弁護士が教える就業規則の作成方法!記載事項・届出・変更届の注意点などを徹底解説!

就業規則の作成方法と注意点について

企業の規律を明確にし、職場で起こる問題行動にも正しく対応するための基本となるのが、「就業規則」です。

労務トラブルを未然に防ぐようなきちんとした就業規則を作成するためには、実際に「労務トラブルの対応」や「会社側の労働審判の対応」、「労働裁判の現場」を数多く経験している労務に強い弁護士が作成することがベストです。

ところが、これまでは弁護士が就業規則を作るケースは少なく、そのために、就業規則が労務トラブルや労働審判、労働裁判の現場で役に立たない内容になっていることがよくありました。

これではせっかく就業規則を作成していても機能せず、以下の例のように労務トラブルや裁判で、解決のために多額の金銭を会社側が支払わなければならない結果につながったり、従業員の問題行動に対応できず会社に多大な損害を発生させることになります。

就業規則の不備により発生する会社の損害の例

1,就業規則自体が法律に違反しているとして、損害賠償を請求されるケース

2,懲戒に関する規定の不備により、従業員に対する懲戒解雇が不当解雇となり、裁判所で多額の金銭支払いを命じられるケース

3,機密保持に関する規定の不備により、従業員が会社の情報を持ち出しても適切な対応ができないケース

4,固定残業代に関する規定の不備により、多額の残業代の支払いを命じられるケース

5,就業規則の変更が不利益変更にあたるとして、多額の金銭支払いを命じられるケース

このような背景から、筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所でも、弁護士による「就業規則の作成サービス」に関する相談件数が増え続けており、今後は、就業規則の作成や変更を労務に強い弁護士に依頼する企業が増加していくものと思われます。

今回は、これまで多くの労務トラブルを解決してきた、咲くやこの花法律事務所の経験を踏まえ、就業規則を実際に労務トラブルの解決に役立つ内容にするために、絶対におさえておきたい就業規則(正社員用)の作成ポイントについて徹底解説していきたいと思います。

 

今回の記事で書かれている要点(目次)

●就業規則とは?
●就業規則の作成義務について
●【重要】労務トラブルの解決に役立つ絶対におさえておきたい「就業規則の作成方法について」
●作成方法1:就業規則の記載事項
●作成方法2:就業規則作成の際の基本的な注意点
●作成方法3:「就業規則の適用の範囲に関する規定」の作成方法
●作成方法4:「休職に関する規定」の作成方法
●作成方法5:「始業時刻、終業時刻に関する規定」の作成方法
●作成方法6:「休憩に関する規定」の作成方法
●作成方法7:「有給休暇に関する規定」の作成方法
●作成方法8:「副業に関する規定」の作成方法
●作成方法9:「就業規則違反の場合の懲戒に関する規定」の作成方法
●作成方法10:モデル就業規則の利用や雛形(ひな形)利用の際の注意点
●就業規則作成の正しいプロセスについて
●就業規則の届出について
●就業規則の周知について
●就業規則の変更時に注意すべきポイント
●就業規則の変更届について
●就業規則作成、変更の相談は労務に強い弁護士へ

 

就業規則とは?

労務トラブルの解決に役立つ絶対におさえておきたい正社員用の就業規則の作成方法についてご説明する前に、「就業規則とは何か」ということと、「就業規則の作成義務」についてご説明しておきたいと思います。

まず、「就業規則とは何か」ということですが、就業規則とは、職場の従業員を対象として、集団的に、労働条件と会社の規律を定めた規則をいいます。特に「集団的に」というところが重要なポイントですが、この点は後で解説します。

なお、「就業規則」という表題の規則だけが就業規則に該当するのではなく、「賃金規程」や「退職金規程」についても、労働条件と会社の規律を定めた規則であるため、法律上は「就業規則」に該当します。

では、「就業規則は何のために作るものでしょうか?」
就業規則の作成の目的を確認しておきましょう。

就業規則作成の目的について

就業規則を作成する目的は、職場の規律意識を高め、従業員全員が一致団結できる組織をつくる点にあります。

企業経営を成功させるためには、従業員全員の心を1つにまとめて、目標に向かって進む組織をつくることが必要不可欠です。そして、従業員全員が一致団結するためには、企業の規律を明確にし、規律違反の問題行動を放置せず、正しく対応していくことが必要です。

また、「賃金、就業時間、休日、休憩」などの労働条件に関するルールを統一的に定めることも、職場の一体性を高めるために不可欠です。

就業規則には、職場の一体性を高め、一致団結する組織をつくるために、「労働条件に関する統一的なルール」と、「会社の規律」を定める役割があります。

では、企業においては、各従業員と個別に取り交わす雇用契約書とは別に、就業規則を定める意味はどこにあるのでしょうか?

「雇用契約書」と「就業規則」の違いについて確認しておきましょう。

雇用契約書と就業規則の違いについて

1,雇用契約書について

●作成の目的:

会社と個々の従業員の個別の労働条件を明確にし、労働条件をめぐるトラブルを未然に防ぐ。

●作成手続:

会社が各従業員と個別に取り交わすもので、個別に従業員による署名捺印が必要。

▶参考:雇用契約書の作成について必ずおさえておきたいポイントについて解説!

2,就業規則

●作成の目的:

集団を対象とした規則を定めることで、職場の規律意識を高め、従業員全員が一致団結できる組織をつくる。

●作成手続:

事業所ごとに「従業員代表から意見を聞く手続」と「全従業員への周知」が必要だが、従業員ごとの個別の署名捺印は不要。

 

このように、就業規則の作成は、従業員が一致団結できる組織を作ることが目的であり、「集団」を対象とする点が、雇用契約書との大きな違いです。

作成の手続も、雇用契約書が各従業員と個別に取り交わすものであるのに対して、就業規則は事業所ごとに作成するもので従業員の個別の署名捺印は必要ありません。

雇用契約書が個別の従業員と会社の間のものであるのに対し、就業規則は「集団」を対象とするものであることをおさえておきましょう。

 

就業規則の作成義務について

次に、「就業規則の作成義務」について、ご説明したいと思います。

労働基準法では、常時10人以上の従業員を使用する企業に、就業規則の作成を義務付けています。

作成義務の違反には「30万円以下」の罰金が科されます。

この「常時10人以上」という人数は、事業所ごとにカウントします。

また、パート社員やアルバイトなど非正社員も含めてカウントします。
ただし、業務委託の社員や派遣労働者、繁忙期のみ勤務する臨時社員は人数に含まれません。

常時10人以上の従業員がいない事業所については就業規則の作成義務がありません。
しかし、就業規則は、企業の規律を明確にし、規律違反の問題行動を放置せず、正しく対応することにより、従業員全員が一致団結できる組織をつくるためのものです。

そして、従業員の一致団結や規律の明確化が必要なことは、10人未満の事業所でも同じです。法律上の義務はありませんが、1人未満の事業所においても就業規則は作成しておくことは必要です。

ここでは、就業規則の作成義務について解説しましたので、おさえておきましょう。

▶参考:きちんと把握しておこう!労働基準法の詳しい解説について (pdf)

 

【重要】
労務トラブルの解決に役立つ絶対におさえておきたい「就業規則の作成方法について」

それでは、以下では、労務トラブルの解決に役立つ絶対におさえておきたい「就業規則の作成方法について」詳しくご説明していきたいと思います。

就業規則の作成方法について、絶対におさえておきたいポイントは、以下の10点です。

絶対におさえておきたい就業規則の作成方法「10のポイント」

作成方法1:
就業規則の記載事項

作成方法2:
就業規則作成の際の基本的な注意点

作成方法3:
就業規則の適用の範囲に関する規定の作成方法

作成方法4:
休職に関する規定の作成方法

作成方法5:
始業時刻、終業時刻に関する規定の作成方法

作成方法6:
休憩に関する規定の作成方法

作成方法7:
有給休暇に関する規定の作成方法

作成方法8:
副業に関する規定の作成方法

作成方法9:
就業規則違反の場合の懲戒に関する規定の作成方法

作成方法10:
モデル就業規則の利用や雛形(ひな形)利用の際の注意点

 

それでは、次項以下で、順番に詳しく解説していきます。

 

