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労災病院のメリットと手続き、支払いについてわかりやすく解説

労災病院のメリットと手続き、支払いについてわかりやすく解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所、弁護士の西川暢春です。

労災病院の探し方が分からず困っていませんか?

労災による病気や怪我は、労災病院で無料で治療を受けることができます。

労災病院、労災指定病院の探し方は以下の通りです。

 

  • 1.厚生労働省のホームページから検索する
  • 2.独立行政法人労働者健康安全機構のホームページから検索する

 

従業員が労災病院や労災指定病院を利用することには、従業員が治療費を立て替えることなく、労災に関する治療を受けることができるというメリットがあります。

一方で、労災なのに指定外の病院を受診したり、健康保険を使ってしまうと、労災病院なら得られるメリットが得られなかったり、面倒な手続きをしなければならなくなることがあります。

そのため、労災病院のメリットや手続きの方法をよく理解したうえで、医療機関を選択することが大切です。

この記事では、労災病院の探し方について説明した上で、労災病院を利用するメリットや、労災病院での手続きについて、詳しく解説いたします。

この記事を読めば、労災病院の検索方法や、労災病院を利用する際のメリットおよび注意すべき点について理解いただけるはずです。

 

最初に労災病院をはじめとする労災(労働災害)に関する全般的な基礎知識について知りたい方は、以下の記事で網羅的に解説していますので、ご参照ください。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

労災は、制度や手続きが複雑であるとして、敬遠してしまう企業も少なくありません。ですが、社内で労災が発生した際に適切な対応をすることは、企業にとって非常に重要なことです。

最初の対応を誤り、後にトラブルに発展してしまうといったことがないように、不明点がある時は、早めに弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。

労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安などは、以下の記事で解説していますので参考にご覧ください。

 

▶参考情報:労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安

 

また、労災トラブルに関する咲くやこの花法律事務所の解決事例の1つを以下で掲載していますので、こちらもご参照ください。

 

▶参考情報:労災事故の後遺障害の認定結果を覆し、請求約1930万円を1/7以下に減額した解決事例

 

 

1,労災病院とは?

「労災病院」とは、厚生労働省が管轄している独立行政法人労働健康安全機構が運営している病院です。労災病院は、働く人々の職業生活を医療の面から支えるという理念の下、 ①予防から治療、リハビリテーション、職場復帰に至る一貫した高度・専門的医療の提供、及び ②職場における健康確保のための活動への支援を行うことを目的に設置されています。

「労災病院」と似た用語として「労災指定病院」という用語もあります。

この「労災指定病院」は、正確には、労災保険指定医療機関と呼ばれます。医療機関が申請をして、都道府県の労働局が指定する医療機関であり、その点で労災病院とは異なります。

しかし、利用するにあたってのメリットや手続きについては、労災病院と大きな違いはありません。

後述するとおり、労働者が「労災病院」、「労災指定病院」で労災に関する治療を受ける場合、治療費の立て替えが不要であるという点が、他の医療機関との大きな違いです。

 

2,療養補償給付について

労災病院、労災指定病院の制度を理解するためには、労災保険の療養補償給付、療養給付の仕組みについて理解しておく必要があります。

従業員が、業務が原因で病気にかかったり、怪我をした場合、その治療費については、療養補償給付が支給されます。また、従業員が、通勤中に怪我をした場合、その治療にかかる費用については、療養給付が支給されます。

このように、業務が原因の業務災害の場合は「療養補償給付」、通勤が原因の通勤災害の場合は「療養給付」と呼ばれます。

そして、入院費や移送費、通院費など、治療に必要なものについても支給されます。

 

(1)「療養の給付」と「療養の費用の支給」

療養補償給付や療養給付には「療養の給付」および「療養の費用の支給」があります。

この2つは、治療や薬剤等の「現物給付」なのか、治療にかかった費用の「現金の支給」なのかが異なります。

「療養の給付」は、労災病院や労災指定病院で、無料で治療や薬剤の支給を受けることができます。これは治療や薬剤等自体を給付する「現物給付」です。

これに対し、「療養の費用の支給」では、労災指定医療機関以外の医療機関や薬局等で治療を受けた際に発生した費用について、いったん労働者に立て替えさせたうえで、労災がその治療費について「現金の支給」をするものです。

この「療養の費用の支給」は、費用の支出が確定した日から2年が経過した時点で時効が成立し、費用の請求ができなくなってしまうため、注意が必要です。

そして、労災病院や労災指定病院は、上記のうち「療養の給付」を受けることができるため、治療費を労働者が立て替える必要がなく、時効の心配もないことが、それ以外の医療機関と大きく異なります。

 

(2)通院費について

療養補償給付や療養給付では、一定の条件を満たせば、通院の際の交通費の支給も受けることができます。この通院費の支給は、労災病院でもそれ以外の病院でも「療養の費用の支給」が適用されます。つまり、現金の支給です。

通院費は、原則として居住地または勤務地から片道2㎞以上の通院で、以下の条件のいずれかを満たす場合に支給されます。

 

