こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
懲戒解雇や普通解雇はどう違うのでしょうか。
咲くやこの花法律事務所でも、企業からのご相談をお受けする中で、従業員の解雇について、懲戒解雇と普通解雇のどちらで対応すべきかをご相談いただくことがあります。
簡単に言えば、懲戒解雇は従業員の「規律違反」に対する制裁として行われる解雇です。これに対し、普通解雇は、解雇のうち、懲戒解雇や諭旨解雇以外のものを指し、「規律違反」だけでなく、「能力不足」や「病気による欠勤」「人員の余剰」なども解雇理由になります。そして、懲戒解雇と普通解雇では、訴訟リスクにも違いがあり、この点を正しく理解したうえで対応することが重要です。
裁判例の中には、普通解雇と懲戒解雇の選択を誤って敗訴した例もあります。
たとえば、東京地方裁判所判決令和2年9月25日の事案は無断欠勤を理由とする懲戒解雇の事案ですが、「普通解雇はともかく懲戒解雇にまで及ぶことは、⋯苛酷で社会的相当性を欠く」として、解雇が無効と判断されました。普通解雇を選択していれば解雇が有効と判断されていた可能性が高いと思われます。
そこで、この記事では、懲戒解雇と普通解雇についてそれぞれ説明し、どのような違いがあるのかを解説します。この記事を最後まで読めば、懲戒解雇と普通解雇の違いについて正しく理解し、解雇に伴う企業側のリスクを最小限のものにする手助けとなるはずです。
それでは見ていきましょう。
懲戒解雇は、懲戒処分の中でも最も重い処分であり、従業員への不利益も大きいです。そのため、訴訟になればその有効性が非常に厳しく判断されることとなります。
著しい問題行動があり当然懲戒解雇が認められると企業が考えても、訴訟になれば懲戒解雇は重すぎるとして無効と判断されるケースは少なくありません。懲戒解雇が無効とされると、会社は懲戒解雇をしてから判決までの期間の給与(バックペイ)の支払いのみならず、従業員を引き続き雇用することを命じられてしまいます。このバックペイが1000万円を超える高額になることも珍しくありません。
このような結果にならないためにも、懲戒解雇や普通解雇をする前に、弁護士に相談することが非常に大切です。弁護士に相談することで、解雇後の法的トラブルのリスクを抑えることができ、企業側のリスクを大きく減らすことにつながります。
咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で従業員の解雇についてのご相談をお受けしています。従業員の能力や勤務態度の問題から解雇を検討されている方は、まず咲くやこの花法律事務所の弁護士にご相談ください。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に関するサポート内容については以下をご参照ください。
※咲くやこの花法律事務所では、企業または事業者からのご相談のみお受けしています。
また、咲くやこの花法律事務所の弁護士が解雇トラブルの対応をサポートした解決事例もご紹介していますのであわせてご覧ください。
▼普通解雇や懲戒解雇について、弁護士への相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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1,懲戒解雇とは?

懲戒解雇とは、解雇の中でも、従業員の「規律違反」に対する制裁として行われる解雇をいいます。職場における金銭の横領などといった職務上の犯罪行為・不正行為、重要な業務命令の拒否や無断欠勤、重大なハラスメント行為、経歴の詐称などが懲戒解雇が行われるケースの典型例です。
多くの会社では、就業規則において、軽い順から以下の内容で懲戒処分を定めています。
- 戒告・譴責・訓告:問題行動があった従業員に対して、厳重注意処分を言い渡す
- 減給:平均賃金の1日分の5割を超えない範囲で減給する。
- 出勤停止:一定期間出勤を停止し、その期間を無給とする。
- 降格処分:従業員を降格させる。
- 諭旨解雇:諭旨のうえ退職を勧告する。退職願の提出がないときは懲戒解雇する。
- 懲戒解雇:懲戒として従業員を解雇する。労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当を支給しない。
このような会社が従業員に対して行う懲戒処分の中で、懲戒解雇は最も重いものにあたります。
そして、懲戒解雇が有効と認められるためには、以下の5つの要件を満たす必要があります。
- 要件1:従業員に周知された就業規則において懲戒解雇事由が定められていること
- 要件2:懲戒解雇事由に該当すること
- 要件3:従業員に対し懲戒解雇の意思表示をすること
- 要件4:懲戒解雇が権利濫用にあたらないこと
- 要件5:原則として30日前に解雇予告するか、または30日分の解雇予告手当の支払いをすること
▶参考情報:懲戒解雇の具体的な条件、進め方、注意点などについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
・懲戒解雇とは?条件や手続きの進め方、注意点などを事例付きで解説
また、この記事の著者 弁護士西川暢春が、「懲戒解雇とは?具体例や企業側のリスクを弁護士が解説!」の動画でも、懲戒解雇について詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
2,普通解雇とは?

