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カスハラの事例!実際にあったカスタマーハラスメントの例を詳しく解説

カスハラの事例!実際にあったカスタマーハラスメントの例を詳しく解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

多くの企業や医療機関、社会福祉法人、地方自治体でカスタマーハラスメント(カスハラ)の問題が起きています。なかにはカスハラが原因で精神を病んだり離職する人も出るなど被害は深刻化しており、企業や自治体による対策が重要になっています。

この記事では、企業や自治体におけるカスハラの事例や、カスハラの被害が多い業種ごとの事例をご紹介します。

カスハラの事例から、その詳しい内容や業種による違いなどを知ることは、自社に適した対策を講じるためのヒントになります。カスハラ対応のマニュアルを作る際も、カスハラの事例について網羅的に対策を立てることが重要です。この記事を読めば、具体的にどういったカスハラがあるのかを知ることができるはずです。

それでは見ていきましょう。

 

▶参考情報:カスハラについて企業がとるべき対策は以下の記事や動画で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?企業がとるべき6つの対策

 

・この記事の著者 弁護士 西川暢春が「カスタマーハラスメントとは?企業がとるべき対応7つ」を詳しく解説中!

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

カスハラのトラブルについて自社のみで対応しようとすると、現場の従業員に多大な負担がかかり、自社本来の業務に集中することができないといった問題が生じます。悪質なカスハラ被害にお困りの際は、従業員の負担を減らすためにも弁護士に対応を依頼するのがおすすめです。

咲くやこの花法律事務所では、カスハラ問題に精通した弁護士が企業・事業者からのご相談をお受けしています。カスハラにお困りの企業の方は是非ご利用ください。

カスハラ対応を弁護士に相談すべき理由については以下で解説していますのでご参照ください。

 

▶参考情報:カスハラ(カスタマーハラスメント)対応を弁護士に相談すべき理由

 

また、悪質クレーマー対応に関する咲くやこの花法律事務所のサポート内容は以下をご参照ください。

 

▶参考情報:クレーム対応やクレーマーに強い弁護士への相談サービス

 

▼カスハラ関連について、今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

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1,カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?

カスハラの事例についてご紹介する前に、まず、カスハラとは何かについて簡単にご説明します。

 

(1)カスタマーハラスメントとは?

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客等からのクレームや言動のうち、要求の内容の妥当性に照らして、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、その手段・態様により、労働者の就業環境が害されるものを指します。

日本最大の産業別労働組合であるUAゼンセンが2024年1月~3月に行ったアンケート調査によると、「直近2年以内に迷惑行為被害にあったことがある」と回答した人の割合は46.8%に上りました。

カスハラが原因で精神を病み、うつや退職に追い込まれる人もいるなど、深刻な社会問題の一つとなっています。

 

 

カスハラに該当する行為には、主に以下のようなものがあります。

カスハラに該当する行為例

 

(2)厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルに挙げられた事例

厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルでは、以下のように整理されています。

 

1.「顧客等の要求の内容が著しく妥当性を欠く場合」

  • 企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合
  • 要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合

→ クレーム・言動の手段・態様がどのようなものであっても、カスタマーハラスメントに該当する可能性が高くなる

 

2,「顧客等の要求の内容に妥当性がある場合」

→ クレーム・言動の手段・態様の悪質性が高い場合は、カスタマーハラスメントに該当することがある。

 

そのうえで、以下の例が挙げられています。

 

① 要求内容の妥当性にかかわらずカスハラとされる可能性が高いもの
  • 身体的な攻撃(暴行、傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
  • 威圧的な言動
  • 土下座の要求
  • 繰り返されるしつこい言動
  • 拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
  • 差別的な言動
  • 性的な言動
  • 従業員個人への攻撃、要求

 

② 要求の妥当性に照らしてカスハラとされる場合があるもの
  • 商品交換の要求
  • 金銭補償の要求
  • 謝罪の要求(土下座を除く)

 

▶参考情報:厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルは、以下からご参照ください。

厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(pdf)

 

2,実際にあったカスハラの事例

次に、報道事例や公表されているアンケート調査の結果から読み取れる実際にあったカスハラの事例をご紹介します。

 

(1)暴行・傷害などの身体的な攻撃

  • 家賃を支払うよう伝えた賃貸保証会社の従業員の首元を掴み壁に押し付ける(賃貸保証会社)
  • 鉄道係員に体当たり・頭突きをする(鉄道会社)
  • 酩酊状態の乗客が声をかけた鉄道係員に殴りかかる(鉄道会社)

 

(2)暴言・脅迫などの精神的な攻撃

  • 「死ね」「馬鹿」などの暴言を吐く(食品会社)
  • 「今から行くから首を洗って待ってろ」「インターネットでさらしてやる」などと脅迫する(市役所)
  • 「ぶっ殺すぞ!」と吐き捨て、強くカウンターを叩く(航空会社)
  • 精算機のエラー音が鳴動したため対応しようとした鉄道係員に対し「早くしろ、クズ!」「殺すぞボケ!」「人殺しの会社で働いてて気持ちいいんか」などといった暴言を吐く(鉄道会社)

