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労災保険から支給される金額はいくら?わかりやすく徹底解説

労災保険から支給される金額はいくら?わかりやすく徹底解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

実際に労災が起きてしまった場合に、気になるのが受け取ることのできる給付の種類とその金額だと思います。

労災保険の給付には、以下の種類があり、それぞれ支給要件や支給額が異なります。

 

  • (1)療養補償給付
  • (2)休業補償給付
  • (3)障害補償給付
  • (4)遺族補償給付
  • (5)葬祭料
  • (6)傷病補償給付
  • (7)介護補償給付
  • (8)二次健康診断等

 

この中でも、一番気になる、休業中の補償について、労災から支給される金額は以下の合計額です(休業日数のうち最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、支給対象外となります。)

  • 休業補償給付 = 給付基礎日額 ×(休業日数 – 3日)× 60%
  • 休業特別支給金 = 給付基礎日額 ×(休業日数 – 3日)× 20%

 

労災給付にはそれぞれ時効による一定の期限があり、給付を受ける権利があるのに知らないまま期限が過ぎてしまうと、給付を受ける権利が消滅し、受け取ることができなくなってしまいます。

そのような事態を防ぐためにも、あらかじめ労災保険の給付の種類と金額、支給要件について知っておくことが大切です。

この記事では、労災保険から受け取ることのできる給付の種類や金額、計算方法、受け取るための要件等について解説します。

この記事を最後まで読めば、労災に遭った場合に支給される給付とその金額について詳しく知ることができるはずです。

それでは見ていきましょう。

 

なお、最初に労災(労働災害)や労災保険についての全般的な基礎知識については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

筆者が所属する咲くやこの花法律事務所では、労災のトラブルについて、企業側の立場でご相談をお受けしています。

社内で労災が発生すると、労災給付の申請手続や、会社の責任をめぐって、従業員とのトラブルが発生しがちです。また、労災について会社に責任がある場合は、会社は損害賠償責任を負担することになります。

会社で労災が発生した際に正しい対応方法を確認しないないまま自己流で対応すると、後日、補償をめぐって、従業員とトラブルに発展してしまうことが少なくありません。

社内で労災が発生した場合はできるだけ早い段階で弁護士に相談し、正しい対応を確認していただくことをおすすめします。

労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安などは、以下の記事で解説していますので参考にご覧ください。

 

▶参考情報:労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安

 

咲くやこの花法律事務所の労災トラブルに関する解決実績を以下で紹介していますのでご参照ください。

 

▶参考情報:労災事故の後遺障害の認定結果を覆し、請求約1930万円を1/7以下に減額した解決事例

 

▼労災の金額に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

 

1,労災保険から支給される金額とは?

労災保険の給付には、以下の種類があります。それぞれ支給要件や支給額が異なります。

 

  • (1)療養補償給付:労災により治療が必要になった場合の給付
  • (2)休業補償給付:労災により休業が必要になった場合の給付
  • (3)障害補償給付:労災により後遺障害が残った場合の給付
  • (4)遺族補償給付:労災により死亡した場合の遺族への給付
  • (5)葬祭料:労災により死亡した労働者の葬儀費用に対する給付
  • (6)傷病補償給付:労災による受傷や発症から1年6か月を経過しても重篤な傷病が残った場合の給付
  • (7)介護補償給付:労災による重篤な傷病によって受ける介護が必要になった場合の給付
  • (8)二次健康診断等:労災により循環器系の異常所見が出た場合の二次健康診断費用に対する給付

 

労災保険給付の種類や内容など、詳しくは以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

労災保険からの給付の名称は、業務災害か通勤災害かによっても異なります。業務災害の場合は、上記のとおり、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付等が支給されるのに対し、通勤災害の場合は、療養給付、休業給付、障害給付等の名称になります。

これらは名称の違いがありますが、その内容は同じです。

 

