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契約書作成で必ずおさえておくべき6つのポイント【雛形集付き】

契約書作成で必ずおさえておくべき6つのポイント【ひな形集付き】
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

今回は、契約書の作成について必ずおさえておくべき6つのポイントについてご説明します。

契約書についてはインターネット上でも様々なテンプレートやひな形が公開されています。しかし、テンプレートやひな形を安易に写して契約書を作成することで以下の問題点が発生しています。

 

  • 自社としても守ることができないような契約条項を、テンプレートのまま入れてしまい、相手方から契約違反と言われてしまう。
  • テンプレートをそのまま使った結果、実際の取引の内容とあっておらず、トラブル時に契約書をもとにした自社の主張ができず、自社に不利な解決となってしまう
  • 自社が仕事をする側、物を売る側の場合は、何をどこまでやるか、どこまで保証するかを契約書に書いていないため、いつまでも契約相手からの要求が続き、代金をもらえない

 

このようなことから、契約書のテンプレートやひな形は契約書作成時の参考程度にとどめ、きっちりと実際の取引の個別のリスクに対応したオリジナルの契約書を作る癖をつけることが、ビジネス成功の基本です。

この記事では、契約書の具体的な作り方をご説明していきたいと思います。この記事を読んでいただけたら、契約書の正しい作り方を理解することができ、また、やってはいけないリスク面なども把握していただくことができます。

これから契約書を作成される方はぜひ最後までご覧ください。

 

弁護士西川暢春からのご案内

咲くやこの花法律事務所では、企業からのご依頼を受け、これまで多くの契約書を弁護士が作成し、あるいは企業担当者による契約書の作成を支援してきた実績があります。実績の一部を以下でも公開していますのであわせてご覧ください。

 

▶参考情報:契約書関係の実績のご紹介はこちら

 

▼【関連動画】西川弁護士が「契約書の作り方!必ずおさえておくべき6つのポイントとは?」を詳しく解説中!

 

▼【関連情報】契約書の作成については、こちらの関連情報も合わせてご覧下さい。

契約書のリーガルチェックの重要性と9つのチェックポイント

 

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【全国対応可】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

 

 

1,契約書とは?

契約書とは?

契約書とは、取引当事者の契約内容を書面に整理し、取引当事者が確認したものをいいます。通常は、取引当事者が署名または捺印することによって完成されます。多くの契約は口頭でも成立しますが、重要な取引について契約書が作成されず「口約束」しかない場合、まだ契約が成立していないと判断されることもあります。また、定期建物賃貸借契約など、契約書を作成しなければ、法律上、契約が成立しないものも存在します(定期建物賃貸借契約については、借地借家法38条1項で書面によって契約しなければ契約が成立しないことが定められています)。

 

(1)契約書が必要な理由

前述のとおり、多くの契約は口頭でも成立しますが、それにもかかわらず、契約書の作成が必要な理由は以下の点にあります。

 

1,相手との間で合意の成立を確実に確認するため

契約書には、契約相手との合意の成立を確実に確認する機能があります。

例えば、自社がシステム会社にシステムの制作を発注する場合、自社が発注しようとするシムステムがどのような内容で、それをいくらで、いつまでに制作してもらう必要があるのかという点について、相手方の承諾を確認する必要があります。しかし、口頭ではこれらの点の確認が不十分になりがちですし、たとえ確認したとしても、自社の認識と相手方の認識が一致しているかどうか不明確です。そこで、相手との間で合意が成立したことを確実に確認するために契約書を作成する必要があります。

 

2,紛争化したときに当事者間で解決できるようにするため

もう1つの契約書の目的として、紛争化した時に、訴訟までしなくても当事者間で解決できるようにするという点があります。

例えば、自社がシステム会社にシステムの制作を発注した場合に、後日、完成したシステムのプログラムの著作権をめぐってシステム会社とトラブルになることがあります。そのような場合も、契約書を作っていれば、契約書を確認することにより、契約当時、著作権についてどのように合意されていたかを確認することができ、訴訟等をしなくても紛争を解決できることが多いでしょう。

 

