こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
- 仕事でミスをしたことを隠すために嘘をつく
- 進捗が遅れていることを隠すために虚偽の報告をする
- 経費について嘘の申告をして不正受給する
- トラブルの責任を回避するために事実と異なる説明をする
咲くやこの花法律事務所でも、このように社員が業務に関して嘘をつくというケースについての対応を経営者や管理者からご相談をいただくことがあります。
- 嘘をつく社員をやめさせたい
- 嘘をつく社員を解雇したい
というご相談もあります。
嘘の内容や程度によっては、会社と従業員との信頼関係が大きく損なわれ、解雇等の処分を検討せざるを得ないケースもあります。一方で、社員が嘘をついたという理由だけで直ちに懲戒処分や解雇ができるわけではなく、適切な手順を経なければ、会社側が訴えられ、敗訴することになりかねません。
そのため、社内で嘘をつく社員の問題が発生した際に、リスクを回避して問題解決を実現していくには、会社側は、状況に応じた正しい判断や対処法、また弁護士による助言やサポートを受けることの重要性について理解しておく必要があります。
この記事では、嘘をつく社員への適切な対応方法や、解雇が認められるための手順、懲戒処分・解雇を行う際のポイント、実際の裁判例などについて、企業がおさえておくべきポイントを弁護士がわかりやすく解説します。また、咲くやこの花法律事務所の解決事例の1つとして、自分のミスを隠すために嘘を重ねるなどの問題がある従業員について弁護士が責任追及をし、退職してもらった事案をご紹介します。
この記事を最後まで読んでいただくことで、業務において嘘をつく社員に企業としてどのように対応すべきかを理解していただくことができます。現在、嘘をつく従業員への対応についてお困りの方は、適切な問題解決に向けて動き出すことができるようになります。
それでは見ていきましょう。
業務において嘘をつく社員への対応は、感情的に責め立てたり、すぐに解雇したりせずに、客観的な証拠を集めて事実確認をすることが重要です。裁判例の中には対応を誤り、解雇や雇止めをしてしまって敗訴している例が少なくありません。
最近の事例でも以下のものがあります。
- 業務上のミスや虚偽説明を繰り返した有期雇用の従業員の雇止めが無効と判断され、会社が約500万円の支払を命じられた事例(大阪地方裁判所令和6年11月21日判決)
- 退勤時の不正打刻についての会社からの事情聴取に対して虚偽の説明をした従業員の解雇が無効と判断され、約1100万円の支払いを命じられた事例(東京地方裁判所判決令和4年11月4日)
嘘をつく社員への対応も、必ず適切な弁護士に相談しながら進めることが必要です。
咲くやこの花法律事務所では、創業以来16年以上にわたり、企業側の立場で企業からの人事労務のご相談をお受けしてきました。会社に対して嘘をつくなどの問題社員への対応についても企業からのご相談を多数お受けし、解決してきました。お困りの際は早めに咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所による問題社員対応のサポート内容については以下をご参照ください。
・問題社員(モンスター社員)対応に強い弁護士への相談サービス
※咲くやこの花法律事務所では、企業または事業者からのご相談のみお受けしています。
また、咲くやこの花法律事務所の弁護士が嘘をつく問題社員の対応をサポートした解決事例もご紹介していますのであわせてご覧ください。
▶参考情報:実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士がサポートした「嘘を重ねる従業員を退職させた」解説事例はこちら
※ 咲くやこの花法律事務所における問題社員対応の実践と経験をまとめた書籍「改訂版 問題社員トラブル円満解決の実践的手法(西川暢春著)」も発売中です。あわせてご参照ください。