 

(3)不当な要求

  • 商品に傷がついていたとして店員に土下座を要求する(アパレルチェーン店)
  • 利用者家族が執拗に過度なケアを要求する(介護施設)
  • 汚れがないのに宿泊のたびに清掃不備を指摘し、部屋のグレードアップの要求または客の前での清掃を要求する(ホテル)

 

(4)継続的・執拗な言動

  • 短時間に集中して「殺すぞ」「センターに行く」などの暴言のほか、無言の入電を100回以上繰り返す(鉄道会社)

 

(5)拘束的な行動

  • 6時間に及ぶ長電話をする(市役所)
  • 真夏の炎天下の中、配達員に対し長時間の説教をする(運送会社)

 

パーソル総合研究所が2024年2月に実施したカスタマーハラスメントに関する定量調査の結果によると、カスハラ被害の内容で最も多かったのは「暴言や脅迫的な発言」が60.5%で、次いで「威嚇的・乱暴な態度」が57.7%となっています。

実際にあったカスハラの調査データ

・参照元:パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」(pdf)

 

3,犯罪に該当するカスハラの事例

カスハラの中には犯罪に該当するものもあります。以下で犯罪に該当するカスハラの事例についてご紹介します。

 

▶【解説動画】この記事の著者 西川 暢春が「カスハラが犯罪になる事例!どこから通報すべき?弁護士が解説」を詳しく解説中!

 

(1)傷害罪・暴行罪

殴る、蹴る、物を投げつけるなどの行為(「不法な有形力の行使」と呼ばれます)をした結果、被害者が怪我をした場合は傷害罪(刑法第204条)、怪我に至らなかった場合は暴行罪(刑法第208条)となります。

以下で暴行罪に該当するカスハラの事例を1つご紹介します。

 

1,首元を掴んで壁に相手の身体を押し付けた事案

2024年6月、賃貸保証会社の従業員に家賃を支払うように言われたことに激昂した66歳男性が従業員の首元を掴み、壁に相手の身体を押し付けた事案です。従業員はその場ですぐに警察に通報し、駆け付けた警察官が男を現行犯逮捕しました。

 

▶参考情報:刑法第204条

人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する

 

▶参考情報:刑法第208条

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

・参照元:「刑法」の条文(e-Gov法令検索)

 

(2)脅迫罪

脅迫罪(刑法第222条)は、被害者またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産などに対して害を加える旨を告げた場合に成立します(例:「殺してやる」「お前の子どもを痛い目にあわせてやる」など)。

以下で脅迫罪に該当するカスハラの事例をご紹介します。

 

1,「木刀で後ろからぶち破ってもいい」などと脅迫した事案

愛媛県伊方町の役場でのカスハラの事案です。50代男性が担当者の対応に不満をもち、夜間に職員2人を自宅に呼びつけ、翌日未明まで約8時間、「木刀で後ろからぶち破ってもいい」「家はわかる。いなかったら嫁もいるだろうから待たせてもらう」などと脅し、謝罪を強要しました。

被害にあった職員の親族から刑事告発を受け、愛媛県警は2024年5月に男性を脅迫等の容疑で書類送検しました。

 

▶参考情報:刑法第222条

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

・参照元:「刑法」の条文(e-Gov法令検索)

 

(3)名誉毀損罪(刑法第230条)

名誉毀損とは、公然と事実を摘示し、人の社会的評価を低下させることを指します。

例えば不特定多数の人が閲覧可能なSNS上で事実に反する書き込みをして店や会社を非難するといった行為が名誉棄損に該当します。また、書き込みの内容によっては、事実に反しない書き込みであっても名誉棄損になることがあります。

以下で名誉毀損罪に該当するカスハラの事例を1つご紹介します。

 

1,店員に土下座をさせ、その様子をSNS上にアップロードした事案

2013年、アパレルチェーン店で女性がタオルケットに穴が空いているというクレームをつけて店員に土下座をさせ、土下座をしている画像とともに店舗と店員の実名を出したコメントをX(旧Twitter)に投稿した事案です。この投稿は瞬く間にネット上で拡散され話題となり、投稿者を批判するコメントが殺到しました。

女性は名誉毀損罪で略式起訴され、30万円の罰金刑が科されました。

 

▶参考情報:刑法第230条

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

・参照元:「刑法」の条文(e-Gov法令検索)

 

(4)強要罪

強要罪とは、脅迫または暴行により、人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害する場合は、強要罪が成立します。脅迫により、理由なく、土下座させたり、謝罪文を書かせたり、代金を免除させたりといった行為は強要罪になり得ます。

以下で強要罪に該当するカスハラの事例を1つご紹介します。

 

1,誤配送トラブルが続いたことから宅配便の営業所長を土下座させた事案

2023年、男性が、宅配便の誤配送トラブルが2回続いたことから、大分市内にある運送会社の受付カウンターで、営業所長に「どう責任とるんか」「ミスした奴をクビにしろ」などと大声で怒鳴り、土下座をさせ、その様子を携帯電話で撮影した事案です。男性は強要罪で起訴され、裁判所は、「クレームの域を明らかに超えた非難に値する行為」として、男性に懲役10か月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。