普通解雇とは、解雇のうち、懲戒解雇や諭旨解雇以外のものを指し、従業員の能力不足や協調性の欠如、就業規則違反などの規律違反行為、余剰人員の整理の必要性等を理由とする解雇がこれに該当します。普通解雇についても、従業員の同意を得ることなく、企業側の一方的な通知により、従業員としての身分を失わせるものであるため、労働者保護の観点から、厳しい制約が科されています。
会社が普通解雇を有効に行うためには、以下の4つの要件を満たすことが必要です。
- 要件1:普通解雇が権利濫用にあたらないこと
- 要件2:法律により解雇が制限される場面に該当しないこと
- 要件3:原則として30日前に解雇予告するか、または30日分の解雇予告手当の支払いをすること
- 要件4:従業員に対し普通解雇の意思表示をすること
▶参考情報:普通解雇の要件や進め方、注意点などについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
・普通解雇とは?要件や進め方、注意点などを弁護士がわかりやすく解説
また、この記事の著者 弁護士 西川暢春が、「普通解雇とは?4つの条件や手順について弁護士が解説【前編】」の動画でも普通解雇について詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
3,懲戒解雇と普通解雇の違いは?7つのポイント

それでは、懲戒解雇と普通解雇の違いはなんでしょうか。結論から言うと、懲戒解雇と普通解雇の違いは、懲戒解雇が社内の不正行為やルール違反に対する制裁として行われるのに対し、普通解雇は、「能力不足」や「病気による就労不能」などの場面で行われる解雇であり、「ルール違反に対する制裁」ではありません。
普通解雇との違いの詳細は以下で解説していきますが、最初に表にまとめると以下の通りです。
▶参考情報:懲戒解雇と普通解雇の違いがわかる比較表
| 懲戒解雇 | 普通解雇 | |
| 主な解雇理由 | ・業務上横領 ・重要な業務命令の拒否 ・無断欠勤 ・セクハラ、パワハラ ・経歴詐称 |
・病気やけがによる就業不能 ・能力不足、成績不良 ・協調性の欠如 ・業務命令に対する違反 ・経営難による人員整理 |
| 目的 | 対象者との雇用関係の終了+組織の規律維持、引き締め | 対象者との雇用関係の終了 |
| 解雇予告手当 | 支払不要の場合あり | 30日分の支払必要 |
| 失業保険の給付日数 | 自己都合退職と同じ扱いとなり給付日数が短い | 会社都合退職として給付日数について有利な扱いを受けることが多い |
| 退職金 | 減額や不支給の場合あり | 退職金規程どおり |
| 転職への影響 | 懲戒解雇されたことを申告する義務があり、転職に不利 |
解雇の手続きの前に両者の違いを十分把握しておき、懲戒解雇か普通解雇かの選択の場面で間違った判断をしないことは大変重要です。
選択を間違えると、解雇トラブルが裁判になったときに、裁判所で「不当解雇」と判断されかねません。次に、「懲戒解雇と普通解雇の違い」としておさえておきたい7つのポイントをまとめると以下の通りです。
- ポイント1:解雇事由の違い
- ポイント2:解雇予告義務に関する違い
- ポイント3:退職金支給に関する違い
- ポイント4:次の就職への影響の程度の違い
- ポイント5:懲戒解雇では解雇後に判明した規律違反行為を解雇理由に付け足すことができない。
- ポイント6:懲戒解雇では過去に懲戒した事実を解雇理由とすることはできない。
- ポイント7:懲戒解雇では適正手続きに注意が必要である。
それぞれについて順番に詳しく解説していきます。
(1)ポイント1:解雇事由の違い
懲戒解雇と普通解雇の違いの1つ目のポイントは「解雇事由の違い」です。
懲戒解雇が前述の通り、社内の不正行為やルール違反に対する制裁として行われる解雇であるのに対し、普通解雇は従業員の能力不足や会社の経営難などを解雇事由として行われる解雇です。
普通解雇の解雇事由として定められるのは、通常、次のようなケースです。
普通解雇事由の例
- 1,病気やけがによる就業不能
- 2,能力不足、成績不良