2,労災の休業補償給付の計算方法と会社負担分の金額

労災の休業補償給付の計算方法と会社負担分の金額

まず、労災からの給付の中でも、最も重要なものの1つである休業補償給付について、計算方法やその金額を解説します。

休業補償給付とは、業務中の労災事故のために仕事を休んだ場合に労災から支給される休業療養中の生活保障のための給付のことです(通勤中の交通事故による怪我で仕事を休んだときも、休業給付という名称で同内容の給付がされます)。

休業補償給付を受けるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります(労働者災害補償保険法第14条1項)。

 

  • 業務上の事由または通勤による病気や怪我で療養中であること
  • その療養のために労働することができない期間が4日以上であること
  • 労働することができないために、賃金を受けていないこと

 

労災の休業補償給付についての詳しい内容は、以下の記事をあわせてご覧ください。

 

 

また、労働者災害補償保険法(労災保険法)14条1項の条文は以下をご参照ください。

 

 

(1)休業補償給付の金額の計算方法

次に、休業補償給付の金額の計算方法の概要は以下の通りです。

 

▶参考:休業補償給付の計算式
休業補償給付 = 給付基礎日額 ×(休業日数 – 3日)× 60%

 

また、休業補償給付の支給を受ける労働者には、休業補償給付と併せて「休業特別支給金」も支給されます。

特別支給金は給付基礎日額の2割にあたる金額が支給されます。

休業特別支援金の計算方法は以下の通りです。

 

▶参考:休業特別支援金の計算式

休業特別支給金 = 給付基礎日額 ×(休業日数-3日)× 20%

 

よって、休業補償給付と特別支給金を合わせて、休業1日につき、給付基礎日額の8割が労災保険から支給されます。

休業補償給付の計算方法については以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

 

(2)会社負担分の休業補償の金額

業務による病気や怪我の労災では、労災からの休業補償給付のほかに、会社負担で従業員の休業補償をしなければならない場合があります。

まず、休業開始から最初の3日間の、労災からの休業補償給付が支給されない期間(待期期間)については、会社に、労働基準法76条に基づく休業補償の支払義務が発生します。

また、それ以降の期間についても、労災からの休業補償給付と通常の賃金の差額分があるため、これについての補償をしなければならない場面があります。

従業員に過失がなく、会社に100パーセントの責任がある労災の場面では、基本的に以下の金額を会社で負担する必要があります。

 

  • 休業開始から最初の3日間については給与全額を会社負担
  • 休業開始後4日目以降は給与のうち4割分を会社負担

 

ただし、従業員の過失が大きく、会社に落ち度がないような例外的な場面では、休業開始から最初の3日間についてのみ会社が給与の6割分を負担し、4日目以降は会社負担なしとすることも可能です。

休業補償の会社負担分の金額については以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

 

3,パートの労災についての休業補償とその金額

労災保険は雇用形態に関係なく全ての労働者に適用されるため、休業補償給付は、アルバイトやパートタイム従業員にも支給されます。

また、休業期間中は、休みの日についても休業補償給付の受給が可能です。支給金額は正規の労働者と同じく、給付基礎日額(労働基準法上の平均賃金相当額)を基に計算されます。

この給付基礎日額の原則的な計算方法は以下の通りです。

 

▶参考:給付基礎日額の原則的な計算式

「労災事故の発生日または業務上の病気について医師の診断を受けた診断日の直前の賃金締切日からさかのぼって3か月間にその従業員に支払われた賃金の総額」÷「その期間の日数」

 

上記で計算した1日当たりの賃金額が給付基礎日額となります。

賞与や臨時的に支払われた賃金は、上記の計算において「賃金の総額」から除外されます。また、ここで使用する「その期間の日数」は、休日も含む日数(暦日数)です。

しかし、この平均賃金には最低保障額という考え方があります。

パートやアルバイトの場合は勤務日数が少ないと、原則的な計算方法による計算結果よりも最低保障額の方が高くなることがあります。

この場合は、最低保障額を給付基礎日額として休業補償給付の支給額が計算されます。

最低保障額は以下のように計算されます。

 

