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労災認定基準とは?わかりやすく徹底解説

労災認定基準についてわかりやすく解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

従業員から労災の申請があった場面で、本当に労災なのかどうか、会社として疑問があり、対応に困っていませんか?

どのような場合に労災にあたり、どのような場合は労災ではないのかの判断については、労災認定基準を確認する必要があります。

労災認定基準とは、国が労働者に対して労災としての給付をするかどうかを判断する際の基準をいいます。事故による負傷や死亡の労災では「業務遂行性」と「業務起因性」の2つを満たせば労災が認定されます。これに対し、精神障害や過労死の労災認定では、発症前概ね6か月以内の業務によるストレスを評価して判断する基準が採用されています。

会社としては、労災が認定されると、以下のような影響が及びます。

 

  • 従業員から損害賠償請求を受ける可能性がある
  • 労災が認定された従業員の解雇は、一定期間禁止される
  • 過労死や過労自殺については報道がされ、社会的非難を浴びることがある
  • 一部の業種では行政の入札に参加できなくなったり、行政処分をうけることがある

 

そのため、会社としては、労災が認定されそうなのかどうかについて、ある程度予測を付けたうえで、対応をあらかじめ検討しておくことも重要になります。

以下では、事故型の労災のほか、パワハラや長時間労働による精神疾患の労災、過労死等について、労災認定の基準をわかりやすく解説します。

それでは見ていきましょう。

 

最初に労災の認定基準をはじめとする労災(労働災害)に関する全般的な基礎知識について知りたい方は、以下の記事で網羅的に解説していますので、ご参照ください。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

労災については従業員から労災申請を受けた場合の企業としての対応、労働基準監督署からの調査への対応、従業員への補償の問題について、それぞれ正しい対応をしていくことが必要になります。

特に、初動段階での対応が重要になりますので、早い段階で労災に強い弁護士に相談することが円満解決のポイントです。

労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安などは、以下の記事で解説していますので参考にご覧ください。

 

▶参考情報:労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安

 

また、筆者が代表をつとめる咲くやこの花法律事務所でも、企業側の立場からのご相談を承っています。咲くやこの花法律事務所の労災トラブルに関する解決実績をご紹介しておりますのでご参照ください。

 

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▼労災の認定基準に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

 

1,事故による怪我や死亡の労災の認定基準

事故による怪我や死亡の労災の認定基準

事故による怪我や死亡については、まず、「業務遂行性」について判断し、そのうえで「業務起因性」の判断がされます。

この2つを満たせば労災が認定されます。

 

(1)業務遂行性の判断

「業務遂行性」とは、事故が業務中に起こったかどうかを判断するものです。

ただし、狭い意味での就業中に限らず、事業主の支配ないし管理下にある中で災害が起きた場合は、業務遂行性が認められます。

例えば以下の場合も「業務遂行性」が認められます。

 

  • 1,就業中でなくても、始業前、休憩中、終業後などに起きた社内での事故
  • 2,出張の際の移動中や宿泊場所での事故
  • 3,事業活動に密接に関連した歓送迎会、忘年会、運動会、社員旅行等

 

(2)業務起因性の判断

業務起因性とは、業務遂行性が肯定された場面で、その災害が、「事業主の支配ないし管理下にあることによる危険が現実化したものか」という点の判断です。

 

1,就業中の事故による災害の場合

通常は、業務起因性が認められますが、地震や落雷、業務とは無関係に通り魔に遭ったなどの場合は、業務起因性が認められないこともあります。

 

2,始業前、休憩中、終業後などに起きた社内での災害の場合

業務と関連する災害や、社内施設の不備などによる災害は、業務起因性が認められます。

一方、休憩中のスポーツでの負傷等は、通常は、事業主の支配ないし管理下にあることによる危険が現実化したとはいえず、業務起因性が認められません。

 

3,社外で就業中や出張中の災害

社外での就業や出張中の災害は、社内での就業よりも危険にさらされる範囲が広いという考え方から、広く業務起因性が認められています。

例えば、出張先の宿泊施設で酔って階段から転落したという事故について業務起因性が認められた例があります(福岡高等裁判所判決平成5年4月28日)。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

事故型の労災では、労働安全衛生法や労働安全衛生規則に違反したとして、刑事責任が問われるケースも存在します。
労働安全衛生法違反については、以下で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

▶参考情報:労働安全衛生法違反の刑事責任と必要な対応を事例をもとに解説!