- 3,協調性の欠如
- 4,業務命令に対する違反
- 5,経営難による人員整理
なお、懲戒解雇事由がある場合に、懲戒解雇を選択せずに普通解雇することは法律上可能とされています(▶参考情報:最高裁判所昭和52年1月31日 高知放送事件判決)。その意味で、普通解雇事由は懲戒解雇事由を含む関係にあるともいえるでしょう。
【補足】懲戒解雇の理由と普通解雇の理由が両方存在する場合の注意点
1人の解雇対象者に懲戒解雇の理由と普通解雇の理由が両方存在する場合があります。
たとえば成績不良の従業員が転勤を拒否したというような場合、成績不良という普通解雇事由と、転勤拒否という懲戒解雇事由の両方が存在します。
このケースで、懲戒解雇を選択した場合は、成績不良の点は懲戒解雇事由ではないため、解雇の理由としてあげることができません。
そのため、懲戒解雇した後、従業員から不当解雇であるとして訴訟を起こされた場合、「転勤拒否の点だけで懲戒解雇の理由として合理的か」が裁判所で判断されます。
これに対し、普通解雇を選択した場合は、成績不良と転勤拒否の両方が解雇事由となります。
そのため、普通解雇した後、従業員から不当解雇であるとして訴訟を起こされた場合、「成績不良と転勤拒否の両方の事情を踏まえて解雇の理由として合理的か」が判断されます。
このように、懲戒解雇と普通解雇のどちらを選択するかによって、会社が主張できる解雇事由が異なり、それが解雇の有効性の判断、つまり「不当解雇かどうか」の判断に影響を及ぼします。
普通解雇を選択していれば両方の解雇事由を主張でき有効な解雇と判断されたはずなのに、懲戒解雇を選択したために両方の解雇事由を主張できず不当解雇と判断されてしまうというリスクがあります。
そのため、懲戒解雇か普通解雇の判断は慎重に行う必要があることをおさえておきましょう。
(2)ポイント2:解雇予告義務に関する違い
懲戒解雇と普通解雇の違いの2つ目のポイントは「解雇予告義務に関する違い」です。
普通解雇では、「解雇予告手当の支払い」か、「30日前の解雇予告」が原則として必要となります。
▶参考情報:解雇予告手当や解雇予告については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
そして、懲戒解雇でも、普通解雇と同じように「解雇予告手当の支払い」か、「30日前の解雇予告」が原則として必要となります。ただし、懲戒解雇の場合、「労働基準監督署長の除外認定」の対象となる例も少なくなく、この除外認定を受ければ、解雇予告手当の支払いや30日前の解雇予告が必要ありません。
この「労働基準監督署長の除外認定」については以下で解説していますのでご参照ください。
(3)ポイント3:退職金支給に関する違い
懲戒解雇と普通解雇の違いの3つ目のポイントは「退職金の支給に関する違い」です。
普通解雇では、退職金は通常通り支払われることが原則であるのに対し、懲戒解雇では、退職金を減額したり、あるいは支払わないことを退職金規程に定めている会社が多くあります。また、中小企業で利用が多い、「中小企業退職金共済(中退共)」でも、従業員を懲戒解雇した場合、厚生労働大臣の認定を受けたうえで、退職金を減額することができます。
ただし、懲戒解雇だからといって常に退職金を減額したり、あるいは支払わないことができるわけではないことにも注意が必要です。懲戒解雇に際し、企業が行った減額や不支給の措置が訴訟の結果認められないことも多いです。
この点については以下で解説していますのであわせてご参照ください。
(4)ポイント4:次の就職への影響の程度の違い
懲戒解雇と普通解雇の違いの4つ目のポイントは「次の就職への影響の違い」です。
懲戒解雇については次の就職の際に履歴書などに記載して申告しなければならないことがあり、懲戒解雇された従業員が次の就職で不利になるという側面があります。
▶参考情報:懲戒解雇された場合の、転職や再就職への影響については以下の記事で解説していますのでご参照ください。
(5)ポイント5:懲戒解雇後に判明した規律違反行為を解雇理由に付け足すことができない