▶参考:最低保障額の計算式

「労災事故の発生日または業務上の病気について医師の診断を受けた診断日の直前の賃金締切日からさかのぼって3か月間にその従業員に支払われた賃金の総額」 ÷ 「その期間の就業日数」 × 60%

 

このように、最低保障額の計算方法では、暦日数で割るのではなく、3か月間の就業日数で割ることになります。

パート社員の休業補償給付の計算方法や具体例については以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

 

4,後遺障害の等級ごとの労災の補償金額

次に、後遺障害の等級ごとの労災の補償金額について解説します。

労災により後遺障害が残ったときは障害補償給付が支給されます。障害補償給付とは、業務上の事故等により怪我・病気を負った労働者が症状固定の状態となり、後遺障害が残ってしまった場合に受け取ることのできる給付のことです。

給付金額は障害の程度により異なります。

後遺障害は、その種類や程度により、1級から14級まで分類されており、当てはまる等級に基づいた給付がなされます。

 

(1)後遺障害の等級

後遺障害の等級は数字が小さいほど重い障害になります。

1級が最も重い後遺障害等級です。そして、後遺障害等級の内容は障害等級表に定められており、厚生労働省のウェブサイトから確認することができます。

 

 

(2)障害補償給付の内容

障害補償給付として支給される内容は、7級以上の後遺障害か、それとも8級以下の後遺障害かによって大きく異なり、以下の通りです。

 

1,後遺障害等級第1級から第7級に該当するとき

障害補償等年金については、給付基礎日額をベースに、以下の表に定める日数分の支給が毎年行われます。障害特別年金については、算定基礎日額をベースに、以下の表に定める日数分の支給が毎年行われます。

これに対して、障害特別支給金については、等級ごとに以下の表に定められた金額が1回のみ支給されます。

 

▶参考:後遺障害等級第1級から第7級の表

後遺障害等級第1級から第7級の表

 

2,後遺障害等級第8級から第14級に該当するとき

障害補償等一時金については、給付基礎日額をベースに、以下の表に定める日数分の支給が1回のみ行われます。障害特別一時金については、算定基礎日額をベースに、以下の表に定める日数分の支給が1回のみ行われます。

障害特別支給金については、等級ごとに以下の表に定められた金額が1回のみ支給されます。

 

▶参考:後遺障害等級第8級から第14級の表

後遺障害等級第8級から第14級の表

 

労災における後遺障害に関する補償や労災年金については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

5,ヘルニアや腰痛についての労災の給付金額の目安

ヘルニアや腰痛についての労災の給付金額の目安

ヘルニアや腰痛が労災認定された場合に受けることのできる補償給付とその内容についてご説明します。

腰痛の場合に受給可能な給付は主に以下の3つです。

 

(1)休業補償給付

前述のとおり、休業補償給付は怪我のために仕事を休んだ場合等に労災から支給される休業療養中の生活保障のための給付のことです。

腰痛等により仕事ができず、治療のために仕事を休まなければならなかった場合、その休まなければならない日数に応じて補償が給付されます。

給付金額は、休業特別支給金とあわせて、給付基礎日額の8割となります。つまり、1日あたりに支給される金額の目安は、腰痛の原因事故が起こる前3カ月分の賃金を日割りした金額の80%となります。

 

(2)療養補償給付

療養補償給付というのは、治療費や通院費、薬代等についての給付のことです。労災認定された症状のための治療費や通院費、薬代等が、基本的には全額支給されます。

治療により症状が完治するか、もしくはこれ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態(症状固定)になるまでにかかった費用が給付の内容になります。

 

▶参考:労災の療養補償給付については以下で解説していますのでご参照ください。

労災の療養補償給付とは?給付内容や申請の流れ、請求書について解説

 

(3)障害補償給付

ヘルニアや腰痛で後遺障害が残ってしまうこともあります。

通常は、以下のいずれかの後遺障害等級に該当し、支給金額は、障害特別支給金とあわせて以下の通りです。

 

▶参考:障害補償給付の金額の例

・12級12号:「局部にがん固な神経症状を残すもの」:

給付基礎日額の156日分+算定基礎日額の156日分+20万円が支給

 

