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怪我が労災になる場合とは?知っておくべきことの解説まとめ

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  • 怪我が労災になる場合とは?知っておくべきことの解説まとめ
    • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    • この記事を書いた弁護士

      西川 暢春(にしかわ のぶはる)

      咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
    • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

    こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

    従業員が労災によって怪我を負ってしまった場合、企業としてはどう対応するのが正しいのでしょうか?

    従業員が仕事中や通勤中に怪我をしてしまい、労災の申請手続きをするのが難しいような場合、企業はそれを助力する義務があります(労災保険法施行規則23条1項)。そのため、企業は労災の手続きについてよく理解しておき、いざ実際に労災が発生した際は素早く適切に対応することが重要です。

    また、労災については労災保険による補償とは別に、企業が従業員に対し、補償や損害賠償の責任を負う場面があります。企業として適切な対応をすることで紛争化することを避ける必要がある一方で、従業員が過大な請求をする場面では適切に反論していくことも必要になります。

    この記事では、労災による怪我の認定基準について触れた後、企業側の対応のポイントについてもご説明いたします。

    この記事を読めば、労災による怪我の発生時に、企業側がどのように対応すれば良いかが分かるはずです。

     

    最初に労災(労働災害)に関する全般的な基礎知識について知りたい方は、以下の記事で網羅的に解説していますので、ご参照ください。

     

     

    「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

    労災事故による怪我が発生した場面では、補償や労災の申請手続をめぐって、労使間のトラブルになりやすい場面です。トラブル防止のためには、できるだけ早い段階で、正しい対応方法を弁護士に確認することが重要になります。

    従業員や労基署に対して誤った対応をしてしまい、問題がこじれたり、訴訟等に発展してしまう前に、早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

    労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安などは、以下の記事で解説していますので参考にご覧ください。

     

    ▶参考情報:労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安

     

    筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所でも労災について、これに精通した弁護士が、企業側の立場でご相談を承っていますのでお問い合わせください。

     

    以下で労災による怪我をめぐるトラブルについての、咲くやこの花法律事務所の解決実績の1つを紹介しておりますのであわせて御覧ください。

     

    ▶参考情報:労災事故の後遺障害の認定結果を覆し、請求約1930万円を1/7以下に減額した解決事例

     

    ▼怪我による労災に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

    【お問い合わせについて】

    ※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

    「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

     

     

    1,怪我についての労災の認定基準

    最初に、どのような場合に、怪我が労災として認定されるかをご説明します。

    災害による怪我が、労災に該当するか否かの認定基準については、「業務遂行性」と「業務起因性」の二つの要素を考慮して判断されます。

     

    (1)業務遂行性の判断

    業務遂行性が認められるのは、以下の3つの場合です。

     

    • 1.事業主の支配・管理下で業務に従事していたときに発生した怪我
    • 2.事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していないときに発生した怪我
    • 3.事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事していたときに発生した怪我

     

    つまり、例えば以下のような場合であっても、上記の「2」または「3」に該当し、業務遂行性が認められます。

     

    • 1.就業中でなくても、始業前、休憩中、終業後などに起きた社内での事故
    • 2.出張の際の移動中や宿泊場所での事故
    • 3.事業活動に密接に関連した歓送迎会、忘年会、運動会、社員旅行等

     

    (2)業務起因性の判断

    次に、業務起因性とは、「災害による怪我や病気が業務に起因している」か否かを指し、その災害と業務との因果関係の有無を判断するものです。

    業務遂行性が認められている場合であっても、業務起因性が否定されるケースがあります。例えば以下のような場合です。

     

    1,事業主の支配・管理下で業務に従事している場合でも業務起因性が否定される例

    社内で就業中であっても、本人がわざと事故を起こしたり、私的な恨みによって第三者に危害を加えられた場合については、業務に関係があるとはいえず、業務起因性は認められません。

     

    2,事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合について業務起因性が否定される例

    休憩時間中に、社内でキャッチボールをして怪我をしたといった場合は、業務起因性は否定されます。ただし、その怪我が社内の設備が原因であった場合は、業務起因性が認められます。

     

    3,事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合について業務起因性が否定される例

    出張先で飲みに行き、その店内や経路上で起こった事故については、業務起因性は認められず、労災とはなりません。一方で、出張先のホテルでの待機時間に起こった事故については、業務起因性が認められ、労災となる可能性があります。

    怪我についての労災の認定基準については、以下の記事で詳しくご説明していますので、ご参照ください。

     

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

    企業側に落ち度や不備があったことは労災の認定の要件ではありません。企業側に全く落ち度がない場合であっても業務遂行性と業務起因性が認められれば、労災として認定されます。

    例えば、出張先の宿泊施設で酔って階段から転落したという事故についても労災と判断されています(福岡高等裁判所判決平成5年4月28日)。

     

    2,従業員が昼休み時間中に怪我をした場合は労災となるのか?