3,訴訟になった場合に証拠とするため

さらに、契約書の重要な機能の1つとして、訴訟になった場合の証拠とするという点があげられます。

例えば、自社がシステム会社にシステムの制作を発注したが、当初の約束通りの仕上がりにならなかったとして契約の解除や損害賠償請求をする場合、訴訟になれば、当初約束していたシステムの仕様がどのようなものだったのかが争われることになります。この場合に契約書においてシステムの仕様について記載をしていれば、それは重要な証拠となります。このように、契約書は訴訟における自身の主張を根拠づけるための重要な証拠になるという機能があります。

 

(2)契約書の法的効力

契約書は、法的な効力がある「契約」をした証であり、契約書自体になにか法的な効力があるわけではありません。ただし、公証人によって作成される公正証書の中には、「強制執行認諾文言付き公正証書」と呼ばれるものがあり、これは契約に違反して金銭の支払いがされなかった場合に相手の財産を差し押さえるという法的効力が与えられています。

 

(3)見積書やメールではだめな理由

契約書を作るのは手間なので、見積書を送るだけではだめか、というご質問をいただくこともあります。

見積書は、契約に先立ちそのように費用を見積もったというものにすぎず、その内容に相手が同意したという証拠がないため、契約書と同じ機能を果たすものではありません。

契約書は取引当事者が署名または捺印することにより、双方が合意したという点が証拠化されている点に大きな意味があります。見積書を送るだけでは見積内容に相手が承諾した証拠がないため、双方の合意の証拠とすることはできません。

また、契約内容についてメールで送って、それについて承諾のメールを返信してもらえばよいのではないかというご質問をいただくこともあります。

しかし、特に企業が当事者となる契約については、契約が成立するための合意を、企業における権限者が行う必要があります。担当者が承諾のメールを送信したとしても、それは必ずしも契約が成立したことを意味しません。メールの送受信での記録は、代表取締役その他の権限者による署名または捺印がされる契約書と同等の効果があるわけではありません。

 

(4)契約方法から見た契約の種類

契約方法から見た契約の種類として、「1,口頭の契約、2,当事者間における契約書の作成、3,電子契約、4,公正証書」などがあります。

以下で順番に説明します。

 

1,口頭の契約

口頭でも契約が成立する場合があることは前述の通りです。ただし、通常は契約書を作るような重要な契約については、口頭で合意をしていただけでは、まだ契約は成立していないと判断されることがあります。

例えば、これまで貸し借りがない企業間で「1か月で返すので1億円を貸してください。」「わかりました。貸します。」というやりとりがあったとしても、それだけで金銭消費貸借契約が成立して、実際に1億円を貸す義務が生じるとはすることは難しいでしょう。

 

2,当事者間における契約書の作成

紙媒体で契約書を作成する方法です。契約書という表題ではなく、「覚書」とか「合意書」といった表題でも、契約書と同じ機能を持たせることができます。また、「契約書」のように両当事者が署名、捺印する形式でなかったとしても、例えば、発注者が署名、捺印した「発注書」により契約の申し込みをして、それに対して受注者が署名、捺印した「発注請書」を交付することで申し込みを承諾すれば、契約書を作成したのと同じ機能を持たせることができます。

 

3,電子契約

電子契約は、契約書のデータファイルを、オンライン上で契約の相手方に開示して、双方の合意を確認することにより、契約を締結するものをいいます。電子契約については、契約書の署名、捺印に代わるものとして、電子署名を準備することが必要です。

 

4,公正証書

公正証書は、公証役場において公証人がその権限に基づいて作成する契約書のことです。公正な第三者である公証人が作成することにより、当事者間で作成した契約書よりも高い証拠力が認められます。

 

(4)契約書作成にあたっての注意点

契約書作成にあたっての注意点として以下の6つをおさえておきましょう。

 

  • 1,取引にどんなリスクがあるかを考えたうえで、リスクをカバーするという目的意識をもって書く
  • 2,権利と義務について書く
  • 3,第三者や裁判官にもわかる言葉で書く
  • 4,記載事項が法律で決まっているケースがある
  • 5,関連する法律、判例をリサーチしておく
  • 6,ひな形は記載漏れのチェックに使う

 

これらの点については以下で詳しく解説します。

 