▼嘘をつく社員の対応について、弁護士の相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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1,嘘をつく社員とは?企業でよくある嘘の事例

企業活動においては、社員が業務に関して嘘をつくケースは珍しくありません。しかし、「嘘をつく」といっても、その内容や悪質性はさまざまです。単なる言い間違いや認識の違いとは区別して考える必要があります。
特に問題となるのは、会社や取引先を欺いたり、自らの責任を免れたり、不正な利益を得たりする目的で故意に虚偽の説明や報告を行うケースです。このような行為は、会社と従業員との信頼関係を損ない、状況によっては懲戒処分や解雇の対象となることがあります。
ここでは、企業で実際によく見られる「嘘をつく社員」の事例を紹介します。
(1)仕事の進捗や成果について嘘をつく
業務が予定どおり進んでいないにもかかわらず、「すでに終わっています」、「取引先へ連絡済みです」などと虚偽の報告をするケースです。
このような嘘は、会社が誤った前提で業務を進める原因となり、納期遅延や顧客対応の遅れなど、企業に大きな損害を生じさせることがあります。
(2)ミスやトラブルを隠すために嘘をつく
自分のミスやクレーム、事故などが発生したにもかかわらず、その事実を隠したり、他の社員の責任であるかのように説明したりするケースです。
ミス自体よりも、その後に嘘をついて隠蔽を図ったことで問題が拡大し、会社の信用を損なうことも少なくありません。
(3)勤怠や経費について嘘をつく
遅刻や欠勤の理由を偽ったり、実際には行っていない出張の旅費を申請したり、経費を水増し請求したりするケースです。
このような行為は、通常は不正受給や就業規則違反にあたり、懲戒処分の対象となります。
(4)社内調査や事情聴取で嘘をつく
ハラスメントや情報漏えい、不正行為などについて会社が調査を行う際に、事実と異なる説明をしたり、証拠を隠そうとしたりするケースです。
会社には事実関係を確認し、適切な人事上の判断を行う必要があります。そのため、調査への協力を拒んだり、故意に虚偽の説明を行ったりすることは、会社との信頼関係を大きく損なう事情として評価されることがあります。
社員が嘘をついたからといって、すべてのケースで厳しい対応をすべきだとは限りません。
例えば、勘違いや軽率な発言によるものなのか、それとも自らの責任を免れるために意図的に虚偽の説明をしたのかによって、問題の性質は大きく異なります。また、人事上の処分や懲戒処分を検討するにあたっては、従業員の社内での立場や会社にどのような影響が生じたのか、本人が反省しているか、過去にも同様の行為を繰り返していないかといった事情も重要な判断要素になります。
まず事実関係を十分に確認したうえで、嘘の内容や悪質性を踏まえた適切な対応をすることが重要です。そして、人事上の処分や懲戒処分をする際は弁護士に相談したうえで手順や証拠確保にも注意して進めることが必要になります。
2,嘘をつく社員への会社の対応方法は?

社員が業務に関して嘘をついたことが判明した場合、会社としては感情的に対応するのではなく、事実関係を十分に確認したうえで、就業規則や法令に沿って適切な対応を進めることが重要です。
特に、十分な調査を行わずに懲戒処分や解雇を行うと、後に処分が無効と判断されるリスクがあります。次のような流れで嘘をつく社員への対応を進めることが適切です。
- 手順1:まずは事実関係を確認する
- 手順2:本人から事情を聴取する
- 手順3:嘘の内容や悪質性を検討する
- 手順4:就業規則に基づいて適切な対応を検討する
以下で順番に解説していきます。また最後にやってはいけない対応や注意点についても説明していますので、あわせてご参照ください。
(1)まずは事実関係を確認する
まずは、本当に社員が嘘をついていたのか、どのような経緯で虚偽の説明や報告が行われたのかを確認します。