作成方法1:
就業規則の記載事項

まず、最初に、就業規則の作成方法のポイントの1つ目として、「就業規則の記載事項」について見ていきましょう。

就業規則の記載事項には、大きく分けて以下の3つがあります。

就業規則の3つの記載事項

1.絶対的必要記載事項(必須記載事項)
2.相対的必要記載事項
3.任意的記載事項

それぞれの意味は次の通りです。

強調:1.絶対的必要記載事項

就業規則に必ず記載しなければならない記載事項

強調:2.相対的必要記載事項

制度を設ける場合は必ず就業規則に記載をしなければならない記載事項

強調:3.任意的記載事項

就業規則に記載するかどうかが自由である記載事項

このうち、「1.絶対的必要記載事項」と「2.相対的必要記載事項」については法律上記載事項が決められており、以下の通りとなっています。

1.絶対的必要記載事項(必須記載事項)

(1)始業時刻
(2)終業時刻
(3)休憩時間
(4)休日
(5)休暇
(6)労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
(7)賃金の決定、計算の方法
(8)賃金の支払の方法
(9)賃金の締切り及び支払の時期
(10)昇給に関する事項
(11)退職に関する事項、解雇事由

2.相対的必要記載事項

(1)退職金制度を設ける場合は退職金に関する事項
(2)賞与や最低賃金額の定めをする場合は、これに関する事項
(3)従業員に食費、作業用品その他の負担をさせる場合は、これに関する事項
(4)安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
(5)職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
(6)災害補償や業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
(7)表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
(8)その他、事業場の全従業員に適用される定めをする場合においては、これに関する事項

これらの必要記載事項が重要であることはもちろんのことですが、そのほかにも、「3」としてご説明した「任意的記載事項」として、以下にあげるような規定を設けて、職場のルールを明確にしておくことが重要です。

3.任意的記載事項の例

(1)「服務規律」に関する規定

勤務時間中の業務への専念や、セクハラ・パワハラに該当する行為の禁止、機密の保持など職場内でのルールを定める規定。

(2)「休職」に関する規定

病気などの理由で一定期間仕事を休む場合の手続やルールを定める規定。

(3)「採用」に関する規定

従業員採用の手続や採用後の提出書類、試用期間等を定める規定。

(4)「異動」に関する規定

従業員の異動や転勤、職務内容の変更などについて定める規定。

 

このように、「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」、「任意的記載事項」の3つの組み合わせで就業規則が構成されることを、就業規則の作成方法の1つ目のポイントとしておさえておきましょう。

 

作成方法2:
就業規則作成の際の基本的な注意点

次に、就業規則の作成方法のポイントの2つ目として、「就業規則作成の際の基本的な注意点」を見ていきましょう。

就業規則の作成の際の基本的な注意点として以下の3点をおさえておきましょう。

就業規則の作成の際の基本的な注意点3つ

注意点1:
法律に違反した就業規則は無効になる。

注意点2:
就業規則は労働条件の最低基準を定める意味がある。

注意点3:
正社員と契約社員やパート社員の労働条件が異なる場合は、それを反映した就業規則を作成する必要がある。

 

以下で順番に見ていきましょう。

注意点1:
法律に違反した就業規則は無効になる。

労働基準法92条1項により、法律に違反した就業規則はその部分が無効になることが定められています。

▶参考:労働基準法92条1項の内容についてご紹介

●労働基準法第92条1項
就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。

 

では、「法律に違反した就業規則」とは実際にはどのようなものでしょうか?

例えば、最近問題になったケースとして、「前年に3か月以上の育児休暇を取得した従業員については翌年度に昇給させない内容の就業規則の規定」が法律に違反しているとして、無効と判断され、就業規則を定めた医療法人が従業員に対する賠償を命じられた例があります。

この事件では、育児休暇を取得した従業員については翌年度に昇給させない内容の就業規則の規定は、育児介護休業法第10条で「従業員が育児休業をしたことを理由とする不利益な取り扱い」を禁止していることに違反しているとして無効と判断されました(平成27年12月16日最高裁判所判決)。

この判決の詳細は「育休取得トラブルの裁判例」でご紹介していますので、ご参照ください。

この裁判例でもわかるように、法律に違反する就業規則は労務トラブルのもととなり、労働裁判が起こるきかっけにもなりかねません。就業規則作成の際は、多岐にわたる労務関連の法律に違反した内容になっていないかどうか、細心の注意を払うことが必要です。

注意点2:
就業規則は労働条件の最低基準を定める意味がある。

労働契約法第12条により、就業規則で定める労働条件より低い労働条件を従業員との間で個別に合意しても、その合意は無効となります。

その結果、就業規則は就業規則が適用される従業員の労働条件の最低基準を定める意味があります。これは、「就業規則の最低基準効」と呼ばれる効力です。

▶参考:労働契約法第12条の内容についてご紹介

●労働契約法第12条
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

 

例えば、就業規則において特に従業員の範囲を限定することなく、住居手当の支給について定めた場合には、それが労働条件の最低基準となります。

その結果、仮にパート社員などの非正規社員については住居手当を支給しないという扱いをしている場合、それは就業規則違反となります。また、パート社員から住居手当を就業規則通り支払うべきだとして裁判を起こされた場合、裁判所でも過去の分にさかのぼって住居手当の支払いを命じられるおそれがありますので、注意しておきましょう。

非正規社員について住居手当を支給しないのであればそのことは就業規則で明確にしておく必要があります。

注意点3:
正社員と契約社員やパート社員の労働条件が異なる場合は、それを反映した就業規則を作成する必要がある。

正社員と非正規社員(契約社員やパート社員)との間では、出勤日や就業時間、昇給や退職金、賞与の有無、賃金の決定方法などが異なることも多いと思います。

正社員と非正規社員を雇用する企業においては、その労働条件の違いを反映した就業規則を作成する必要があります。そのためには、「契約社員用就業規則」や「パート社員用就業規則」など、社員の種別ごとに就業規則を作成することも、必要になりますので、おさえておきましょう。

 

それでは、就業規則の作成の際の基本的な注意点として、以上述べた3つのポイントをおさえていただいたうえで、以下では実際の「就業規則の条文の作成方法について」見ていきたいと思います。

就業規則で規定するべき条文は多岐にわたりますが、以下では、下記の7項目をピックアップして、就業規則の条文を作成する際の基本的な注意点をご説明したいと思います。

就業規則で規定するべき条文「7項目の注意点について」

・就業規則の適用の範囲に関する規定
・休職に関する規定
・始業時刻、終業時刻に関する規定
・休憩に関する規定
・有給休暇に関する規定
・副業に関する規定
・就業規則違反の場合の懲戒に関する規定

 

それでは、次項以下で7項目の注意点について順番に詳しく解説していきます。

 

作成方法3:
「就業規則の適用の範囲に関する規定」の作成方法

就業規則の条文の作成に関し、まず最初に問題になるのが、「就業規則の適用範囲に関する規定」の作成方法です。

就業規則の適用範囲に関する規定は、「どの範囲の従業員にその就業規則を適用するか」を定める規定です。
この点について、厚生労働省が作成して公表している「モデル就業規則」の規定例は以下の通りとなっています。

▶参考:就業規則の適用範囲に関するモデル就業規則の規定例

(適用範囲)
第〇条 この規則は、〇〇株式会社の労働者に適用する。
2 パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。
3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

出典:厚生労働省ホームページより/https://goo.gl/XuyKl6

 

以上が厚生労働省モデル就業規則の規定例ですが、これには以下の問題点があります。

厚生労働省モデル就業規則の問題点について解説

上記の規定例では、パートタイム労働者(パート社員)について、この就業規則が適用されるのかどうか、不明確な部分が残り、適切ではありません。

条文を読むと、最初に「この規則は、〇〇株式会社の労働者に適用する。」とあることから、一見、パート社員も含めた全従業員に適用されるかのようにも読めますが、2項では「パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。」とされています。

また、厚生労働省によるモデル就業規則の解説には、「本規則は、主として通常の労働者への適用を想定して作成しています。」と書かれています。これでは、パート社員にこの就業規則が適用されるのかが不明確です。

就業規則の適用範囲は不明確な点が残らないように明確に定めておくことが必要です。

では、具体的にどのように就業規則の適用範囲に関する就業規則の規定を作成すればよいのでしょうか?