懲戒解雇と普通解雇の違いの5つ目のポイントは、「懲戒解雇後に判明した規律違反行為をあとから解雇理由に付け足すことができない。」という点です。
懲戒解雇では、「懲戒解雇後に懲戒解雇の理由とは別の規律違反行為が新たに判明してもそれを懲戒解雇理由に付け足すことはできない」というルールがあります。これに対して、普通解雇では、普通解雇後に別の解雇事由が新たに判明した場合、新たに判明した事情も解雇理由に付け足すことが可能です。
具体的にこの点が問題になったケースとして、平成8年9月26日に出された最高裁判所判決のケースをご紹介したいと思います。
1,山口観光事件 平成8年9月26日最高裁判所判決
事案の概要
この事件はマッサージ店などを経営する会社が従業員を懲戒解雇したところ、従業員から不当解雇として訴えられたケースです。
会社は、当初、従業員の出勤拒否を理由に懲戒解雇しましたが、その後に従業員の年齢詐称が判明したため、会社は、訴訟において、年齢詐称の点も懲戒解雇を正当とすべき理由の1つとして主張しました。
裁判所の判断
裁判所は、「懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為の存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできない」としました。そのうえで、年齢詐称は懲戒解雇後に判明した事情であるから、年齢詐称を懲戒解雇を正当化する理由とすることはできないと判断しました。
このように、懲戒解雇では、「懲戒解雇後に別の規律違反行為が新たに判明しても、あとからそれを解雇理由に付け足して、懲戒解雇の正当性を主張することはできない」というルールがあります。この点は、解雇トラブルの裁判でも、「不当解雇かどうか」の判断に影響することがある、懲戒解雇と普通解雇との違いです。
普通解雇を選択していればあとから判明した規律違反行為も解雇事由として主張でき有効な解雇と判断されたはずなのに、懲戒解雇を選択したためにあとから判明した規律違反行為を解雇事由として主張できず不当解雇と判断されてしまうというリスクがあります。
懲戒解雇と普通解雇の違いの5つ目のポイントとして、おさえておきましょう。
(6)ポイント6:懲戒解雇では過去に懲戒した行為を解雇理由とすることはできない
懲戒解雇と普通解雇の違いの6つ目のポイントは、「懲戒解雇では過去に懲戒した行為を解雇理由とすることはできない」という点です。
過去に懲戒処分をした行為を懲戒解雇の理由にすることは、その行為について2回の懲戒処分をすることになり、二重処罰として許されません。過去に懲戒歴のある従業員を解雇するときは、この点も踏まえて、懲戒解雇にするか、普通解雇にするかを選択することが必要です。
普通解雇であれば、既に戒告、減給、出勤停止などの懲戒処分を行った行為を普通解雇の理由とすることも可能です。
(7)ポイント7:懲戒解雇では適正手続きに注意が必要である
懲戒解雇と普通解雇の違いの7つ目のポイントは「懲戒解雇では適正手続きに注意が必要である」という点です。
普通解雇では、30日前の予告あるいは解雇予告手当の支払をすれば、解雇の手続きはあまり問題になることがありません。
これに対し、懲戒解雇では、就業規則に懲戒に関する手続きが定められていることも多く、就業規則上の手続きを行わなかったために、懲戒解雇が不当解雇と判断され、企業が敗訴した裁判例が多数存在します。また、就業規則に手続きが定められていなくても、懲戒解雇については、懲戒解雇前に従業員に対して弁明の機会を付与すべきであるという考え方が一般的です。これを行っていないことを理由に不当解雇と判断される例もあります。
このように、懲戒解雇では、「懲戒解雇に値する理由があるかどうか」という点だけでなく、「正しい手続きを行ったか」にも注意を払う必要がある点が、普通解雇と大きく異なります。
同じ理由で解雇しても、普通解雇であれば適正手続きの点が重要な問題にならずに有効な解雇とされたのに、懲戒解雇を選択したために手続に問題があると指摘され不当解雇と判断されるというリスクがあります。
4,懲戒解雇と普通解雇は併用すべき?