2,契約書作成方法について必ずおさえておくべき6つのポイント

契約書作成方法について必ずおさえておくべき6つのポイント

自社オリジナルの契約書を作成するといっても、正しく作ることができなければ意味がありません。契約書作成の基本的な考え方として、以下の6つのポイントをおさえておいてください。

 

(1)目的意識をもって書く

契約書を作成するにあたっては、「この取引にどんなリスクがあるのか」をしっかり考えたうえで、「そのリスクをカバーする」という目的意識をもって契約書を作ることが最も重要です。

例えば、売買契約でいえば、売主側、買主側それぞれについて一般的に以下のようなリスクがあります。

 

1,自社が売主側の場合のリスク

  • 代金の回収ができなくなる
  • 買主から商品や製品のスペックを超えた要求をされてトラブルになる
  • 商品や製品に不良があったときに買主から過大な請求を受ける
  • 商品の仕入れができず、その結果、納品ができなくなる
  • 商品が輸送中に壊れる

 

2,自社が買主側の場合のリスク

  • 納期が遅れる
  • 商品や製品に不良があったときに十分な対応をしてもらえないリスク
  • 代金前払いの場合は、支払をしたのに商品が送られてこないリスク
  • 商品が第三者の知的財産を侵害していた場合に損害賠償請求を受けるリスク
  • 商品の供給を途中で打ち切られたり、仕様変更される
  • 商品を転売する場合、客先で不良が発見され、顧客から賠償請求を受けるリスク

 

以上は売買契約のリスク分析例ですが、このように、自社が取引で負担することになるリスクをしっかり想定し、それをカバーするという目的意識をもって、契約書を作成することが重要です。

 

(2)権利と義務について書く

次に、契約書を作成するにあたっては、「権利と義務について書く」ということを常に意識する必要があります。

契約書と商談資料やビジネスレターの違いは、「契約書は自社と相手方の権利と義務を書いたものである」という点です。契約条項を書くときは、それが以下の4つのうちどれにあたるかを常に意識して書く必要があります。

 

  • 自社の権利を定めたものか
  • 自社の義務を定めたものか
  • 相手方の権利を定めたものか
  • 相手方の義務を定めたものか

 

以下のような契約条項の書き方は、契約書として適切ではありません。

 

  • 契約条項に主語がなく誰の権利あるいは義務について記載したものかが明確でない
  • 契約条項として記載されている権利あるいは義務の内容が明確でない

 

(3)第三者にもわかる言葉で書く

次に、意識していただきたいのは、「裁判官にわかる言葉で契約書を書く」という点です。

ビジネスにおいてトラブルが裁判にまで発展してしまうことはできる限り避けるべきですが、契約書がトラブルを解決するためのものである以上、最終的には裁判所でその意味内容を判断されることを想定しておく必要があります。

例えば、自社と相手方にしかわからない、オリジナルの用語や業界用語が多用されている契約書を多く見かけます。

しかし、そのような契約書は、いざ裁判になれば、裁判官がわかる一般的な言葉ではありません。

そのため、裁判になれば、契約書で使用されている用語の意味についても相手と争いが生じ、思わぬ主張を相手からされてしまう危険があることを認識しておく必要があります。

 

(4)記載事項が法律で決まっているケースがある

契約書の中には法律上記載するべき項目が決まっているケースもあります。

例えば、労働者派遣契約書については、労働者派遣法第26条により記載するべき項目が定められています。

 

▶参考情報:上記、労働者派遣契約書については以下を参考にご覧下さい。

平成27年9月労働者派遣法改正に対応した「労働者派遣契約書」の作り方【雛形付き】

 

また、期間1か月、金額5万円を超えるエステや語学教室の契約については、特定商取引法の特定継続的役務提供にあたるとされ、契約書面の記載事項が法律で決められています。

 

▶参考情報:上記、特定継続的役務提供については以下を参考にご覧下さい。

特定継続的役務提供と契約書について。企業側で必要な対応を解説。

 

このようなケースでは、法律で記載を義務付けられている項目をもれなく、かつ正しく記載することが契約書作成の大前提になります。

 

(5)関連する法律、判例をリサーチしておく

法律で記載事項が決まっていない契約書についても、契約に関連する法律や判例をリサーチしておかなければ、正しい契約書を作成することができません。

例えば以下のような点です。

 