まず、就業規則の適用範囲に関する規定の仕方には、大きく分けて以下のパターンがあることをおさえておきましょう。

就業規則の適用範囲に関する規定の仕方「2つのパターン」

パターン1:
「就業規則は正社員にのみ適用する」と定めるケース

パターン2:
「就業規則は全社員に適用する」と定めたうえで、「契約社員やパート社員について別途規程を設けたときは、そちらを優先する」とするケース

 

それぞれのパターンについて注意点がありますので以下で整理しておきたいと思います。

パターン1:
「就業規則は正社員にのみ適用する」と定めるケース

例えば以下のように規定するケースです。

▶参考:「就業規則は正社員にのみ適用する」と規定するケース

第〇条

1 この就業規則の適用となる従業員は、第〇条の定める手続きにより採用された正社員をいう。
2 期間雇用者、パートタイマー、定年後再雇用者、その他の特殊雇用形態者の就業規則は別に定める。

 

このケースでは、契約社員やパートタイマー用の規程を別途作らなければ、契約社員やパートタイマーに適用される就業規則がなくなってしまうということが注意点です。

パターン2:
「就業規則は全社員に適用する」と定めたうえで、「契約社員やパートタイマーについて別途規程を設けたときは、そちらを優先する」とするケース

例えば以下のように規定するケースです。

▶参考:「就業規則は全社員に適用する」と定めたうえで、「契約社員やパートタイマーについて別途規程を設けたときは、そちらを優先する」と規定するケース

第〇条
この就業規則は、すべての従業員に適用する。
ただし、期間雇用者、パートタイマー、定年後再雇用者、その他の特殊雇用形態者について、特別の規則を定めたときは、それを優先して適用する。

 

このケースでは、契約社員やパートタイマー用の規程を別途作らなければ、契約社員やパートタイマーにも正社員と同じ就業規則が適用されることになることが注意点です。

例えば、正社員には賞与を支給しているがパート社員には支給していないという場合でも、就業規則に賞与の支給を記載していて、かつ別途パートタイマー用の就業規則を作っていなければ、パート社員にも賞与を支給する必要がでてきますので注意が必要です。

就業規則の適用範囲に関する規定の仕方は、「パターン1」、「パターン2」のどちらのパターンでも問題はありませんが、それぞれのパターンの注意点をおさえておくことが必要です。

 

 作成方法4:
「休職に関する規定」の作成方法

続いて、「休職に関する就業規則の規定」の作成方法について見ていきたいと思います。

「休職に関する就業規則の規定」の作成方法については、以下の2つのポイントをおさえておきましょう。

休職期間に関する就業規則の規定の作成ポイント

ポイント1:
休職事由の定め方のポイント

ポイント2:
休職期間の定め方のポイント

 

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
休職事由の定め方のポイント

休職事由の定め方のポイントとしておさえておきたい点が、「欠勤が一定期間続いた場合に休職にする」という休職事由の定め方は避けたほうがよいという点です。

例えば、厚生労働省のモデル就業規則では、休職事由について以下の条文例が掲載されています。

▶参考:休職事由に関する厚生労働省モデル就業規則の規定例

第〇条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
1, 業務外の傷病による欠勤が〇か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき
2, 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき

出典:厚生労働省ホームページより/https://goo.gl/XuyKl6

 

この「1」でわかるように、厚生労働省のモデル就業規則は「欠勤が一定期間続いた場合に休職する」という定め方になっています。

しかし、このような規定の仕方には、以下のような3つの問題点があります。

厚生労働省モデル就業規則の問題点について解説

問題点1:

欠勤が一定期間以上続くことが休職事由になっているため、「短期間欠勤しては出勤し、またしばらくして欠勤するというようなケース」で、休職させることができるか、疑義が生じる。

問題点2:

休職前の欠勤期間については、就業規則の休職に関する規定が適用されないため、従業員に対する診断書の提出要請や休職中の定期的な報告義務などを定める休職に関する規定の適用がされなくなるおそれがある。

問題点3:

結局のところ、「最初の欠勤期間 + 休職期間」が、事実上休める期間となり、会社の想定を超えて、休める期間が長くなりすぎる恐れがある。

このような問題点があることから、「欠勤が続いた場合に休職にする」という定め方は避けていただくことをおすすめします。
具体的には以下のような条文例をおすすめします。

▶参考:就業規則の休職事由に関する条文例

第〇条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
1, 精神的疾患あるいは身体の疾患により、通常の労務の提供ができず、その回復に期間を要すると見込まれるとき
2, 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき

 

この条文例「1」のように、病気による休職については、欠勤が一定期間継続したという事情がなくても、通常どおり仕事ができなくなったときは休職に入る内容にしておくことをおすすめします。

ポイント2:
休職期間の定め方のポイント

休職期間の定め方のポイントとしておさえておきたい点は、「会社の事情に応じた適切な期間を設定する」という点です。

そもそも、休職期間については、法律上のルールはなく、会社が自由に決めることができます。そのため、会社の事情に応じた適切な期間を就業規則で規定することが可能です。

実際の規定例でも、例えば以下のようなケースがあります。

休職期間の実際の規定例

ケース1:
3か月程度の比較的短期間を休職期間として定めるケース

ケース2:
1年6か月や2年といった比較的長期間を休職期間として定めるケース

それぞれのケースのメリットとデメリットは以下の通りです。

ケース1:
3か月程度の比較的短期間を休職期間として定めるケース

●メリットについての解説

1,休職期間中も会社は社会保険料の会社負担分を負担することになりますが、その負担が短期間で済む。
2,休職期間が比較的短いため、従業員が出勤しないことによる会社業務への影響を比較的軽微にとどめることができる。

●デメリットについての解説

1,休職期間が短いため、十分に病気が治っていないのに無理に復職しようとするトラブルが発生しやすい。
2,休職期間が短いため、休職から復帰できずに、退職となるケースが増えてしまう。

ケース2:
1年6か月や2年といった比較的長期間を休職期間として定めるケース

●メリットについての解説

1,休職期間が長いため、従業員が安心して治療でき、復職につながりやすい。

●デメリットについての解説

1,休職期間中の社会保険料の負担が長期間になる。
2,休職期間が長いため、従業員が出勤しないことによる会社業務への影響が大きくなる。

 

このような「メリット」と「デメリット」を踏まえたうえで、自社にあった休職期間を設定することが適切です。

従業員の休職期間中は、その従業員が担当していた仕事を、他の従業員がカバーしたり、派遣社員や契約社員に期間限定で担当させるなどして対応することになります。このような点を考慮すると、マンパワーに余裕がなく、また、派遣社員や契約社員の確保も難しいようなケースでは、従業員が長期に休職すると業務のカバーが難しくなることを踏まえて、比較的短期間の休職期間を定めざるを得ないでしょう。

一方で、休職期間中の業務のカバーや代替人員の確保が比較的容易であり、従業員が病気の時期も乗り越えて勤務を継続できる環境をつくることを優先するならば、長期間の休職期間を認めるべきでしょう。

以上、休職に関する就業規則の規定の作成方法について、「休職事由の定め方のポイント」と、「休職期間の定め方のポイント」をおさえておきましょう。

 

作成方法5:
「始業時刻、終業時刻に関する規定」の作成方法

続いて、「始業時刻、終業時刻に関する規定」の作成方法について見ていきたいと思います。

作成方法1の「就業規則の記載事項」の項目でご説明した通り、「始業時刻、終業時刻は就業規則の絶対的必要記載事項」です。

就業規則に記載する始業時刻、終業時刻に関する規定については、以下のポイントを必ずおさえておきましょう。

始業時刻、終業時刻に関する就業規則の規定の作成の3つのポイント

ポイント1:
所定労働時間は原則として「1日8時間、週40時間」までの範囲で定めなければならない。

ポイント2:
始業時刻や終業時刻は柔軟に変更できるようにしておく。

ポイント3:
専門業務型裁量労働制、変形労働時間制、フレックスタイム制の採用を予定する場合はその旨を就業規則に規定する。

 

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
所定労働時間は原則として「1日8時間、週40時間」までの範囲で定めなければならない。

始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた時間が、「所定労働時間」です。

労働基準法第32条により、従業員の「所定労働時間」は原則として「1日8時間、週40時間」までの範囲で定めなければならないと決められています。

所定労働時間を超えて従業員に仕事に従事させることも可能ですが、その場合、所定労働時間を超える就業時間は、「残業」になります。そして、従業員を残業させる場合は、「36協定の締結」と「残業代の支払い」が必要になります。
以上が所定労働時間に関する基本的なルールです。