 

2,パワハラや長時間労働による精神障害の労災認定基準

パワハラや長時間労働によりうつ病などの精神疾患になったとして、労災が申請されることもあります。

精神疾患について、労災が認定されるのは原則として以下の3つの要件をすべて満たす場合です。

 

  • 要件1:発症前おおむね6か月以内に業務による強いストレスを受けたこと
  • 要件2:うつ病やストレス反応など労災認定の対象となる精神疾患と診断されたこと
  • 要件3:業務外のストレスや個体側要因により発症したとはいえないこと

 

基本的な考え方として、パワハラや極端な長時間労働といった業務による強いストレスがあり、その後おおむね6か月以内にうつ病等の精神疾患を発症したときは、離婚や家族の死亡、精神疾患の既往歴など、業務以外の原因で精神疾患を発症させるような事情がない限り、労災が認定されます。

以下でこれらの詳細をご説明したいと思います。

 

(1)要件1:
発症前おおむね6か月以内に業務による強いストレスを受けたこと

精神疾患の労災認定では、発症前おおむね6か月以内に業務による強いストレス(心理的負荷)を受けたことが認定の条件とされています。

強いストレスを受けたかどうかは、「特別な出来事」とその他の「具体的出来事」にわけて、以下のように判断されます。

 

1,特別な出来事があった場合は、強いストレスと評価

以下の出来事は「特別な出来事」とされ、それだけで強いストレスと評価されます。

 

特別な出来事と判断される具体例

出来事の類型 具体例
自身の重大な業務上の傷病 生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、または永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした
業務上の重大事故 業務に関連し、他人を死亡させ、または生死にかかわる重大なケガを負わせた
業務に関連する性犯罪の被害 強姦(強制性交)や意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシャルハラスメントを受けた
極度の長時間労働 発病直前1か月に概ね160時間を超えるような時間外労働

 

2,その他の具体的出来事については、ストレスの程度を「強」「中」「弱」で評価し、総合評価

前述の「特別な出来事」がない場合は、発症前おおむね6か月以内の具体的な出来事を総合評価して、発症前おおむね6か月以内に業務による強いストレスを受けたか否かを判断します。

ストレスの程度が「強」と判断される具体例としては以下のものがあります。

 

ストレスの程度が「強」と判断される具体例

出来事の類型 具体例
事故や災害の体験 重度の病気やケガをした
仕事の失敗、過重な責任の発生等 業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした
会社の経営に影響するなど重大な仕事上のミスをし、事後対応にも当たった
役割・地位の変化 退職を強要された
パワーハラスメント 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた
対人関係 同僚等から、暴行またはひどいいじめ・嫌がらせを受けた

 

次に、ストレスの程度が「中 」と判断される具体例としては以下のものがあります。

「中」と判断される具体的な出来事が1つの場合は、通常は労災認定がされませんが、「中」と判断される具体的出来事が複数あり、総合評価としてストレスの程度が「強」と判断される場合は、労災認定の対象となります。

 

ストレスの程度が「中 」と判断される具体例

出来事の類型 具体例
事故や災害の体験 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした
仕事の失敗、過重な責任の発生等 会社で起きた事故、事件について責任を問われた
自分の関係する仕事で多額の損失等が生じた
業務に関連し、違法行為を強要された
達成困難なノルマが課された
ノルマが達成できなかった
新規事業の担当になった、会社の建て直しの担当になった
顧客や取引先から無理な注文を受けた
顧客や取引先からクレームを受けた
仕事の量・質 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった
1か月に80時間以上の時間外労働を行った
2週間(12日)以上にわたって連続勤務を行った
役割・地位の変化等 配置転換があった
転勤をした
複数名で担当していた業務を一人で担当するようになった
非正規社員であるとの理由等により、仕事上の差別、不利益取扱いを受けた
対人関係 上司とのトラブルがあった
同僚とのトラブルがあった
部下とのトラブルがあった
セクシュアルハラスメント セクシュアルハラスメントを受けた

 

発症前おおむね6か月以内の業務によるストレスをどのように評価していくかについての詳細は、厚生労働省の心理的負荷評価表を参照していただく必要があります。

以下に掲載されていますのでご参照ください。

 

 

3,長時間労働がある場合の基準

長時間労働による精神疾患の労災認定では、以下の場合は、労災認定の対象となる強いストレスと評価されます。

 

  • 発病直前1か月に概ね160時間を超えるような時間外労働がある場合
  • 発病直前2か月間に1月あたり概ね120時間以上の時間外労働がある場合
  • 発病直前3か月間に1月あたり概ね100時間以上の時間外労働がある場合
  • 具体的な出来事のストレスの強度が長時間労働の点を除いて「中」程度であり、その後に月100時間程度の恒常的な時間外労働があった場合
  • 月100時間程度の恒常的な時間外労働があり、その後、ストレスの強度が「中」程度の具体的な出来事があり、出来事後おおむね10日以内に発病した場合または事後対応に多大な労力を費やした後発病した場合
  • ストレスの強度が「弱」程度の具体的な出来事があり、その前後にそれぞれ月100時間程度の恒常的な時間外労働があった場合

