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在宅勤務やテレワーク・在宅ワークの就業規則の重要ポイント7つ

  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

平成28年6月、トヨタ自動車が、ほぼすべての総合職を対象とした在宅勤務制度(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)を導入する予定であることが報道されました。

また、三菱東京UFJ銀行が主要行ではじめて在宅勤務制度(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)を導入することも報道されています。

大企業に限らず中小企業でも、在宅勤務制度(テレワーク・在宅ワーク・リモートワークなど)を導入する会社が増えています。

在宅勤務制度(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)は、従業員が育児や介護の時期を乗り越えて安心して長く働ける企業を作るために、有意義な制度の1つと言えるでしょう。

一方で、在宅勤務制度(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)については、「どのようにして誠実な就業を確保するか」、「残業代トラブルを防ぐための対策をどうするか」、「私物のPCを業務利用する際の情報漏えいをどう防ぐか」など様々な課題があることも事実です。

今回は、在宅勤務制度(テレワーク・在宅ワーク・リモートワークなど)を導入する場合の就業規則の作成について、おさえておくべき重要なポイントをご説明したいと思います。

 

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1,「テレワーク」とは?在宅勤務や在宅ワーク・リモートワークとの違いは?

テレワークについて

まず最初にテレワークについてご説明します。

テレワークとは「情報通信技術を活用した、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」のことです。

「テレ(tele)」とは「離れた場所」を意味し、テレワークとは「職場から離れた場所でIT機器を利用して仕事をする」ことを意味する造語です。

テレワークには、自宅で行う在宅勤務のほかに、自宅以外の場所(サテライトオフィスや喫茶店、図書館など)で仕事を行うことも含みます。

このように、テレワークという用語は、在宅勤務や在宅ワーク・リモートワークよりも広い意味で使われます。

この記事では、主に自宅で行うテレワーク(在宅勤務や在宅ワーク・リモートワーク)を念頭においた就業規則の重要ポイントを解説したいと思います。

 

2,在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)の就業規則作成時の重要ポイント

在宅勤務、テレワークの就業規則の注意点

冒頭でご説明した通り、在宅勤務制度については、「どのようにして誠実な就業を確保するか」、「残業代トラブルを防ぐための対策をどうするか」、「私物のPCを業務利用する際の情報漏えいをどう防ぐか」などについて、通常の勤務と異なる課題があります。

また、「始業時刻」や「終業時刻」など勤務時間に関する項目や「通勤手当」などの手当に関する項目についても、通常の就業規則をそのまま適用するのでは不具合が生じる場合が多いと思います。

そこで、通常の就業規則とは別に、「在宅勤務制度(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)に関する就業規則」が必要です。

そして、在宅勤務やテレワーク・在宅ワーク・リモートワークの就業規則作成時のポイントとしておさえておきたい点は以下の7つです。

  • ポイント1:在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)を認める条件を決める。
  • ポイント2:在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)を認める期間を決める。
  • ポイント3:就業時間に関するルールを決める。
  • ポイント4:就業場所に関するルールを決める。
  • ポイント5:業務上の情報の取扱いのルールを決める。
  • ポイント6:在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)中の費用負担に関するルールを決める。
  • ポイント7:在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)中の手当支給に関するルールを決める。

 

それでは、以下で順番に見ていきましょう。

 

3,ポイント1:
在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)を認める条件を決める

在宅勤務やテレワーク・在宅ワーク・リモートワークの就業規則作成時の7つのポイントの1つ目は、「在宅勤務を認める条件を決める」という点です。

在宅勤務制度をはじめて導入する場合は、「従業員の希望により在宅勤務か通常勤務かを選択できる制度設計」ではなく、「会社が許可した場合に限り在宅勤務を認める制度設計」にしておくことをおすすめします。

これは、在宅勤務については「会社とのコミュニケーションがとりにくくなる」などの課題が生じることも多く、少なくとも、在宅勤務制度をはじめて導入する時点で、在宅勤務者が増えすぎてしまうと、事業に支障が生じるおそれがあるためです。

具体例として、例えば以下のような制度設計が考えられます。

 

▶参考:「在宅勤務を認める条件」に関する就業規則の規定例

第〇条 会社は以下の条件をすべて満たす場合に、従業員に在宅勤務を認めることがある。

(1)やむを得ない事情により通勤が困難と認められる従業員であること
(2)入社から1年間が経過していること
(3)当該従業員の職務内容が自宅で行うことができるものであること
(4)会社が在宅勤務が適当であると認め、許可したこと

