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クレーム対応とは?正しい方法や重要ポイントを徹底解説

クレーム対応について正しい方法など重要ポイントを徹底解説!
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

クレーム対応を上手にこなせずに悩んでいませんか?

クレーム対応にも正しい方法があります。もし、クレーム対応がうまくいっていないと感じる場合は、自分の対応方法が正しい方法からずれていないかを確認してみましょう。正しい対応ができていないと、いくら頑張って対応していても、いつまでも解決できず、疲弊する一方です。また、間違った対応がお客様の怒りを増幅させる恐れもあります。

クレーム対応は必ず正しい方法を把握してから行う必要があります。

この記事を読んでいただければ、クレーム対応を上手にこなすための、クレーム対応の方法やセオリーを理解していただけます。

それでは見ていきましょう。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

クレームがいつまでも続いてしまうときは、自社のクレーム対応の方法にも問題があることが多いです。

そのような場面で、クレームを解決するためには、弁護士に相談して、これまでの対応方法を改めることを検討することも必要です。長く続くクレームに対して間違った対応を続けていると、担当者の疲弊による離職のリスクもでてきます。早めにクレーム対応に強い弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

クレーム対応に関する咲くやこの花法律事務所の解決実績は以下をご参照ください。

 

▶参考情報:化粧品販売会社が、購入者から、「まぶたが赤くなった」旨のクレームを受けたところ、弁護士が対応して解決した成功事例

▶参考情報:衣類の購入者からの色落ち、色移りに関するクレームトラブルに対して弁護士が対応し、金銭賠償なしで解決した成功事例

 

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1,クレーム対応の基本と前提知識

クレーム対応の基本は、お客様の言い分に耳を傾け、謝罪をすることです。謝罪をすることでお客様の怒りをしずめ、落ち着いた状態で事実確認をして解決策を提示していきます。

お客様を根拠なくクレーマー扱いして話を聞き流したり、話を最後まで聞かずに言い訳したり、不誠実だと受け取られるような対応をすると、トラブルがより大きくなってしまいます。お客様に対応するときは、真摯な態度と丁寧な受け答えを心がけましょう。

また、クレーム対応の場面では組織を代表しているという意識を持つことも重要です。クレームは個人に対して寄せられるものではなく、会社や店など組織に対して寄せられるものです。たとえ担当外のクレームに対応することになった場合でも、「担当者ではないのでわからない」、「自分の責任ではない」という無責任な対応をしてはいけません。お客様から強い口調でクレームを受けたときに喧嘩腰になって対応したりするのも厳禁です。あくまで、組織の代表として冷静な対応に徹するようにしましょう。

 

(1)クレームの発生原因

クレームは、商品やサービス、あるいは担当者の接遇がお客様の期待を大きく下回った時に発生します。

購入した商品や提供されたサービスが、お客様の期待していた水準を下回ると不満が生じます。その不満の度合いがお客様の許容範囲を超えたときにクレームが発生するのです。期待の水準は人それぞれ異なるので、全てのお客様を満足させてクレームを発生させないようにすることは不可能です。商品やサービスの質を高めることももちろん大切ですが、そのような対策をしていてもクレームは必ず発生します。

そこで、起きてしまったクレームに対して適切な対応ができるよう対策をしていくことが重要です。

 

(2)クレームの種類

「クレーム」とはお客様からの不満意見のことですが、正当な不満意見や問い合わせから、悪意を持った言いがかりや要求まで様々なものがあります。

ここでは、大きく分けてどのような種類があるかを見ていきましょう。

 

1,一般的なクレーム

  • 商品の使い方がわからない
  • 通信販売で購入した商品が届かない
  • 間違った商品が届いた
  • 飲食店などでの料理への異物混入
  • 接客態度が悪い
  • 待ち時間が長い

 

など、お客様が商品やサービスに対して不満を持ったり、疑問を感じたりしたときに寄せられるものです。

不満というよりも問い合わせに近い内容や、正当な要求や提案なども多く含まれます。クレームを適切に解決してお客様と良い関係を保つことを目指しましょう。

 

2,悪意のあるクレーム

  • ネットに悪評を書かれたくなければ誠意を見せろ
  • 土下座して謝罪しろ
  • 不良品だから取りに来い、謝りに来い
  • お前じゃ話にならないから上司を出せ