・14級9号:「局部に神経症状を残すもの」:

給付基礎日額の56日分+算定基礎日額の56日分+8万円が支給

 

なお、腰痛についての労災認定基準は以下で解説していますので併せてご参照ください。

 

 

6,パワハラに起因するうつ病等の精神疾患についての労災の給付金額

次に、パワハラ等に起因するうつ病など精神疾患の労災の給付内容についてご説明します。

パワハラによりうつ病等の精神疾患に罹ってしまった場合にも、労災認定を受ければ労災保険から給付を受けることができます。

受給可能な給付の内容としては主に以下のものがあり、支給要件を満たせば給付を受け取ることが出来ます。

 

(1)休業補償給付

休業補償給付は休業開始4日目から給付を受けることができ、その休まなければならない日数に応じて補償が給付されます。

給付金額は、休業特別支給金とあわせて、給付基礎日額の8割となります。つまり、パワハラに起因する精神疾患の場合に1日あたりに支給される金額の目安は、労災による精神疾患について医師の診断を受けた診断日からさかのぼって3カ月分の賃金を日割りした金額の80%となります。

 

(2)療養補償給付

うつ病等の精神疾患を治療するためにかかった治療費や通院費、薬代等が支給されます。

治療により症状が完治するか、もしくはこれ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態(症状固定)になるまでにかかった費用が給付の内容になります。

 

(3)障害補償給付

うつ病等が完治せず、後遺障害が残ってしまうことがあります。

うつ病等の後遺障害は、その症状に応じて、12級または14級の後遺障害等級が認定されることがあります。

それぞれの場合の障害補償給付の金額は、障害特別支給金とあわせて、以下の通りです。

 

▶参考:障害補償給付の金額の例

・12級:給付基礎日額の156日分+算定基礎日額の156日分+20万円が支給

・14級:給付基礎日額の56日分+算定基礎日額の56日分+8万円が支給

 

うつ病など精神疾患の労災については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

また、パワハラの労災認定基準については、以下で詳しく解説していますのでこちらもご参照ください。

 

 

7,傷病補償給付や介護補償給付の金額

労災による受傷や発症から1年6か月を経過しても治ゆせず重篤な傷病が残る場合に支給される傷病補償給付や、介護が必要になった場合に支給される介護補償給付の金額は以下の通りです。

 

(1)傷病補償給付の金額

傷病補償給付には、傷病補償年金、傷病特別年金、傷病特別支給金があります。

このうち、傷病補償年金及び傷病特別年金は、表の金額が年額になります。等級が変わらない限り、この年額を6等分した金額が2か月に1回支給されます。これに対し、傷病特別支給金は一時金であり、表の金額が1回限り支給されます。

 

▶参考:傷病補償給付の補償額

傷病等級 傷病補償年金
(給付基礎日額をもとに計算)
傷病特別支給金 傷病特別年金
(算定基礎日額をもとに計算)
第1級 313日分 114万円 313日分
第2級 277日分 107万円 277日分
第3級 245日分 100万円 245日分

 

(2)介護補償給付

介護補償給付は月を単位として支給されます。

1か月当たりの支給金額は下表のとおり定められています。

 

▶参考:介護補償給付の補償額

要件 支給額



親族または友人・知人の介護を受けていない場合 介護費用として支出した額
(ただし上限171,650円)
親族または友人・知人の介護を受けている場合 介護費用を支出していない場合 73,090円
介護費用を支出していて、その額が73,090円以下の場合 73,090円
介護費用を支出していて、その額が73,090円を超える場合 介護費用として支出した額
(ただし上限171,650円)



親族または友人・知人の介護を受けていない場合 介護費用として支出した額
(ただし上限85,780円)
親族または友人・知人の介護を受けている場合 介護費用を支出していない場合 36,500円
介護費用を支出していて、その額が36,500円以下の場合 36,500円
介護費用を支出していて、その額が36,500円を超える場合 介護費用として支出した額
(ただし上限85,780円)

 