 

このように、在宅勤務制度をはじめて導入する時点では、通勤が困難な理由があり、入社後一定期間が経過して在宅勤務でも仕事に不安が少ない従業員のみを在宅勤務の対象者としておくのがよいでしょう。

また、在宅勤務の許可手続きも定めておきましょう。

下記に規定例を挙げますので参考にしてみてください。

 

▶参考:「在宅勤務の許可手続き」に関する就業規則の規定例

第〇条 在宅勤務の許可の手続きは以下のとおりとする。

(1)在宅勤務を希望する従業員は、在宅勤務開始希望日の2週間前までに会社に申請書を提出する。
(2)在宅勤務を希望する従業員の通勤が困難である理由が本人あるいは家族の病気である場合には、当該従業員は、その内容を示す診断書を提出しなければならない。
(3)会社は在宅勤務の許可にあたり、一定の頻度で出勤を義務付け、あるいは仕事内容、所定労働日数、所定労働時間を変更するなど、一定の条件を付すことができる。

 

このように、在宅勤務開始希望日の一定期間以上前に会社に申請書を提出することを定めて、会社も在宅勤務に向けての体制整備が可能となるような制度設計にしておきましょう。

また、在宅勤務を円滑に進めるために、一定の頻度で出勤を義務付けて、会社とのコミュニケーションの機会を確保するなどの工夫も検討しましょう。

さらに、在宅勤務開始に際して、就業時間や仕事内容を変更する場合も踏まえて、在宅勤務の許可にあたり条件を付すことができる旨の規定もおいておくことをおすすめします。

 

以上、「在宅勤務を認める条件」と「在宅勤務の許可手続き」についての就業規則の規定のポイントをおさえておきましょう。

 

4,ポイント2:
在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)を認める期間を決める

在宅勤務やテレワーク・在宅ワーク・リモートワークの就業規則作成時の7つのポイントの2つ目は、「在宅勤務を認める期間を決める」という点です。

在宅勤務が長期間続くと、会社の業務に支障が生じることが懸念されます。また、咲くやこの花法律事務所のご相談でも、「在宅勤務の社員がなかなか通常勤務に復帰しなくて困っている」というご相談をいただくことがあります。

このようなトラブルを防ぐためには、在宅勤務の期間について一定の制限を設けておくことが重要なポイントになります。

 

▶参考:在宅勤務の期間に関する就業規則の規定例

第〇条 在宅勤務の期間は、在宅勤務開始日から1か月とする。

2 上記の期間を超えて在宅勤務の必要があるときは、従業員は、在宅勤務期間終了予定日の1週間前までに会社に在宅期間勤務の延長を申請して、承認を得る。

3 従業員は在宅勤務の期間中であっても、在宅勤務の必要がなくなったとき、あるいは、会社から通常勤務への復帰を命じられたときは、通常勤務に復帰しなければならない。

 

このように、在宅勤務が会社の意向に反して長期化することがないように、在宅勤務の期間を就業規則で定め、それを超える場合は延長の申請を義務付けるなど、会社側で在宅勤務の期間をコントロールできる規定を設けておきましょう。

 

なお、出社拒否、出勤拒否する従業員への対応については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

5,ポイント3:
就業時間に関するルールを決める

在宅勤務やテレワーク・在宅ワーク・リモートワークの就業規則作成時の7つのポイントの3つ目は、「在宅勤務中の就業時間に関するルールを決める」という点です。

具体的には、以下の「2つの項目」を検討して、就業規則を整備しておく必要があります。

 

  • 検討項目1:在宅勤務者について「事業場外労働のみなし労働時間制」の適用の可否を判断する。検討項目2:在宅勤務中の深夜労働、休日労働の扱いを決める。

 

以下で順番に見ていきましょう。

 

検討項目1:
在宅勤務者について「事業場外労働のみなし労働時間制」の適用の可否を判断する。

本来、会社は、従業員の就業時間を管理し、所定労働時間を超えて就業した場合は残業代を支払う必要があります。

しかし、労働基準法38条の2で「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合で労働時間を算定し難いとき」については、「所定労働時間労働したものとみなす。」とされています。

この制度は、労働時間の算定が困難な場合に、会社の労働時間の把握・算定の義務を一部免除し、実際の労働時間にかかわらず、所定労働時間労働したものとして、残業代を発生させない扱いを認めるものです。

ただし、「事業場外労働のみなし労働時間制」については、適用できる場面に厳格な制限があり、自社の在宅勤務に「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用できるかどうかの判断が必要です。