 

など、過剰な要求をしたり、事実に反するクレームをつけて金銭の支払いを不当に求めたりするものもあります。

クレームの原因が店や会社にあったとしても、要求が応じるべき限度を超えていないかどうか、法的な観点からも見極めながら対応する必要があります。

 

3,的外れなクレーム

  • 購入した商品を知人に馬鹿にされた。恥をかいたから返金しろ
  • 手数料が高いから支払いたくない

 

など、八つ当たりや自分勝手な要求にあたるものです。

お客様の強い思い込みやお客様独自の感覚で寄せられるものが多く、対応が難しい場合があります。冷静に対応して不合理な要求は断ることも必要になります。

このように、「クレーム」といっても、その種類は様々です。まずはお客様の主張をしっかり聞き取り、どのようなクレームかを見極めて、クレームの種類に応じて適切な対応をすることが、正しい解決への道筋になります。

 

(3)クレーム客の心情

クレーム対応において重要なのはお客様の立場や気持ちになって考えることです。お客様が何に不満を感じてどのような対応を求めているのかを理解し、適切に対応することが求められます。そこで、クレームを入れるときのお客様の心情にどのようなパターンがあるのかを見ていきましょう。

 

1,困っている、怒っている(謝罪や問題解決を求める心情)

「購入した商品が壊れている」、「通信販売で商品を購入したのに届かない」、「説明書の内容が不十分で使い方がわからない」など、お客様が何かにお怒りのときやお困りのときに多くのクレームが発生します。

お客様の困惑や怒りに対して適切に共感を示しつつ、詳細を聞き取りましょう。またこの場合、お客様は謝罪と問題の解決を求めていますので、謝罪すべき点について明確に謝罪し、具体的な問題解決の方法を示して迅速に対応するようにしましょう。

 

2,損をしたくない、公平に扱ってほしい(他の客との待遇差への不快感)

「自分たちの方が先に注文したのにあっちのテーブルの方に早く料理が提供された」など、お客様がサービスに不公平さや不平等さを感じたときにクレームが発生します。

サービスを提供する側にとっては偶然そうなっただけで深い意味は無いという場合でも、お客様が「同じ代金を支払っているのに待遇に差があるのは許せない」と不快に感じるのは当然のことです。そのような心情を理解してしっかり話を聞き、丁寧に謝罪しましょう。

また、サービスや業務に改善すべき点がある場合は、同じようなクレームを生まないように対処したり、お客様への説明を工夫することも重要です。

 

3,教えてあげたい・良くしてあげたい(正義感や親切心)

「この商品はもっとこうした方がいい」、「この会社はもっとこうするべきだ」など、お客様が商品やサービスに対して問題や不満を感じたときに、指摘してあげようという気持ちでクレームが発生することがあります。

お客様のご意見をしっかり聞き、謝罪すべき点については謝罪した上で、「貴重なご意見をいただきありがとうございます」など、改善点を教えてくださったことについて感謝をお伝えしましょう。

 

4,金銭要求目的や不当な言いがかり

クレームの中には、当初から明確な悪意のあるものもあります。

不当ないいがかりをつけて金銭や品物を要求する目的が感じられるときは相手にのまれないように毅然とした対応をすることが必要です。また、対応が難しい場合は、一人で抱え込まずに上司などに相談し、組織として対応することも大切です。自社で解決が困難なときは、クレーム対応に精通した弁護士に対応を依頼することも検討するべきです。

理不尽な言いがかり的なクレームへの対応ついては、以下の記事や動画でも解説していますので併せてご参照ください。

 

 

▶参考動画:理不尽なクレーマーへの対応7つのポイントを弁護士が解説します。

 

2,クレーム対応が上手い人の特徴

クレーム対応が上手い人の特徴

クレームに適切に対応するには、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。

クレーム対応が上手い人の特徴をみていきましょう。

 

(1)仕事に対して十分な知識がある

まず、自社で取り扱っている商品やサービスについて十分な知識を有していないと、お客様からの問い合わせに対して十分な対応ができません。

例えば、「購入した商品の使い方がよくわからない」とクレームが入った場合に、商品知識の不十分な店員が対応すると、使用方法を調べるために長時間お待たせしたり、誤った使用方法をお伝えしてしまったりして、より大きなクレームに発展する原因を作ってしまうことがあります。