  • 1.労働者の居住地または勤務地と同一市町村内の適切な医療機関へ通院した時
  • 2.労働者の居住地または勤務地と同一市町村に適切な医療機関がないため、隣接する市町村内の医療機関へ通院したとき(同一市町村内に適切な医療機関があっても、隣接する市町村内の医療機関の方が通院しやすいときなども含む)
  • 3.同一市町村内、隣接する市町村内に適切な医療機関がないため、それらの市町村を越えた最寄りの医療機関へ通院した時

 

ここでいう適切な医療機関とは、傷病の診療に適した医療機関を指します。

通院の交通費について労災から支給を受けるためには、上記「1・2・3」に該当する医療機関を選ばなければならないことも知っておきましょう。

 

▶参考:労災の療養補償給付については以下で解説していますのでご参照ください。

労災の療養補償給付とは?給付内容や申請の流れ、請求書について解説

 

3,労災病院、労災指定病院の一覧と検索の仕方

労災病院、労災指定病院の探し方は、以下の通りです。

 

  • 1.厚生労働省のホームページから検索する
  • 2.独立行政法人労働者健康安全機構のホームページから検索する

 

地域や傷病の種類を入力し、それに沿った労災病院、あるいは労災指定病院を検索することができます。

「1」の厚生労働省のホームページからは、都道府県労働局長により指定された、「労災指定病院」を検索することができます。

一方で、「2」の独立行政法人労働者健康安全機構のホームページでは、「労災病院」を検索することができます。

以下のURLからご確認いただけますので、ご参照ください。

 

(1)厚生労働省ホームページから検索する方法

労災保険指定医療機関検索は、以下よりご覧ください。

 

 

(2)独立行政法人労働者健康安全機構ホームページから検索する方法

労災病院一覧は、以下よりご覧ください。

 

 

4,労災病院、労災指定病院を利用するメリット(指定外の医療機関との違い)

労災による病気や怪我については、労災病院または労災指定病院で治療を受けることが通常です。

一方で、従業員の自宅あるいは勤務地の近くに、労災病院、労災指定病院がない場合は、指定外の医療機関で治療を受けることになります。

では、労災病院と指定外の医療機関はなにが違うのでしょうか。

以下で詳しくご説明いたします。

 

(1)治療費支払いの手続きの違い

「労災病院」と「指定外の医療機関」は、治療費の支払の手続きの点で異なります。

労災病院を利用した場合、療養補償給付または療養給付の「療養の給付」の対象となり、治療や薬剤の処方を無料で受けることができます。

そのため、従業員はその場で支払いをする必要がなく、費用については、労災から病院に対して直接支払われます。

一方で、指定外の医療機関を利用した場合、従業員は、治療費及び薬剤等の費用について、一旦全額を負担することになります。

この際、健康保険は適用範囲外のため、3割負担ではなく、10割の全額負担となります。

指定外の医療機関を利用した場合は、療養補償給付または療養給付の「療養の費用の支給」の対象となり、後に従業員が労災に申請をして、負担した費用を支給してもらう形になります。

 

(2)労災病院を利用するメリット

 

1,費用を立て替えなくてすむ

労災病院を利用するメリットは、治療費を立て替えなくてすむことです。

指定外の医療機関利用時と違い、費用を一旦負担する必要がないため、お金に困っている状況であっても、継続して治療を受けることができます。

一方で、指定外の医療機関を利用する場合は、一旦治療費を全額負担する必要があります。

この場合、病気や怪我で働けずお金に困っているといった状況下では、経済的に病院に通うことが難しくなってしまう可能性があります。

 

2,健康保険を誤って使用してしまう心配がない

また、指定外の医療機関においては、支払いの際に誤って健康保険を使用してしまうことがあります。

その点、労災病院では支払いの必要がないため、誤って健康保険を使用してしまう心配がないことも、労災病院を利用するメリットの一つと言えるでしょう。

指定外の医療機関において、労災による病気や怪我の治療費等については、たとえ労災保険を利用しなかったとしても、健康保険を適用することはできません。

そのため、誤って健康保険を使用してしまった場合は、その旨を病院に申告し、健康保険から労災保険へ、切り替えの手続きをしてもらう必要があります。

ただし、病院によっては、その変更の手続きができないところもあるため、その場合は自分で健康保険組合に連絡をして手続きをする必要があります。

場合によっては、自身で負担した分を引いた額(7割分)の治療費を健康保険に支払わなければならないことがあります。

この手続きにはとても手間がかかってしまうため、労災になる病気や怪我で指定外の医療機関を利用する際は、健康保険を使用しないように注意してください。

 

5,従業員側と労災病院側それぞれの手続きと支払いに必要な書類

従業員側と労災病院側それぞれの手続きと支払いに必要な書類

次に、従業員側と労災病院側の手続きや必要書類についても以下でご紹介しておきます。

 

(1)従業員側の手続き

労災病院で治療を受ける際は、治療費等の支払いは不要ですが、被災労働者は、労災病院を通して、所轄の労働基準監督署長に、労災給付の請求書を提出する必要があります。

 

1,必要な書類

労災病院に提出する書類は以下の通りです。

 