1,売買契約書や請負契約書を作成する場合

・売買契約書を作成する際は、民法や商法に定められている売買に関するルールを最低限リサーチしておく必要があります。

・請負契約書を作成する際は、民法に定められている請負に関するルールをリサーチしておく必要があります。

 

▶参考情報1:民法の条文(外部サイト)

▶参考情報2:商法の条文(外部サイト)

 

・株式譲渡契約書を作成する際は、会社法128条1項で「株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。」とされていることを念頭におく必要があります。

 

▶参考情報3:会社法の条文(外部サイト)

 

・個人情報保護に関する契約書を作成する際は、個人情報保護法の内容を踏まえたものにする必要があります。

 

▶参考情報4:個人情報保護法の条文(外部サイト)

 

こういった法律や判例のリサーチが不十分になると、作成した契約書の内容が法律や判例と抵触してしまい、契約条項の無効を主張されるなど、トラブルの原因になります。

 

(6)ひな形は記載漏れのチェックに使う

インターネットやひな形集として公表されている契約書のひな形を、記載するべき契約条項が漏れていないかどうかのチェックをするためのチェックリストとして利用することは有益です。

いったん、自社でオリジナルの契約書を作った後、ひな形と見比べて、ひな形に盛り込まれている重要な契約条項が、自分の契約書に抜けているという場合は、補充を検討する必要があります。

ただし、ひな形にない、オリジナルの契約条項を入れることをためらうべきではありません。むしろ、オリジナルの契約条項をきっちり入れ、実際の取引内容にマッチした契約書を作ることが重要です。

したがって、ひな形にある契約条項がすべて記載できているからといってそれで安心というわけではない点に留意しておく必要があります。なお、ひな形に掲載されている契約条項例であっても、実際の取引内容に合致しないものは、絶対に入れるべきではありません。

特に、自社としても守ることができない内容を、ひな形に入っているからということで安易に契約書に入れると、後でその内容を守れずに、相手方から契約違反と言われてしまうことがありますので、十分注意してください。

 

以上、契約書作成方法について必ずおさえておくべき6つのポイントをご説明しました。

 

3,一般的な契約書の構成(記載事項)

一般的な契約書の構成

次に、一般的な契約書の構成についてご説明しておきたいと思います。

 

(1)表題(タイトル)

契約書には表題(タイトル)をつけます。

契約書のタイトルを例えば、「請負契約書」とするか、「委任契約書」とするか、といったことは、請負や委任についての法律上のルールをよく理解したうえで判断する必要があります。

また、例えば、「雇用契約書」とするのか、「業務委託契約書」とするのかといったことも、それぞれのルールをよく理解したうえで判断することが必要です。

 

(2)前文

契約書の表題の後に、前文を入れることが通常です。前文というのは、契約書の表題の後に記載する以下のような部分です。

 

▶参考記載例:

株式会社●●●以下「甲」という)と、株式会社●●●(以下「乙」という)とは、物品の売買に関し、以下のとおり契約する。

 

(3)契約条項

前文のあとに契約条項を入れていきます。

この部分は、契約書の内容によってそれぞれになりますが、前述のとおり、「権利と義務について書く」ということを意識して記載していく必要があります。

自社の権利、自社の義務、相手方の権利、相手方の義務を意識して漏れがないように記載することが重要です。

 

(4)損害賠償

契約当事者の損害賠償責任について定める契約条項です。

 

▶参考記載例:

第〇条(損害賠償)

甲または乙が、本契約に違反し、相手方に損害を与えたときには、違反した当事者は損害を被った相手方に対し、その損害を賠償するものとする。

 

(5)契約期間

契約の有効期間を定める契約条項です。

例えば以下のように記載します。

 

▶参考記載例:

第〇条(契約期間)

本契約の有効期間は、●年●月●日から●年●月●日までの満1年間とする。
ただし、期間満了の1カ月前までに、甲乙の双方から何ら申し出のないときは、本契約は期間満了の翌日から自動的に満1年間延長されるものとし、以後も同様とする。

 

(6)契約解除事由

契約の解除について定める条項です。

 

▶参考記載例:

第〇条(契約解除)

甲及び乙は、相手方が本契約のいずれかの条項に違反し、相当な期間を定めて催告しても是正されない場合には、相手方に対する書面による通知をもって本契約を解除することができる。