クレーム対応が上手な人は、日頃から商品やサービスに対して十分な知識を身につけていて、お客様から何か尋ねられたときに適切に回答できるようにしているのです。

 

(2)お客様の心を開くことができる

クレーム対応の基本は、お客様の話を聞き取って謝罪をしてから解決策を示すという流れです。お客様に満足していただくためには、適確な謝罪と、お客様の要求を適確に満たす解決策を示すことが必要です。

クレーム対応の上手い人は、話をただ表面的に聞くだけでなく、お客様の真の要求を理解することができています。

お客様の立場で想像力を働かせて話を聞き、真意がわかりにくいときは「こういうことでしょうか」などと問いかけてみます。お客様の心を開き、本当に望んでいることを把握した上で対応策を考えることが重要です。

 

(3)平常心を保つことができる

クレームを入れるお客様の中には、怒っていたり興奮していたりする方が多くいらっしゃいます。

クレーム対応が上手い人は、大声を出されたり罵声を浴びせられたりしても、それをまともに受け止めず聞き流すようにしています。

お客様の態度や発言に慌てたり怯えたりしていると正常な判断ができなくなります。平常心を保ってお客様の話から重要な部分をしっかりと聞き取り、問題の解決方法を冷静に考えることで適切な対応をすることができるのです。

 

3,クレーム対応の基本的な手順【フローチャート付き】

クレーム対応の基本的な流れは次のとおりです。

 

【クレーム対応の基本的なフロー図】

クレーム対応の基本的なフロー図

 

フローチャートの流れに沿ってポイントを見ていきましょう。

 

(1)挨拶・謝罪

まずはお客様の怒りや不満を少しでも和らげるために一言謝罪をしましょう。

この段階ではクレームの詳細がわかっていませんので、全面的に非を認めるのではなく、「お手数をおかけして申し訳ございません」、「ご心配をおかけしてしまい申し訳ございません」などとお客様にクレームを入れる手間を取らせたことや不安にさせたことに限定してお詫びするのがポイントです。

 

(2)お客様の話を聴く

次に、お客様からクレームの内容を詳しくお聴きします。

具体的に何が起きてお客様が何を望んでいるのかを正確に把握することが重要です。

 

(3)事実調査

クレームの内容を聴き取ったら事実調査を進めます。

お客様の主張するクレーム内容が事実かどうか、また事実である場合その責任が自社にあるのかどうか、という2点を明らかにする必要があります。担当者からの聴き取りや記録の確認などにより事実関係を出来る限りしっかりと調査しましょう。

 

(4)対応策の検討

事実調査の次は対応策を考えます。

問題の重大さや自社の責任の大きさと、対応にかかるコストや手間とのバランスを考えて、お客様にどのような対応策を示せば良いかを検討しましょう。

 

(5)謝罪し、対応策を伝える

事実調査の結果、会社に責任があると判明した場合は、改めてお客様に対して謝罪をします。

言い訳や誤魔化し、責任逃れのように受け取られる態度はお客様の怒りを増大させてしまいます。認めるべきことは潔く認めて真摯に謝罪しましょう。その上で、お客様に対応策・解決策を伝えます。

 

(6)結びの言葉

クレーム対応を終えるときには、今後につながるように結びの言葉を添えます。

お客様に対して「この度は貴重なご意見をありがとうございました」と感謝を伝えたり、「また何かございましたらいつでもご連絡ください」と今後も真摯に対応していく姿勢を示したりすることで信頼獲得につなげられるようにするとよいでしょう。

 

4,電話でのクレーム対応のポイント

電話でのクレーム対応のポイント

電話でのクレームはお客様がより感情的になりやすい場面です。

まずは、お客様を落ち着かせるために、お客様の腰を折らずに話を聴き、できるだけ早い段階で、お客様に不快な思いをさせたことや手間を取らせたことなどをお詫びすることが必要です。

自社に責任があるかどうかわからない段階では、自社の非を全面的に認めてお詫びするのではなく、不快な思いをさせたことや手間を取らせたことに範囲を限定してお詫びすることがポイントとなります。

また、クレームの電話に自社から折り返しの電話をかけるときや、クレーム対応の電話を切るときもそれぞれ注意すべき点があります。電話でのクレーム対応の重要ポイントの詳細は以下の記事で解説しています。電話でのクレーム対応に使える対応例文なども掲載していますので、ご参照ください。