 

(2)要件2:
うつ病やストレス反応など労災認定の対象となる精神疾患と診断されたこと

精神疾患の労災認定は、国際疾病分類において以下のいずれかに分類される疾病と診断された場合が対象です。

労災認定の対象となる典型的な病名は、うつ病、適応障害、急性ストレス反応等です。

 

分類コード:疾病の種類

  • F2 統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害
  • F3 気分〔感情〕障害
  • F4 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害
  • F5 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
  • F6 成人のパーソナリティおよび行動の障害
  • F7 精神遅滞〔知的障害〕
  • F8 心理的発達の障害
  • F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、特定不能の精神障害

 

(3)要件3:
業務外のストレスや個体側要因により発症したとはいえないこと

以下の場合は労災と認定されないことがあります。

 

  • 離婚や重い病気、家族の死亡や多額の財産の損失、天災や犯罪被害の体験等、業務とは無関係のストレスにより、精神疾患を発症したと判断される場合
  • 過去に精神疾患で通院歴があったり、アルコール依存などの問題があり、従業員側の要因によって、精神疾患を発症したと判断される場合

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

パワハラによる精神障害の労災認定については以下の記事でより詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

 

▶参考情報:パワハラで労災は認定される?会社の対応と精神疾患の認定基準を解説

 

3,脳・心臓疾患による過労死の認定基準

脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、重篤な心不全等について、労災が認定されるのは以下の3つのうちいずれかに該当する場合です。

 

(1)ケース1:
長期間の過重業務があった場合

具体的には以下の場合です。

 

  • 1,発症前1か月間に概ね100時間を超える時間外労働があった場合
  • 2,発症前2か月間、発症前3か月間、発症前4か月間、発症前5か月間、発症前6か月間のいずれかの期間を平均して1か月あたり概ね80時間を超える時間外労働があった場合
  • 3,上記に該当しなくても、上記に近い時間外労働があり、労働時間以外のストレス要因を考慮して、業務と発症との関連性が強いと評価できる場合

 

なお、「3」でいう労働時間以外のストレス要因としては、以下の点が考慮されます。

 

  • 拘束時間の長い勤務
  • 休日のない連続勤務
  • 勤務間インターバルが短い勤務(終業から次の始業までの間隔が概ね11時間未満の勤務)
  • 不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
  • 出張など社外における移動を伴う業務の有無
  • 心理的負荷または身体的負荷を伴う業務の有無
  • 温度や騒音などの作業環境等

 

(2)ケース2:
短期間の過重業務があった場合

具体的には以下の場合です。

 

  • 1,発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働があった場合
  • 2,発症前概ね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働があった場合
  • 3,上記に該当しなくても、上記に近い時間外労働があり、労働時間以外のストレス要因を考慮して、業務と発症との関連性が強いと評価できる場合

 

なお、「1」「2」に該当する場合でも、手待ち時間が長いなど特に労働密度が低い場合は、労災認定の対象外とされています。

 

(3)ケース3:
発症直前に異常な出来事があった場合

具体的には以下の場合です。

 

1,発症日またはその前日に極度の緊張、興奮、恐怖、驚愕等の強度の精神的負荷を引き起こす事態があった場合

 

▶参考例

  • 業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合
  • 事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合
  • 生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合

 

2,発症日またはその前日に急激で著しい身体的負荷を強いられる事態があった場合

 

▶参考例

  • 著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行等を行った場合

 

3,発症日またはその前日に急激で著しい作業環境の変化があった場合

 

▶参考例

  • 著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業環境下での作業を行った場合
  • 温度差のある場所への頻回な出入りを行 った場合

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

脳・心臓疾患の労災認定基準について、より詳細は以下でご確認いただけますのでご参照ください。

 

▶根拠情報:厚生労働省 「脳・心臓疾患の労災補償について」

 

4,腰痛の労災認定基準

腰痛の労災認定は、仕事中の突発的な出来事により起こる「災害性の原因による腰痛」と、日々の業務による腰部への負荷の蓄積により起こる「災害性の原因によらない腰痛」にわけて判断されます。

詳細は以下の通りです。

 

(1)仕事中の突発的な出来事により起こる災害性の腰痛の場合

重量物の運搬中に転倒した場合や、持ち上げる重量物が予想に反して重かった場合などに、突発的で急激な強い力が腰にかかったことにより生じた腰痛については、以下の2つの要件を両方満たす場合に、労災が認定されます。