    では、従業員が昼休み中に怪我をした場合は、労災に該当するのでしょうか。

    休憩中の行為は原則として、私的行為と判断され、業務ではないため、休憩中の事故による怪我は労災とはなりません。

    例えば、以下のような場合です。

     

    • 昼休み中に同僚とキャッチボールをしていたところ、ボールが顔にあたり怪我をした
    • 昼休みに食事のために外出したところ、交通事故に遭った

     

    しかし、会社の設備が原因で怪我をした場合には労災に該当する可能性があります。
    例えば、以下のような場合です。

     

    • 昼休み中にトイレに行く途中、階段から転がり落ちて腰を強打した
    • 休憩中に業務用の車両で寝ていたところ、他の車両がぶつかってきて怪我をした
    • 工事現場の足場の上で休憩していたところ、足場から落ちてしまった
    • 昼休みに社内の食堂で食事したところ食中毒になった

     

    このように、休憩中の行為であっても、会社の設備が原因で怪我をした場合等は、労災となります。

     

    3,ちょっとした怪我でも労災となるのか?

    ちょっとした怪我でも労災となるのか?

    労災と聞くと、工場などでの巻き込まれ事故や、現場における足場から落下事故などの、大きい怪我を最初にイメージする方が多いのではないでしょうか。

    しかし、大きな怪我だけが労災となるのではありません。

    怪我の程度が軽く、休業するほどでないようなちょっとした怪我の場合でも、労災の認定基準を満たしている場合は労災保険が適用されます。

    例えば、仕事中にカッターを使用しているときに、誤って指を切ってしまった場合はどうでしょうか。

    この場合、怪我はちょっとした軽いものですが、労災となります。

    そのため、この怪我で病院に行った場合は、治療費は労災保険で支払われることになります。

    また、会社に通勤する途中、滑って転んでしまい腰を打ったため、念のため病院へ行く、といったような場合でも、通勤災害として労災に該当すると考えられるので、労災保険を使用することが適切です。

    ここで注意が必要なのが、ちょっとした軽い怪我だからといって、健康保険を利用することはできない、という点です。

    軽い怪我のため、労災の申請を躊躇して、つい健康保険を使ってしまいそうになりますが、健康保険は労災による怪我には適用されないため、その点に注意が必要です。

    労災保険を利用しない場合であっても、健康保険が利用できるわけではありませんので、治療費は3割負担とはならず、全額自己負担となってしまいます。

    労災保険についての全般的な知識については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

     

     

    4,従業員が労災で怪我をした際の企業側の手続き

    では、実際に従業員が労災によって怪我をしてしまった場合、企業はどのような対応を求められるのでしょうか。

    企業側の手続きについて解説していきます。

     

    (1)労災発生時における企業の報告義務について

    従業員が業務に起因して怪我を負い、休業した場合、企業は労働基準監督署長に「労働者死傷病報告書」を提出することが法律で義務付けられています(労働安全衛生規則97条)。

     

     

    この報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合は、労災かくしであるとして、罰金刑を科されることがあります。

    特に従業員が怪我により4日以上休業した場合や、従業員が亡くなった場合の労働者死傷病報告書は「遅滞なく」提出することが求められており、遅くとも1か月以内に提出すべきです。

    労災発生時の企業の報告義務については、以下の記事や動画で詳しく解説しておりますので、ご参照ください。

     

     

    ▶参考動画:労災が発生した場合の企業の報告義務のまとめ【前編】

     

    なお、通勤中の事故によるけがは、報告義務の対象外です。

     

    (2)労災保険からの補償について

    労災にあたる場合は、従業員は労災保険から補償を受けることができます。

    怪我についての労災の補償の主なものとして、以下の3つがあります。

     

    • 1.治療費関連の補償である「療養補償給付」
    • 2.休業した場合の補償である「休業補償給付」
    • 3.後遺障害が残った場合の補償である「障害補償給付」

     