 

 

5,メールでのクレーム対応のポイントと対応例文

メールでのクレーム対応は、お客様の意図や感情がくみ取りにくく、電話での対応よりも難しい側面があります。また、不適切な対応をしてしまうと、そのメールがSNSなどに投稿され、企業として非難を浴びる危険もあることに注意が必要です。

一方で、メールを送る前に上司が事前にチェックする等、担当者の対応をコントロールしやすいという側面もあります。

メールでのクレーム対応が多い会社では、クレームの内容ごとに対応例文を事前に作成し、担当者に共有しておくことで、自社のクレーム対応の質をあげることも重要です。

クレーム対応のメールに共通する注意点と、具体的なクレーム対応の例文の使い方について、以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

6,接客に関するクレーム対応のポイント

「接客態度が悪い」などのクレームが入ったとき、クレームに対応するときの態度でさらにお客様を怒らせてしまう恐れがあります。

対面でお客様と接する仕事の場合、どのようなことに注意すべきでしょうか。

まず、話をお聞きするときに腕を組んだり後ろで手を組んだりしてはいけません。お客様には威圧的で尊大な態度に見えてしまいます。また、笑顔で接客することは大切ですが、クレームを受けているときは笑顔で接客してはいけません。神妙な表情かつ柔らかい表情で話を聞きましょう。お客様の話をさえぎったり、疑ったりすること、言い訳をすることも絶対にしてはいけません。

接客態度に関するクレームには、理不尽な内容で謝る必要が無いのではないかと思われるケースもあるでしょう。そういう場合でも、「ご不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございませんでした。」などと不快な気持ちにさせたこと謝罪し、お客様の怒りが収まるようにしましょう。

接客業に関するクレーム対応については、以下の記事で重要な4つのポイントを解説していますのでご参照ください。

 

 

7,返金要求のクレーム対応について

返金要求のクレーム対応をしなければならない場面では、まず、「法的な返金義務があるかどうか」を正しく見極めることが必要です。

特に、特定商取引法や消費者契約法上、返金すべき義務があるにもかかわらず、ないかのように誤解して対応してしまうことには大きな問題があります。

その場合、返金を拒否すると、法令違反として営業停止処分を受けたり、訴訟トラブルに発展するなどのリスクがあります。

一方、返金義務がないのにあるかのように誤解して対応してしまうことにも大きな問題があります。そのような場合、本来必要な対応以上の対応を、クレーム客に約束してしまうことになり、後で誤解に気づいても、撤回することが難しくなります。

初期段階で返金義務の有無について正しく判断し、対応を決めることが必要です。

返金要求のクレーム対応への対応については以下の記事や動画で解説していますので、ご参照ください。

 

 

▶【参考動画】西川弁護士が「返金要求のクレーム対応!返金を求められた場合応じる必要があるのか?【前編】」を詳しく解説中!

 

8,納得しない場合

納得しない場合

ここまでご説明した対応を行ってもクレーム客が納得せず、クレームが解決しない場合は、クレーム客が納得しない理由を考えて、もう一度対応の方法を見直してみることが必要です。

クレーム客が納得しない場面は、大きく分けると「主に会社側に問題があるケース」と「主にクレーム客の側に問題があるケース」があります。

 

(1)会社側に問題があるケース

会社側から提示している解決案の提示内容が不合理であることがクレームが解決しない原因となっているケースがあげられます。

お客様に大きな迷惑をかけてしまった場合は、それに見合う金銭的な提示をしなければならず、会社側が不合理に低い解決案に固執してしまうと、クレームが解決に至りません。

ただし、会社としては、会社から提示した解決案が妥当であると思いこんでしまっていることが多いので、クレーム対応に精通した弁護士に相談するなどして、第三者的な視点で会社からの提示内容をチェックしてみることが必要でしょう。

 

(2)「謝りに来い」「上司を出せ」等の理不尽な要求や過剰要求があるケース

クレーム客の過剰要求がクレームを解決できない原因になっているケースや、クレーム客の側で 「自分の筋を通す」ことに強くこだわっていることがクレームを解決できない原因になっているケースもあります。