 

▶参考情報:刑法第223条1項

生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する

・参照元:「刑法」の条文(e-Gov法令検索)

 

(5)不退去罪

不退去罪(刑法第130条)は、退去するように求められたのに、正当な理由なく、店舗等から退去しなかった場合に成立する犯罪です。

以下で不退去罪に該当するカスハラの事例を1つご紹介します。

 

1,病院に4時間以上居座った事案

2024年3月、新潟市内の病院施設において、男性が職員から再三にわたり退去を求められ、退去命令書も交付されても無視して居座ったため、110番通報され、かけつけた警察官に現行犯逮捕されました。

 

▶参考情報:刑法第130条

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

・参照元:「刑法」の条文(e-Gov法令検索)

 

(6)業務妨害罪

業務妨害罪(刑法233条、234条)は、偽計や威力を用いて業務を妨害した場合に成立する犯罪です。偽計とは、人をあざむき、人の不知または錯誤を利用することをいうとされ、威力とは、人の自由意思を制圧するに足る勢力をいうとされます。

以下で、業務妨害罪に該当するカスハラの事例を1つご紹介します。

 

1,多数回のクレーム電話を入れた事案

2019年、KDDIとの契約をめぐりトラブルになり、公衆電話から「契約違反の不当な業務の謝罪に来い」などと、8日間で400回を超えてKDDIのフリーダイヤルに電話し、オペレーターの業務を妨害するなどした疑いで、71歳男性が逮捕されました。

また、迷惑電話に関しては、中華料理屋に約970回の無言電話をかけた行為が、「その間一時的にもせよ相手方の電話の発着信を不能ならしめた」として、偽計業務妨害罪とされた裁判例があります(東京高等裁判所判決昭和48年8月7日)。

 

▶参考情報:刑法第233条

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

▶参考情報:刑法第234条

威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

 

・参照元:「刑法」の条文(e-Gov法令検索)

 

※刑法の条文については、以下をご参照ください。

「刑法」の条文(e-Gov法令検索)

 

4,カスタマーハラスメントに関する労災認定基準の事例

カスハラによって従業員が精神疾患を発症したとして労災認定される例もあります。2023年9月、厚生労働省により精神障害の労災認定基準が改正され、カスハラに関する基準が追加されました。

厚生労働省が、精神疾患を発症させる可能性があるカスハラの例としてあげる主な事例は以下のとおりです。

 

(1)心理的負荷が「強」のカスハラ

  • 顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた
  • 顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた
  • 顧客等から、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を、反復・継続するなどして執拗に受けた

など

 

(2)心理的負荷が「中」のカスハラ

  • 顧客等から治療を要さない程度の暴行を受け、行為が反復・継続していない
  • 顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を受け、行為が反復・継続していない
  • 顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を受け、行為が反復・継続していない

など

 

(3)心理的負荷が「弱」のカスハラ

  • 顧客等から「中」の具体例に至らない程度の言動を受けた

 

 

これらの基準により業務による強い心理的負荷があったと判断された場合、その後おおむね6か月以内にうつ病や適応障害等の精神疾患を発症したときは、特段の事情がない限り、労災が認定されます。

 

▶参考情報:精神疾患の労災認定基準については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

うつ病など精神疾患の労災について補償や認定要件などを解説

 

5,病院におけるカスハラ事例

次に、病院におけるカスハラの事例についてご紹介します。

近年は、一般のサービス業と同様に、カスハラに苦慮する病院が増えてきています。病院におけるカスハラは「ペイシェントハラスメント(ペイハラ)」とも呼ばれ、また、不当な要求や言動をする患者は「モンスターペイシェント」とも呼ばれます。

パーソル総合研究所の調査の結果によると、「医療系専門職員」の3年以内のカスハラ経験率は28.9%と上位に位置しています。

職種別カスハラ経験調査データ

・参照元:パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」(pdf)

 

病院におけるカスハラの事例をいくつかご紹介します。

 

(1)暴言

  • 入院中の子どもの父親が毎日夜間に来院し、職員に対し30分以上暴言や威嚇行動を繰り返す
  • 夜間の診療が可能かどうかの問い合わせに対し夜間診療を行っていない旨を伝えたところ、「どういうことだ!労働者は病院に行くなということか!?」と激昂。他の夜間診療が可能な病院を勧めるも「病院が患者を選ぶのか?俺は具合が悪いんだ!」などと暴言を吐く

 

(2)院内暴力

  • 医者の首をいきなり絞め、壁に叩きつける
  • 処置に抵抗し看護師を突き飛ばす
  • 点滴用の注射針を奪い、医者に突き刺す

 

(3)居座り

  • 外来で1時間半説明したにもかかわらず再度同じ説明を求め、他の患者に迷惑がかかっていることを伝えたところ、大声で怒り出す
  • 手術の内容に納得しなかった患者が再三にわたり病院に来院して長時間居座り,自身が受けた手術についての説明や謝罪を執拗に要求する

 