    怪我をした後の治療期間中は、「療養補償給付」と「休業補償給付」を請求し、ひととおりの治療が済んだ後で後遺障害が残る場合には「障害補償給付」を請求するというのが通常の手続きの流れになります。

    労災保険からの補償については以下の記事で解説していますのでご参照ください。

     

     

    (3)労災申請の手続きについて

    労災保険に補償を請求する場合は、被災した従業員が管轄の労働基準監督署長に請求書を提出して行うことが原則です。

    ただし、法律上、会社は、被災した従業員が自分で労災の申請手続きをすることが難しい場合、適切に手続きを行うことができるように手助けすることが義務付けられています(助力義務。労災保険法施行規則23条1項)。

    そのため、会社としても労災の申請について正しく理解しておく必要があります。

    労災申請の大まかな手続きの流れは以下の通りです。

     

    • 1.厚生労働省のウェブサイトから労災保険給付の請求書をダウンロードする。
    • 2.請求書を作成して管轄の労働基準監督署長に提出する。会社を通じて提出することも、被災者が直接提出することも可能。
    • 3.労働基準監督署長により調査が行われ、労災認定されると保険給付を受けることができる。不支給決定が出た場合は、不服があれば審査請求をすることができる。

     

    労災申請の手続きや必要書類については、以下の記事をご参照ください。

     

     

    5,労災から支給される金額

    労災から支給される金額

    労災により怪我をした場合に、労災から支給される金額については概ね以下の通りです。

     

    (1)療養補償給付

    治療費のほか、薬代、病院までの通院交通費などが支給されます。

     

    (2)休業補償給付

    休業3日目以降、休業特別支給金とあわせて、おおむね給与の8割相当の額が支給されます。

     

    (3)障害補償給付

    症状固定後に後遺障害の等級の認定を受けた場合、その後遺障害等級に応じた額が支給されます。

     

    労災保険からの支給金額について詳しくは以下をご参照ください。

     

     

    6,バイト社員やパート社員が怪我をした場合

    労災保険は雇用形態に関係なく、全ての労働者に適用されます。そのため、正社員だけでなく、バイト社員やパート社員が怪我をした場合であっても、労災保険が適用されます。

    バイト社員やパート社員が怪我をした時も、療養補償給付により、労災保険の費用で治療をすることができますし、怪我により休業した場合は、労災保険から休業補償給付が支給されることになります。また、後遺障害が残ったときは、労災保険から障害補償給付が支給されます。

     

    7,下請業者の従業員が怪我をした場合

    下請業者の従業員が怪我をした場合、下請業者の労災保険の適用を受けて補償を受けることが原則です。

    ただし、例外として、建設業においては以下の通り扱われます。

     

    (1)建設工事現場で勤務する労働者の怪我の扱い

    建設工事現場で勤務する労働者については、元請業者が加入する工事現場の労災保険の適用を受けます。これを、「現場労災」と呼びます。

    ただし、この場合も、労災発生時に必要となる、労働者死傷病報告は下請業者が労働基準監督署長に行う義務がありますので注意してください。

    元請業者に迷惑をかけることを恐れて、下請業者が工事現場での怪我を自社での怪我と偽って報告する例もありますが、これは労災隠しとして刑事罰の対象となりますので、絶対にすべきではありません(労働安全衛生法第120条)。

    労災隠しについて罰則の内容などは、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて確認しておきましょう。

     

     

    (2)工事現場以外の事務所や作業場で起きた怪我の扱い

    建設業の下請業者の従業員であっても、工事現場以外の事務所や作業場で起きた怪我については、下請業者の労災保険が適用されます。

     

    (3)下請の事業主や一人親方が怪我をした場合

    下請の事業主や一人親方が怪我をした場合は、通常、一人親方や中小企業の事業主は労働者には該当しないため、労働者の保護を目的とした労災保険は適用外となります。

    ただし、一人親方や事業主が、特別に任意の労災に加入していた場合は、労災事故発生時に怪我について労災保険からの補償をうけることができます。これを「特別加入制度」と言います。

    中小企業の事業主および一人親方の特別加入制度についての詳しい情報は、以下の厚生労働省のパンフレットをご参照ください。

     

     

    8,通勤中の怪我の場合

    では、業務中ではなく、通勤中に怪我をした場合はどうでしょうか?