事業場外労働のみなし労働時間制の適用の可否の判断基準は以下の通りです。

 

1,事業場外労働のみなし労働時間制の適用の可否の判断基準

事業場外労働のみなし労働時間制は、社外で仕事をする従業員すべてに適用できるわけではなく、「労働時間を算定し難い従業員」に限り適用できます。

 

具体的には、以下の「1」から「3」のいずれの条件も満たす場合に限り、「労働時間を算定し難い従業員」として、事業場外の労働のみなし時間制の適用が可能です。

 

2,事業場外労働のみなし労働時間制の適用に必要な3つの条件

 

  • 条件1:在宅勤務者の業務が、私生活を営む自宅で行われること。
  • 条件2:在宅勤務者が業務に利用するPCや携帯電話端末を常時、会社と通信可能な状態におくことが指示されておらず、在宅勤務者が通信を切断したり、これらの機器から離れることが認められていること。
  • 条件3:在宅勤務者の業務が随時、会社の具体的な指示に基づいて行われるものでないこと。

 

これらの条件を満たさない場合は、在宅勤務者について、事業場外労働のみなし労働時間制を適用することはできません。

その場合は、通常の従業員と同様に就業時間を管理し、所定労働時間を超えて就業した場合は残業代を支払う必要がありますので注意しましょう。

 

3,【補足】事業場外労働のみなし労働時間制を適用できる場合の注意点

事業場外労働のみなし労働時間制で、所定労働時間労働したものとみなすことができるためには、実際の労働時間が所定労働時間と大きくかい離しないことが必要です。

事業場外労働のみなし労働時間制を適用する場合に、在宅勤務者の業務量から所定労働時間を超えることが通常であるときは、「通常必要な労働時間」を労使協定で定めたうえで、「通常必要な労働時間」のうち「所定労働時間」を超える部分については残業代を支払う必要があります。

たとえば、1日の所定労働時間が「8時間」の在宅勤務者について、その業務量から1日「9時間」の就業が必要であることが通常であるときは、1日「9時間」を「通常必要な労働時間」として労使協定で定めたうえで、「1日1時間分の残業代を支払う」必要があります。

この点にも注意しておきましょう。

 

次に、検討項目2の「在宅勤務中の深夜労働、休日労働の扱いを決める。」について見ていきましょう。

 

検討項目2:
在宅勤務中の深夜労働、休日労働の扱いを決める。

在宅勤務者に事業場外労働のみなし労働時間制を適用する場合であっても、深夜労働(午後10時から午前5時までの就業)や休日労働(法定休日の就業)に対しては、「深夜割増賃金、休日割増賃金」を支払う必要があります。

そこで、在宅勤務中の深夜労働、休日労働について、以下のいずれの扱いをするか決めておくことが必要です。

 

  • 選択肢1:深夜労働、休日労働を禁止する。
  • 選択肢2:深夜労働、休日労働を許可制にする。
  • 選択肢3:深夜労働、休日労働を行うことを認め、深夜労働、休日労働について業務日報等により就業時刻を報告させ、深夜割増賃金、休日割増賃金を支払う。

 

在宅勤務中の時間管理が困難な場合は、「選択肢1」あるいは「選択肢2」を検討するのがよいと思います。

この場合、「深夜割増賃金、休日割増賃金」は、会社が特に深夜労働あるいは休日労働を指示あるいは許可した場合以外は発生しないというメリットもあります。

ただし、「深夜労働、休日労働の禁止」あるいは「深夜労働、休日労働の許可制」を就業規則で明記し、また、実際にも隠れて深夜労働、休日労働が行われないように注意する必要があります。

 

以上、在宅勤務の就業規則作成の際の6つのポイントの3つ目である「就業時間に関するルールを決める」のポイントについて、「事業場外労働のみなし労働時間制の適用の可否を判断する」、「深夜労働、休日労働の扱いを決める」の2項目をご説明しました。

この「就業時間に関するルールを決める」という点は、在宅勤務期間の残業代に関するトラブルを防ぐためにも重要なポイントになりますので、万全の整備をしておきましょう。

 

参考情報:万が一、在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)の従業員との残業代トラブルが発生した場合に備えて、以下もご覧下さい。