このように、就業規則において始業時刻と終業時刻を定めるにあたっては、「所定労働時間」が「1日8時間、週40時間」までになるように定める必要があり、この点が、始業時刻、終業時刻を定める際の最も基本的な注意点になりますのでおさえておきましょう。

なお、「1日8時間、週40時間」までが原則ですが、従業員が10名未満の事業所で、「商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業」のいずれかの業種に該当する場合は、特例として、「1日8時間、週44時間」までとされています。

ポイント2:
始業時刻や終業時刻は柔軟に変更できるようにしておく。

正社員の雇用では長期の雇用継続を前提に、変化に柔軟に対応できるようにしておくことが必要です。

そのためには、始業時刻や終業時刻について柔軟に変更できるようにするための規定を必ず設けておきましょう。
例えば以下のような規定例となります。

▶参考:始業時刻や終業時刻について柔軟に変更できるようにするための規定例

●条文例

第〇条
始業・就業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。

– 始業・終業時刻
始業  午前  時  分
終業  午後  時  分

– 休憩時間
時  分から  時  分まで

ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、前日までに従業員に通知する。

 

このように始業時刻や終業時刻については、変化に柔軟に対応できるようにしておくことが重要なポイントなのでおさえておきましょう。

ポイント3:
専門業務型裁量労働制、変形労働時間制、フレックスタイム制の採用を予定する場合はその旨を就業規則に規定する。

「ポイント1」でご説明した通り、「1日8時間、週40時間」が原則ですが、変則的な労働時間制として、「専門業務型裁量労働制、変形労働時間制、フレックスタイム制」などの制度が労働基準法で認められています。

これらの制度を採用する予定があるときは、その制度について就業規則に記載が必要です。
以下で各制度の概要と就業規則における規定例をご説明します。

▶参考:「専門業務型裁量労働制、変形労働時間制、フレックスタイム制」の制度の概要と採用する際の規定例について

1,専門業務型裁量労働制

専門性の高い業務として定められた「19種類」の業務に従事する従業員について、実労働時間にかかわらず、あらかじめ労使協定で決めた時間を労働時間とみなす制度です。

▶参考:専門性の高い業務として定められた「19種類」の業務とは?

例えば、労使協定で「1日8時間労働したものとみなす」という内容で合意していれば、実労働時間にかかわらず、1日8時間就業したとみなされ、残業代を発生させないこともできます。

専門業務型裁量労働制の就業規則における規定例は以下の通りです。

専門業務型裁量労働制の就業規則における規定例

第〇条
従業員代表と専門型裁量労働制に関する労使協定を締結した場合、当該協定の適用を受ける従業員について、みなし労働時間制を適用する。

 

2,変形労働時間制

「ポイント1」でご説明した通り、「各日8時間、各週40時間」の範囲内で所定労働時間を定めることが原則です。

変形労働時間制はこの原則を修正して、労使協定の締結などを要件として、1ヶ月あるいは1年などあらかじめ定めた一定期間の間に平均して週40時間以内であれば、1日8時間を超える所定労働時間や1週40時間を超える所定労働時間を定めることができる制度です。

例えば「業務の閑散期については所定労働時間を1日7時間とする代わりに、繁忙期については1日9時間とする」などの調整が可能になります。

変形労働時間制の就業規則における規定例は以下の通りです。

変形労働時間制の就業規則における規定例

第〇条
1.従業員代表と1年単位の変形労働時間制に関する労使協定を締結した場合、当該協定の適用を受ける従業員について、所定労働時間は対象期間を平均して1週間当たり40時間とする。
2.前項の労使協定の適用を受ける従業員については、1日の始業・就業の時刻、休憩時間を労使協定で定める。

 

3,フレックスタイム制

始業時刻、終業時刻を一定のルールのもと、従業員の自由な決定にゆだねる制度です。各従業員のライフスタイルにあわせて働き方が可能になることがメリットです。

フレックスタイム制の就業規則における規定例は以下の通りです。

フレックスタイム制の就業規則における規定例

第〇条
1.従業員代表とフレックスタイム制に関する労使協定を締結した場合は、当該協定の適用を受ける従業員については、始業・終業時刻をその従業員の決定に委ねるものとする。
2.フレックスタイム制を適用する従業員の1ヶ月の総労働時間は下記時間を超えないものとする。
・暦日数が31日の月は177.1時間
・暦日数が30日の月は171.4時間
・暦日数が29日の月は165.7時間
・暦日数が28日の月は160時間
3.フレックスタイム制を適用する従業員のフレキシブルタイム及びコアタイムは第1項の労使協定で定める。

 

以上、「所定労働時間を原則として1日8時間、週40時間までの範囲で定めること」、「始業時刻・終業時刻を柔軟に変更できるようにしておくこと」、「専門業務型裁量労働制等の採用を予定する場合はその旨を就業規則に規定すること」が、始業時刻、終業時刻に関する規定の作成のポイントになりますので、おさえておきましょう。

また、参考情報として以下の情報もご覧いただければと思います。

▶参考:「専門業務型裁量労働制、変形労働時間制、フレックスタイム制」のメリット、デメリットについて

「専門業務型裁量労働制、変形労働時間制、フレックスタイム制」のメリット、デメリットについてはこちらの記事の「ポイント2:どの労働時間制を採用するかを検討する。」の項目で詳しく記載していますのであわせて参照してください。

 

作成方法6:
「休憩に関する規定」の作成方法

続いて、「休憩に関する規定」の作成方法について見ていきたいと思います。

作成方法1の「就業規則の記載事項」でご説明した通り、就業規則には必ず休憩時間の記載が必要です。
具体的には以下の3つのポイントをおさえておきましょう。

休憩に関する就業規則の規定の作成の3つのポイント

ポイント1:
休憩時間に関する法律上のルールを守る。

ポイント2:
休憩時間については、休憩開始時刻と休憩終了時刻をできる限り明記する。

ポイント3:
休憩の時刻が従業員によって異なるときは、原則として、労使協定が必要になる。

 

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
休憩時間に関する法律上のルールを守る。

休憩時間については、労働基準法第34条1項により、以下の通り定められています。

(1)1日の所定労働時間6時間以内の場合:休憩不要
(2)1日の所定労働時間6時間を超えて8時間までの場合:休憩45分以上
(3)1日の所定労働時間8時間を超える場合:休憩1時間以上

このように、1日の所定労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも「45分」、8時間を超える場合においては少なくとも「1時間」の休憩を与えることが法律上義務付けられています。

上記のルールを守って、休憩時間を定めることが1つ目のポイントとなります。

ポイント2:
休憩時間については、休憩開始時刻と休憩終了時刻をできる限り明記する。

休憩時間については、「1時間」あるいは「45分」といった「時間のみ」を就業規則に記載し、休憩開始時刻や休憩終了時刻を明記しなくても法律違反になりません。

しかし、未払い残業代をめぐるトラブルの発生を避けるためには、できる限り、休憩開始時刻や休憩終了時刻を就業規則に明記しておくことをおすすめします。

これは従業員や退職者から会社に未払い残業代を請求されるトラブルの中で、従業員から「休憩時間中も休憩がとれず仕事をしていた」という主張が出てくることがよくあるためです。

休憩開始時刻や休憩終了時刻が明確に定まっていなければ、会社においていつからいつまで休憩をとらせていたかを主張することができなくなり、従業員からの「休憩がとれていなかった」という主張に対する反論が難しくなることがありますので注意が必要です。

ポイント3:
休憩の時刻が従業員によって異なるときは、原則として、労使協定が必要になる。

休憩時間については原則として全従業員に一斉に与えなければならないというルールがあります。

これは労働基準法第34条2項に定められているルールで、「休憩時間の一斉付与の原則」と呼ばれます。

▶参考:労働基準法第34条2項の内容についてご紹介

●労働基準法第34条2項

前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

 

このように休憩は一斉にとることが原則とされていますが、いかなる場合でも一斉に休憩をとらせなければならないとすれば、業務に支障が生じることがあります。そこで、法律上、事業所の従業員代表者との間で「一斉休憩の適用除外の労使協定」を締結した場合は、従業員の休憩を交代制にしたり、個々の従業員ごとに異なる休憩開始時刻を定めることが可能です。