結論から言うと、懲戒解雇をする際は、懲戒解雇が確実に有効であると言える場合を除き、普通解雇も同時に行うべきです。
懲戒解雇をした従業員から、不当解雇であるとして訴訟を起こされることもあります。その際、懲戒解雇は、普通解雇よりも従業員の不利益が大きいことから、普通解雇よりも厳しい基準で有効性を判断されます。
そのため、懲戒解雇が無効となった場合にそなえて、会社側が予備的な普通解雇の意思表示をしておくことが有効な手段の1つとなります。予備的な普通解雇の意思表示とは、懲戒解雇が無効になった場合に備えて、念のため普通解雇もしておくことを指します。
実際に、懲戒解雇が無効となった事例でも、予備的にしていた普通解雇が有効とされ、雇用の終了が認められたケースがあります。
事例1:日本電産トーソク事件(東京地方裁判所判決令和2年2月19日)
従前から問題行動が多々見られた従業員について、自席の移動の指示に強く反発し、席の移動によって精神疾患を誘発したとして、治療費や慰謝料を請求したり、カッターの刃を持ち出して、上司の前で自身の手首を切る動作をするなどして、警察官が臨場するといった騒ぎを起こしたため、会社は懲戒解雇としました。その後、従業員が懲戒解雇を争う姿勢を見せたため、懲戒解雇をした2か月後に、会社が予備的な普通解雇の意思表示をしました。
この件は、後に訴訟に発展しましたが、裁判所は、懲戒解雇は重すぎるとして無効とした一方、予備的にされた普通解雇は有効と判断しました。
その結果、会社は、懲戒解雇後から普通解雇の意思表示をする2か月間の期間における給与の支払いのみ命じられることとなりました。
事例2:クレディ・スイス証券事件(東京地方裁判所判決平成30年11月29日)
3年以上にわたり、自身の処遇が違法であるとの申立てを代表取締役らに直接行うなどして、会社に多大な負担をかけていた従業員について、申し立ては法務本部長や社内通報制度を通すように指示されたにもかかわらず、その5日後に、指示に違反して処遇の不当を訴えるメールを送信したため、懲戒解雇した事案です。
従業員が懲戒解雇は無効であるとして訴訟を提起したため、会社は提訴された後に予備的な普通解雇の意思表示を行いました。
裁判所は、懲戒解雇は重すぎるとして無効と判断した一方、予備的な普通解雇は有効と判断しました。その結果、会社は懲戒解雇後から普通解雇までの期間における給与の支払いのみ命じられることとなりました。
このように、著しい問題行動が見られたケースであっても、懲戒解雇は重過ぎるとして無効と判断されるケースが少なくありません。一方で、懲戒解雇は無効となっても、予備的にされた普通解雇は有効と判断される例があります。
解雇トラブルの訴訟で解雇が無効と判断されると、解雇の時点にさかのぼって賃金の支払を命じられることが通常です。これはバックペイと呼ばれます。解雇トラブルの訴訟は1年以上続くケースが多く、懲戒解雇が無効となれば、訴訟が長引けば長引くほどバックペイの金額は増えてしまいます。そのため、懲戒解雇をする場合は、のちに訴訟に発展した場合に備えて、予備的に普通解雇の意思表示をしておくことが非常に重要となります。
▶参考情報:なお、バックペイについては以下で解説していますのであわせてご参照ください。
上記の2つの事件は、いずれも、懲戒解雇した後に、しばらく期間が経ってから予備的な普通解雇の意思表示をした事案です。その結果、懲戒解雇から予備的な普通解雇までの期間についてはバックペイの支払いを命じられています。企業の立場からすると、懲戒解雇後しばらく経ってから予備的な普通解雇の意思表示をするのではなく、懲戒解雇と同時に予備的な普通解雇をしておくことが合理的です。ただし、普通解雇についても無効となってしまうことが十分にあり得ますので、いずれにしても、必ず事前に弁護士に相談して行う必要があります。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の弁護士によるサポート内容については、以下をご参照ください。
5,懲戒解雇や普通解雇は必ず事前に弁護士に相談すべき?