    以下でご説明していきたいと思います。

     

    (1)通勤中の怪我についての労災からの補償内容

    通勤災害とは、「通勤によって労働者が被った傷病等」のことを言います。通勤中の交通事故による怪我が典型例です。

    通勤中の怪我は、通勤災害として労災保険による補償の対象となります。

    通勤災害については、業務災害とは給付の名称が異なり、給付の主なものとして、以下の3つがあります。

     

    • 1.治療費関連の補償である「療養給付」
    • 2.休業した場合の補償である「休業給付」
    • 3.後遺障害が残った場合の補償である「障害給付」

     

    怪我をした後の治療期間中は、「療養給付」と「休業給付」を請求し、ひととおりの治療が済んだ後で後遺障害が残る場合には「障害給付」を請求するというのが通常の流れになります。

    このように通勤災害については、業務災害とは給付の名称が異なりますが、給付の内容は業務災害の場合と同じです。

     

    (2)通勤中にあたるかどうかの判断基準

    通勤災害にいう通勤とは、就業に関し、以下のいずれかを合理的な経路及び方法で行うことを指します。

     

    • 1.住居と就業の場所との間の往復
    • 2.就業の場所から他の就業の場所への移動
    • 3.単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

     

    通勤中に本来の経路からそれた場合などは、以下の「逸脱・中断」の問題になります。

     

    ア:逸脱・中断について

    逸脱とは、「通勤の途中で就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれること」を言います。また、中断とは、「通勤の経路上で通勤と関係のない行為を行うこと」です。

    通勤において、逸脱あるいは中断があった場合は、逸脱・中断中だけでなく、逸脱・中断の後の経路についても通勤とは認められず、通勤災害としての補償を受けることができません。

    例えば、会社終わりに飲みに行ったり、パチンコに寄ったりした場合は、経路を逸脱した時点で通勤ではなくなります。

     

    ▶参考:通勤経路を逸脱・中断した場合の例

    通勤経路を逸脱・中断した場合の例

     

    イ:逸脱・中断に関する例外的な取扱い

    ただし、例外として、以下の場合は、日常生活上必要な行為であるとして、逸脱・中断から本来の通勤の経路に戻った後は、通勤にあたるとして、通勤災害の補償対象とされています(労働者災害補償保険法第7条3項)。

     

    • 1.日用品の購入その他これに準ずる行為
    • 2.職業訓練、学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
    • 3.選挙権の行使その他これに準ずる行為
    • 4.病院または診療所において診察又は治療を受けること、その他これに準ずる行為
    • 5.要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的にまたは反復して行われるものに限る)

     

     

    例えば、通勤中にドラッグストアに立ち寄ってシャンプーを購入したり、公衆トイレに入る、などの行為は上記に該当すると考えられます。その場合、これらの行為後、再び合理的な経路に戻った時点から通勤とみなされます。

     

    ▶参考:逸脱・中断の例外的な取扱いになる例

    逸脱・中断の例外的な取扱いになる例

     

    通勤災害の制度については、以下の厚生労働省ホームページもご参照ください。

     

     

    9,仕事中の怪我に労災を使わないことは可能か?

    労災による怪我について、労働者が労災保険を使用しなければならないという規定はなく、労災保険を使わないことは可能です。

    ただし、以下の点に注意する必要があります。

     

    (1)治療費は労働者の全額自己負担となる

    労災による怪我に健康保険を使うことはできません(健康保険法第55条1項)。

    そのため、労災保険を使わないとなると、治療費は、後遺障害が残ってしまった場合も含めて、全て労働者の自己負担となります。

     

     

    (2)従業員から損害賠償請求を受けた場合の会社の賠償額が多額になる

    業務による怪我については、会社が従業員に対して安全配慮義務違反を理由とする損害賠償責任を負うことも多いです。

    その場合も、労災による給付を受けている場合、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付等は会社が負担する損害賠償責任から差し引かれます。

    しかし、労災による給付を受けていない場合は、これらが差し引かれず、結果として会社が負担する賠償額が多額になることになります。

     

    (3)労災保険を使わない場合でも、企業は労働基準監督署へ報告する必要がある

    前述の通り、労災保険を使わない場合でも、従業員が業務に起因して怪我を負い、休業した場合、企業は労働基準監督署長に「労働者死傷病報告書」を提出することが法律で義務付けられていますので注意してください(労働安全衛生規則97条)。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

    労災保険に給付を請求するかどうかは、従業員の判断になりますので使わないことも可能です。

    しかし、その場合の注意点は上記の通りですので、業務による怪我で労災保険を利用しないことのメリットは、手続的な面倒を避けることができるというほかは、ほぼ皆無といえます。