介護補償給付については厚生労働省の以下のパンフレットもご参照ください。

 

 

8,死亡事故が起きた場合の労災の給付金額とその種類

死亡事故が起きた場合の労災の給付金額とその種類

次に、死亡事故が起きた場合の労災の給付内容について解説します。

被災労働者が死亡した場合に労災から支給される給付は、以下の通りです。

 

(1)遺族補償給付

被災労働者が死亡した場合、被災労働者の遺族に対して遺族補償給付が支給されます。

遺族補償給付には、遺族の身分関係に応じて、「遺族補償年金」か「遺族補償一時金」のどちらかが支給されます。また、このどちらかが支給される場合は遺族特別支給金の支給を受けることができ、遺族数に関係なく300万円が支給されます。

 

ア:「遺族補償年金」の場合

遺族補償年金は、毎年受けることができる給付です。遺族補償年金を受けとるためには、以下の要件を全て満たすことが必要になります。

 

  • 1.被災労働者の死亡当時その労働者の収入によって生計を維持していたこと
  • 2.被災労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であること
  • 3.妻以外の遺族については年齢要件を満たしていること

 

また、遺族補償年金の受給権者に対しては、遺族特別年金も支給されます。

どちらの年金も遺族の数に応じて支給額が変化します。

遺族1人当たりが受け取る事の出来る給付内容は以下の表の通りです。なお、受給権者が2人以上存在する場合は、その額を等分した額がそれぞれの受給権者に支給される額となります。

 

▶参考:遺族補償年金・遺族特別年金の支給金額の例

遺族数 遺族補償年金
(給付基礎日額をもとに計算)
遺族特別支給金 遺族特別年金
(算定基礎日をもとに計算)
1人 153日分
(55歳以上または一定の障害状態にある妻の場合は175日分)
300万円 153日分
(55歳以上または一定の障害状態にある妻の場合は175日分)
2人 201日分 201日分
3人 223日分 223日分
4人 245日分 245日分

 

イ:「遺族補償一時金」の場合

遺族補償一時金は1回限り受け取ることができる給付です。

遺族の中に遺族補償年金を受給する資格がある遺族がいない場合には、遺族補償一時金が支給されます。

支給内容は、遺族補償一時金については給付基礎日額1000日分、遺族特別一時金については算定基礎日額1000日分となります。この両方が支給されます。

 

▶参考:遺族補償一時金の支給金額の例

遺族補償一時金 遺族特別支給金 遺族特別一時金
給付基礎日額の1000日分 300万円 算定基礎日額の1000日分

 

また、遺族補償年金の受給権者が全員失権したときに、すでに支払われた年金等の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合は、遺族補償一時金の受給権者に下表の額が支給されます。

 

遺族補償一時金 遺族特別支給金 遺族特別一時金
給付基礎日額1000日分から既に支給された遺族補償年金の合計額を差し引いた金額 300万円 算定基礎日額1000日分から既に支給された遺族特別年金の合計額を差し引いた金額

 

(2)葬祭料(葬祭給付)

被災労働者が死亡した場合に、その葬儀費用の一部を補填するために支給される給付のことです。

受給者は原則としては被災労働者の遺族ですが、葬儀を執り行う遺族がおらず、会社が葬儀を行った場合は、葬祭料は会社に対して支給されます。

支給額については、給付基礎日額に基づき計算された支給がなされます。

「被災労働者の給付基礎日額30日分に31万5000円を加えた額」と「給付基礎日額の60日分」を比較して、高い方が支給額となります。

 

9,労災保険料の金額についての計算方法

会社が普段支払う労災保険料の金額についても触れておきたいと思います。

労災保険は労働者本人やその家族の生活を守るための公的保険制度であり、労働者を1人でも雇用している事業者は全て加入義務があります。またその保険料は全て事業者の負担となります。

労災保険料の計算方法は以下の通りです。

 

▶参考:労災保険料の計算式:

・労働保険料=「全従業員の前年度1年分の賃金総額」×「労災保険率」

 