(4)治療費の不払い

  • 病院側のささいなミスや職員の言葉遣いについて1時間以上大声で怒鳴り続け、最後は「納得できないので医療費は支払わない」と医療費の支払いを拒む

 

(5)病院におけるカスハラ対策

患者から上記のようなカスハラの被害を受けた場合に、穏便に収めようと患者に謝罪したり要求を呑むなどして、患者の納得を得ようとするべきではありません。理不尽な要求・言動をする患者に譲歩することは適切ではありません。患者の中には体調が悪い人もいますが、だからといって、理不尽な要求や言動を許すべきではありません。

相手に納得してもらうのではなく、要求をあきらめさせる対応を取ることが必要です。

また、このようなカスハラが起きた場合に対応を現場の判断に任せて放置すると、職員の負担が重くなり、離職にもつながりかねません。弁護士に相談できる環境を作ったり、対応マニュアルの整備や研修を実施するなどして、組織として対応する体制を整えることが重要です。

他にも、以下のように患者に向けてカスハラを容認しないという姿勢を示すことも有効な対策の一つです。

 

▶参考例:カスハラ等の迷惑行為についての院内告知

カスハラ等の迷惑行為についての院内告知サンプル

 

▶参考情報:モンスターペイシェントに対する対策や医療機関のクレーム対応については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

モンスターペイシェントとは?対策の基本5つを弁護士が解説

病院・クリニックのクレームや苦情の対応。窓口や受付での患者とのトラブル対処法は?

 

6,介護職におけるカスハラ事例

介護職はカスハラ被害が最も多い職種の1つです。パーソル総合研究所の調査によると、「福祉系専門職員」の3年以内のカスハラ経験率は34.5%と1位に上っています(参照元:パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」pdf)。

ここでは、介護現場でよくあるカスハラの事例について、利用者によるものと利用者家族によるものの2つに分けてご紹介します。

 

(1)利用者によるカスハラ

 

1,身体的な攻撃

  • 殴る、蹴るなどの身体的暴力
  • コップなど物を投げつける

 

2,精神的な攻撃

  • 攻撃的な態度で大声を出す
  • 人格を否定する発言
  • 能力を否定する発言

 

3,セクシュアルハラスメント

  • 不必要に身体に接触する(手を触る、抱きしめるなど)
  • ニヤニヤしながら胸や腰をじっと見つめる
  • 性的な関係を強要する
  • 食事やデートへ執拗に誘う
  • 職員の前でアダルトビデオを流す
  • 性的発言を繰り返す

 

(2)利用者家族によるカスハラ

  • 過大なサービスを強要する(利用者家族の食事も作るよう要求するなど)
  • 契約上提供できないサービスの提供を強要する
  • 制度上認められていないサービスの提供を強要する

 

 

(3)介護現場におけるカスハラ対策

特に介護職は業務の性質上、利用者宅への訪問や利用者の身体への接触が多いことに加え、介護職員の女性の割合が高いこともあり、身体的・精神的な攻撃の他にセクハラ被害も多い傾向が見られます。このようなカスハラは職員の精神疾患や離職につながりかねないため、常時弁護士に相談できる体制の構築、対応マニュアルの作成や事業所内での情報共有、利用者に対する注意喚起、カスハラ対策を盛り込んだ利用契約書の作成、警察等との連携といった対策を取ることが求められます。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

カスハラ対策は、介護事業における顧問弁護士の重要な役割の1つでもあります。介護の事業や介護施設における顧問弁護士の役割を以下の記事で解説していますのでご参照ください。

 

▶参考情報:介護の事業や介護施設における顧問弁護士の役割と依頼時のポイント

 

7,ホテルでのカスハラ事例

インバウンドの活況やコロナ収束による需要の増加で客足が増える一方、理不尽な要求を繰り返したり備品を盗む迷惑客が後を絶たず、対応に苦慮するホテルも少なくありません。ここでは、ホテルでのカスハラの事例についてご紹介します。

ホテルでよくあるカスハラの事例としては、以下のようなものがあげられます。

 

  • 土下座での謝罪の要求
  • 契約に無い送迎などの過剰なサービスの要求
  • 執拗な暴言
  • 宿泊料の不当な割引や返金要求
  • 泥酔状態で従業員に対し長時間の介抱を要求する
  • 部屋や施設の備品を汚染・破壊する行為
  • 不当に部屋のアップグレードを繰り返し要求する
  • 泊まる部屋の上下左右に宿泊客を入れないよう要求する

 

ホテルにおけるカスハラには、難癖をつけて不当に部屋のアップグレードを要求したり、宿泊料を無料にするよう要求するケースが多く見られます。

 

(1)旅館業法改正とカスハラ対策

新型コロナウイルス感染症の流行やカスハラが問題となったことで、2023年12月に旅館業法が改正され、ホテル側は迷惑客の宿泊を拒否することができるようになりました(旅館業法第5条1項3号)。

厚生労働省は宿泊を拒否できるような迷惑行為の事例として、以下のような行為をあげています。

 

▶参考情報:宿泊拒否できるカスハラに該当する行為

 

・宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業者に対し、宿泊料の不当な割引や不当な慰謝料、不当な部屋のアップグレード、不当なレイトチェックアウト、不当なアーリーチェックイン、契約にない送迎等、他の宿泊者に対するサービスと比較して過剰なサービスを行うよう繰り返し求める行為

・宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業者に対し、自身の泊まる部屋の上下左右の部屋に宿泊客を入れないことを繰り返し求める行為

・宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業者に対し、特定の者にのみ自身の応対をさせること又は特定の者を出勤させないことを繰り返し求める行為

・宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業者に対し、土下座等の社会的相当性を欠く方法による謝罪を繰り返し求める行為

・泥酔し、他の宿泊者に迷惑を及ぼすおそれがある宿泊者が、宿泊サービスに従事する従業者に対し、長時間にわたる介抱を繰り返し求める行為

・宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業者に対し、対面や電話、メール等により、長時間にわたって、又は叱責しながら、不当な要求を繰り返し行う行為

・宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業者に対し、要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が不相当なものを繰り返し求める行為

 

・参照元:厚生労働省「旅館業法改正」

 

ただ、法改正されたとはいえ、正当なクレームと理不尽なカスハラの線引きが難しいことや、宿泊を拒否するとSNSに悪評を書き込まれるのではないかといった不安から、事業者が尻込みすることも少なくないのが実情です。

宿泊客の言動がカスハラに当てはまるか否かの判断や迷惑客への対応についてお困りの場合は、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 

▶参考情報:旅館業法第5条1項

営業者は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
三 宿泊しようとする者が、営業者に対し、その実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求として厚生労働省令で定めるものを繰り返したとき。

・参照元:「旅館業法」の条文はこちら( e-Gov法令検索)

 

8,公務員・学校におけるカスハラ事例

次に、公務員や学校におけるカスハラの事例についてご紹介します。

 

(1)役所などの自治体におけるカスハラの事例

まずは、市役所などの自治体におけるカスハラの事例についてご紹介します。

全日本自治団体労働組合が16県の自治体職場で実施した調査によると、過去3年間に住民からカスハラ(迷惑行為や悪質クレーム)を受けたと回答した人は約46%、職場で受けている人がいるところを見たというケースを含めると76%と非常に高い割合に上りました。

また、迷惑行為の内容としては、「暴言や説教」が63.7%と最も多く、次いで「長時間のクレームや居座り」が59.8%、「複数回に及ぶクレーム」が58.7%となっています。

 

 

このように、特に自治体は暴言や説教を中心としたカスハラ被害(行政対象暴力、不当要求)が多く、職員の大きな負担となっています。こうした問題に対し、最近では外線通話の録音や名札の廃止といったカスハラ対策に動く自治体も増えてきています。

また、なかには自治体側から訴訟や仮処分を申し立てるケースも見られます。以下で裁判例を一つご紹介します。

 

1,大阪市に対する多数回の情報公開請求を含む面談強要行為等の差止とそれらを理由とする損害賠償請求が一部認容された事例(大阪地方裁判所判決平成28年6月15日)

 

●事案の概要

大阪市が市に対しておよそ8か月の間に53回もの情報公開請求を行ったり、執拗に質問文書の送付や架電による不当な要求を繰り返した男性に対して、強要行為等の差止と男性への対応を余儀なくされた職員らの給与と超過勤務手当相当額として190万円を請求した事案です。

この男性は対応の仕方が気に食わないと感じた職員の経歴や出退勤状況が分かる文書を請求するといった濫用的な情報公開請求や、誤字の指摘や特定の職員の弁当の内容などについての質問文書の送付を多数回行ったほか、多いときは1日に5~6回電話をかけ、応対した職員に対し能力が低いといった罵倒や、容姿等を貶す侮蔑的な発言を繰り返すなどの迷惑行為を繰り返していました。

 

●裁判所の判断

裁判所は、男性の行為について「頻度や様態に照らすと、正当な権利行使として認められる限度を超えるものであって、大阪市の資産の本来予定された利用を著しく害し、かつ、その業務に従事する者に受忍限度を超える困惑・不快を与え、その業務に及ぼす支障の程度が著しいもので、今後もこのような行為が繰り返される蓋然性が高い」と判断し、男性に対し、職員に対する電話での対応や面談を要求して質問に対する回答を強要することと、大声を出して罵声を浴びせることを禁止したほか、80万円の損害賠償の支払いを命じました。

 

(2)学校におけるカスハラの事例

学校では、モンスターペアレントと呼ばれる過剰な要求や不当な要求を行う保護者に悩まされるケースが多く、教職員に精神的な負担がかかっています。学校における保護者からの不当な要求やクレームの事例には、以下のようなものがあります。

 

  • 「娘がいじめられて帰ってきた」と子どもが通う小学校の教員2人に対し松葉杖で殴りつけるなどの暴行を加え、土下座を強要する
  • 午後11時など夜遅くまで教員に対し不満を言い続ける
  • 「ちゃんとお前が教育せえへんからや」と一日中教室の後ろで授業を監視する
  • 合理的な理由もないのに自分の子どもだけ特別扱いするよう要求する
  • 修学旅行の行先を指定する

