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弁護士が教える不当解雇の損害賠償、慰謝料と裁判での会社の守り方について

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  • 不当解雇で訴えられた時の会社の守り方

    会社を経営していると、従業員の解雇が必要になる局面も出てくることは避けられません。しかし、最近は、解雇された従業員が解雇に納得せず、「不当解雇」として、行政機関や労働者側弁護士に相談するケースが増えてきています。

    例えば、厚生労働省が行っている「総合労働相談」では、「解雇に関する相談」が全国で「43,956件(平成25年度)」にのぼっています。そして、解雇された従業員が行政機関や労働者側弁護士に相談することが増えるにつれて、従業員が解雇を受け入れず、「不当解雇」と主張して会社を訴えるケースも増えてきました。

    一般に、解雇のトラブルでは、裁判所は従業員側に有利な判断をすることが多いと言われています。しかし、実際には、会社が正しい対応をすれば、会社側勝訴の判決を得ることができます。

    そこで、今回は、まず、「不当解雇の損害賠償、慰謝料」について解説した後、「従業員から不当解雇で訴えられた時の会社の守り方」についてご説明したいと思います。

    ▶参考:
    今回のテーマ「不当解雇」に関連して、解雇前に必ずチェックしておきたい「問題社員の解雇方法」を弁護士が解説。

    不当解雇トラブルは解雇後に発生する問題ですが、その前段階として、そもそも不当解雇トラブルのリスクを下げるための知識として「解雇前におさえておくべき、問題社員の正しい解雇方法」を理解しておくことが重要です。これについては、「弁護士が教える、問題社員の解雇方法」を必ずチェックしておきましょう。

     

    今回の記事で書かれている要点(目次)

    1,弁護士が教える!「不当解雇の損害賠償、慰謝料」について
    1-1,そもそも「不当解雇」とは?
    1-2,不当解雇と労働基準法の関係
    1-3,不当解雇に関する事件の損害賠償額や慰謝料額について
    1-4,不当解雇に関する事件の判例
    1-5,会社が不当解雇で訴えられたときに弁護士に相談するタイミングについて
    2,弁護士が教える!「不当解雇裁判での会社の守り方」
    2-1,不当解雇裁判の裁判手続きの流れ
    2-2,初動が大切!不当解雇で訴えられたら「会社を守るために、まずしなければならないこと」とは?
    2-3,会社を守るための「裁判所での主張」のポイント!
    2-4,会社を守るための「証人尋問」のポイント!
    2-5,解雇トラブルを「和解」で解決する場合のポイント!

     

    1,弁護士が教える!「不当解雇の損害賠償、慰謝料」について

    まず、この記事のテーマの1つ目である「不当解雇の損害賠償、慰謝料」について、以下の目次に沿ってご説明していきたいと思います。

    1-1,そもそも「不当解雇」とは?

    1-2,不当解雇と労働基準法の関係
    1-3,不当解雇に関する事件の損害賠償額や慰謝料額について
    1-4,不当解雇に関する事件の判例
    1-5,会社が不当解雇で訴えられたときに弁護士に相談するタイミングについて

    それでは順番に見ていきましょう。

     

    1-1,そもそも「不当解雇」とは?

    最初に、「不当解雇の損害賠償、慰謝料」についてご説明する前に、「そもそも不当解雇とは何か」ということと「不当解雇と労働基準法の関係」をご説明しておきたいと思います。

    この項目では、「そもそも不当解雇とは何か」についてご説明します。

    「解雇」とは、従業員が同意していないのに会社が一方的に従業員をやめさせること(雇用契約を終了すること)をいいます。
    そして、「不当解雇」とは、おおまかにいうと「世間の常識から見た場合に解雇するほどの理由がないと判断される解雇」のことです。

    より正確には、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇」をいいます。

    会社としてはもちろん、何らかの理由があって従業員を解雇したわけですが、それが「世間の常識から見た場合に解雇するほどの理由がない」と判断される場合には、「不当解雇」にあたります。

    不当解雇になる場合の具体例としては以下のようなケースがあげられます。

    不当解雇となる場合の具体例

    例1:勤務成績不良を理由とする解雇

    十分指導をすれば成績が改善する可能性があるのに、勤務成績不良であるとして従業員を解雇するケース

    例2:病気やけがによる欠勤を理由とする解雇

    しばらく治療すれば仕事に復帰できるのに、病気やけがにより欠勤している従業員を解雇するケース

    例3:従業員による横領を理由とする解雇

    客観的にみれば十分な証拠がなく、横領したかどうかが不明であるのに、会社の金銭を横領したとして従業員を解雇するケース

    例4:会社の経営難を理由とする解雇事例

    従業員に対する説明や話し合いを行わずに、経営難を理由に解雇するケース

     

    では、もし、裁判所で解雇が「不当解雇」にあたると判断された場合、会社はどうなるのでしょうか?