本人の説明だけで判断するのではなく、メールやチャットの履歴、業務日報、勤怠記録、取引先とのやり取りなど、客観的な資料を収集し、事実関係を整理することが重要です。また、関係する社員や上司からの事情聴取も行い、できる限り客観的な証拠を収集することが必要です。
(2)本人から事情を聴取する
事実関係をある程度把握したら、本人に事情を確認します。
この際には、一方的に責め立てたり、「嘘をついただろう」と決めつけたりするのではなく、本人に説明の機会を与えることが重要です。
本人の説明を聞くことで、認識違いや勘違いが判明することもあります。また、故意に虚偽の説明をしたのか、それとも軽率な判断によるものなのかを見極めるためにも、事情聴取は欠かせません。
本人の勤務態度等に問題があるケースでは、本人の説明を根拠なく嘘だと決めつけてしまいがちであり注意が必要です。
上司が従業員に対して事前に事実確認をすることなく、事実誤認の叱責を行い、事実誤認であるという従業員からの反論も、確たる根拠なく虚偽であると断定して「虚偽の反論をするとさらに重い罰則を与えられることがある」などとメールした事案では、このような上司の言動はパワハラに当たると判断されています(東京地方裁判所判決令和5年12月7日)。
(3)嘘の内容や悪質性を検討する
社員が嘘をついた事実が認められたとしても、さらに、例えば、次のような事情を総合的に検討する必要があります。
- 嘘の内容や目的
- 故意によるものかどうか
- 自社や取引先に与えた影響の大きさ
- 金銭的な損害や信用失墜の有無
- 過去にも同様の行為を繰り返していないか
- 本人が反省し、改善の意思を示しているか
- 本人の社内での地位
- 過去に懲戒処分を受けたことがあるかどうか
これらの事情によって、口頭注意で足りる場合もあれば、懲戒処分を検討すべき場合もあります。
(4)就業規則に基づいて適切な対応を検討する
事実関係を確認した後は、今後同様のことを繰り返さないように本人を指導することが必要です。始末書を提出させる、会社から業務改善指導書を交付するといった対応も検討すべきでしょう。
▶参考情報:業務改善指導書については以下で解説していますのであわせてご参照ください。
嘘が悪質なもので懲戒処分を検討する場合は、就業規則の懲戒規定に沿った対応が必要です。
会社との信頼関係を著しく損なう悪質な虚偽報告や、不正受給、重大な隠蔽行為などについては、戒告、けん責、減給、出勤停止などの懲戒処分や、場合によっては退職勧奨や解雇を検討することになります。もっとも、どのような処分を選択する場合であっても、その内容は事案の悪質性や会社への影響の程度に見合ったものでなければなりません。
社員が嘘をついたことが判明した段階で、会社として「すぐに処分したい」と考えてご相談いただくこともあります。
しかし、事実関係について十分な調査を行わないまま処分を決定すると、後に処分の有効性が争われる可能性があります。特に、懲戒処分や解雇を検討する場合には、証拠の収集や事情聴取を十分に行い、就業規則や法令に従って適切な手続きを踏むことが重要です。
(5)やってはいけない対応・注意点

一方で、嘘をつく社員についてやってはいけない対応としては以下のものが挙げられます。
- 嘘かどうかをよく調べずに、嘘だと決めつけて叱責してしまう
- 嘘をついたことを理由にパワハラにあたるような過剰な叱責をしてしまう
- 「一時的な言い逃れにすぎず、会社への影響も小さい場合」や「本人が速やかに事実を認めて反省し、再発防止が期待できる場合」であるのに、懲戒処分を経ないまま解雇してしまう
このようなパワハラトラブル、あるいはそれに起因するメンタルヘルス不調のトラブルや解雇トラブルに発展する危険がありますので、注意してください。
一方、従業員が業務について嘘をついたのに、これを指摘せずに放置する対応も適切ではありません。責任ある仕事をする従業員を育てるためには、業務について嘘をつくことは許されないことを伝え、仕事に対する姿勢を改善させるための指導を行うことが必要です。
3,嘘をつく社員は解雇できる?