 

このようなトラブルが起きた場合、対応を担任の教員だけに任せきりにしたり、穏便に済ませようと相手の要求を受け入れるといった行為をとってしまうと、担当教員の精神疾患や離職につながるおそれがあるだけでなく、教員に対する安全配慮義務違反と評価されることがあります。

 

1,「甲府地方裁判所判決平成30年11月13日」の事例

実際に、教員に落ち度が全くないにもかかわらず、校長が現場の教員に対して保護者からの謝罪要求に応じて謝罪するように指示したことについて、「児童の父と祖父の理不尽な要求に対、事実関係を冷静に判断して的確に対応することなく、その勢いに押され,専らその場を穏便に収めるために安易に行動したというほかない」として、不法行為にあたると判断し、295万円の支払いを命じた裁判例があります(甲府地方裁判所判決平成30年11月13日)。

 

▶参考情報:モンスターペアレントへの対応については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

モンスターペアレントとは?4つの対応ポイントを弁護士が解説

 

9,カスハラへの対応が不十分だと従業員から安全配慮義務違反で訴えられるおそれも

安全配慮義務とは、事業者が労働者に対して負担する「労働者が安全と健康を確保しつつ就業するために必要な配慮をする義務」のことを指します(労働契約法第5条)。

従業員がカスハラ被害に遭い心身の健康が害されるおそれがある状況で、事業者が何も対策をしないでいたり、不適切な対応(従業員1人だけに対応させる、合理的な理由なしに相手の理不尽な要求を呑むよう指示するなど)を取ってしまうと、従業員から安全配慮義務違反として損害賠償を請求されるおそれがあります。

 

▶参考情報:安全配慮義務違反について詳しくは、以下の記事もあわせてご参照ください。

安全配慮義務違反とは?会社が訴えられる4つのケースと対応方法

 

ここでは、企業の安全配慮義務違反が認められた事例と認められなかった事例を一つずつご紹介します。

 

(1)患者による暴力について病院の安全配慮義務違反が認められた事例

 

1,東京地方裁判所判決平成25年2月19日

 

●事案の概要

看護師が業務中に入院患者から暴力を振るわれた事案です。被害に遭った看護師はその場ですぐナースコールを押したものの、30分以上にわたって他の職員が駆けつけることがなかったため対応が遅れ、頸椎捻挫や左上肢拘縮の傷害を負いました。
この病院では安全管理対策マニュアルなども作成されておらず、患者からの暴力行為が発生した際の対応についての周知が徹底されていませんでした。

 

●裁判所の判断

裁判所は、病院内で看護師がせん妄状態等にある患者から暴力を受けることが日常的に起きていたにもかかわらず、何の具体的措置も講じていなかったことなどから、病院の安全配慮義務違反を認め、看護師に対する約1900万円の賠償を命じました。

 

(2)スーパーの客の暴言についてスーパーの安全配慮義務が認められなかった事例

 

1,東京地方裁判所判決平成30年11月2日

 

●事案の概要

スーパーマーケットの従業員が、客から苦情の度合いを著しく超える理不尽な暴言や暴力を受けたにもかかわらず、会社が安全確保の配慮をしなかったとして、118万円の損害賠償請求をした事案です。

この従業員は客とポイントの付与についてトラブルとなりました。客側は従業員の接客態度について不満を抱き、大声で騒ぎ立て、対応に駆け付けた店舗マネーシャーに対し「この従業員を辞めさせた方がいい」と言い残して立ち去りました。
その後も客は何度か来店し、その度に責任者を呼ぶよう求めたり、レジカウンターを叩くなどの問題行為をすることがあったため、警察を呼ぶこともありました。

会社側はこの従業員を他の店舗に異動させたり、客に対し従業員の対応には問題がないことや、大声を出すなどの迷惑行為が続く場合は入店を断ることを伝えるといった対応をとりました。

 

●裁判所の判断

裁判所は、以下のような理由から、会社が従業員の安全確保に必要な配慮を欠いたと認めるに足りる証拠はないとして、従業員の訴えを認めませんでした。

 

  • 店舗にエリアマネージャーや近隣店舗などの緊急連絡先が掲示されており、トラブルについて正社員に相談したり指導や対応を求めることのできる体制が整えられていたこと。
  • 各店舗のレジカウンターに非常事態に備えた緊急ボタンが設置されており、その存在が従業員全体に周知されていたこと。
  • 深夜の従業員を1名ではなく必ず2名以上の体制とし、1名が接客をしながら他の1名が相談及び通報等をして接客トラブルに対応することができるようにしていたこと。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

これらの裁判例からもわかるように、対応困難な客については、現場の従業員1人に対応をまかせず、組織として毅然とした対応をすることが求められています。また、弁護士にいつでも相談できるような体制を整備することも重要なポイントになります。

 

10,咲くやこの花法律事務所でのカスハラ相談事例

咲くやこの花法律事務所では、多くの事業者からカスハラについてのご相談を承っています。ご相談事例として、以下のようなものがあります。

 