合理的な範囲を超える損害賠償を要求したり、些細なミスであるにもかかわらず「謝りに来い」「上司を出せ」などの特別対応を求めるケースがその典型例です。

こういったタイプのクレーム客に対しては、ここまでご説明した「クレーム客の納得、了解を得て解決する」という路線ではなく、「クレーム客の過剰な要求を断り、あきらめさせる」という路線での対応が必要になります。

例えば、自社で管理するお客様の個人情報(住所、氏名、メールアドレス、電話番号)を外部に漏洩してしまったとします。

この場合、慰謝料の支払いが必要ですが、このケースでの個人情報漏洩の損害賠償について、法的にみて妥当な金額はせいぜい1万円までです。

これに対して、お客様が100万円を請求する場合は、法的に妥当な慰謝料のみを会社から提示して、それ以上のご要望はお断りする対応をする必要があります。

クレーム対応というとお客様との合意をゴールとして考えがちですが、クレーム客の側に問題があるケースでは、法的に妥当な提示をしたうえで合意はできなくてもかまわないと割り切ることが必要です。

クレーム客が納得しない場面や理不尽なクレーマーへの対応の場面でのポイントについては以下でより詳細に解説していますのでご参照ください。

 

 

9,自社に非がない場合のクレーム対応

クレーム対応の過程で、自社には非がなかったことがわかるケースもあります。

それにもかかわらず、クレーム客側が理不尽、不合理に要求を繰り返す場合は、自社に責任がないことやこれ以上対応できないことを毅然とした態度で伝えることも必要です。

しつこく電話での要求が繰り返される場合は、「先日お伝えした通り、会社としてご要望にお応えすることはできません。これ以上お話しすることはできませんので、電話を切らせていただきます。」などと伝えて、電話を切ることが必要です。

自社に非がない場合のクレーム対応の重要ポイントは以下の記事で解説していますのでご参照ください。

 

 

10,マニュアルの整備が必要

クレーム対応で注意すべきことの1つに、担当者によって対応が異ならないようにする、というものがあります。

担当者によって対応に違いがあると「前回はこう対応をしてくれたのに今回はダメなのか」、「知人は交換してもらえたのになぜ私はできないのか」などとお客様が不公平さを感じて二次クレームにつながります。

そこで、クレーム対応のマニュアルを整備しておく必要があります。マニュアルを作成しておくことで、どの従業員でも一定の水準でクレームに対応ができるようになります。

また、あらかじめ定められた手順に沿って対応を進めることで、「この場合はどうすれば良いのか」と悩むことが減り、迅速な対応が可能になります。

マニュアルには、自社が受けることが多いクレームについて、対応の具体的な手順を定めておきましょう。

クレームの受領、クレーム内容についての調査、対応策の検討、対応策の実施という段階ごとに、具体例を交えて作成していきます。

お客様への対応だけでなく、社内での報告や相談のルールもまとめておく必要があります。
従業員が苦情対応の流れを理解しやすくなるように工夫して、クレーム対応の質を保つように心がけましょう。

現在、自社にクレーム対応のマニュアルがない場合は、今後のためにも自社専用のマニュアルを作成されておかれることをおすすめします。

なお、マニュアル作成についてお困りの際は、クレーム対応に強い弁護士にご相談ください。弁護士が法的な視点やクレームについての解決経験を踏まえて、マニュアル作りをサポートします。

 

 

11,クレームを増やさないために会社ができること

クレームを増やさないために会社ができることは何があるでしょうか。

 

(1)二次クレームを出さないこと

まず重要になるのは二次クレームを出さないということです。

クレームの初期対応を誤ってお客様の怒りを増大させ、より大きなトラブルにつながってしまうことがあります。

できるだけ迅速かつ適切な対応を取ることでクレームを最小限にとどめるようにしましょう。

そのためには、前述のクレーム対応マニュアルを整備して、会社全体としてクレーム対応の質を向上させることが必要です。

 

(2)社内でしっかり情報共有すること

次に、起きてしまったクレームを社内でしっかり情報共有することが必要です。

情報を共有することで同じようなクレームが発生したり、クレーム対応時に同じような失敗をしたりすることを防ぐことができます。

 

(3)お客様への事前の情報提供を工夫すること

さらに、お客様への事前の情報提供を工夫することも大切です。

クレームは、商品やサービスがお客様の期待を大きく下回った時に発生します。逆に言えば、商品やサービスの問題点があらかじめわかっていたときは、予想通りということになるので、クレームは発生しません。