最初に結論から言えば、社員が業務に関して嘘をついたという事実だけで、直ちに解雇できるわけではありません。日本の労働法では、解雇は労働者にとって極めて重大な不利益となる処分であるため、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められます(労働契約法第16条)。
そのため、会社は、嘘の内容や悪質性、会社への影響などを総合的に考慮し、解雇が相当といえるかを慎重に判断しなければなりません。
(1)嘘を理由とする解雇が認められるケース
社員の嘘によって会社との信頼関係が著しく損なわれた場合には、解雇が有効と判断される可能性があります。
例えば、次のようなケースです。
- 不正な経費請求など、嘘をつくことで不正な利益を得ていた場合
- ミスや事故を隠蔽するために虚偽の説明を行い、会社に大きな損害を与えた場合
- 過去にも同様の問題について懲戒処分を受けたにもかかわらず、さらに虚偽の報告を行った場合
- 虚偽の報告が法令に違反するようなものであった場合
例えば、下請業者の労災事故を隠ぺいした事務所長を諭旨退職処分にした事案では、約30年にわたり勤務し、過去に懲戒処分を受けたことがないことを考慮しても、諭旨退職処分は有効であると判断されています(東京地方裁判所判決平成25年9月27日)。
▶参考情報:問題のある社員の解雇方法については、以下の記事で手続きの流れなど詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
(2)嘘をついたからといって必ず解雇できるわけではない
一方で、社員が一度嘘をついたというだけで、当然に解雇が認められるわけではありません。
例えば、次のようなケースでは、解雇は処分が重すぎるとして無効と判断される可能性があります。
- 一時的な言い逃れにすぎず、会社への影響も小さい場合
- 本人が速やかに事実を認めて反省し、再発防止が期待できる場合
会社との信頼関係を回復できる余地がある場合には、まずは改善指導や戒告などの懲戒処分によって様子を見ることが相当と判断されることが通常です。
会社としては、「社員が嘘をついた」という事実だけに着目するのではなく、その社員の社内での立場や、嘘の内容・悪質性、会社への影響、本人の反省の有無などを総合的に検討したうえで、解雇の可否を判断することが重要です。
労働契約法第16条では、解雇は「客観的に合理的な理由」を欠き、「社会通念上相当」であると認められない場合には無効とされています。
そのため、社員が嘘をついたという事実だけで解雇が認められるわけではありません。裁判では、嘘の内容や悪質性、会社との信頼関係への影響、過去の指導歴など、さまざまな事情を総合的に考慮して解雇の有効性が判断されます。
解雇は、企業にとってもリスクが大きい判断ですので、自社で判断せず、労働問題に詳しい企業側弁護士に相談することが必要です。
▶参考情報:解雇について弁護士に相談すべき必要性については、以下の記事でも詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
4,嘘をつく社員に対して懲戒処分や懲戒解雇をする際のポイントは?

社員が業務に関して嘘をついた場合、その内容や悪質性によっては懲戒処分や解雇を検討することになります。もっとも、十分な調査や検討を行わずに処分を決定すると、後に処分が無効と判断されるリスクがあります。
会社が懲戒処分や懲戒解雇をする際におさえておくべきポイントは以下の3点です。
- (1)就業規則の懲戒事由に該当するかを確認する
- (2)証拠を十分に収集する
- (3)嘘の内容に見合った処分を選択する
それぞれ順番に解説していきます。
(1)就業規則の懲戒事由に該当するかを確認する
懲戒処分を行うためには、就業規則に懲戒事由が定められていることが前提となります。
例えば、「会社の信用を害する行為をしたとき」、「職務上の指示命令に違反したとき」、「業務に関し、虚偽の報告をしたとき」「会社に対し不正な請求をすることにより、不当に利益を得たとき」などの懲戒事由に該当するかを確認しましょう。
また、懲戒解雇についても、同様に、就業規則に懲戒解雇事由が明確に定められていることが必要です。就業規則に定めのない事由を理由として懲戒解雇を行うことはできません。
さらに、就業規則には、懲戒処分の種類や手続についても定められていることが一般的です。会社は、その内容に従って適正に懲戒手続を進める必要があります。
懲戒処分は、会社が自由に行えるものではありません。
裁判では、①就業規則に懲戒事由が定められているか、②社員の行為がその懲戒事由に該当するか、③処分の内容が重すぎないか(相当性)、④懲戒手続が適正に行われているか、といった点が重視されます。