     

    10,従業員から慰謝料を請求された場合の企業の対応

    業務による怪我について、企業側の安全配慮義務違反が認められる場合は、被災した労働者から慰謝料その他の損害賠償を請求されることがあります。

    労災保険では、治療費等は支給されますが、慰謝料は支払われません。そのため、企業が慰謝料を支払わなければなりません。

    ここで注意が必要な点は以下の3点です。

     

    (1)労災認定がされた場合にただちに慰謝料の支払義務が生じるわけではない

    一般論としては、業務中のけがであれば、企業に何らかの責任が認められることが多く、慰謝料の支払義務が生じることが通常です。

    しかし、労災の認定は企業に安全配慮義務違反がなくてもされますので、労災認定がされた場合にただちに慰謝料の支払義務が生じるわけではありません。

    過去の裁判例でも、以下のようなものがあります。

     

    • 業務中の怪我ではあるが、従業員の落ち度が大きいなどの事情から、企業に予見可能性がないとして、安全配慮義務違反にあたらないとされた事案
    • 業務中の怪我ではあるが従業員が補償を得るために故意にけがをしたことがうかがわれ、安全配慮義務違反にあたらないとされた事案
    • 労災認定はされているものの、従業員が主張するような経緯で怪我をしたか疑わしく、企業の安全配慮義務違反が認められないとされた事案

     

    従業員の落ち度が大きい事故で企業として予見ができなかったような場合や、従業員が主張する怪我の状況に疑問がある場合は、その点を企業側から主張して、企業に安全配慮義務違反がなく、賠償責任を負わない旨の主張をすることを検討するべきでしょう。

    安全配慮義務違反については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

     

     

    (2)安全配慮義務違反がない場合も休業の最初の3日間は会社負担による補償が必要

    上記とは別に注意が必要なこととして、従業員が怪我により休業した場合、その従業員の平均賃金の6割相当の額についての休業補償を会社負担で行うことが必要です(労働基準法第76条1項)。

    これについては、企業の安全配慮義務違反がなくても補償が法律上の義務とされています(但し、怪我が従業員の重大な過失によるものであるとして労働基準監督署長の認定を受けた場合を除きます。労働基準法第78条)。

    現実には、休業4日目以降は、労災保険による休業補償給付として、その従業員の平均賃金の6割相当の額が支給されますので、従業員が労災保険からの給付を受ける場合は、上記の補償義務は発生しません(労働基準法84条1項)。

    しかし、休業の最初の3日間は待期期間と呼ばれ、労災保険による休業補償給付は支給されませんので、この期間については、企業の負担でその従業員の平均賃金の6割相当の額を補償する必要があります。

    休業補償の会社負担分については、以下の記事で解説していますのでご参照ください。

     

     

    (3)業務による怪我を理由とする損害賠償請求については過失相殺の主張が可能

    業務による怪我について、企業が損害賠償責任を負う場合も、怪我が従業員の過失にも起因しているときは、それを踏まえて賠償額を減額すべきことを主張することが可能です。

    これを過失相殺といいます(民法第418条)。

    また、業務によるけがをした従業員が、休業が必要な期間や後遺障害の程度を誇張して過大な損害賠償請求を企業に対して行う例もあります。このような場合は、企業側においてもカルテ等を取り寄せたうえで適切な反論を行うことが必要です。

    労災に関して企業が負担する慰謝料や損害賠償責任については、以下の記事で詳しくご説明していますので、ご参照ください。

     

     

    11,業務による怪我で休業中の従業員の解雇について

    業務によるけがのために休業している従業員については、休業中とその後30日間は、解雇が原則として禁止されています(労働基準法第19条1項本文)。

    ただし、例外として、治療開始後3年が経過しても治療が終わらないときは、企業はその従業員の平均賃金の1200日分を支払うことによって、その従業員を解雇することが認められています(労働基準法第19条1項但書)。

    また、従業員が治療開始後3年以上経過した時点で、従業員が労災から傷病補償年金の支払いを受けている場合も、十分な補償を受けていると理解され、労災で治療のために休業中の従業員であっても解雇が認められています。

    労災で休業中の従業員の解雇については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

     

     

    一方、通勤中の怪我により従業員が出勤できないときは、労働基準法第19条の適用はなく、私傷病休職として対応することになります。

    私傷病休職については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

     

     

    12,怪我による労災に関して弁護士に相談したい方はこちら(法人専用)

    咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

    咲くやこの花法律事務所では、従業員が業務により怪我をした場面での対応について、企業側の立場でのご相談を承っています。最後に、咲くやこの花法律事務所の企業向けのサポート内容についてご説明致します。

     

    (1)労災発生時の企業側の対応についての相談

    従業員から業務による怪我について報告を受けたときは、初期の段階で正しく対応することがとても重要です。たとえ会社側が労災とは考えていない場合であっても、会社は、従業員の労災の申請について助力する義務があります。

    一方で、従業員が報告した怪我の経緯をよく確認し、また、現場の状況の確認や、目撃者からの聞き取りを行って、企業としての事実の確認をしっかり行うことも重要になります。従業員の報告に疑問があるときは、特に対応に注意が必要です。

    企業として、労災の請求書の事業主証明欄を安易に記入してしまうと、実際には企業に責任がなかったとしても、その責任を認めたことになってしまう可能性があります。

    従業員が報告した怪我の経緯に疑問があるときは、事業主証明をするのではなく、事業主証明をしないことについての理由書を労働基準監督署長宛に提出する必要があります。

    また、意見申出制度(労災保険法施行規則23条の2)を活用して、従業員の報告した事故状況に疑問があることを、労働基準監督署に伝えていく必要があります。

    咲くやこの花法律事務所では、労災に精通した弁護士が、ご相談をお受けいたしますので、是非ご相談ください。

     

    労災対応に精通した弁護士へのご相談費用

    • 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

     

    (2)従業員から慰謝料を請求された場合の対応の相談

    業務による怪我については、会社に安全配慮義務違反があったとして、従業員から慰謝料や損害賠償を請求される場合があります。

    中には、従業員が休業の必要性や後遺障害の程度について誇張して過大な請求を行ったり、従業員の落ち度もあるのにそれを考慮せずに過大な請求を行うという例もあります。

    反論すべきところはしっかりと反論し、実際に安全配慮義務違反があった場合にも、慰謝料、損害賠償の相場を理解して、適切な金額を提示していくことが大切です。

    咲くやこの花法律事務所では、慰謝料、損害賠償を請求された際の対応についての相談もお受けしております。

    労災に精通している経験豊富な弁護士が対応いたしますので、是非ご相談ください。

     

    労災対応に精通した弁護士へのご相談費用

    • 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

     

    (3)いつでも気軽に相談できる顧問弁護士サービス

    咲くやこの花法律事務所では、企業の労務管理を全面的にサポートする、顧問弁護士サービスも提供しております。

    普段から顧問弁護士に相談しながら労務管理を整備し、トラブルに強い企業づくりをすることで、トラブルを事前に防ぐことができます。

    また、実際にトラブルが発生した際にも、正しい対応について、迅速かつ気軽にご相談頂くことができるため、いざというときにも、顧問弁護士は心強い存在となります。

    咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスのご案内は以下をご参照ください。

     

     

    13,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

    怪我による労災など労働問題に関するご相談は、下記から気軽にお問い合わせください。今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

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    15,【関連情報】労災に関するお役立ち記事一覧

    この記事では、「怪我が労災になる場合とは?知っておくべきことの解説まとめ」について、わかりやすく解説いたしました。

    怪我などによる労災トラブルが発生した際は、労災かどうかの判断はもちろん、初動からの正しい対応方法を全般的に理解しておく必要があります。

    そのため、他にも労災に関する基礎知識など知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ重大なトラブルに発展してしまいます。

    以下ではこの記事に関連する労災のお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。

     

    労災事故とは?業務中・通勤中の事例を交えてわかりやすく解説

    会社の対応はどうする?労災申請があった場合の注意点について

    パワハラで労災は認定される?会社の対応と精神疾患の認定基準を解説

    うつ病など精神疾患の労災について補償や認定要件などを解説

    労災で労基署からの聞き取り調査!何を聞かれるのか?

    労災認定されると会社はどうなる?会社側弁護士が解説

    労災で休業中の従業員の解雇について解説

    労災の休業補償とは?わかりやすい解説まとめ

    労災による後遺障害とは?等級認定や金額、手続きなどを解説

    労災年金とは?種類別にもらえる場合や給付金額などを解説

    労災死亡事故が発生した場合の会社の対応について

    労災病院のメリットと手続き、支払いについてわかりやすく解説

     

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    記事作成日:2023年1月18日
    記事作成弁護士:西川 暢春

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
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    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
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