結論から言うと、懲戒解雇や普通解雇を検討している場合、解雇してしまう前にまずは弁護士に相談することが重要です。
解雇は、本人の意思にかかわらず雇用を終了するものであるため、本人からの反感や不満を買いやすいだけでなく、本人の不利益も大きいです。そのため、法的なトラブルに発展しやすい場面です。十分な証拠の確保やリスクの検討、手続きの検討をしないまま解雇をしてしまうと、社員側から不当解雇であると主張されて訴訟に発展し、敗訴してしまい多額のバックペイを支払うこととなりかねません。
そのため、解雇する前に必ず弁護士に相談する必要があります。
西川が代表を務める咲くやこの花法律事務所では、従業員の懲戒解雇や普通解雇について、企業側の立場に立ってご相談をお受けしています。
例えば以下のサポートが可能です。
- 懲戒解雇をすべきかの判断
- 普通解雇をすべきかの判断
- 解雇についてのリスク判断やリスク低減策のご提案
- 解雇前に準備しておくべき証拠の確保や解雇以外の選択肢のご提案
解雇する前にご相談いただくことで、弁護士が提案できる手段が増え、法的なリスクを最小限に抑えることができます。
▶参考情報:従業員の解雇について会社が弁護士に相談する必要性と弁護士費用 については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご参照ください。
6,実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士が解雇に関してサポートをした解決事例
次に咲くやこの花法律事務所の弁護士が実際に解雇トラブルに対応した事例をご紹介します。
(1)人間関係トラブルを繰り返し職員の退職を招く従業員の雇止め!会社が全面勝訴した解決事例
就労支援B型事業おいて有期雇用契約で採用した従業員について、会社が運営するファームの職員たちや、役員とトラブルを起こし続け、ファームの職員の退職が相次ぐなどしたため、会社がこの従業員を雇止めした事案です。従業員は、会社に対し、雇止めが無効であるとして雇用契約上の地位の確認、未払賃金の請求をするとともに、違法なパワーハラスメントや退職勧奨を行ったとして、不法行為に基づく損害賠償を請求しました。結局、従業員から訴訟を提起され、控訴審にまで発展しました。
咲くやこの花法律事務所の弁護士が訴訟に対応した結果、第一審と控訴審の両方で棄却の判決が出され、本件は会社の全面勝訴で無事に解決しました。
▶参考情報:この事案については以下でご紹介していますのであわせてご参照ください。
(2)控訴審からの受任で第一審の敗訴から逆転!解雇無効・約2000万円バックペイの危機を大幅減額して和解できた解決事例
キリスト教の教会を運営する宗教法人で、教会と一人の牧師との間で解雇をめぐる紛争になりました。この牧師は、信徒や教会関係者に対し不適切な言動を繰り返しており、複数の信徒や教会関係者からクレームが出たりと対応に困っていました。そこで、教会は、牧師に対して、教会から金銭の支給を受けるのではなく、ある教会の責任者として自立するよう求めたところ、牧師はその約3週間後に、教会を立ち去りました。
しかし、その後、牧師は、教会から解雇されたとして、労働者たる地位の確認やバックペイの支払を求めて法人に対して訴訟を提起しました。第一審の判決は、解雇は無効であるとして、牧師の雇用契約上の地位を確認する判決を言い渡し、あわせて法人に約2000万円の支払いを命じました。
これに対して、咲くやこの花法律事務所が控訴審からご依頼をお受けして対応しました。その結果、第一審の敗訴から逆転して法人側に有利な心証を裁判官にもってもらうことができ、最終的には牧師に退職に同意させることができました。
▶参考情報:この事案については以下でご紹介していますのであわせてご参照ください。
・控訴審からの受任で第一審の敗訴から逆転!解雇無効・約2000万円バックペイの危機を大幅減額して和解できた解決事例
他にも、以下で解雇トラブルに関する咲くやこの花法律事務所の解決実績をご紹介しています。あわせてご覧ください。
・成績・協調性に問題のある従業員を解雇したところ不当解雇の主張があったが、交渉で金銭支払いなしで退職による解決をした事例
本件は、3ヶ月の試用期間満了をもって解雇すると会社から従業員に通知したところ、従業員側弁護士から会社に解雇無効を主張する通知が届いたという事案です。会社からの依頼により、弁護士が窓口となって本件解雇は有効であるとの主張を行い、従業員側弁護士との交渉にあたり、解雇の合理性、相当性を具体的に主張し、金銭を支払うことなく復職を断念させました。