特に諭旨解雇や懲戒解雇は従業員にとって極めて重い処分であるため、会社には慎重な判断と適正な手続が求められます。懲戒処分は事前に弁護士に相談したうえで行うようにしてください。
▶参考情報:懲戒処分について企業が弁護士に相談する必要性については以下で解説していますのであわせてご参照ください。
(2)証拠を十分に収集する
嘘をついたことを理由に懲戒処分を行う場合には、「社員が嘘をついた」という事実を客観的な証拠によって裏付けられることが重要です。
メールやチャットの履歴、勤怠記録、業務日報、取引先とのやり取り、防犯カメラの映像など、事案に応じた証拠を収集し、事実関係を整理しておきましょう。そのうえで、本人に対する事情聴取でも、事実関係を認めさせ、本人の署名入りの供述録取書を作成しておくことが適切です。
(3)嘘の内容に見合った処分を選択する
懲戒処分は、行為の悪質性や会社への影響に見合ったものでなければなりません。
例えば、一度だけの軽微な虚偽報告で会社への影響も小さい場合には、注意や戒告にとどめるべきであることが通常です。一方で、不正な経費請求や重大な隠蔽行為、繰り返し行われる虚偽報告など、会社との信頼関係を著しく損なう行為については、減給、出勤停止の懲戒処分、さらには解雇を検討すべき場合もあります。
懲戒処分をした後に従業員がこれを争って訴訟を起こす例もあります。事案の内容に比較して処分が重すぎると、訴訟において「社会通念上相当ではない」と判断され、懲戒処分が無効と判断されて、企業側が敗訴することになるため注意が必要です。
▶参考情報:懲戒処分や懲戒解雇の進め方等については、以下の記事で詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
5,嘘をつく社員への対応に関するトラブル事例【裁判例紹介】
嘘をつく社員への対応を誤ると、後日、不当な懲戒処分である、あるいは不当解雇であるなどと主張されて訴訟に発展することがあります。特に、会社側が段階を踏んで適切に処分を行わなかった場合には、裁判で会社側が不利な判断を受けることがあります。
ここでは、嘘をつく従業員への対応に関して参考になる裁判例を紹介します。
(1)在宅勤務中のさぼり行為を隠ぺいするために虚偽の退勤打刻をし、会社の事情聴取にも嘘をついた従業員に対する普通解雇が無効とされた事例(日本レジャーチャンネル事件・東京地判令和4年11月4日)
在宅勤務中に自宅を抜け出して野球場で退勤打刻をし、会社からの事情聴取に対しても「弟が打刻した」などと会社に対して嘘をつくなどの問題があった従業員を普通解雇した事例です。この従業員は、会社に対して訴訟を起こし、裁判所は、審理の結果、解雇は無効であると判断しました。
裁判所は、虚偽の退勤打刻は2回のみであることや、会社が戒告等の措置も講じたことがなかったことを指摘し、解雇の有効性を認めませんでした。会社は判決でこの従業員との雇用契約が継続していることを確認されたうえ、約1100万円のバックペイの支払を命じられることになりました。
▶参考情報:バックペイとは?以下で解説していますのであわせてご参照ください。
虚偽の退勤打刻は賃金計算にもかかわるものであり、また事情聴取でも嘘をついている点で悪質だとはいえます。
しかし、まずは懲戒処分を行い、それでも反省がない場合は、退職勧奨により解決すべきでした。懲戒処分により改善の機会を与えないまま解雇に進んだことが企業側敗訴の原因となりました。
(2)指示された業務を行わないまま、対応済みであるかのような嘘の報告をするなどの問題があった従業員の普通解雇が有効とされた事例(東武ビルマネジメント事件・東京地判令和6年12月20日)
指示された業務を行わないまま、対応済みであるかのような嘘の報告をするなどの問題があった設備員を会社が普通解雇した事案です。
会社は解雇の前に、作業日誌の作成を命じることによる行動の確認、指導記録票などを示すことによる業務改善の取組をし、また、取締役や所長が面談して厳重注意書面を交付する、けん責処分をするなどの対応をしましたが、それでも問題は改善されませんでした。
裁判所は、この会社がした解雇は有効であると判断しています。
この裁判例では嘘をついたから直ちに解雇に進んだのではなく、会社が十分な業務改善の取組やけん責処分等の懲戒処分を経たうえでそれでも問題が改善されなかったことを踏まえ解雇したことにより、解雇が有効と判断されました。
(3)多数回にわたり出張を偽装して会社から合計200万円以上の旅費を不正に受け取った従業員の懲戒解雇が有効とされた事例(三菱電機事件・神戸地裁尼崎支判平成20年2月28日)
従業員が複数回にわたり出張を偽装して不正に旅費を騙し取ったことを理由に、会社が懲戒解雇および退職金不支給としたことの有効性が争われた事例です。