    これについては、「労働契約法」の「第16条」という条文に次のように記載されています。

    ▶参照条文:労働契約法第16条

    「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

     

    このように解雇が、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」つまり、「不当解雇にあたる場合」は、「解雇が無効となる」ことが定められています。

    「解雇が無効となる」ことの具体的な意味は、以下の2つです。

    「解雇が無効となる」ことの具体的な意味

    1,従業員を復職させなければならない

    「解雇が無効となる」というのは、「解雇ははじめからなかったのと同じことになる」という意味です。つまり、解雇された従業員と会社は現在も雇用契約が続いていることになります。その結果、会社は従業員を復職させ、給与の支払いを再開する義務を負います。

    2,解雇期間中の給与をさかのぼって支払わなければならない

    会社は解雇の後、当然、解雇した従業員に給与を支払っていません。しかし、不当解雇と判断されると、解雇ははじめからなかったのと同じことになるので、「会社が従業員を解雇した後、従業員に給与を支払わなかった期間」について、さかのぼって、会社は従業員に給与を支払う義務を負います。

     

    このように、解雇が不当解雇であると判断された場合、会社は「従業員を復職させ、給与の支払いを再開すること」と「解雇後の従業員に給与を支払わなかった期間についてさかのぼって給与を支払うこと」を義務付けられます。
    このうち、後者の「解雇後の従業員に給与を支払わなかった期間についてさかのぼって給与を支払うこと」については、「バックペイ」と言われます。

    ▶補足:「バックペイ」とは?

    バックペイ(back pay)とは「さかのぼって支払う」という意味です。

    例えば、会社が従業員を解雇して、従業員が不当解雇だとして会社に裁判を起こした場合、裁判は通常1年半くらいかかります。そして裁判の結果、不当解雇だということになれば、会社は「解雇後の従業員に給与を支払わなかった期間についてさかのぼって給与を支払うこと」、つまり、1年半分の給与を支払うことを命じられるのです。

    このバックペイの支払いが、会社にとって、不当解雇の裁判が大きなリスクとなる1つの原因です。

    ここでは、まずは、「不当解雇とは何か」ということと、「不当解雇にあたると判断された場合、会社はどうなるのか」をおさえておきましょう。

    1-2,不当解雇と労働基準法の関係

    続いて、「不当解雇と労働基準法の関係」についてご説明したいと思います。

    前の項目でご説明した通り、不当解雇のルールは「労働契約法」という法律に定められています。

    しかし、「労働契約法」とは別に「労働基準法」でも以下のケースは不当解雇になることが定められています。

    労働基準法違反により不当解雇となる3つのケース

    1,業務上の病気やけがで休業する期間とその後30日間の解雇
    2,産休期間中とその後30日間の解雇
    3,労働基準監督署に会社の法律違反を申告したことを理由とする解雇

     

    3つのケースの具体的な内容は以下の通りです。

    1,業務上の病気やけがで休業する期間とその後30日間の解雇

    従業員が仕事が原因で病気やけがになったケース(労災のケース)について、労働者保護の立場から、病気やけがの治療のために仕事を休む必要がある期間とその後30日間については、解雇が禁止されています。(労働基準法第19条1項)

    2,産休期間中とその後30日間の解雇

    女性従業員について、労働者保護の立場から、産休取得中とその後30日間については、解雇が禁止されています。(労働基準法第19条1項)

    3,労働基準監督署に会社の法律違反を申告したことを理由とする解雇

    残業代未払いや違法残業などの法律違反を労働基準監督署に申告したことを理由に従業員を解雇することは禁止されています。(労働基準法第104条2項)

     

    この3つのケースは労働基準法違反となり、不当解雇にあたりますので、注意しておきましょう。
    また、労働基準法以外の法律によって、不当解雇になることが定められているケースとしては以下のものがあります。

    労働基準法以外の法律により不当解雇となる4つのケース

    1,女性従業員の妊娠・出産を理由とする解雇

    男女雇用機会均等法第9条2項により禁止されています。

    2,労働組合に加入したことあるいは労働組合活動を行ったことを理由とする解雇

    労働組合法第7条により禁止されています。

    3,育児休業制度を利用したことを理由とする解雇

    育児介護休業法第10条により禁止されています。

    4,介護休業制度を利用したことを理由とする解雇

    育児介護休業法第16条により禁止されています。

     

