことがトラブル防止のための重要なポイントです。

また、すでにトラブルになってしまっているケースでは、弁護士が窓口となって従業員との交渉にあたり、トラブルを早期に解決します。

 

咲くやこの花法律事務所の労務問題に強い弁護士への相談料

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
●解雇トラブルに関する交渉:着手金20万円程度~
●解雇トラブルに関する裁判:着手金40万円程度~

 

(2)休職中の従業員の復職に関するご相談

咲くやこの花法律事務所では休職中の従業員から復職の申し出があった場合の対応についても企業からのご相談をお受けしています。

「復職を認めるかどうかの判断」や、「復職の手順」についてお困りの企業様は早めに咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の労務問題に強い弁護士への相談料

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)

 

(3)従業員の休職に関する就業規則の整備に関するご相談

従業員の休職にまつわるトラブルを予防するためには、日ごろの就業規則の整備も重要なポイントです。

就業規則の整備に不安がある方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。労務に強い弁護士が、日ごろの裁判経験も踏まえ、実際にトラブルになったときにも通用する就業規則を整備します。

 

咲くやこの花法律事務所の労務問題に強い弁護士への相談料

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
●就業規則のリーガルチェック:10万円+税~(スタンダードプラン以上の顧問契約締結の場合は無料)
●就業規則の作成:20万円+税~

 

6,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士へのお問い合わせ方法

従業員の休職に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるサポート内容については「労働問題に強い弁護士への相談サポート」をご覧下さい。

また、今すぐお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

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8,まとめ

今回は、従業員を休職期間満了を理由に退職扱いあるいは解雇するときに必ずおさえておくべき注意点として以下の4つをご説明しました。

 

  • 注意点1:不当解雇トラブルを防ぐための注意点
  • 注意点2:雇用保険の手続、離職理由の記載に関する注意点
  • 注意点3:退職金に関する注意点
  • 注意点4:退職通知、解雇通知に関する注意点

 

そのうえで、最後に補足として、「休職期間満了により退職する従業員のための社会保険給付」についてご説明しました。

病気で休職する従業員についても、会社は休職期間中、社会保険料の会社負担部分を負担することになりますし、休職者の労務管理も必要になります。

そのため、休職者について実際上、会社がどのくらいの期間休職を認めて、復職を待つことができるかは、会社の利益水準や内部留保など、会社の体力にも関係してきます。従業員が定着する会社をつくるためには、会社の体力を高めて、従業員が病気で離職しなければならないケースをできるだけなくしていくことも必要です。

 

9,【関連情報】従業員の休職に関するお役立ち記事一覧

今回は、「休職期間満了を理由に従業員を退職扱いあるいは解雇する時に絶対におさえておくべき注意点」についてご説明いたしました。

実際に休職期間満了を理由とした退職や解雇を進めていく際の正しい方法と注意点をご理解いただけたと思います。従業員の休職についての対応やトラブルと関連して、その他にも知っておくべき関連情報があります。ここでは、それらの情報についてご紹介しておきますので、合わせてご確認しておきましょう。

 

私傷病休職とは?制度の内容と流れをわかりやすく解説

休職命令とは?出し方と注意点をわかりやすく解説

精神疾患で休職中の社員を復職させるときの正しい方法

病気休職者の復職面談。復職判定の7つの注意点を解説。

うつ病での休職!診断書や基準、期間、手続きの流れなど会社側の対応方法

うつ病の従業員を解雇する際に必ずさえておくべき注意点4つ

「従業員の病気を理由とする解雇」について詳しく解説!

 

また実際に従業員を雇用されている会社では、「いつ従業員の休職問題が発生するか」はわからず、それは急に発生することが多いです。そのため、「休職する従業員が発生した際の今後の対応相談」はもちろん、万が一「休職している従業員とのトラブルが発生した際」は、スピード相談が早期解決の重要なポイントです。

従業員の休職に関する対応やトラブルについては、「労働問題に強い弁護士」に相談するのはもちろん、普段から就業規則など自社の労務環境の整備を行っておくために「労働問題に強い顧問弁護士」にすぐに相談できる体制にもしておきましょう。

顧問弁護士に関する具体的な役割や必要性、相場などの費用については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

顧問弁護士とは?その役割、費用と相場、必要性について解説

 

また、労働問題に強い咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについては、以下をご参照ください。

 

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記事作成弁護士:西川暢春
記事更新日:2023年3月14日

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