・試用期間満了後に本採用せずに解雇した従業員から復職を求める労働審判を起こされたが退職による解決をした事例
本件は、有資格者として雇用した従業員が、有資格者として通常知っているべき知識を知らなかったり、当然行えるべき業務を満足にできなかったりするなど、能力が不足していたため試用期間満了時に解雇した事案です。これに対して、元従業員から本件解雇は不当解雇(無効)であるとして労働審判を申し立てられました。
労働審判では、解雇が有効であり元従業員の主張に理由がないことを示すために、弁護士から、主に以下の点を証拠に基づいて詳細に主張しました。
- 元従業員の業務によって顧客からのクレームが発生していたこと
- 試用期間満了時に相談者が行ったテストで元従業員が合格点に達しなかったこと
- 相談者が指導を十分に行っても改善が見られなかったこと
その結果、労働審判委員会には、相談者が指導を丁寧に行っていたことを認めてもらったうえで、解雇が有効になる可能性もあるとの見解を示してもらえました。ただし、相談者としても、解雇の有効性にこだわり労働審判を長引かせるよりも、早期に解決したいという希望があり、また、裁判官から労務管理について改善すべき点の指摘もあったため、最終的には解決金として元従業員の3か月分の給与相当額を支払うことで調停が成立しました。
このように金銭を支払ったものの、解雇事件の労働審判における解決金の平均値が給与の6か月相当分であることを踏まえると、平均値の半額程度での解決になりました。
・パワハラを繰り返す社員を解雇したところ、不当解雇であると主張されたが、弁護士が交渉して退職合意をし、訴訟回避した事例
本件は、他の従業員に対して日常的にパワハラをおこなっていた従業員(対象従業員)を会社が解雇したが、その後対象従業員から解雇が無効であると主張され、弁護士において交渉をおこなった事案です。
咲くやこの花法律事務所がご依頼を受け、相手弁護士に対して解雇の有効性を主張しつつ、訴訟に発展して紛争が長期化することは避けたいという依頼者の意向を踏まえ、相手弁護士との交渉による解決により、訴訟を回避することを目指しました。
その結果、会社から4か月分の給与相当額を支払うことと引き換えに、対象従業員に退職を承諾させ、合意による解決に至りました。
7,解雇の相談は咲くやこの花法律事務所の弁護士がおすすめな理由
次に、解雇について咲くやこの花法律事務所への相談がおすすめな理由をご紹介します。
(1)解雇トラブルへの対応経験が豊富
咲くやこの花法律事務所では、創業以来16年以上にわたり、一貫して企業側の立場にたって、労使紛争の解決に取り組んできました。いまでは約700社に顧問弁護士サービスを提供し、その中で、解雇トラブルについても数多くのご相談とご依頼をお受けしてきました。
企業側の立場に立つ法律事務所としての豊富な経験を踏まえ、解雇前のリスク低減、トラブル回避のためのサポートを提供します。また、解雇後にトラブルになった場合も、企業側の立場に立った紛争解決のために尽力します。
(2)問題社員への対応に関するご相談も可能
解雇を考えている問題社員について、まずは会社側が十分な指導をすることが適切なケースもあります。あるいは、解雇の前に懲戒処分を経ることが適切なケースがあります。
咲くやこの花法律事務所では、問題社員への指導や懲戒についても豊富な経験を活かし、サポートすることが可能です。企業ごとの事情に応じて、適切な対応方法をご提案しています。
(3)相談の予約段階で丁寧にヒアリング
咲くやこの花法律事務所では、ご相談は予約制で承っています。
ご予約いただく際は、窓口のスタッフがご相談内容について丁寧にヒアリングを行います。ヒアリングした内容は、相談を担当する弁護士に引き継がれるため、スムーズに相談を進めることが可能です。
(4)全国からのご相談が可能
咲くやこの花法律事務所では、実際に事務所にお越しいただいての対応のほか、オンライン面談や電話でのご相談もお受けしています。近畿圏以外でも約200社の事業者に顧問弁護士サービスを提供しており、遠方からのご相談にもスムーズに対応可能です。
8,懲戒解雇や普通解雇に関して弁護士に相談したい方はこちら

最後に、咲くやこの花法律事務所のサポート内容をご紹介します。
(1)懲戒解雇・普通解雇に関するご相談
咲くやこの花法律事務所では、従業員の懲戒解雇や普通解雇を検討している事業者から、丁寧に経緯や事情をお聞きした上で、就業規則との整合性を確認し、事案に応じた適切な対応方法を支援します。解雇をすることが適切かどうかや、解雇をする前に用意しておくべきことを検討し、法的なリスクを抑えた対応をすることが可能です。