また、「運送、物品販売、金融、映画、電気通信、病院、飲食業」など一部の特定の業種については、そもそも休憩時間の一斉付与の原則が適用されず、休憩を一斉に付与しなくてもよいとされています。

この休憩時間の一斉付与の原則にも注意しておきましょう。

なお、始業時刻、終業時刻、休憩時間に関するモデル就業規則の規定例は以下の通りとなっていますので、参照してください。

▶参考:始業時刻、終業時刻、休憩時間に関する厚生労働省モデル就業規則の規定例

(労働時間及び休憩時間)
第〇条 労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。
2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。
ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。
この場合、前日までに労働者に通知する。

就業規則の休憩時間について

(以下、省略)

出典:厚生労働省ホームページより/https://goo.gl/XuyKl6

 

以上、休憩時間については、「休憩時間に関する法律上のルールを守る」、「休憩開始時刻と休憩終了時刻を明記する」、「休憩時間が従業員によって異なるときは労使協定が必要になる」という3点をおさえておきましょう。

 

作成方法7:
「有給休暇に関する規定」の作成方法

続いて、「有給休暇に関する規定」の作成方法について見ていきたいと思います。

有給休暇については労働基準法第39条で、法律上与えなければならない日数が定められています。
企業は、従業員から請求があれば、法律上定められた日まで有給休暇を与えなければなりません。

具体的な有給休暇に関する付与される要件と日数については、下記「有給休暇に関するモデル就業規則の規定例について」でご紹介していますので、そちらを参照してください。

上記を確認した上で、有給休暇に関する就業規則の規程の作成方法としておさえておきたいのは、以下の3つのポイントです。

有給休暇に関する就業規則の規程の作成の3つのポイント

ポイント1:
有給休暇の申請方法を就業規則で明確にする。

ポイント2:
有給休暇の申請期限を就業規則に明記する。

ポイント3:
パート、アルバイトについては別途規定を設ける必要がある。

 

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
有給休暇の申請方法を就業規則で明確にする。

有給休暇の取得については、就業規則で申請書の提出を義務付けておくことをおすすめします。

申請書を残しておかないと、退職の際に有給消化をする際などに、有給休暇の残日数をめぐってトラブルになることがあります。

申請書を提出させて保存しておくことで、過去の有給取得日数が明確にわかるようにしておきましょう。

ポイント2:
有給休暇の申請期限を就業規則に明記する。

有給休暇の取得については、申請期限を就業規則に明記しておくことをおすすめします。

例えば、「取得日の3日前までに申請する」等と定めるとよいです。

有給休暇に申請期限を定めておかないと、急な有給休暇取得により業務に支障が生じたり、同じ部署の複数の従業員の有給休暇取得日が重なり出勤する従業員の負担が過大になるなどの不都合が生じることになりかねないからです。

但し、申請期限を就業規則に定めた場合でも、急な病気やけがなど事前申請が困難な理由による有給休暇は当日の申請であっても認めなければなりません。

ポイント3:
パート、アルバイトについては別途規定を設ける必要がある。

パート社員の有給休暇については、労働基準法第39条3項により、出勤日数に比例して、正社員より少ない日数の有給休暇が法律上認められています。

そのため、パート社員の有給休暇については、正社員とは別に規定を設ける必要があります。

なお、パート社員とは、法律上、正社員よりも所定労働時間が少ない社員を言い、「アルバイト」などと呼ばれている場合であっても、正社員より所定労働日数が少ない場合は法律上はパート社員に該当します。

有給休暇に関する厚生労働省のモデル就業規則の規定は以下の通りです。

▶参考1:有給休暇に関するモデル就業規則の規定例について

第〇条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

正社員の有給休暇の日数について

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

パート社員・アルバイトの有給休暇の日数について

出典:厚生労働省ホームページより/https://goo.gl/XuyKl6

 

この厚生労働省のモデル就業規則の規定例は、パートタイマーについて別途の規程を設けているという点で前述の「ポイント3」はクリアされていますが、「ポイント1」、「ポイント2」でご説明した有給休暇の申請方法、申請期限については触れられておらず、この点については改善が必要です。

▶参考2:有給休暇制度については詳しくはこちらも参考にしてください。

 

作成方法8:
「副業に関する規定」の作成方法

続いて、就業規則の「副業に関する規定」の作成方法について見ていきたいと思います。

副業については、現在、厚生労働省のモデル就業規則は、会社の許可なく副業することを認めない内容になっています。

しかし、この規定例については、現在、「働き方改革」の一環として、「モデル就業規則」を副業を原則として容認する内容に修正することが検討されていることが報道されています。

このことからもわかるように副業に関する就業規則の規定については、以下の2つのパターンが考えられます。

副業に関する就業規則の規定の2つのパターン

パターン1:
原則として副業は禁止し、会社が許可した場合にのみ副業を認めるパターン。

パターン2:
原則として副業を自由とし、競業他社での副業など例外的な場合についてのみ禁止するパターン。

 

「パターン2」については、従業員の自由な働き方につながる側面がありますが、一方で、会社に対するロイヤリティが失われたり、副業先で自社の情報が漏えいするリスクが生じたりすることを考えておかなければなりません。

なお、2017年1月現在の厚生労働省のモデル就業規則の規定例は次のように、「遵守事項」の条文の中で、「⑥」として他の会社への業務に従事することを原則として禁止しています。

▶参考1:副業に関するモデル就業規則の規定例について

(遵守事項)
第●条 労働者は、以下の事項を守らなければならない。
①  許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。
② 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を行わないこと。
③ 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。
④ 会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。
⑤ 在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと。
⑥ 許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。
⑦ 酒気を帯びて就業しないこと。
⑧ その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと。

出典:厚生労働省ホームページより/https://goo.gl/XuyKl6

 

しかし、この厚生労働省モデル就業規則の規定では、例えば、他社に雇用されるのではなく、従業員自身が自営業者として副業を行うことが禁止されているとは言い難いという問題点があります。

副業の許可制を徹底するのであれば、例えば以下のように規定して自営業としての副業も含めて許可が必要な内容で定めておくべきでしょう。

▶参考2:咲くやこの花法律事務所の規定例について

第●条 従業員は、以下の事項を守らなければならない。

①~⑤ 略
⑥ 会社の事前の許可なく、法人その他の団体の役員に就任し、又は他に雇用され、若しくは自ら営利を目的とする業務を行わないこと。
⑦~  略

 

このように副業を原則として禁止する内容の就業規則とする場合は、他社に雇用されることによる副業だけでなく、自営業者としての副業も原則として禁止されることを必ず明記しておきましょう。

 

作成方法9:
「就業規則違反の場合の懲戒に関する規定」の作成方法

続いて、「就業規則違反の場合の懲戒に関する規定」の作成方法について見ていきたいと思います。

「就業規則違反の場合の懲戒に関する規定」の作成方法については以下の3つのポイントをおさえておきましょう。

「就業規則違反の場合の懲戒に関する規定の作成方法」の3つのポイント

ポイント1:
懲戒事由に該当しない場合は懲戒できないことに注意する。

ポイント2:
セクハラ(セクシャルハラスメント)、パワハラ(パワーハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメント)、パタハラ(パタニティハラスメント)が懲戒事由に含まれているかを確認。

ポイント3:
懲戒委員会の設置などの手続を定めることは避ける。

 

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
懲戒事由に該当しない場合は懲戒できないことに注意する。

従業員に対する懲戒は、就業規則に記載された懲戒事由に該当する場合にしかできないことが原則です。

判例上も、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを要する。」とされています(最高裁判所平成15年10月10日判決)。

そのため、懲戒事由は網羅的に抜けのないように規定することが重要です。

また、懲戒事由を定める就業規則の条文の最後に、「その他就業規則に違反し又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき。」という懲戒事由を必ず入れて、懲戒事由の漏れを防いでおくことを忘れないようにしましょう。後述の「懲戒事由に関するモデル就業規則の規定例」でも「1項⑧」にこの点が入っていますので参考にしてください。

ポイント2:
セクハラ(セクシャルハラスメント)、パワハラ(パワーハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメント)、パタハラ(パタニティハラスメント)が懲戒事由に含まれているかを確認。