    以上、法律上解雇が禁止されている合計7つのケースをご紹介しました。

    「不当解雇」とは、基本的には、「そもそも不当解雇とは?」の項目でご説明したとおり、「世間の常識から見た場合に解雇するほどの理由がないと判断される解雇」のことであり、不当解雇に該当するかは個別の事情を踏まえた裁判所の判断になります。

    しかし、ここであげた7つのケースについては、個別の事情を検討するまでもなく明確に法律違反となり、不当解雇とされることになりますので、注意しておきましょう。

     

    1-3,不当解雇に関する事件の損害賠償額や慰謝料額について

    それでは、この記事のメインテーマの1つである、「不当解雇に関する事件の損害賠償額や慰謝料額」についてご説明したいと思います。

    まず、裁判所で解雇が不当解雇と判断された場合に会社が支払うことになる金銭には、以下の2つがあります。

    不当解雇と判断された場合に会社が支払うことになる金銭の2種類

    1,バックペイ
    2,損害賠償(慰謝料)

     

    このように2種類あるのですが、区別せずに、すべてひとくくりに「損害賠償」あるいは「慰謝料」と理解されているケースもあります。

    しかし、「バックペイ」は「損害賠償(慰謝料)」とは意味が異なりますので、以下では「バックペイ」と「損害賠償(慰謝料)」にわけてご説明したいと思います。

    1,バックペイについて

    解雇が不当解雇と判断された場合に、解雇ははじめからなかったのと同じことになるので、解雇後の従業員に給与を支払わなかった期間について、さかのぼって、会社は従業員に給与を支払う義務を負います。

    これが「バックペイ」です。

    バックペイの金額の基本的な計算式としては以下の通りです。

    ▶参考:バックペイの金額の計算式

    「解雇後、解雇した従業員に給与を支払わなかった期間の日数」×「解雇時点における1日あたりの給与額」

    ▶参考:解雇期間中に他社から給与を得ていた場合のバックペイの計算について

    解雇された従業員が、解雇期間中に他社から給与を得ていた場合は、一定の計算方法のもとで、その他社から得た給与の一部をバックペイから差し引くことができます。

     

    上記の計算式からもわかるように、「バックペイ」の金額は、「解雇後、解雇した従業員に給与を支払わなかった期間」の長短により、大きくかわってきます。

    前述した通り、会社が従業員を解雇して、従業員が不当解雇だとして会社に裁判を起こした場合、裁判は通常1年半くらいかかります。解雇した従業員の給与が「40万円」の場合、1年半という期間を前提とすれば、バックペイの金額は「600万円」となります。

    参考までに過去の裁判事例において企業が支払いを命じられたバックペイの金額の例をあげると以下のとおりです。

    ●過去の裁判事例における「バックペイの金額例」

    判例1.東芝事件
    (東京高等裁判所平成28年8月31日判決)

    解雇から判決までの期間:約12年
    裁判所の判断:約5200万円の支払い命令

    判例2:三井記念病院事件
    (東京地方裁判所平成22年 2月 9日判決)

    解雇から判決までの期間:約2年9か月
    裁判所の判断:約1700万円の支払い命令

    判例3:日産センチュリー証券事件
    (東京地方裁判所平成19年 3月 9日判決)

    解雇から判決までの期間:約14か月
    裁判所の判断:約700万円の支払い命令

     

    このように、裁判例でも解雇から判決までの期間が長くなるにつれて支払いを命じられる額が大きくなっていることがおわかりいただけると思います。

    長引けば長引くほど、不当解雇と判断されたときの支払額が増えることが、不当解雇トラブルの大きな特徴です。

    2,「損害賠償(慰謝料)」について

    裁判所で解雇が不当解雇と判断された場合には、バックペイとは別に会社が損害賠償(慰謝料)の支払いを命じられることもあります。

    ただし、裁判所で解雇が不当解雇と判断された場合であっても、バックペイと別に「損害賠償(慰謝料)」の支払いを命じられることはまれであり、バックペイの支払い命令のみになるケースのほうが多いです。

    これは、そもそも、慰謝料というのは「解雇による精神的苦痛」に対して支払われるものですが、裁判所が、「通常はバックペイが支払われることにより解雇による精神的苦痛は解決しており、バックペイの支払いによっても償えないような特別の精神的苦痛があった場合にのみ、損害賠償(慰謝料)の支払いを命じる」という考え方をとっているためです。