従業員側は懲戒解雇処分の無効の確認などを求めて訴えを起こしましたが、裁判所は、不正の回数や金額、手口の悪質性から、会社側の処分に相当性を欠く事情や解雇権の濫用となる事情は認められないとして、懲戒解雇は有効であると判断しました。
カラ出張などの金銭的な不正を目的とする虚偽報告、虚偽請求等は犯罪にもあたりうるものであり、上記の裁判例のように重い処分でも有効とされる例が多いです。
ただし、他の従業員に対する処分との不均衡や会社の管理のずさんさを指摘して、懲戒解雇を無効とする例もあり、注意が必要です(札幌高等裁判所判決令和3年11月17日)。
▶参考情報:カラ出張については以下で解説していますのであわせてご参照ください。
(4)業務上のミスや虚偽説明を繰り返した従業員の雇止めが無効と判断され、「うそつき」などと大声で叱責した行為がパワハラにあたると判断された事例(大阪地方裁判所令和6年11月21日判決)
ホテルを運営する会社において、約1か月間に複数の業務上のミスを繰り返し、事実確認の際にも虚偽の説明をした有期雇用の従業員について、会社が契約を更新せず雇止めとした事例です。
この従業員は、電話料金の誤請求、マッサージ料金の処理漏れ、モーニングコールの手配忘れ、宿泊客を別の客室に案内するミス、客室管理事務所の鍵の置き忘れなど、短期間に複数の業務上のミスをしていました。また、マッサージ料金の処理について会社から事実確認を受けた際、実際には処理に関与していない上司の名前を出したほか、客の個人情報に関する書類を処理していないにもかかわらず、「処理した」と説明するなど、虚偽の説明もしていました。
会社は、こうした業務上のミスや虚偽説明などを問題視し、契約更新にあたって従業員の役割区分を下げ、給与を減額することを提案しました。しかし、従業員がこれに応じなかったため、会社は契約を更新せず、雇止めとしました。
裁判所は、従業員が短期間に複数のミスをしており、その中には客室管理事務所の鍵を紛失するなど、軽視できないものがあったことや、虚偽の説明をしたことも認めました。
一方で、従業員はそれまで一定の業務評価を受けており、以前とは異なる未経験の業務に変更されたことがミスの原因となった可能性があったこと、会社が十分な指導や改善の機会を与えていなかったこと、会社が雇止めを回避するための他の方法を十分に検討していなかったことを指摘して、雇止めを無効と判断しました。
さらに、本件では、上司がこの従業員に対して、「間違ってたやろ」「うそつき」「どんだけ人に迷惑掛けたら気が済むんだ」「いい加減なことばっかしやがって」「中途半端なことしやがって」「いつ辞めてもらってもいいねんぞ」などと言い、机をたたきながら、大声で叱責したことなどはパワハラにあたると評価されました。
その結果、会社は、判決でこの従業員との雇用契約が継続していることを確認されたうえ、約500万円の支払を命じられました。
社員の嘘が発覚した場面でも、会社がどのような方法で指導するかには注意が必要です。
上記の裁判例からもわかるように、問題行動を是正するための指導であっても、必要かつ相当な範囲を超えて厳しく叱責した場合には、会社側の行為がパワーハラスメントにあたると判断されることがあります。
▶参考情報:パワーハラスメントについては以下で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
6,実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士がサポートした「嘘を重ねる従業員を退職させた」解説事例
咲くやこの花法律事務所では、業務について嘘をつく社員に関する対応についての相談や依頼を事業者からお受けし、事業者側の立場で解決してきました。
ここでは、咲くやこの花法律事務所が実際に対応した解決事例の1つをご紹介します。
(1)自分のミスを隠すために嘘を重ねるなどの問題がある従業員について弁護士が責任追及をし、退職してもらった事案
イベント企画等を行う会社において、自身のミスを隠すために取引先への水増し請求を指示するなどの不正を行い、会社や社長への誹謗中傷を繰り返すなど、問題行動が見られた社員への対応についてご相談いただいた事例です。
会社としては退職を求めたいと考えていましたが、この社員しか把握していない業務があり、急に退職させると業務の引継ぎに支障が生じることや、取引先との関係への影響、懲戒処分を経ずに解雇した場合に不当解雇を主張されるリスクなどがあり、対応のタイミングや方法について慎重な判断が必要でした。
そこで、会社から弁護士にご相談いただき、まず社員の不正行為についてメールやLINEの履歴、不正に作成された書類などの証拠を整理・収集しました。そのうえで、弁護士立会いのもと本人との面談を行い、証拠を示しながら不正について一つずつ確認しました。