セクハラ、マタハラ、パタハラ、パワハラについては就業規則の懲戒に関する規定で懲戒事由に入れておくことをおすすめします。

●セクハラ(セクシャルハラスメント)について

まず、セクハラについては、男女雇用機会均等法に基づき厚生労働省が定めた指針により、「セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること」が義務付けられています。

その一環として、セクハラ行為を懲戒処分の対象とすることを就業規則に明記しておくことが必要です。なお、「セクハラに関する懲戒処分について」はこちらでも紹介していますので参照してください。

●マタハラ(マタニティハラスメント)、パタハラ(パタニティハラスメント)について

マタハラ、パタハラについては、平成29年1月に施行される男女雇用機会均等法の改正にともない厚生労働省が定めた指針により、「就業規則等においてマタハラ・パタハラについて懲戒の対象となることを明確にし、これを従業員に周知・啓発すること」が義務付けられました。

そのため、マタハラ・パタハラについても懲戒処分の対象とすることを就業規則に明記しておくことが必要です。

「マタハラ、パタハラの定義や就業規則への記載方法について」はこちらの「ポイント6」の項目で、解説していますので、ご参照ください。

●パワハラ(パワーハラスメント)について

一方、パワハラについては、平成29年1月現在、就業規則に懲戒事由として明記することを義務付ける法令はありません。

しかし、パワハラに対する意識の高まりもあり、企業がパワハラを理由とする懲戒処分を検討しなければならなくなるケースは増えています。

その場合に就業規則にパワハラが懲戒事由として挙げられていないと、「ポイント1」でご説明した通り「懲戒事由に該当しない場合は懲戒できない」ことに照らして、不都合が生じます。そのため、パワハラについても懲戒事由に含めておくことをおすすめします。

「パワハラに関する懲戒処分について」はこちらでも解説していますので、ご参照ください。

 

以上、「セクハラ、マタハラ、パタハラ、パワハラ」についても懲戒事由に入れておくべきことをおさえておきましょう。

ポイント3:懲戒委員会の設置などの手続を定めることは避ける。

就業規則によっては、懲戒の際に、「懲戒委員会を設置して審議すること」などの手続きを定めているケースもありますが、これは避けたほうが良いです。

就業規則で、懲戒について「懲戒委員会を設置して審議すること」などの手続きを定めることについては以下の2つのデメリットがあります。

就業規則で懲戒委員会での審議の手続を定めることの2つのデメリットとは?

デメリット1:

懲戒委員会での審議などの手続を就業規則に定めてしまうと、懲戒の際に、委員会の構成の検討や委員会の開催に手間取り、迅速な懲戒処分ができないことになりかねません。

デメリット2:

懲戒委員会での審議などの手続を就業規則に定めてしまうと、万が一、懲戒委員会での審議をしないで懲戒処分をしてしまった場合に問題が生じます。

 

例えば、従業員を懲戒解雇した場合に、後日、懲戒解雇が不当だとして従業員から裁判を起こされることがあります。この場合に、懲戒委員会での審議などの手続を就業規則に定めていると、懲戒解雇の理由自体は正当なものであっても、「就業規則で懲戒委員会での審議が義務付けられているのに、懲戒委員会で審議されていない」ことを理由に、裁判所で不当解雇であると判断されてしまう危険があります。

懲戒処分の設置などの手続きは法律上求められているものではありません。もちろん、懲戒は従業員にとって重大な不利益を与えるケースもあるので、思い違いや事実誤認がないように慎重に検討して行うべきであり、社長の独断で決めるべきではありません。

しかし、慎重に検討するためには、懲戒を行う前に顧問弁護士に相談したり、社内で幹部の意見を聴いてから決定するなどすれば足り、「懲戒委員会の設置」などの形で就業規則に記載することは上記2点のデメリットが大きく避けるべきです。

最後に、懲戒事由に関する厚生労働省のモデル就業規則の規定例をご紹介すると、以下の通りです。

▶参考:懲戒事由に関するモデル就業規則の規定例について

(懲戒の事由)
第〇条 労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。
① 正当な理由なく無断欠勤が●日以上に及ぶとき。
② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。
③ 過失により会社に損害を与えたとき。
④ 素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。
⑤ 性的な言動により、他の労働者に不快な思いをさせ、又は職場の環境を悪くしたとき。
⑥ 性的な関心を示し、又は性的な行為をしかけることにより、他の労働者の業務に支障を与えたとき。
⑦ 第●条、第●条、第●条に違反したとき。
⑧ その他この規則に違反し又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき。

2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第●条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。
① 重要な経歴を詐称して雇用されたとき。
② 正当な理由なく無断欠勤が●日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき。
③ 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、●回にわたって注意を受けても改めなかったとき。
④ 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。
⑤ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき。
⑥ 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。
⑦ 素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。
⑧ 数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき。
⑨ 職責を利用して交際を強要し、又は性的な関係を強要したとき。
⑩ 第●条に違反し、その情状が悪質と認められるとき。
⑪ 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき。
⑫ 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき。
⑬ 私生活上の非違行為や会社に対する正当な理由のない誹謗中傷等であって、会社の名誉信用を損ない、業務に重大な悪影響を及ぼす行為をしたとき。
⑭ 正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は業務の正常な運営を阻害したとき。
⑮ その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

出典:厚生労働省ホームページより/https://goo.gl/XuyKl6

 

この厚生労働省のモデル就業規則の規定例では、「ポイント2」でご説明した、「セクハラ、パワハラ、マタハラ、パタハラ」のうち、セクハラについては、「1項⑤・⑥」、「2項⑨」で懲戒事由として挙げられていますが、マタハラ、パタハラ、パワハラについては規定が抜けており、改善が必要です。

なお、合わせて確認しておきたいのが「懲戒処分の制度について」です。懲戒処分の基本的なルールや種類について解説していますのでこちらもおさえておいてください。

 

作成方法10:
モデル就業規則の利用や雛形(ひな形)利用の際の注意点

次に、「モデル就業規則の利用や雛形(ひな形)利用の際の注意点」についてご説明しておきたいと思います。

1,モデル就業規則の利用の際の注意点について

まず、モデル就業規則についてですが、厚生労働省が作成した就業規則のひな形が厚生労働省のWebサイトで公開されています。

▼厚生労働省が作成の「モデル就業規則」は以下よりご覧いただけます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html

 

しかし、このモデル就業規則については、これまでのご説明でも触れたとおり、実際の経営の現場に適用にするにおいては不十分な点があり、条文の修正や追加が必要です。

また、モデル就業規則は、残業代について、労働基準法で支払いが必要とされる額よりも高い残業代を支払う内容になっており、この点も注意が必要です。

2,就業規則の雛形(ひな形)利用の際の注意点について

次に、インターネット上に掲載されていたり、各種書式集として提供されている就業規則の雛形(ひな形)を利用する際の注意点についてご説明します。

自社の就業規則を作成する際に何もないところから一から作り上げるというのは現実的ではなく、就業規則の作成の際にはこれらのひな形を利用するのが一般的だと思います。

咲くやこの花法律事務所でもオリジナルの就業規則の雛形(ひな形)を作成し、企業から就業規則の作成のご依頼を受けたときに活用しています。

しかし、このような雛形(ひな形)を利用する際は、以下の点に注意しておきましょう。

雛形(ひな形)を利用して就業規則を作成する場合の注意点

注意点1:

雛形(ひな形)の内容が自社の実情とかい離し、実行不可能な内容になっていないか、注意する必要がある。

注意点2:

雛形(ひな形)に記載されていないが自社において重要な項目についてはオリジナルの条文として盛り込む必要がある。

注意点3:

雛形(ひな形)の内容が自社の従業員から概ね納得が得られる内容になっているか確認し、従業員からの納得を得ることが困難な内容は修正を検討する必要がある。

注意点4:

雛形(ひな形)の内容が自社の従業員の労働条件の実情を不利益に変更するものになっていないか確認し、不利益に変更する内容については話し合いをして従業員を説得するか、あるいは不利益にならない形に就業規則を修正するのかを検討する必要がある。

 