(1)「全従業員の前年度1年分の賃金総額」について

この賃金総額とは、事業主など労災保険に加入できない人の分を除いた、従業員全員に支払った賃金の総額のことを指します。

賃金総額に含まれるものとしては、以下のようなものがあります。

 

  • 基本給
  • 賞与
  • 通勤手当
  • 残業手当、休日手当、深夜手当、単身手当、扶養手当など

 

一方、賃金総額に含まれないものとしては、以下のようなものがあります。

 

  • 役員報酬
  • 結婚祝い金、死亡弔慰金、災害見舞金
  • 出張・宿泊費
  • 会社側が全額負担する生命保険の掛金など

 

(2)「労災保険率」について

労災保険率は業種別に定められています。

事業内容によって労災の危険度が異なるため、業種の危険度に応じて保険率が細分化されています。

 

▶参考:令和4年度の労災保険料率の例

  • 食料品製造業:0.6%
  • 交通運輸事業:0.4%
  • 船舶製造業:2.3%

 

業種別の詳しい労働保険率については、以下の厚生労働省のホームページに記載がありますのでご確認ください。

 

▶参考:厚生労働省「労災保険率表」(平成30年4月1日施行)

(単位:1/1,000)

事業の種類の
分類
業種
番号
事業の種類 労災保険率
林業 02
又は
03
林 業 60
漁業 11 海面漁業(定置網漁業又は海面魚類養殖業を除く。) 18
12 定置網漁業又は海面魚類養殖業 38
鉱業 21 金属鉱業、非金属鉱業(石灰石鉱業又はドロマイト鉱業を除く。)又は石炭鉱業 88
23 石灰石鉱業又はドロマイト鉱業 16
24 原油又は天然ガス鉱業 2.5
25 採石業 49
26 その他の鉱業 26
建設事業 31 水力発電施設、ずい道等新設事業 62
32 道路新設事業 11
33 舗装工事業 9
34 鉄道又は軌道新設事業 9
35 建築事業(既設建築物設備工事業を除く。) 9.5
38 既設建築物設備工事業 12
36 機械装置の組立て又は据付けの事業 6.5
37 その他の建設事業 15
製造業 41 食料品製造業 6
42 繊維工業又は繊維製品製造業 4
44 木材又は木製品製造業 14
45 パルプ又は紙製造業 6.5
46 印刷又は製本業 3.5
47 化学工業 4.5
48 ガラス又はセメント製造業 6
66 コンクリート製造業 13
62 陶磁器製品製造業 18
49 その他の窯業又は土石製品製造業 26
50 金属精錬業(非鉄金属精錬業を除く。) 6.5
51 非鉄金属精錬業 7
52 金属材料品製造業(鋳物業を除く。) 5.5
53 鋳物業 16
54 金属製品製造業又は金属加工業(洋食器、刃物、手工具又は一般金物製造業及びめつき業を除く。) 10
63 洋食器、刃物、手工具又は一般金物製造業(めつき業を除く。) 6.5
55 めつき業 7
56 機械器具製造業(電気機械器具製造業、輸送用機械器具製造業、船舶製造又は修理業及び計量器、光学機械、時計等製造業を除く。) 5
57 電気機械器具製造業 2.5
58 輸送用機械器具製造業(船舶製造又は修理業を除く。) 4
59 船舶製造又は修理業 23
60 計量器、光学機械、時計等製造業(電気機械器具製造業を除く。) 2.5
64 貴金属製品、装身具、皮革製品等製造業 3.5
61 その他の製造業 6.5
運輸業 71 交通運輸事業 4
72 貨物取扱事業(港湾貨物取扱事業及び港湾荷役業を除く。) 9
73 港湾貨物取扱事業(港湾荷役業を除く。) 9
74 港湾荷役業 13
電気、ガス、水道又は熱供給の事業 81 電気、ガス、水道又は熱供給の事業 3
その他の事業 95 農業又は海面漁業以外の漁業 13
91 清掃、火葬又はと畜の事業 13
93 ビルメンテナンス業 5.5
96 倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業 6.5
97 通信業、放送業、新聞業又は出版業 2.5
98 卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業 3
99 金融業、保険業又は不動産業 2.5
94 その他の各種事業 3
90 船舶所有者の事業 47