上記で記載した通り、在宅勤務やテレワーク・在宅ワークの就業規則が正しく作成されていないと、残業代トラブルが発生するリスクがあります。

万が一、残業代トラブルが発生した際に備えて、「従業員の未払い残業代請求における企業側の反論の重要ポイント」も参考として確認しておきましょう。

「従業員の未払い残業代の請求について弁護士が解説」について詳しくはこちらをご覧下さい。

 

6,ポイント4:
就業場所に関するルールを決める

在宅勤務やテレワーク・在宅ワーク・リモートワークの就業規則作成時の7つのポイントの4つ目は、「就業場所に関するルールを決める」という点です。

在宅勤務者について、就業場所に関するルールを決めておくことは、情報漏えいのリスクを減らし、在宅勤務者の就業状況を管理するうえで重要です。

在宅勤務者の就業場所については、主に以下の2つの選択肢があります。

 

  • 選択肢1:在宅勤務者の就業場所を自宅に限定する。
  • 選択肢2:在宅勤務者に自宅だけでなく臨機応変に場所を問わず就業することを認める。

 

この中で、自宅に限るとする「選択肢1」が最も情報漏えいのリスクが低く、就業状況の管理も容易です。

また、在宅勤務に事業場外労働のみなし労働時間制を採用するためには、「在宅勤務者の業務が、私生活を営む自宅で行われること」が必要になる点からも、就業場所を自宅に限る「選択肢1」がおすすめです。

「選択肢1」を採用する場合の、就業場所に関する就業規則の記載例は以下の通りです。

 

▶参考情報:就業場所に関するルールについての就業規則の規定例

第〇条 在宅勤務者は自宅においてのみ就業するものとし、自宅以外で就業してはならない。

 

このように、在宅勤務者の就業場所に関するルールを決めて、就業規則に明記しておくことが4つ目のポイントになりますのでおさえておきましょう。

 

7,ポイント5:
業務上の情報の取扱いのルールを決める

在宅勤務やテレワーク・在宅ワークの就業規則作成時の7つのポイントの5つ目は、「業務上の情報に関する取扱いのルールを決める。」という点です。

在宅勤務では、業務上の情報を社外に持ち出すことが必要になりますので、情報漏えいを防ぐためにその取扱いのルールを決めておくことが必要です。

具体的には、業務上の情報に関する取扱いのルールについて検討すべき項目として以下の5項目を確認しておきましょう。

 

  • 項目1:業務上の情報のうち、会社が機密として扱う「機密情報」が何かを就業規則で明確にし、「機密情報」とそうではない情報に分ける。
  • 項目2:在宅勤務にあたり、「機密情報」を自宅に持ち出す際は、上司の許可を要求するなどして管理し、情報漏えいを防ぐ。
  • 項目3:「機密情報」か否かを問わず、業務上の情報は、在宅勤務中、自宅においてのみ使用することを就業規則で義務付け、自宅外に持ち出すことを禁止する。
  • 項目4:「機密情報」については、複製の禁止、目的外使用の禁止など取扱いのルールを明確にし、就業規則あるいは誓約書に明記する。
  • 項目5:個人所有のPCや個人所有の携帯電話の業務利用を認める場合は、適切な情報漏えい対策を行う。

 

特に、「項目5」に関連して、在宅勤務に当たり、個人所有のPCや携帯電話端末で業務上の情報を扱う場合は、会社支給のPCや携帯電話端末と異なり、情報漏えい防止のためのセキュリティ対策が不十分になりがちです。

また、在宅勤務の従業員が個人所有のPCや携帯電話端末を、家族や友人に利用させたことが、情報漏えいのきっかけになることがあるなど、個人所有の端末には、会社支給のPCや携帯電話端末とは異なるリスクがあることを踏まえておく必要があります。

 

▶参考:個人所有のPCや携帯電話端末で業務上の情報を扱う場合の情報漏えい対策のポイントについて

私物端末の業務利用黙認は情報漏洩の危険が大きいです。そのため、個人所有のPCや携帯電話端末で業務上で利用することを認める場合(BYOD/ブリング・ユア・オウン・デバイス)のメリットとデメリットをきちんと把握した上で、情報漏えい対策を実施しておく必要があります。

その「BYOD」の導入における情報漏えい対策については、「個人所有のPCや携帯電話端末で業務上で利用することを認める場合(BYOD)のメリット・デメリットと導入時の個人情報漏えい対策ポイント」の解説も確認しておきましょう。

「私物端末の業務利用は情報漏洩の危険大!BYODのメリット・デメリットと導入時のポイント」はこちら

 