就業規則は個々の会社の実情を踏まえたうえで作るべきものであり、決して雛形(ひな形)にある規定を吟味せずにそのまま使用することがないようにしましょう。

現時点で自社の就業規則に不安がある経営者の方は、労務トラブルで大きなリスクを背負わないためにも早めに労務に特に強い咲くやこの花法律事務所の「就業規則作成及びリーガルチェック」のサービスにお問い合わせ下さい。

咲くやこの花法律事務所の「就業規則の作成」や「リーガルチェック」に関するお問い合わせはこちら

 

就業規則の作成のプロセスについて

ここまでは、就業規則の意味や作成義務について、また労務トラブルの解決に役立つ就業規則の作成方法についてなど、就業規則における内容面についてご説明してきました。

以下では、内容面でのご説明を踏まえ、「就業規則の作成のプロセス」についてご説明します。

就業規則の作成のプロセスは以下の通りです。

就業規則の作成のプロセスについて

1:原案作成

2:従業員代表者からの意見聴取

3:就業規則の届出

4:就業規則の周知

 

以下で各プロセスの概略を説明すると次の通りです。

1:原案作成

通常は弁護士等の専門家に依頼して、就業規則の原案を作成することになります。

2:従業員代表者からの意見聴取

就業規則については従業員代表者からの意見聴取が義務付けられています。

従業員代表者からの意見聴取結果も踏まえて、従業員と話し合いを持ち、場合によっては就業規則の原案を従業員代表者からの意見を踏まえて修正することも検討しましょう。就業規則は会社が一方的に定めることも可能ですが、従業員全員が一致団結できる組織をつくるという就業規則の目的のためには、できるだけ従業員と話し合いを持ち、従業員が納得できる内容にしておくことが必要です。

3:就業規則の届出

意見聴取が終わった後に、就業規則を「労働基準監督署」に届け出ます。

4:就業規則の周知

作成した就業規則は、従業員に周知することが義務付けられています。

 

このうち、「2:従業員代表者からの意見聴取」については、「就業規則の意見書取得手続きについて」で詳しくご説明していますのでご確認ください。

以下では、「3:就業規則の届出」と「4:就業規則の周知」について見ていきたいと思います。

 

就業規則の届出について

就業規則を作成した後は、従業員代表者からの意見聴取手続きを行ったうえで、労働基準監督署に届け出ることになります。

就業規則の届出の際に注意しておきたいポイントは以下の通りです。

就業規則の届出の際に注意しておきたいポイント

ポイント1:
事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出ることが原則。

ポイント2:
従業員代表の意見書を添付する。

ポイント3:
就業規則は「2部」提出し、「1部」は受付印をもらったうえで自社で保管する。

 

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出ることが原則。

複数の事業所(支社、営業所、店舗など)がある会社では、就業規則は事業所ごとに作成し、事業所ごとにその事業所を管轄する労働基準監督署に届け出ることが原則です。

労働基準監督署の管轄についてはこちらを参照してください。

ただし、本社の就業規則と本社以外の事業所の就業規則が同じ内容の場合は、「本社一括届出制度」を利用して、本社所在地を管轄する労働基準監督署にまとめて届け出ることも可能です。

本社一括届出制度についてはこちらをご確認ください。

ポイント2:
従業員代表の意見書を添付する。

就業規則の届出の際は、事業所ごとに従業員代表者からの意見聴取手続きを行い、従業員代表者の意見書を添付することが義務付けられています。

ただし、従業員代表者と話し合っても、従業員代表者が意見書の提出に協力しないときは、その旨の報告書を作成して添付することにより、就業規則を労働基準監督署に届けることができます。

ポイント3:
就業規則は「2部」提出し、「1部」は受付印をもらったうえで自社で保管する。

労働基準監督署に提出する就業規則は、「2部」準備しましょう。「1部」は提出用、もう「1部」は自社保管用です。自社保管用(自社の控え)については労働基準監督署の受付印をもらったうえで保管し、就業規則を労働基準監督署に正しく届け出たことが後でわかるようにしておきましょう。

就業規則の届出については以上の3つのポイントをおさえておきましょう。

 

就業規則の周知について

就業規則を作成した後は、従業員全員に周知することが義務付けられています(労働基準法第106条)。

▶:労働基準法第106条の内容についてご紹介

労働基準法第106条

使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

 

そして、多くの裁判例で、周知がされていない就業規則は無効であると判断されています。裁判をすれば無効になるような就業規則では全く意味がありませんので、就業規則の周知を正しく行うことは非常に重要なポイントだといえるでしょう。

就業規則の周知方法としては以下のようなものがあります。

就業規則の周知方法の主な例

1,各事業所(支社、営業所、店舗など)の見やすい場所に掲示する。
2,書面で従業員全員に交付する。
3,メールで従業員全員に交付する。
4,自社システム内にデータとして保存し、従業員全員にデータへのアクセス方法を周知する。

 

そして、これらの周知は事業所ごとに行わなければなりません。

本社に行けば就業規則を見ることができるが、支店や支社では見ることができないというのでは、支店や支社の従業員に対して就業規則が周知されていたとはいえませんので、注意が必要です。

「就業規則の周知」は、就業規則の効力が認められるために必要な重要なポイントですのでおさえておきましょう。

 

就業規則の変更時に注意すべきポイント

ここまでは、就業規則の作成についてご説明してきましたが、以下では、既に就業規則がある会社がこれを変更する場合に注意すべきポイントをご説明したいと思います。

就業規則の変更時に注意すべきポイントとして以下の点をおさえておきましょう。

就業規則の変更時に注意すべきポイント

ポイント1:
不利益変更原則禁止のルールに抵触しないか注意する。

ポイント2:
直近の法改正、判例動向に対応する。

ポイント3:
現在の自社の実情と合致した内容になっているか再度確認する。

 

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
不利益変更原則禁止のルールに抵触しないか注意する。

就業規則の変更にあたっては、「就業規則の不利益変更原則禁止のルール」に抵触しないかを検討することが必要です。

まずは、「就業規則の不利益変更原則禁止のルール」の内容についてご説明したいと思います。

「就業規則の不利益変更原則禁止のルール」とは?

「就業規則の不利益変更原則禁止のルール」とは、「就業規則により従業員の労働条件を不利益に変更することは原則として許されない」というルールです。

例外的に「変更の内容が合理的な場合であり、かつ変更後の就業規則を周知させていた場合」に限り、就業規則により労働条件を変更することができるとされています。

つまり、従業員の労働条件を不利益に変更するためには、原則として各従業員からの個別の同意が必要です。

就業規則の変更手続きでは、従業員代表からの意見聴取手続きがありますが、各従業員からの個別の同意を得るものではないため、就業規則の変更手続きによっては従業員の労働条件を不利益に変更することができないことが原則です。

しかし、集団で統一的な労働条件を定める必要があり、従業員全員から個別の同意を得ることが難しい場合もあるため、法律は、「変更の内容が合理的な場合であり、かつ変更後の就業規則を周知させていた場合」に限り、従業員個人の同意を得なくても、就業規則の変更により労働条件を変更することを認めています。

この就業規則の不利益変更原則禁止のルールは、具体的には労働契約法第9条、第10条で次のように定められています。

▶参考:労働契約法第9条、第10条の内容について

労働契約法

第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。(以下略)

 

就業規則の変更に伴い、特に賃金制度を変更する場合や、年間の所定労働日数を変更する場合は、過去に裁判所で就業規則の不利益変更原則禁止のルールに抵触するとして、変更後の就業規則が無効とされた事例があり、注意が必要です。

以下で、就業規則の変更が裁判所で無効と判断された2つの裁判例をご紹介したいと思います。

●就業規則の変更が裁判所で無効と判断された裁判例

裁判例1:

年功序列型の賃金制度から成果主義型の賃金制度に移行する就業規則の変更を無効と判断した裁判例
(大阪地方裁判所平成19年1月19日判決)

事案の概要

バス会社において、年功序列型の賃金制度から成果主義型の賃金制度への移行を内容とする就業規則の変更を行ったところ、成果主義の下で賃金が減額された従業員らがこれを不服として訴訟を起こした事案です。

裁判所の判断

就業規則の変更を無効と判断し、賃金が減額になった従業員に対する賃金差額の支払いを命じました。

裁判所の判断の理由

裁判所は、「成果主義型の賃金制度は、若い従業員の意欲を引き出すことができるなどの利点があり、中長期的にみれば、新賃金体系を採用する必要性があるということができるが、有効な代償措置をとることなく、また、経過処置を設けることなく直ちに新賃金体系を導入しなければならないほどの差し迫った必要性があったということはできない。」として就業規則の不利益変更に合理性がないと判断しています。