2 甲または乙は、相手方が次の各号の一つに該当したときは、催告なしにただちに、本契約の全部または一部を解除することができる。

①営業停止など、行政処分を受けたとき
②租税公課の延滞処分を受けたとき
③第三者から強制執行を受けたとき
④破産・民事再生または会社更生等の申立があったとき

3 前項にもとづいて本契約が解除されたときは、帰責事由の存する当事者は、相手方に対し、相手方が被った損害を賠償するものとする。

 

(7)反社会的勢力の排除(反社条項)

互いに反社会的勢力でないことを確認する契約条項です。

 

▶参考記載例:

第〇条(反社会的勢力の排除)

甲および乙は、それぞれ相手方に対し、次の事項を確約する。

①自らが、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係者、総会屋その他の反社会的勢力(以下、まとめて「反社会的勢力」という)ではないこと。
②自らの役員が反社会的勢力ではないこと。
③反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
④反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていない
こと。
⑤反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しないこと。
⑥この契約に関して、自らまたは第三者を利用して、次の行為をしないこと。

ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為

2 甲および乙は、相手方が次の各号の一に該当する場合、何らの催告を要さずに、本契約を解除することができる。

① 前項①から⑤までの確約のいずれかに反することが判明した場合
② 前項⑥の確約に反する行為をした場合

3 前項の規定により、本契約を解除した場合には、相手方に損害が生じても解除者は何らこれを賠償ないし補償することは要せず、また、かかる解除により解除者に損害が生じたときは、相手方はその損害を賠償するものとする。

 

(8)権利義務の譲渡禁止

契約から発生する権利あるいは義務を相手方の承諾なく、第三者に移転することを禁止する契約条項です。

 

▶参考記載例:

第〇条(契約上の地位の移転等の禁止)

甲及び乙は、本契約に基づく権利または義務の全部もしくはその一部を相手方当事者の事前の書面による承諾を得ずに、第三者に譲渡もしくは移転しまたは第三者のための担保に供する等一切の処分をしてはならない。

 

(9)合意管轄

「合意管轄」とは、契約相手との間でトラブルが発生し、裁判により解決しなければならない場合にそなえて、「どこの裁判所で裁判を行うか」を合意で決めておくことをいいます。

 

▶参考記載例:

第〇条(合意管轄)
甲および乙は、本契約に関して紛争が生じた場合には、大阪地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。

 

合意管轄条項の記載方法や交渉方法については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

(10)協議条項

契約書に記載のない事項などを話し合いで定めることを記載する契約条項です。

 

▶参考記載例:

第〇条(協議)
本契約に定めのない事項、本契約中疑義の生じた事項については、両当事者別途協議のうえ、これを決定する。

 

(11)後文

「以上、本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各記名押印のうえ、各1通を保有する。」などと記載します。

 

(12)日付欄と署名欄

最後に日付欄と署名欄を設けます。

通常は、自社と相手方の分の2つの署名欄を設けることになりますが、連帯保証人がいたり、3社契約だったりする場合は、3つの署名欄を設けることになります。

日付欄は、契約書の内容で自社と相手方が合意に至った日の日付を記載することが基本となります。

 

4,契約書作成の形式面

契約書の形式面についても解説しておきたいと思います。

 

(1)印紙

請負契約書や消費貸借契約書など、一部の契約書は印紙税の対象となり、印紙を貼る必要があります。

印紙税の対象となる契約書の一覧は以下をご参照ください。

 

 

なお、印紙を貼らなければならない契約書に、貼っていないことが税務調査等で指摘された場合は、過怠税の対象となります。本来の印紙税額の3倍を徴収されることになります。

 

 

(2)割印

重要な契約書には割印を押すことがあります。割印は、契約書が後で相手によって偽造されることを防ぐために、自社と相手方の契約書にまたがるように捺印します。

割印の具体的なイメージは以下をご参照ください。

 

▶参考情報:「割印」の参考イメージはこちら

割印の参考イメージ
すべての契約書に割印を押す必要はなく、特に重要な契約書には割印を押すという考え方で問題ありません。

 

