無断欠勤の従業員への対応について
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無断欠勤の従業員への対応について

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  • 2012年11月20日

    従業員が無断欠勤を続け困惑しているというご相談を受けることがときどきあります。

     

    無断欠勤をする従業員に対してどのような対応をすればよいのでしょうか。

     事情にもよりますが、いまの時代、従業員が欠勤することを会社に連絡すらできないというシチュエーションはほとんど考えられません。

     会社に無断で欠勤するような不誠実な従業員には早く会社を去ってもらうことがベストであることが多いでしょう。

     

     

    判例上も無断出勤が7日以上続けば解雇できるのが原則です。

     

     ただし、従業員が精神的な病気を抱えていると思われるケースではそのような対応が不当解雇とされたケースもあります。

    今回は、会社が無断欠勤として従業員を解雇したことが不当解雇にあたるとされた、平成24年4月27日の最高裁の判決の事例についてお話したいと思います。

     

     

    この事件は、日本ヒューレッド・パッカードが無断欠勤を理由に従業員を解雇したのに対し、従業員が不当解雇であるとして会社を訴えた事件です。

     

    解雇に至った事情はおおまかにいうと次のようなものです。

     

     

    日本ヒューレッド・パッカードの従業員が、職場の同僚から嫌がらせを受けているなどとして、有給休暇を使って会社を休みだしました。

     

    会社としては、従業員の訴えを聴き、また他の従業員に対する聴き取りをおこなうなどして、従業員の言うような同僚からの嫌がらせがあったのかどうか、調査しましたが、嫌がらせの事実はないという結論に達しました。

     

    従業員の訴えの内容からも、嫌がらせの事実はなく、従業員がメンタル面での不調で被害妄想に陥っていることがうかがわれるケースでした。

     

    このような被害妄想はうつ病などの典型症状です。

     

     

    そして、欠勤が40日近くになった頃、会社が欠勤している従業員に対し出勤を命じるメールを送ったところ、この従業員は間もなく出勤するようになりましたが、会社は従業員が正当な理由なく40日以上も欠勤したことは無断欠勤にあたるとして、従業員を諭旨(ゆし)退職の懲戒処分としました。

     

    諭旨退職の懲戒処分というのは、労働者が退職願等を自主的に出して退職することを認める一方、所定期間内に退職願等を提出しなければ懲戒解雇するというもので、懲戒解雇より少し軽い懲戒処分です。

     

     

    この会社の就業規則には、次の規定がありました。

     「会社は、社員が、欠勤多くして不真面目なとき、及び正当な理由なしに無断欠勤引き続き14日以上に及ぶときには、懲戒処分にする。」

     

    会社は、この就業規則の規定に基づいて、長期間欠勤していた従業員を諭旨退職の懲戒処分としたのです。

     

    しかし、従業員が、諭旨退職の懲戒処分は無効であると主張して会社に対して裁判を起こしました。

     

     

    そして、裁判は最高裁判所まで争われ、最高裁判所は、従業員の主張どおり、諭旨解雇の懲戒処分は無効であると判断しました。

    最高裁が諭旨退職の懲戒処分を無効とした理由は、次のとおりです。

     

     

    1 従業員が同僚から嫌がらせを受けているといって会社に出勤してこないのは、被害妄想などの精神の不調があったためであると考えられる。

     2 会社としては、諭旨退職の懲戒処分とする前に、従業員に精神科医による健康診断をうけさせたうえで、精神の不調により仕事ができないという診断結果であれば休職を命じるなどの対策を講じるべきであった。

     3 このように健康診断を受けさせることも休職を命じることもなく、欠勤が長引いているだけで直ちに諭旨退職とした会社の処分は適切ではなく、無効である。

     

     

    この事件では、従業員は会社に「同僚から嫌がらせを受けている」と言っていただけで、「精神的にまいっている」、「うつ病かもしれない」などと言っていたわけではありません。

     

    しかしその場合でも、裁判所は、休職を命じることなく、無断欠勤と扱って解雇した会社の処分を無効としているのです。

     

    この判例から、従業員が長期にわたって欠勤している場合であっても、精神的な不調が影響していることが疑われる場合は、無断欠勤として対応するのではなく、休職を命じることが必要です。

    このことは、従業員自身が病気であることを否定する場合も同じです。

     

    精神的な不調で問題行動が出ている場合や欠勤が続く場合は、そのこと自体を問題にするのではなく、休職してもらって療養を促すことをまずしなければなりません。

     

    そして、就業規則で定めている休職期間が満了した時点で、従業員が精神科などに通院していれば従業員の主治医に、従業員が特に病院に通院などしていなければ、会社の顧問医に、従業員の復職の可否について意見を聴き、復職の可否を判断するのが正しい手順です。

     

    従業員の不調に配慮した思いやりのある誠実な対応が必要ですし、裁判所もこの点をみています。

    ▼ この記事を読んでいただいた方にお勧めの記事はこちらです。 ▼

    ○ 協調性のない従業員の解雇 https://kigyobengo.com/blog/2690

    ○ うつ病で復職見込みのない従業員を解雇する場合の注意点 https://kigyobengo.com/blog/labor/1390

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