当初は不正を認めなかった社員も、証拠を示して確認を進めたところ、最終的に不正を認め、自ら退職することとなりました。また、退職にあたっては、個人的な金銭の貸し借りについて清算することや、業務の引継ぎに協力することについても合意を得ることができました。
このように、問題社員への対応では、いきなり解雇や退職を求めるのではなく、事前に証拠を十分に整理したうえで、弁護士の支援も受けながら、本人との面談やその後の退職・引継ぎまでを見据えて対応することが重要です。
▶参考情報:この事例については下記の記事で詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。
7,嘘をつく社員など問題社員の対応なら咲くやこの花法律事務所への相談がおすすめの理由
咲くやこの花法律事務所では、創業以来16年以上にわたり、企業側の立場で人事労務の問題についてご相談をお受けしてきました。現在は650社を超える事業者に顧問弁護士サービスを提供し、その中で、嘘をつく社員など問題社員の対応についてもご相談をお受けし、日々解決しています。
(1)問題社員対応について企業側で積み重ねてきた豊富な経験
問題社員への対応に必要なことは、法律や裁判例の知識だけではありません。
「この段階で注意書を出すべきか」「もう一度改善の機会を与えるべきか」「懲戒処分に進むべきか」「退職勧奨による解決を目指すべきか」「解雇まで進めることができるか」など、具体的な事案に応じた実務的な判断が必要です。
咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で多数の問題社員トラブルに対応してきた経験をもとに、裁判になった場合のリスクまで踏まえて、企業にとって適切な解決方法を検討し、実行します。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に関する解決事例については、以下の『企業法務の事件や裁判の「解決実績」サイト』で、解決実績の一部を公開しています。こちらをご参照ください。
また、咲くやこの花法律事務所における問題社員対応の実践と経験をまとめた書籍「改訂版問題社員トラブル円満解決の実践的手法(西川暢春著)」も発売中です。あわせてご参照ください。
(2)解雇ありきではなく、企業にとって最善の解決を目指します
問題社員への対応についてご相談いただいた場合でも、解雇することだけが解決方法ではありません。
事案によっては、指導や懲戒処分によって改善を促すことが適切な場合もあれば、退職勧奨によって話し合いで退職してもらうことが適切な場合もあります。
特に問題社員を安易に解雇すると、不当解雇を主張され、長期間の労働審判や訴訟に発展する危険があります。
咲くやこの花法律事務所では、「解雇できるか」だけではなく、「会社にとってどのような解決が最善か」という視点から対応方針を検討することを大切にしています。
(3)問題が深刻化する前の早い段階から相談できます
問題社員対応では、問題が深刻になってから弁護士に相談するよりも、初期段階から相談していただくことが重要です。
例えば、社員の説明に不自然な点がある段階であれば、どのような証拠を確保しておくべきか、どのような方法で本人に事実確認をすべきかを検討することができます。また、改善指導の段階から適切な記録を残しておくことで、その後、懲戒処分や退職勧奨、解雇を検討することになった場合にも適切な対応につなげることができます。トラブルになってからの対応はもちろん、トラブルになる前からご相談いただくことができることが咲くやこの花法律事務所の特徴の1つです。
8,嘘をつく問題社員の対応に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務所では、嘘をつく社員への対応について、企業側の立場に立って法的なサポートを行い、解決してきました。
問題のある社員への対応については、初期対応を誤ると、後に労働審判や訴訟などの紛争に発展する可能性があります。業務について重要な点で嘘をつくなどの問題が発覚した段階で、今後の対応方針について弁護士に相談することが重要です。
咲くやこの花法律事務所では、以下のような対応を行っています。
▶参考動画:咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に関する弁護士への相談サービスについては、以下の動画で詳しくサポート内容・実績・費用等について解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
(1)嘘をつく社員への対応方法についてのご相談
社員が業務上の嘘をついている場合、会社としてどのように対応すべきか判断に迷うことがあります。
例えば、以下のような点について状況に応じた判断が必要です。
- 事実確認をどのように進めればよいか
- 本人への事情聴取では何を確認すべきか