例えば、待ち時間についてのクレームを防ぐためには、あらかじめ、自店のウェブサイトで、どの時間帯はどのくらいの待ち時間になるのかということをわかりやすく表示しておくことが有効です。

 

12,業種ごとのクレーム対応について

業種ごとの独特のクレームには、その特徴に応じた対応が必要です。

以下で業種ごとのポイントを見ていきたいと思います。

 

(1)製造業や建設業、解体業に多い騒音クレーム

これらの事業ではどうしても騒音が発生してしまうとうケースがありますし、事業に伴う騒音が必ずしも違法であるということではありません。騒音については、騒音規制法という法律がありますので、この法律の内容も踏まえた対応が必要です。

 

 

騒音クレームについての対応方法の詳細を以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

(2)通販のクレーム

通販のクレームは、顔の見えない相手からのクレームという特徴があり、感情的な要求や不当な要求がされやすい傾向にあります。また、消費者向けの通信販売には、特定商取引法の通信販売に関する規定が適用されることが多く、この点にも注意して対応することが必要です。

 

 

通販のクレーム対応については、以下で詳細を解説していますのでご参照ください。

 

 

(3)住宅販売やリフォームのクレーム対応

住宅販売やリフォームのクレームは、いったんクレームが始まると、細かく些細な点までクレームが繰り返されるようになり、なかなか解決に至りにくいことが特徴です。

また、リフォームについては、施主が支払うべき残金が残っている段階で、残金の支払いを免れる目的で施主が不合理なクレームを付けるケースもあり、工事代金未払いの回収方法とセットでクレーム対応を考える必要があります。

住宅業界(新築・中古住宅販売やリフォーム業)のクレームについては以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

(4)飲食店のクレーム対応

飲食店では接客態度に対するクレームのほか、衛生面や異物混入のクレーム、腹痛・食中毒のクレームなどがあります。特に、腹痛や食中毒、異物混入のクレームについては、間違った対応をすると重大な問題につながりかねず、注意が必要です。また、クレーム対応と合わせて保健所への対応も検討することが必要です。

飲食店のクレーム対応については以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

 

また、トラブルを繰り返す客に対しては、必要に応じて、出入り禁止などの強い対応が必要になることもあります。トラブル客への出入り禁止の伝え方については、以下で詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

 

(5)病院・クリニックのクレーム対応

病院やクリニックでは、治療方法や治療結果に対する不満だけでなく、待ち時間や接遇についてのクレームも多く発生します。

患者の中には、クレームをエスカレートさせ、いわゆるモンスターペイシェント事案に発生するケースもあります。病院、クリニックのクレーム対応では、医師法や歯科医師法の応召義務を踏まえた対応が必要です。

病院、クリニックのクレーム対応については、以下の記事や動画で詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

 

▶参考動画:西川弁護士が「モンスターペイシェントとは?医療機関のクレーム対応の基本5つを弁護士が解説」を詳しく解説中!

 

(6)化粧品やエステのクレーム対応

化粧品やエステ等の業界では、肌荒れやアレルギー反応についてのクレームの対応が必要になることがあります。

このようなクレームはお客様の健康にかかわるものですので、慎重な対応が必要です。また、化粧品やエステ施術と肌荒れなどの症状との因果関係についても正しく判断することが重要です。

化粧品やエステの業界のクレーム対応については、以下をご参照ください。

 

 

(7)教育現場のクレーム対応

学校や塾などもクレームが起きやすい業種です。

中には、学校が対応すべき範囲を超えた要求を、繰り返し執拗に行うことで学校の運営に支障を生じさせる、モンスターペアレントも存在します。また、教育現場のクレーム対応は、保護者への対応と同時に、児童や生徒への配慮が必要になるということが、クレーム対応を難しくさせる原因の1つになっています。

教育現場のクレーム対応については、以下の記事や動画で解説していますので、あわせてご参照ください。

 

 

▶参考動画:西川弁護士が「モンスターペアレントとは?学校・幼稚園・保育園・学習塾のクレーム対応4つのポイントを解説」を詳しく解説中!