弁護士による解説:

この判例が述べている「代償措置」とは成果主義型の賃金制度で賃金が減る従業員に対して不利益を緩和するために行う会社としての手当のことを指しています。

また、「経過処置」とは、賃金制度の変更により急激な不利益が発生しないように、変更を徐々に行うことを指しています。賃金の変更により、一部の従業員に賃金の減額が発生するときは、原則として「代償措置」や「経過処置」をとらなければならないというのが裁判所の考え方です。

 

裁判例2:

年間休日を4日削減する就業規則の変更を無効と判断した裁判例
(東京地方裁判所平成24年3月21日判決)

事件の概要

誕生日やクリスマスなどを休日としていた会社が、業績の大幅な落ち込みに対応するために、これらの休日を出勤日に変更し、合計で就業規則に定める年間の公休日を4日削減したことについて、従業員らが不服として訴訟を起こした事案です。

裁判所の判断

公休日を4日削減した就業規則を無効と判断しました。

裁判所の判断の理由

裁判所は、公休日を4日削減した就業規則の変更は不利益変更にあたるとしたうえで、以下の点を指摘して、就業規則の変更は無効としています。

1,就業規則変更により従業員が受ける不利益(年間休日4日削減)の程度は必ずしも小さいとはいえないこと。
2,業績の大幅な落ち込み自体は認められるとしても、就業規則変更を行って、従業員に上記の不利益を法的に受忍させることを正当化するまでの高度な必要性があるとまではいい難いこと。
3,会社と労働組合等との間で実質的な交渉がなされ、十分に利益調整がされた上で就業規則変更がされたとはいい難いこと。

弁護士による解説

この裁判例でもわかるように、裁判所は公休日の削減については、従業員が受ける不利益は小さくないと判断して、業績改善の必要性などがあったとしても、就業規則変更による公休日の削減を有効とは認めない傾向にあります。

 

以上、就業規則の変更が裁判所で無効と判断された裁判例をご紹介しました。

就業規則の変更については、不利益変更原則禁止のルールに抵触しないかを確認することが、重要なポイントの1つとなりますのでおさえておきましょう。

不利益変更にあたる場合でも、「変更の内容が合理的な場合であり、かつ変更後の就業規則を周知させていた場合」は、変更後の就業規則の効力が認められますが、そのためには、経過処置を設けて、従業員に急激な不利益が発生しないように変更が徐々に行われるように配慮したり、従業員との間で実質的な話し合いを持ちできる限り従業員の理解を得るプロセスを踏むことが重要です。

ポイント2:
直近の法改正、判例動向に対応する。

就業規則の変更の際は、変更後の就業規則が直近の法改正や判例動向に対応した内容になっているかについても注意が必要です。

就業規則にかかわる法律は、主に以下のようなものがあります。

就業規則にかかわる法律の例

・労働基準法
・労働契約法
・パートタイム労働法
・高齢者雇用安定法
・男女雇用機会均等法
・育児介護休業法
・労働安全衛生法
・公益通報者保護法

 

そして、これらの法律のどれも改正されないという年はほとんどありません。

そのため、法改正に対応するためには、毎年就業規則を変更することが本来必要です。
また、労務トラブルに関する判例も日々新しいものが出ます。

就業規則の変更の際は、変更後の就業規則が、直近の法改正や判例動向に対応した内容になっているかについて専門家のチェックをうけておきましょう。

なお、この記事の公開タイミングの2017年1月現在では、「育児介護休業法改正」や「男女雇用機会均等法改正」に伴う対応が重要になっています。

この点については、「育児介護休業法・男女雇用機会均等法改正に伴う就業規則改訂のポイント」を確認してください。

ポイント3:
現在の自社の実情と合致した内容になっているか再度確認する。

就業規則の変更の際は、変更後の就業規則の内容が現在の自社の実情と合致した内容になっているかについて再度確認することが必要です。

特に、変更前の就業規則を作成した時点から会社の実情に変化があったというときは、変更後の就業規則にも会社の実情の変化の内容を反映しておきましょう。

就業規則の変更時は、注意すべきポイントがたくさんあります。ここでご紹介した3点については、必ずおさえておきましょう。

 

就業規則の変更届について

就業規則の変更届の提出の仕方は、最初に作成した際の届出の方法と基本的には同じです。
以下の3点に注意しておきましょう。

就業規則の変更届における注意点

ポイント1:
事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出ることが原則。

就業規則の変更届についても、作成届の際と同様に、本社一括届出制度を利用しない限りは、事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出ることになります。

ポイント2:
従業員代表者の意見書を添付する。

就業規則の変更届においても、変更後の就業規則について従業員代表者から意見を聴取し、その意見書を添付することが必要です。

ポイント3:
就業規則は「2部」提出し、「1部」は受付印をもらったうえで自社で保管する。

変更届の際は、変更後の就業規則を「2部」、労働基準監督署に提出し、「1部」は受付印をもらったうえで自社で保管しましょう。

 

以上の3点をおさえておいてください。

 

就業規則作成の相談は労務に強い弁護士へ

以上、就業規則の作成、変更についてご説明しました。

就業規則は作成すればいいというものではなく、従業員の問題行動に正しく対応することができ、かつ、万が一労務トラブルが裁判に発展した時にも裁判所で通用する内容であることが必要です。

また、作成のプロセスについても、意見聴取、周知の手続を正しく行わなければ、裁判所で効力が否定されます。

さらに、一度作成した後も、最新の法改正や判例動向、社内の実情の変化にあわせて変更を行うことが重要です。

咲くやこの花法律事務所では、労務トラブルの事件、裁判を数多くご依頼いただき、その過程で多くの会社の就業規則を見てきました。しかし、残念ながら、労務トラブルの際に本当の意味で機能する就業規則を作成されている会社はほとんどみかけません。

典型的には以下のような問題がある就業規則が多くなっています。

問題のある就業規則の例

・社内の実情を踏まえない内容となっており、就業規則が形骸化しているケース。
・実際に支給されている賃金と就業規則や賃金規程に記載されている賃金の項目が異なるケース。
・最新の法改正や判例動向を踏まえないために、就業規則に効力が認められない条文が含まれているケース。
・使用者側の一方的な都合や利益のみが強調されているために裁判所で効力が認められる可能性がないと思われるケース。
・理念のみが先行し、規律として機能しない内容になってしまっているケース。
・作成後の意見聴取の手続が正しく行われていないケース。
・就業規則の周知が不十分で就業規則としての効力が認められないケース。

 

このような問題のある就業規則では、就業規則がないのとほとんど同じであり、労務トラブルに対応できず、会社に大きな損害をもたらす危険すらあります。

冒頭でご説明した、就業規則の目的である、「職場の規律意識を高め、従業員全員が一致団結できる組織をつくる」ためには、問題行動についても適切に対応でき、かつ、労務トラブル、労務裁判が発生した時にも会社が正しく対応することができる規律であることが必要です。

 

まとめ

今回は、「就業規則(正社員用)」の作成を題材として、「就業規則とは何か」から始まり、「就業規則の作成の際の基本的なルールや注意点」をご説明しました。

そのうえで、以下の各項目をピックアップして、具体的な就業規則の条文の作成方法をご説明しました。

●就業規則の適用の範囲に関する規定の作成方法
●休職に関する規定の作成方法
●始業時刻、終業時刻に関する規定の作成方法
●休憩に関する規定の作成方法
●有給休暇に関する規定の作成方法
●副業に関する規定の作成方法
●就業規則違反の場合の懲戒に関する規定の作成方法

さらに、就業規則の作成後の届出、周知、変更についてもあわせてご説明しています。

最後に、今回の記事を一通りご覧いただけますとわかりますが、「就業規則を正しく作成することの重要性」を肝に銘じておいてください。

就業規則作成、変更については、豊富な実績と経験を持ち労務に特に強い弁護士が多数所属する「咲くやこの花法律事務所」に、ご相談ください。

企業法務におけるお悩みは、企業法務に強い弁護士へ。「咲くやこの花法律事務所」へご相談下さい。
記事作成弁護士:西川 暢春
記事作成日:2017年1月20日

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