それぞれの企業の実情に応じた対応方針をご提案し、事務所の実績を活かして、実際の解決まで企業を支援します。
咲くやこの花法律事務所の弁護士へのご相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(事前に顧問契約締結の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
(2)解雇トラブルへの対応
咲くやこの花法律事務所では、解雇をしてしまった後にトラブルに発展した段階でも、その解決に向けたご相談をお受けしています。
交渉段階から、訴訟まで一貫してご対応することが可能です。従業員からの解雇無効の主張に対して会社側が反論できる材料を集め、適切に会社側の主張を進めていきます。あきらめてしまう前に弁護士に相談することで、自社では気付かなかった視点から反論できることもあります。ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
咲くやこの花法律事務所の弁護士へのご相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(事前に顧問契約締結の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
(3)顧問弁護士サービスによる支援
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスをご利用いただくことで、解雇を検討している問題社員への対応について日頃からご相談いただくことができます。
日頃から問題社員に適切に対応しておくことで、いざ解雇を検討するときも十分な対応が可能になります。顧問弁護士に日頃から相談することが、結果として会社側のリスクや負担を減らすことにつながります。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの費用やサポート内容については以下でご紹介しています。
(4)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
弁護士の相談を予約したい方は以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
【お問い合わせについて】
※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
9,まとめ
この記事では懲戒解雇と普通解雇の違いについて解説しました。
懲戒解雇とは、従業員の規律違反に対する制裁として行う解雇であり、最も重い懲戒処分です。典型例として、業務上の横領、重要な業務命令の拒否、無断欠勤、重大なハラスメント、経歴詐称などがあります。
一方、普通解雇とは、懲戒解雇や諭旨解雇以外の解雇をいい、能力不足、成績不良、協調性の欠如、就業規則違反、経営難による人員整理などを理由として行われます。
両者の大きな違いは、懲戒解雇が規律違反に対する制裁であるのに対し、普通解雇は能力不足や就業不能などを理由として雇用関係を終了させる点にあります。その他にも、解雇予告、退職金、転職への影響などに違いがあります。
特に重要なのが、懲戒解雇では解雇後に判明した規律違反を後から解雇理由に追加できないこと、過去に行った懲戒処分の対象行為を解雇理由とすることができないこと、適正な手続を遵守することが厳しく求められることです。
例えば、成績不良と転勤拒否の両方がある従業員について懲戒解雇を選択した場合、成績不良は懲戒解雇の理由として主張できず、転勤拒否だけで解雇が合理的かどうかが判断されます。一方、普通解雇であれば、成績不良と転勤拒否の両方を解雇理由として主張できます。
また、懲戒解雇は普通解雇よりも不利益が大きいため、裁判では普通解雇よりも厳しい基準で有効性が判断されます。そのため、懲戒解雇を行う際には、予備的に普通解雇の意思表示もしておくことが重要です。
一方で、予備的に普通解雇をした事案でも、懲戒解雇、普通解雇の両方とも無効とされて、企業が多額の支払いを命じられている例が少なくありません。
解雇は企業にとってリスクの高い場面の1つですので、懲戒解雇や普通解雇を検討する場合は、必ず事前に弁護士に相談することが必要です。咲くやこの花法律事務所でもご相談をお受けしていますので、是非ご相談ください。
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記事作成日:2026年11月1日
記事作成弁護士:西川 暢春
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