  • 製品についての注意事項を説明したにもかかわらず、そんな話は聞いていないとして返金を要求してくる顧客への対応についてのご相談(中古車販売会社)
  • 調査の結果、製品に異常がなかったにもかかわらず、執拗に返品・返金を要求してくる顧客への対応についてのご相談(通信販売会社)
  • コロナ禍でのマスクについて執拗に同じクレームを入れてくる保護者への対応についてのご相談(学校法人)
  • 毎日窓口で2時間以上「診断に不正があった」などとクレームを言い続ける患者への対応についてのご相談(病院)

 

また、咲くやこの花法律事務所の弁護士によるカスハラの対応事例は以下でもご紹介しています。あわせてご参照ください。

 

事例1:
休日、深夜にわたり執拗に電話を入れてくるクレーム客に弁護士が対応した解決事例

この事例は、リフォーム業者からのご相談事例です。この業者は施主から、マンションのキッチン部分についてリフォーム工事を請け負いました。しかし、工事に不備があり、フローリングの接触が悪く、床にきしみが生じてしまっていました。

相談者は、施主からのクレームを受け、不備があった部分のやり直し工事をすることを申し出ました。しかし、施主は不備があった部分だけでなく、リフォーム工事の全てが信頼できないとして全てやり直すように要求してきました。また、施主は、相談者の担当者だけでなく、相談者の社長や部長などにも、深夜や休日にまで繰り返し電話をしてきていました。相談者は、施主の深夜や休日の繰り返しの連絡やクレームによって精神的に疲弊し、夜も眠れない状態となっていました。そこで、施主への対応方法について咲くやこの花法律事務所にご相談いただきました。

ご相談を受けて、咲くやこの花法律事務所の弁護士から施主に対して、工事に不備があった箇所以外についてはやり直しをする意思はないことを通知する内容証明郵便を送りました。

施主は、咲くやこの花法律事務所の弁護士からの内容証明郵便を受け取った後、すぐに弁護士に電話で連絡をしてきて、弁護士の解決方法に従います、と伝えてきました。そのため、事件を解決するための合意書を作成し、施主にその合意書に署名をしてもらい、無事解決することができました。

 

▶この事例の詳しい解説記事は、以下をご覧ください。

休日、深夜にわたり執拗に電話を入れてくるクレーム客に弁護士が対応した解決事例

 

事例2:
水道工事の騒音に対するクレームや金銭要求に対し弁護士が要求を断念させた事例

この事例は、建設会社からの相談事例です。水道局から水道工事を請け負っていた建設会社が工事を実施していたところ、近隣で店舗を営業する者から「客が減る」として、工事の中止、金銭の支払いを要求され、応じない場合は工事を妨害するなどと言われた事件です。

咲くやこの花法律事務所の弁護士から、近隣店舗の営業者に対し、工事の中止や金銭の支払いの要求には応じないこと明確に伝え、工事の妨害をするのなら法的措置をとると警告し、相手の要求を断念させました。

 

▶この事例の詳しい解説記事は、以下をご覧ください。

水道工事の騒音に対するクレームや金銭要求に対し弁護士が要求を断念させた事例

 

事例3:
設計事務所からの依頼を受け、施主からのクレームを弁護士が窓口となり解決した成功事例

この事例は、設計事務所からの相談事例です。戸建て住宅の施主からのクレームについて設計事務所からご依頼をうけて、咲くやこの花法律事務所の弁護士が対応しました。施主からのクレームの内容は「上の階に階段から家具を搬入できない」というものでした。事案の詳細は以下の通りです。

(1)設計事務所は施主からの依頼を受けて住宅の設計をしましたが、施主から設計事務所に対して、上の階に大きな家具を階段から搬入したいという説明はありませんでした。(2)設計事務所は、できあがった設計図について、施主に確認を求めてご了解していただいており、実際に施工された階段の寸法も設計図どおりでした。(3)施主から「階段から家具が搬入できない」というクレームが入ったのは、施主が住宅が購入してから約2年経過してからです。それ以前にはクレームはありませんでした。(4)クレームは、施主本人からだけでなく、施主の知人を名乗る氏名不詳の人物からもありました。氏名不詳の人物からは、設計事務所に対する金銭の請求や設計事務所を刑事告訴するというような内容のメールが設計事務所宛てに送信されました。

このような経緯から、設計事務所が自社で対応することが困難になり、クレームの対応について咲くやこの花法律事務所にご依頼いただきました。

弁護士名義で内容証明郵便を送り、クレームに理由がないことを伝え、今後弁護士が対応することを通知したところ、クレームを止めることができました。

 

 

事例4:
衣類の購入者からの色落ち、色移りに関するクレームトラブルに対して弁護士が対応し、金銭賠償なしで解決した成功事例

この事例は、アパレル販売店からの相談事例です。カーディガンを購入した客が、購入から約2年が経過した後に、「商品が色落ちし、ほかの衣類に色移りした」として、購入した商品についての代金の返金と、色移りした衣類に関する損害賠償を執拗に要求した事例です。

咲くやこの花法律事務所の弁護士が、購入者に対して、本件の色移りは商品の欠陥ではないこと、及び金銭の要求には応じられないことを明確につたえ、購入者の請求を断念させました。