 

(8)派遣業のクレーム対応

派遣業のクレーム対応は金銭的な賠償請求の問題になりやすいこと、また、派遣先や派遣社員の要望がからみあうことで問題が複雑化しやすいことが特徴です。特に、派遣先から、派遣社員の不正行為によって被った損害の賠償を求められたり、派遣社員の業務上のミスによって発生した損害の賠償を求められたときは、賠償額が大きくなりやすいので注意が必要です。

派遣業のクレーム対応のポイントは以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

13,自社で解決できない場合はクレーム対応に強い弁護士に相談

クレームの内容によっては自社で手に負えないこともあるでしょう。

例えば、以下のようなケースです。

 

  • お客様に大きな迷惑をかけてしまい賠償が必要だがどのように賠償交渉すればよいかわからないケース
  • 執拗に理不尽な言いがかりのクレームをつけられているケース
  • お客様がクレーマー化してしまい、いつまでも納得せず、解決できないケース

 

このようなケースのクレーム対応を自社でやろうとしても解決できないだけでなく、自社の担当者が疲弊して、職場環境が悪化したり、担当者の離職につながってしまう危険があります。

自社で手に負えないと判断した場合は、早めに弁護士に相談していただくことをおすすめします。クレーム対応を弁護士に依頼し、弁護士がクレーム客との間で話し合いを行い、クレームを解決することがベストです。

弁護士にクレーム対応をご依頼いただくことで、以下のようなメリットがあります。

 

  • 相手の要求に対して、法律、判例のルールに基づく話し合いが可能になる。
  • 過大な要求については、弁護士から毅然とした対応で断ることができる。
  • 第三者である弁護士に依頼することで、「お客様と会社」という上下の関係から離れて、対等な立場での話し合いが可能になる。
  • 金銭を支払って解決する場面では適切な示談書を作成することで、再度の金銭請求を受けることを防ぐことができる。
  • クレーム対応を弁護士にまかせることで、自社は事業に専念することができる。

 

クレーム対応を弁護士に依頼するメリットについては以下でより詳しくご説明していますのでご参照ください。

 

 

14,クレーム対応について弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

咲くやこの花法律事務所では、企業のクレーム対応について、多くの企業からご相談、ご依頼を受け、弁護士が直接、相手方との話し合いによりクレームを解決してきました。

住宅関連、建築関連、自動車関連、化粧品関連、病院・クリニック・整骨院関連、通販事業関連、派遣業関連など様々な業種のクレームについてご依頼をお受けして解決してきた実績があります。

また、理不尽なクレームはカスタマーハラスメントとも呼ばれ、職場環境を悪化させ、現場を疲弊させます。カスタマーハラスメントの問題は、担当者個人に抱え込ませることなく、企業として対応することが重要です。

クレーム対応やカスタマーハラスメント対策にお困りの際は、自社で誤った対応をして解決が難しくなってしまう前に、クレーム対応に強い弁護士がそろう咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所のクレーム対応に強い弁護士への相談費用

●30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

15,クレーム対応でお困りの際は顧問弁護士サービスのご利用もご検討ください。

企業内でクレームが上手に解決できない状況が続くと、担当者がストレスをかかえて離職するといった事態が増えてしまいます。

クレーム対応についても、常時弁護士に相談しながら対応する体制を作り、企業として担当者のクレーム対応をバックアップすることが必要です。

咲くやこの花法律事務所では、クレーム対応でお困りの企業に対して、現場担当者から弁護士にいつでも直接電話等でご相談いただくことができる顧問弁護士サービスによるサポートを提供しています。顧問弁護士がいれば、弁護士に相談しながらクレーム対応をすることができ、初期対応の誤りにより問題をこじらせてしまうことを防ぐことができます。また、自社で解決が困難なクレームについては、弁護士に対応を依頼することにより解決することができるため、現場で対応する従業員にも大きな安心感を与えることができます。

咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについては以下をご参照ください。

 

 

記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年3月2日

 

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    企業法務に強い弁護士紹介

    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
    池内 康裕 弁護士
    池内 康裕(いけうち やすひろ)
    大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
    片山 琢也 弁護士
    片山 琢也(かたやま たくや)
    大阪弁護士会/京都大学法学部
    堀野 健一 弁護士
    堀野 健一(ほりの けんいち)
    大阪弁護士会/大阪大学
    所属弁護士のご紹介

    書籍出版情報


    労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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