(3)契印

契印は、契約書の用紙の一部が相手によって差し替えられるなどして偽造されることを防ぐために、捺印します。捺印の方法は主に以下の2つです。

 

  • ホッチキス止めされた契約書の場合は、全てのページの見開き部分に両ページにまたがるように捺印します。
  • 製本された契約書の場合は、製本テープと書類の紙の間にまたがるように捺印します。

 

 

契印についてもすべての契約書に契印を押す必要はなく、特に重要な契約書には契印を押すという考え方で問題ありません。

 

5,契約書はどちらが作成するべきか?(作成者)

契約書はどちらが作成するべきかについて、決まったルールはありません。

但し、以下の点をおさえておきましょう。

 

(1)自社商品や自社サービスの契約書は自社で用意するべき

自社商品や自社サービスについては、自社の商談の際に毎回必要になるものです。

そのため、自社でひな形を準備しておくことが必要です。

また、いったんひな形を作成した後も、自社商品、自社サービスを多くの取引先に提供する中で、当初は予想しなかったトラブルやリスクが顕在化してくることが通常です。

そういった後でわかったリスク要因についての対応もその都度、契約書に盛り込んでいき、契約書のひな形を磨きあげていくことが重要になります。

 

(2)重要な契約書の作成を相手にまかせない

自社商品や自社サービスに関する契約書でなくても、ビジネス上重要な契約をすることがあると思います。

その場合、重要な契約書の作成は相手にまかせず、自社側で作成することが基本です。

これは、契約書には、契約書を作成した側の意向が盛り込まれやすいという傾向があり、重要な契約書ほど、自社側で作成して自社の意向を反映させることが事業戦略上必要になるためです。

もちろん、自社で作った契約書をそのまま相手が承諾することは少なく、相手の要望による修正が入ることが常ではあります。

それでも、最初に作成した契約書案をベースに修正していくことになるため、作成した側の意向が反映されやすいということをおさえておいてください。

一方、ビジネス上の重要性が高くない契約書については、相手側に作成を求めて手間を省くといった対応をするのもよいでしょう。

 

6,【参考】各種契約書の雛形(テンプレート集)のダウンロードはこちら

契約書作成の際に参考になるひな形を以下にアップしていますで、ご参照ください。

 

(1)主な契約書のひな形一覧

秘密保持契約書のひな形(ダウンロード)

業務委託契約書のひな形(ダウンロード)

コンサルティング契約書のひな形(ダウンロード)

正社員の雇用契約書のひな形 (ダウンロード)

契約社員の雇用契約書のひな形(ダウンロード)

パート社員の雇用契約書のひな形(ダウンロード)

嘱託社員の雇用契約書のひな形(ダウンロード)

労働者派遣契約書のひな形(ダウンロード)

 

7,ジャンル別の契約書の作り方・書き方に関する参考情報

「咲くや企業法務.net」では、ジャンルごとの契約書作成方法についても解説しています。ジャンルごとの解説記事は以下をご参照いただきますようにお願いいたします。

 

(1)売買・請負関連の契約書の作成方法

 

1,「取引基本契約書」について

民法改正対応!製造業、流通業の取引基本契約書の作成方法について

 

2,「売買基本契約書」について

売買基本契約書の作成やリーガルチェックのポイントを解説

 

3,「売買契約書」について

売買契約書の作成やチェックのポイントを解説【商法第526条に注意!】

 

4,「工事請負契約書」について

工事請負契約書の作成ポイント!標準約款や雛形の安易な利用は危険!

 

5,「コンサルティング契約書」について

コンサルティング契約書の作り方を弁護士が解説【雛形ダウンロード付】

 

6,「業務委託契約書」について

業務委託契約書とは?作成方法や注意点を弁護士が解説【雛形テンプレート付き】

 

(2)IT・知財関連の契約書の作成方法

 

1,「ライセンス契約書」について

ライセンス契約とライセンス契約書について解説【安易なひな形利用は危険】

 

2,「レベニューシェア型開発契約書」について

レベニューシェア型の開発契約書のリーガルチェックで確認すべき4つのポイント!

 

3,「Webサイト制作請負契約書」について

Webサイト(ホームページ)制作の請負契約書の重要ポイント【制作費未払いトラブル対策】

 

4,「著作権譲渡契約書」について

著作権譲渡契約書の作成を弁護士が解説!安易な雛形利用は危険!