 

 

11,咲くやこの花法律事務所なら「こんなサポートができます!」

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

咲くやこの花法律事務所では、カスタマーハラスメントについて事業者から多くのご相談をお受けし、解決してきました。最後に、咲くやこの花法律事務所の弁護士による事業所向けサポート内容をご紹介いたします。

 

(1)カスタマーハラスメントに関するご依頼・ご相談

咲くやこの花法律事務所では、事業者のカスタマ―ハラスメントに関する以下のようなご依頼やご相談を承っております。

 

  • クレーマー対応、現場のカスハラ対応の支援に関するご相談
  • 悪質なクレーム客への対応
  • カスハラ対応マニュアルの作成やカスハラ相談窓口の依頼
  • カスタマーハラスメント対策の研修

 

咲くやこの花法律事務所のカスハラ問題に強い弁護士への相談料

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)

 

▶参考情報:咲くやこの花法律事務所のクレーム対応分野に関するサービス内容については以下もご参照ください。

 

(2)顧問弁護士サービス

顧問弁護士がいれば、顧客の言動がカスハラにあたるかどうか判断に困ったときや、自社のみでは対応が困難なトラブルが発生したときに、予約なしですぐに弁護士に相談することができるため、問題の迅速な解決につながります。現場の従業員がいつでも相談できる体制を整えることは、企業が安全配慮義務を果たすためにも非常に重要です。

そこで、咲くやこの花法律事務所では、事業者向けに顧問弁護士サービスを提供し、現場のカスハラ対応をサポートしています。顧問契約をご検討の事業者の方向けに弁護士が顧問契約の内容を無料で説明する面談(オンラインや電話も可)を行っていますので、何か問題が起きたときにすぐに相談できる弁護士をお探しの事業者の方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスに関するサポート内容やサービスの特徴、実積紹介などは、以下で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。

【全国対応可】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

大阪で実績豊富な顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)をお探しの企業様はこちら

 

(3)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士へのご相談はこちら

今すぐお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方(労働者側)からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

12,まとめ

この記事では、カスハラの事例について解説しました。カスハラの典型的な事例としては、以下のものがあげられます。

 

1.身体的な攻撃

例)殴る、蹴る、物を投げつける

 

2.精神的な攻撃

例)暴言や脅迫、容姿に関する侮辱

 

3.不当な要求

例)土下座するように要求する

 

4.継続的・執拗な要求

例)1週間に数十回もの電話で同じ要求を繰り返す

 

5.拘束的な行動

例)長時間電話で拘束する、店舗や施設に居座って退去を求めても応じない

 

これらの中には犯罪に該当するものもあり、弁護士から警告したり、直ちに警察を呼ぶなどして毅然とした対応をすることが求められます。

また、病院・介護職やホテル、公務員・学校におけるカスハラについて、よくある事例や裁判例をご紹介しました。

カスハラ対策で最も重要なことは、カスハラがあった場合に、現場の従業員がいつでも気軽に相談できる体制を整えることです。その中でも、弁護士に常時相談できる体制を整備することが最も効果的です。

咲くやこの花法律事務所では、カスタマーハラスメントの問題について事業者向けに専門的なサポートを提供しています。カスハラに関してお困りの際は、カスハラへの対応について経験豊富な咲くやこの花法律事務所にぜひご相談ください。

 

13,【関連】カスハラに関するその他のお役立ち記事

この記事では、「カスハラの事例!実際にあったカスタマーハラスメントの例を詳しく解説」について、わかりやすく解説しました。カスハラには、この記事で解説してきた事例を踏まえて、その他にも知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ重大なトラブルに発展してしまいます。

以下ではこの記事に関連するカスハラなどクレーム分野のお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。

 

(1)基礎知識のお役立ち記事

クレーム対応とは?正しい方法や重要ポイントを徹底解説

クレーマー対応8つのポイントとは?理不尽なクレームを解決

弁護士にクレームやクレーマー対応の代行を依頼する5つのメリット

自社に非がない場合のクレーム対応の重要ポイントと対応例文について

納得しない相手のクレーム対応はここがポイント!

返金要求のクレーム対応について判断基準と対処法を解説

クレーム対応の例文をポイント解説付きで公開中【メールでの応対編】

電話でのクレーム対応の重要ポイントをわかりやすく解説!

 

(2)業種別のお役立ち記事

通販のクレーム対応方法!ECサイトなどのしつこい苦情はこれで解決

飲食店のクレーム解決方法!異物混入・食中毒・腹痛等の対応事例も解説

接客業のクレーム対応!おさえておくべき4つのステップ

住宅業界(新築・中古住宅販売やリフォーム業)のクレーム・苦情の解決方法を弁護士が解説

製造業・建設業・解体業向け!工場や工事の騒音でクレームや苦情を受けたときの対応方法

化粧品、エステ・美容業界向け!消費者の肌荒れクレームに対する正しい対応方法

 

記事更新日:2024年8月2日
記事作成弁護士:西川 暢春

 

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    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
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    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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