- 注意や指導で対応すべきか、懲戒処分や解雇・退職勧奨を検討すべきか
- 今後の再発防止のために何を行うべきか
咲くやこの花法律事務所では、ご相談について企業から事情を丁寧にヒアリングしたうえで、適切な対応方法について助言し、支援しています。
咲くやこの花法律事務所の弁護士へのご相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
(2)懲戒処分・退職勧奨・解雇に関するサポート
嘘の内容が悪質である場合には、懲戒処分や退職勧奨・解雇を検討する必要があります。
しかし、懲戒処分や解雇は、証拠を確保したうえで適切な手続きを踏まなければ、後に従業員から争われる可能性があります。また、退職勧奨については、退職について合意を得るための説得のノウハウ、経験が必要です。
咲くやこの花法律事務所では、懲戒処分や退職勧奨・解雇について企業側の立場から以下のようなサポートが可能です。
- 懲戒処分が可能かどうかの検討
- 処分内容の選択についてのアドバイス
- 解雇を行う場合の法的リスクの確認
- 実際の懲戒処分や解雇のサポート
- 退職勧奨面談のサポート
咲くやこの花法律事務所の弁護士へのご相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
(3)労働審判や訴訟などの対応
嘘をついた社員に対して懲戒処分や解雇などを行った後に、その処分をめぐって、労働審判や訴訟などの法的手続に発展することもあります。
咲くやこの花法律事務所では、従業員や退職者との交渉や裁判手続について、企業側の代理人として対応します。証拠を精査したうえで企業側の立場で十分な主張を行うことで、企業側の意向に沿った解決の実現に尽力します。
咲くやこの花法律事務所の弁護士へのご相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
(4)顧問弁護士サービス
咲くやこの花法律事務所では、事業者向けに日頃から労務管理全般をサポートする顧問弁護士サービスを提供しています。弁護士が、事務所の実績・経験を生かして、就業規則の整備や労務管理、解雇トラブル等のご相談に対応します。また、顧問契約サービスを利用していただいていれば、従業員との間でトラブルに発展してしまった場合も、会社の実情に詳しい弁護士が即座に対応することで、被害を最小限に抑えることが可能です。
顧問契約をご検討中の方には、無料で弁護士との面談(オンラインも可)を実施しておりますので、気軽にお問い合わせください。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの費用例
- 月額3万円+税~15万円+税
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9,まとめ
社員が業務に関して嘘をつくケースでは、仕事の進捗報告に関する虚偽、ミスやトラブルの隠蔽、不正な経費申請など、さまざまな問題が発生します。
このような嘘は、その内容によっては、単なる報告ミスではなく、会社と従業員との信頼関係を損なう行為です。嘘の内容や悪質性によっては、懲戒処分や解雇を検討することが必要です。
もっとも、社員が嘘をついたという理由だけで、直ちに懲戒処分や解雇が認められるわけではありません。会社としては、まず事実関係を十分に確認し、本人から事情を聴取したうえで、嘘の内容、会社への影響、本人の反省状況などを踏まえて慎重に対応する必要があります。
また、懲戒処分や解雇を行う場合には、就業規則の内容や証拠の有無、処分の相当性、手続きの適正さなどを確認しなければなりません。対応を誤ると、後に従業員との労使トラブルに発展する可能性があります。特に解雇や雇止めのトラブルが訴訟になり、企業側が敗訴すると多額の支払いを命じられることになりますので、注意が必要です。
嘘をつく社員への対応でお困りの場合は、問題が大きくなる前に問題社員対応に精通した弁護士に相談することをおすすめします。特に、懲戒処分や解雇、退職勧奨を検討する場合は、必ず事前に弁護士に相談してください。
咲くやこの花法律事務所でも、企業側の立場から、嘘をつく社員への対応、懲戒処分・退職勧奨・解雇に関するご相談、労使トラブルへの対応などをサポートしています。嘘をつく社員への対応についてお悩みの事業者の方は、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
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記事作成日:2026年8月27日
記事作成弁護士:西川 暢春
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