 

  • 要件1:原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
  • 要件2:腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

いわゆる「ぎっくり腰」は、日常的な動作により生じるものであることから、「要件1:原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること」にいう「仕事中の突発的な出来事」にあたらず、通常は労災認定されません。

 

(2)日々の業務による腰部への負荷の蓄積により起こる腰痛の場合

上記のような突発的で急激な強い力が腰にかかる出来事がなかった場合の腰痛の労災については、以下の「1」または「2」のいずれかに該当する場合に労災認定の対象となります。

 

1,筋肉等の疲労を原因とした腰痛

約3か月以上にわたり、次のような業務に従事したことにより、腰痛が発生したときは、労災認定の対象となります。

 

  • 約20キログラム以上の重量物または重量の異なる物品を繰り返し中腰の姿勢で取り扱う業務
  • 毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務
  • 長時間立ち上がることができず、同一の姿勢を持続して行う業務
  • 腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務

 

2,骨の変化を原因とした腰痛

約10年以上にわたり、継続して重量物を取り扱う以下のような業務に従事したことにより、骨の変化を原因として腰痛が発生したときは、労災認定の対象となります。

 

  • 約30キログラム以上の重量物を、労働時間の3分の1程度以上に及んで取り扱う業務
  • 約20キログラム以上の重量物を、労働時間の半分程度以上及んで取り扱う業務

 

ただし、腰痛は、業務とは無関係に加齢により生じることも多いです。

そのため、骨の変化を原因とした腰痛が労災認定の対象となるのは、通常の加齢による骨の変化を明らかに超える場合に限られます。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

腰痛やぎっくり腰における労災の認定基準については、以下の参考記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

▶参考記事:ぎっくり腰は労災にならない?仕事で発症した腰痛の労災認定について

 

5,障害等級の認定基準

業務災害によって後遺障害が残ったときは、障害補償給付が労災から給付されます。

障害補償給付は、後遺障害を最も重い障害等級である1級から最も軽い後遺障害等級である14級までに区分したうえで、その等級に応じて支給されます。

労災における後遺障害については、以下の記事で等級認定や1級から14級までの障害等級の内容、金額、具体的な手続きについて解説していますのでご参照ください。

 

 

これらの障害等級について、厚生労働省が障害等級の認定基準を定めています。

例えば、肩腱板損傷の労災であれば、概要は以下のとおりです。

 

(1)肩腱板損傷の障害等級の認定基準

肩の腱板損傷については、「痛み」、「可動域制限」について後遺障害の等級が認定されます。

 

1,肩の痛みについて

肩の痛みについては、12級12号あるいは14級9号が認定されます。

 

  • MRIなどの画像により痛みの原因が確認できる場合:12級12号
  • MRIなどの画像により痛みの原因が確認できない場合:14級9号

 

2,肩の可動域制限について

肩腱板損傷により、肩関節の動く範囲が狭くなった場合は、以下の基準により8級6号、10級9号あるいは12級6号が認定されます。

 

  • 他人に支えてもらうと動かすことができるものの、自力ではほとんど腕を持ち上げられない場合:8級6号
  • 怪我をしていない側の肩と比較して、肩の動く範囲が1/2以下となった場合:10級9号
  • 怪我をしていない側の肩と比較して、肩の動く範囲が3/4以下となった場合:12級6号

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

障害等級の認定基準についての詳細の一部は以下で確認することが可能です。

 

▶参考情報:厚生労働省「障害等級の認定基準」

 

上記に掲載されていない障害等級の認定基準は、以下の書籍を参照することが必要です。

 

▶参考情報:政府刊行物「労災補償 障害認定必携 第17版」

 

6,新型コロナウイルス感染症についての労災認定基準

新型コロナウイルス感染症に関する労災認定については、以下のように業務の内容によって異なる基準が採用されています。

 

(1)医療従事者等

患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災認定がされます。

 

(2)医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの

感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災認定がされます。

 

(3)医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されないもの

感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が 感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断するとされています。

 

  • (ア)2人以上の感染者が確認された労働環境下での業務
  • (イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務(小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等)

 

また、判断は、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて行うとされています。

新型コロナウィルス感染症に関する労災認定については、以下もご参照ください。

 

 

7,労災認定基準の改正、見直しについて

労災認定基準は、法改正や、最新の医学的な知見にあわせて、改正、見直しが加えられることあります。

最近あった改正としては以下のものがあります。

 