  • 業務災害の場合:療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)
  • 通勤災害の場合:療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)

 

これらの請求書は、以下の厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。

 

 

また、これらの請求書の書き方については、以下の記事で解説していますのでご参照ください。

 

 

2,請求書は2部用意する

労災病院で治療を受けた後、薬剤については、処方箋をもらって指定の薬局にもらいに行く、という流れが一般的です。

その際、指定の薬局にも上記の請求書を提出する必要があります。

そのため、労災病院に行く際は、病院に提出する分と、薬局に提出する分を合わせて、請求書を2通用意するようにしましょう。

 

(2)労災病院側の手続き

労災病院は、被災労働者から提出された請求書について、「診療内容」及び「費用」を記入し、都道府県労働局へ費用を請求します。

そして請求された治療費は、労災から病院に対して直接支払われます。

 

6,労災病院の変更について

労災病院を変更する場合は、変更先の労災病院に以下の書類を提出する必要があります。

 

  • 業務災害の場合:療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第6号)
  • 通勤災害の場合:療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第16号の4)

 

(1)病院を変更する理由の記載について

これらの書類には、病院を変更する理由を記載する欄があります。

変更の理由はそれぞれですが、「自宅から通いやすい病院に変更したいため」などであれば、問題なく認められるでしょう。

一方で、「担当医が好きになれない」「医者の態度が悪い」などと個人的な感情で記載してしまうと、認められない可能性があるため、「医者と治療の方針が合わないため」などと記載した方が好ましいと言えます。

 

(2)労災病院の変更に必要な書類のダウンロード

書式は、以下の厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

指定外の医療機関から、労災病院へ転医する場合は、転医先の医療機関に、「指定病院等(変更)届」ではなく、「療養(補償)給付たる療養の給付請求書(様式第5号、様式第16号の3)」を提出します。

 

7,2か所の病院の掛け持ちについて

基本的に、労災は1つの病院で治療を受けることが原則です。しかし、治療内容が異なる場合には、労災病院のかけもちが認められるケースもあります。

例えば、A病院で治療を受けていたが、B病院でもリハビリを受けるなどといった場合は、B病院に対して以下の届を提出します。

 

  • 業務災害の場合:療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第6号)
  • 通勤災害の場合:療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第16号の4)

 

この場合、B病院に提出した後も、A病院で治療を受け続けることが可能です。

掛け持ちができるか分からないときは、労災に一度確認してから病院に行くようにすると良いでしょう。

 

8,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます」

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

ここまで、労災病院、労災指定病院のメリットや手続きについてご説明しました。

咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で、労災に関するご相談をお受けしています。

具体的なサポート内容は以下の通りです。

 

(1)労災に関するご相談

従業員から労災を申請したいと申入れがあった際、正しい対応をすることが大切です。

企業は、従業員の労災の申請について一定の助力が義務付けられており、たとえ、会社としては労災と考えていない場合であっても、適切に対応することが求められています。

一方で、労災の請求書にある事業主証明の欄に安易に記載してしまうと、会社として労災であることを認めたことになってしまうため、会社としては労災とは考えていないという場合は、注意が必要です。従業員からの労災申請に、会社として疑問があるときは、労災を申請したいとの申出があった時点で弁護士にご相談いただくことで、適切な対応をすることができ、後のトラブルを防ぐことができます。

 

労災トラブルに強い弁護士への相談費用

  • 30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

なお、従業員から労災申請があった場合の会社の対応の注意点については、以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

(2)従業員からの損害賠償請求や補償請求への対応

業務災害で病気や怪我をしてしまい、安全配慮義務違反であるとして従業員から損害賠償を請求される場合があります。

このような場合は、なるべく早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめします。初期の対応を誤ってしまうと、最悪の場合、訴訟等に発展し、多大な時間と費用を費やすことになってしまいます。

早期の段階でご相談いただくことで、弁護士のとれる手段が増え、より企業にとって望ましい結果を導くことができます。

労災に関してお困りの際は、ぜひ実績と経験豊富な咲くやこの花法律事務所の弁護士にご相談ください。

 

労災トラブルに強い弁護士への相談費用

  • 30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

なお、労災についての損害賠償額の算定方法等は以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

9,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

労災病院の探し方に関する相談などは、下記から気軽にお問い合わせください。今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

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11,【関連情報】労災に関するお役立ち関連記事

この記事では、「労災病院のメリットと手続き、支払いについてわかりやすく解説」についてご紹介しました。労災に関しては、その他にも知っておくべき情報が幅広くあり、正しく知識を理解しておかなければ対応方法を誤ってしまいます。

そのため、以下ではこの記事に関連する労災のお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。

 

労災保険とは?保険料の金額や加入条件、手続きなどを徹底解説

労災事故とは?業務中・通勤中の事例を交えてわかりやすく解説

労災認定基準とは?わかりやすく徹底解説

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記事作成日:2023年5月23日
記事作成弁護士:西川 暢春

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
    池内 康裕 弁護士
    池内 康裕(いけうち やすひろ)
    大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
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    片山 琢也(かたやま たくや)
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    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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