8,ポイント6:
費用負担に関するルールを決める

在宅勤務やテレワーク・在宅ワーク・リモートワークの就業規則作成時の7つのポイントの6つ目は、「費用負担に関するルールを決める」という点です。

在宅勤務中の、自宅でのインターネット接続の費用や光熱費の負担については、トラブルにならないように、就業規則でルールを決めておく必要があります。

これらの費用を在宅勤務者の負担とする場合は、たとえば、以下のような規定をおいておきましょう。

 

▶参考情報:在宅勤務中の費用負担に関する就業規則の規定例

第〇条
在宅勤務のために要する通信費、光熱費、その他の費用は、特に会社が認めた場合を除き、在宅勤務者の負担とする。

 

労働基準法89条5号により、「従業員に費用を負担させる場合は就業規則に必ず記載すること」が要求されています。

そのため、在宅勤務による費用を従業員に負担させる場合は、就業規則にその点を記載することが必要ですので、忘れないように注意しましょう。

 

9,ポイント7:
手当支給に関するルールを決める

在宅勤務やテレワーク・在宅ワーク・リモートワークの就業規則作成時の7つのポイントの7つ目は、「手当支給に関するルールを決める」という点です。

労働基準法89条2号により、在宅勤務者の賃金について通常の勤務者とは異なる取り扱いをする際は、就業規則に定めることが必要です。

特に、在宅勤務中の手当支給について通常の勤務者とは異なる取り扱いを検討する必要があるのは、「通勤手当」、「固定残業手当」、「皆勤手当」の3つです。

 

(1)在宅勤務者について通常の勤務者とは異なる取り扱いを検討する必要がある3つの手当

1,通勤手当:
在宅勤務日については通勤手当は支給しないことが合理的です。

例えば、就業規則あるいは賃金規程に「6か月間の定期券代相当額の1/6に相当する金額を支給する」などと書かれている場合は、在宅勤務の就業規則で在宅勤務者向けの規定を定めておく必要があります。

 

2,固定残業手当:
在宅勤務日について、事業場外労働のみなし労働時間制を採用するときは、固定残業手当を支給しないことが合理的です。

通常勤務者について固定残業手当支給の規定がある場合は、在宅勤務の就業規則で在宅勤務者向けの規定を定めておく必要があります。

 

3,皆勤手当:
通常勤務者に皆勤手当を支給している場合は、在宅勤務者にも皆勤手当を支給するのが合理的ですが、在宅勤務中、皆勤か否かの判断をどのように行うか定めておく必要があります。

在宅勤務の就業規則で、在宅勤務者に対する皆勤手当の支給基準を定めておきましょう。

 

以上が、手当についての注意点ですが、在宅勤務者の基本給についても注意が必要なケースがあります。

 

(2)在宅勤務者の基本給についての注意点

例えば、在宅勤務希望者の仕事内容のうち、在宅勤務で行うことが困難な業務がある場合は、在宅勤務が可能な業務に限定して就業させるために、在宅勤務希望者の仕事量を減らすことが必要になることもあります。

この場合に、在宅勤務希望者と協議して、仕事量を減らしたことに対応して、所定労働日数や所定労働時間を通常の従業員よりも減らすときは、基本給についてもその割合に応じて減額することが合理的です。

そこで、就業規則にも、「在宅勤務にあたり、所定労働日数や所定労働時間を減らしたときは、基本給をその割合に応じて減額する」旨の規定を設けておくのがよいでしょう。

 

以上が、在宅勤務の就業規則作成時の手当支給と基本給についての規定の注意点になりますのでおさえておきましょう。

 

10,在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)の就業規則に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に、咲くやこの花法律事務所における、在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)についての労務管理に関するサポート内容をご紹介しておきたいと思います。

咲くやこの花法律事務所における在宅勤務についての労務管理のサポート内容は以下の通りです。

 

  • (1)在宅勤務やテレワーク・在宅ワークについての労務管理のご相談
  • (2)在宅勤務やテレワーク・在宅ワークについての就業規則の作成

 

以下で順番に見ていきましょう。

 

(1)在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)についての労務管理のご相談

「咲くやこの花法律事務所」では、企業のご相談者から、「在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)に関する労務管理や日々の労務トラブルのご相談」を常時承っています。

誠実な就業の確保、在宅勤務者の成果の把握の方法、在宅勤務者に対する指導の方法、就業時間管理、情報漏えいの防止など日々の労務管理や各種トラブルを労務管理に強い弁護士にご相談いただくことで、貴社の在宅勤務を成功に導きます。

 