 

(3)労務関連の契約書の作成方法

 

1,「正社員の雇用契約書」について

雇用契約書とは?正社員用の書き方など作成方法を弁護士が解説【雛形テンプレート付】

 

2,「パート社員の雇用契約書」について

パート社員の雇用契約書における重要ポイントを解説【雛形付き】

 

3,「契約社員の雇用契約書」について

契約社員の雇用契約書における5つの重要ルールを解説【雛形ダウンロード付】

 

4,「再雇用契約書」について

【再雇用契約書の雛形あり】定年後再雇用や嘱託社員の労働条件の注意点

 

5,「労働者派遣契約書」について

【平成27年9月労働者派遣法改正対応】労働者派遣契約書の作り方【雛形付き】

 

6,「労働者派遣基本契約書」について

2015年派遣法改正を踏まえた「労働者派遣基本契約書」作成の注意点【雛形付き】

 

(4)その他契約書の作成方法

 

1,「代理店契約書」について

ソフトウェアやITサービスの「代理店契約書」のチェックすべき重要ポイント!

 

2,「フランチャイズ契約書」について

フランチャイズ(FC)契約書の作成の6つの重要ポイント!安易な雛形利用は危険

 

3,「株式譲渡契約書」について

株式譲渡契約書を解説!作成時の注意点やひな形利用の危険性について

 

4,「事業譲渡契約書」について

事業譲渡契約書作成の重要な注意点を解説!安易な雛形利用は危険

 

5,「秘密保持契約書」について

秘密保持契約書(NDA)とは?作成方法を弁護士が解説【雛形テンプレート付き】

 

6,「株主間契約書」について

株主間契約の重要ポイントとは?契約書の安易な雛形利用は危険!

 

8,契約書作成など契約書に関して弁護士など専門家に依頼する方法

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

ここまで自社で契約書を作成する方法についてご説明してきました。

契約書の作成の際には、「取引のリスク要因を洗い出してそれに対応する契約書を作ること」、「自社や相手方の権利や義務について明記すること」、「関連する法律や判例のリサーチを行ったうえで作ること」などが必要不可欠です。

このような準備が自社では難しい場合は、専門家に契約書の作成を依頼することをおすすめします。

 

(1)弁護士への依頼がおすすめ

契約書の作成は、弁護士に依頼することがベストです。

なぜなら前述の「取引のリスク要因を洗い出してそれに対応する契約書を作ること」は、日ごろ、企業から、取引のトラブルについて相談を受け、場合によっては裁判で解決している弁護士が最も精通しているからです。

また、契約書の効力などは最終的には裁判所で判断されます。その意味でも、裁判所の考え方に日ごろから精通している弁護士に依頼することが適切です。

さらに、「関連する法律や判例のリサーチを行ったうえで作る」という点についても、幅広い法律や判例に最も精通しているのは弁護士であるといえるでしょう。

 

(2)契約書関連に強い弁護士への依頼先について

筆者が所属する咲くやこの花法律事務所でも、企業からの依頼を受けて多くの契約書を作成してきた実績があります。

以下では、咲くやこの花法律事務所の契約書作成サービスについてご紹介致します。

 

 

咲くやこの花法律事務所では、企業の契約書作成に精通した弁護士がそろっており、豊富な経験をもとに、実際に現場で役に立つ契約書を作成します。

 

▶参考情報:弁護士紹介はこちら

 

ご相談方法は、来所によるご相談か、電話あるいはテレビ電話によるご相談を選択していただくことが可能です。

 

(3)契約書作成の費用

契約書作成の費用は、契約の複雑さや作成するべき契約書の分量によって異なってきます。

咲くやこの花法律事務所ではおおむね以下の費用をいただいています。

 

  • 契約書作成の費用の参考:10万円+税

 

※A4用紙で3枚程度までのものか、事務所で所有するひながたを利用できる契約書についての費用です。詳細は、お問い合わせ時に見積もりを致しますのでご連絡いただきますようにお願いいたします。

 

9,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

契約書作成に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。また、今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2023年4月13日

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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    著者:弁護士 西川 暢春
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    出版社:株式会社日本法令
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