▶引用元:厚生労働省「労災保険率表」

 

10,労災の金額など労災に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

咲くやこの花法律事務所では、事業主側の立場で、労災に関するご相談をお受けしています。

具体的なサポート内容は以下の通りです。

 

(1)労災に関するご相談

従業員から労災を申請したいと申入れがあった際、事業主として正しい対応をすることが大切です。

事業主は、従業員の労災の申請について一定の助力が義務付けられており、たとえ、事業主としては労災と考えていない場合であっても、適切に対応することが求められています。

一方で、労災の請求書にある事業主証明の欄に安易に記載してしまうと、事業主として労災であることを認めたことになってしまうため、事業主としては労災とは考えていないという場合は、注意が必要です。

従業員からの労災申請に疑問があるときは、労災を申請したいとの申出があった時点で弁護士にご相談いただくことで、適切な対応をすることができ、後のトラブルを防ぐことができます。

 

咲くやこの花法律事務所の労災トラブルに強い弁護士への相談費用

  • 30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

なお、従業員から労災申請があった場合の会社の対応の注意点については、以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

(2)従業員からの損害賠償請求や補償請求への対応

業務災害で病気や怪我をしてしまい、安全配慮義務違反であるとして従業員から損害賠償を請求される場合があります。

このような場合は、なるべく早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめします。初期の対応を誤ってしまうと、最悪の場合、訴訟等に発展し、多大な時間と費用を費やすことになってしまいます。

早期の段階でご相談いただくことで、弁護士のとれる手段が増え、より事業主にとって望ましい結果を導くことができます。

労災に関してお困りの際は、労災トラブルの解決に精通した咲くやこの花法律事務所の弁護士にご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の労災トラブルに強い弁護士への相談費用

  • 30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

なお、労災についての損害賠償額の算定方法等は以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

(3)顧問弁護士サービス

咲くやこの花法律事務所では、事業主の労務管理全般をサポートするための、顧問弁護士サービスも提供しております。

トラブルが起こったときの正しい対応、迅速な解決はもちろんのことですが、平時からの労務管理の改善によりトラブルに強い会社を作っていくことがなによりも重要です。日ごろから顧問弁護士の助言を受けながら、労務管理の改善を進めていきましょう。

咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスのご案内は以下をご参照ください。

 

 

11,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

労災の後遺障害についてなど労働問題に関するご相談は、下記から気軽にお問い合わせください。今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

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13,【関連情報】労災に関するお役立ち関連記事

この記事では、「労災保険から支給される金額はいくら?わかりやすく徹底解説」についてご紹介しました。労災に関しては、その他にも知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ対応方法を誤ってしまいます。

そのため、以下ではこの記事に関連する労災のお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。

 

労災認定基準とは?わかりやすく徹底解説

労災事故とは?業務中・通勤中の事例を交えてわかりやすく解説

怪我が労災になる場合とは?知っておくべきことの解説まとめ

労災の申請の方法とは?手続きの流れについてわかりやすく解説

労災の必要書類とは?書き方や提出先についてわかりやすく解説

労災の休業補償の期間は?いつからいつまで支給されるかを詳しく解説

労災認定されると会社はどうなる?会社側弁護士が解説

労災が発生した際の報告義務のまとめ。遅滞なく届出が必要な場合とは?

労災事故がおきたときの慰謝料、見舞金の必要知識まとめ

労災で労基署からの聞き取り調査!何を聞かれるのか?

労災死亡事故が発生した場合の会社の対応について

労災病院のメリットと手続き、支払いについてわかりやすく解説

 

注)咲くやこの花法律事務所のウェブ記事が他にコピーして転載されるケースが散見され、定期的にチェックを行っております。咲くやこの花法律事務所に著作権がありますので、コピーは控えていただきますようにお願い致します。

 

記事更新日:2023年5月23日
記事作成弁護士:西川暢春

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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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