(2)在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)についての就業規則の作成

「咲くやこの花法律事務所」では、「在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)に関する就業規則の作成のご依頼」を常時承っています。

在宅勤務・在宅ワークを成功させるためには、就業規則をはじめとする規則の整備も重要なポイントの1つです。

「咲くやこの花法律事務所」には、就業規則作成に精通した弁護士がそろっており、貴社の具体的事情を踏まえた在宅勤務・在宅ワークに関する就業規則を整備し、在宅勤務・在宅ワークの成功の基礎作りを行います。

 

在宅勤務が普及し始めて、従業員にとって働き方の選択肢が増えてきている一方で、在宅勤務を背景とした残業代トラブルや情報持ち出しトラブルのご相談も年々増えてきている実情があります。

「就業規則に不安がある」、「在宅勤務を導入しているがトラブルになりそう」など、従業員の在宅勤務に関する不安や心配事があったら、早めに「咲くやこの花法律事務所」の労働問題に強い弁護士にご相談下さい。

 

(3)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士へのお問い合わせ方法

就業規則に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。咲くやこの花法律事務所の労務管理や労働問題に強い弁護士によるサポート内容については「労働問題に強い弁護士への相談サービス」のページをご覧下さい。

また、今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

11,まとめ

今回は、企業が在宅勤務制度(在宅ワーク)を導入する場合の就業規則の作成について、おさえておくべきポイントとして以下の7点をご説明しました。それぞれ、在宅勤務やテレワーク・在宅ワークに関するトラブルを防ぐために重要なポイントですのでおさえておきましょう。

 

  • ポイント1:在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワークなど)を認める条件を決める。
  • ポイント2:在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワークなど)を認める期間を決める。
  • ポイント3:就業時間に関するルールを決める。
  • ポイント4:就業場所に関するルールを決める。
  • ポイント5:業務上の情報の取扱いのルールを決める。
  • ポイント6:在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワークなど)中の費用負担に関するルールを決める。
  • ポイント7:在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワークなど)中の手当支給に関するルールを決める。

 

在宅勤務については、「誠実な就業がされているか把握しにくい」、「従業員とのコミュニケーションが希薄になりやすい」などの課題もあります。

しかし、人手不足の流れもあり、育児や親の介護などが必要な従業員も勤務を続けていくことができる体制作りは、企業発展のための重要なテーマの1つになっています。

長く働ける企業作りに取り組むためにも、在宅勤務制度の導入を1つの選択肢として検討してみましょう。

 

12,【関連情報】就業規則に関する他のお役立ち記事一覧

今回の記事では、在宅勤務(テレワーク・在宅ワーク・リモートワーク)の就業規則の作成時の重要ポイントをご説明しました。

在宅勤務や在宅ワークの従業員がいる企業は、通常勤務の従業員も雇用しているケースが多いと思います。そのため、今回のケースと合わせて、通常勤務の従業員向けの就業規則に関するお役立ち情報も必ずあわせて確認しておきましょう。

 

(1)就業規則の基礎知識について

就業規則とは?義務や作成方法・注意点などを弁護士が解説

就業規則の記載事項をわかりやすく解説

就業規則と労働基準法の関係とは?違反する場合などを詳しく解説

就業規則の届出についてをわかりやすく解説

就業規則の閲覧を求められたら?会社は応じる義務がある?対処法を解説

就業規則の法的効力はどこまである?有効性について解説

就業規則の変更方法は?手続きと不利益変更・同意書取得などの注意点を解説

就業規則変更届とは?書き方や記入例、提出方法をわかりやすく解説

就業規則がない場合どうなる?違法になる?リスクや対処法を解説

就業規則の意見書とは?記入例や意見聴取手続きの注意点を解説

 

(2)雇用形態別の就業規則のポイントについて

パート・アルバイトの就業規則の重要ポイントと注意点【雛形あり】

 

また、何か問題が発生しそうな時にはトラブルに発展させないようにすることや、万が一トラブルに発展しても深刻化せず早期解決が可能になるような就業規則にしておくなど、労働問題に強い顧問弁護士による労務管理の整備は必ず行っておきましょう。

咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い顧問弁護士サービスについては、以下を参考にご覧ください。

 

【全国対応可】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

大阪の実績豊富な顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)をお探しの企業様はこちら

 

顧問弁護士に関する役割や必要性、費用の相場感などを知りたい方は、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

顧問弁護士とは?その役割、費用と相場、必要性について解説

 

記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年1月5日

 

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    労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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