(1)精神障害の労災認定基準にパワハラに関する項目が追加

令和2年6月にパワハラ防止法と呼ばれる労働施策総合推進法が改正されたのにあわせて、厚生労働省の心理的負荷評価表に「パワーハラスメント」が考慮すべき負荷要因(ストレス要因)として追加されました。

これまでは、心理的負荷評価表において、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」という項目があり、パワーハラスメントはこの項目において評価されてきましたが、法改正をきっかけに独立の項目とされています。

改正内容に関するより詳しい説明は以下をご参照ください。

 

 

(2)過労死基準の改正で労働時間以外の負荷要因の考慮が明確にされた

脳・心臓疾患による過労死の認定基準については、令和3年9月15日に以下の改正が行われています。

 

  • (1)長時間の過重労働の評価にあたり、労働時間と労働時間以外の負荷要因(ストレス要因)を総合評価することが明確化されました。
  • (2)労働時間以外の負荷要因(ストレス要因)の内容として、休日のない連続勤務や勤務間インターバルが短い勤務、事業場外における移動を伴う業務、心理的負荷・精神的負荷を伴う業務が追加されました。
  • (3)短期間の過重業務、発症直前の異常な出来事による脳・心臓疾患の認定基準が明確化されました。
  • (4)対象疾患に「重篤な心不全」が追加されました。

 

過労死基準の改正については、以下のウェブサイトの「関連通達」をご参照ください。

 

 

本記事ではこれらの改正を反映した解説をしています。今後も、労災認定基準の改正に注意する必要があります。

 

8,労災の認定基準に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

ここまで事故型の労災、パワハラや長時間労働による精神疾患の労災、過労死、腰痛などの場面での労災認定基準についてご説明しました。

このうち、精神疾患や過労死、腰痛等は、業務が原因かどうかが明確ではないことが多く、会社としての対応に困ることもあると思います。

従業員やその遺族から労災申請があった場合は、労災認定基準を満たすかどうかについて、労働基準監督署による調査が行われます。

しかし、その前に、会社として適切な調査を行い、その調査結果をもとに、労働基準監督署に対して自社の見解を伝えていくことが重要になります。

この点がしっかりできていないと、労働基準監督署による調査に会社の見解が反映されません。その結果、従業員の精神疾患や死亡、腰痛等が本来は業務とは無関係であるにもかかわらず、不合理な労災認定がされる危険があります。

筆者が代表を務める弁護士法人咲くやこの花法律事務所でも、労災事故が起きた場面や、従業員から労災申請があった場合の企業側の対応について、企業の担当者の方から以下のようなご相談を承っております。

 

  • 労災かどうかの事実関係調査についてのご相談
  • 会社の立場で見解を労働基準監督署に伝える意見申出書面提出のご相談
  • 労働基準監督署に提出する使用者報告書の作成や提出資料の準備についてのご相談
  • 労働基準監督署からの聞き取り調査への対応のご相談
  • 労災認定後の従業員との交渉のご相談

 

ご相談が遅れてしまうとできる対応が限られてしまいますので、ご不安がある場合は早めのご相談をおすすめします。

 

咲くやこの花法律事務所の労務トラブルに強い弁護士へのご相談費用

  • 初回相談料 30分5000円+税
  • 弁護士名義での意見申出書面提出 15万円+税~

 

9,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

労災の認定基準に関する相談などは、下記から気軽にお問い合わせください。今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

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11,【関連情報】労災に関するお役立ち情報

この記事では、「労災認定基準について」わかりやすく解説いたしました。労災に関しては、その他にも知っておくべき情報が多数あり、正しく知識を理解しておかねければ対応方法を誤ってしまいます。

そのため、以下ではこの記事に関連する労災のお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。

 

労災事故とは?業務中・通勤中の事例を交えてわかりやすく解説

労災認定されると会社はどうなる?会社側弁護士が解説

労災の申請の方法とは?手続きの流れについてわかりやすく解説

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注)咲くやこの花法律事務所のウェブ記事が他にコピーして転載されるケースが散見され、定期的にチェックを行っております。咲くやこの花法律事務所に著作権がありますので、コピーは控えていただきますようにお願い致します。

 

記事更新日:2023年5月23日
記事作成者弁護士:西川暢春

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    企業法務に強い弁護士紹介

    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
    池内 康裕 弁護士
    池内 康裕(いけうち やすひろ)
    大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
    片山 琢也 弁護士
    片山 琢也(かたやま たくや)
    大阪弁護士会/京都大学法学部
    堀野 健一 弁護士
    堀野 健一(ほりの けんいち)
    大阪弁護士会/大阪大学
    所属弁護士のご紹介

    書籍出版情報


    労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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