    過去に不当解雇について「損害賠償(慰謝料)」の支払いが命じられたケースとしては以下の例があります。

    ●過去に不当解雇について「損害賠償(慰謝料)」の支払いが命じられたケース

    1,自ら従業員を勧誘して他社から自社に転職させたにもかかわらず短期間で解雇したケース

    2,従業員の正当な権利に基づく行動(労働基準監督署への相談や育児休暇の取得など)を理由に解雇したケース

    3,根拠のない解雇理由を第三者に公表し、解雇された従業員の名誉を損なわせたケース

     

    それぞれのケースに該当する判例として以下のようなものがあります。

    1,自ら従業員を勧誘して他社から自社に転職させたにもかかわらず短期間で解雇したケース

    判例1,ニュース証券事件
    (東京地方裁判所平成21年1月30日判決)

    事案の概要:

    証券会社が自ら勧誘して競合他社を退社させて採用した従業員を営業成績不振を理由に3か月で解雇したケース

    裁判所の判断:

    裁判所は不当解雇と判断し、バックペイのほかに慰謝料150万円の支払いを命じました。

    判断の理由:

    裁判所はバックペイとは別に慰謝料の支払いを命じた理由として、「自ら勧誘して競合他社を退社させて採用したにもかかわらずわずか3か月ほどで成績不振を理由に解雇したことは性急にすぎること」などをあげています。

     

    このように、自ら従業員を勧誘して他社から自社に転職させたにもかかわらず短期間で解雇するケースでは、慰謝料の支払いが命じられることがあります。

    2,従業員の正当な権利に基づく行動(労働基準監督署への相談や育児休暇の取得など)を理由に解雇したケース

    判例2,東京自転車健康保険組合事件
    (東京地方裁判所平成18年11月29日判決)

    事案の概要:

    健康保険組合が事業の不振を理由に従業員を解雇したケース

    裁判所の判断:

    裁判所は不当解雇と判断し、バックペイのほかに慰謝料100万円の支払いを命じました。

    判断の理由:

    裁判所はバックペイとは別に慰謝料の支払いを命じた理由として「解雇については事業の不振が本当の理由ではなく、従業員が労働基準監督署や労働局に相談したことが理由であると考えられること」をあげています。

     

    このように、従業員の正当な権利に基づく行動(労働基準監督署への相談や育児休暇の取得など)を理由に解雇したケースでは、慰謝料の支払いが命じられることがあります。

    3,根拠のない解雇理由を第三者に公表し、解雇された従業員の名誉を損なわせたケース

    判例3,アサヒコーポレーション事件
    (大阪地方裁判所平成11年3月31日判決)

    事案の概要:

    十分な証拠がないのに従業員を横領を理由に懲戒解雇し、さらに、それを得意先等にも書面で通知したケース

    裁判所の判断:

    裁判所は不当解雇と判断し、バックペイのほかに慰謝料150万円の支払いを命じました。

    判断の理由:

    裁判所はバックペイとは別に慰謝料の支払いを命じた理由として、「十分な証拠がないのに軽率に懲戒解雇をし、それを得意先等にも通知していること」をあげています。

     

    このように、根拠のない解雇理由等を不必要に第三者に公表し、解雇された従業員の名誉を損なわせたケースでは、慰謝料の支払いが命じられることがあります。

    以上、不当解雇に関する事件の損害賠償額や慰謝料額について解説しました。

    「不当解雇と判断された場合に会社が支払わなければならない金銭には主にバックペイと慰謝料があること」、「このうち慰謝料については特別な場合にのみ支払いを命じられること」の2点をおさえてきましょう。

     

    1-4,不当解雇の事件に関する判例

    それでは、以下では、過去の不当解雇トラブルの裁判例で、実際にどのような理由で不当解雇と判断されているのかを見ていきましょう。

    以下の4つのケースにわけてみていきたいと思います。

    不当解雇の事件に関する判例としてご紹介する4つのケース

    1,勤務成績不良を理由とする解雇事例
    2,病気やけがによる欠勤を理由とする解雇事例
    3,従業員による横領を理由とする解雇事例
    4,会社の経営難を理由とする解雇事例

     

    それぞれの解雇事例について具体的に解説していきます。

    1,勤務成績不良を理由とする解雇事例

    勤務成績不良を理由に従業員を解雇したケースで、裁判所が不当解雇と判断した例としては、以下の判例が参考になります。

    判例1,セガ・エンタープライゼス事件
    (平成11年10月15日東京地方裁判所決定)

    事案の概要:

    ゲーム機メーカーが、勤務成績不良を理由に従業員を解雇したケースです。

    裁判の判断:

    裁判所は、「従業員に適切な指導をすれば、勤務成績が改善する余地があったのに、十分な指導をせずに解雇した」と判断し、不当解雇であると判断しました。

     

    このようにセガ・エンタープライゼス事件では、会社が十分な指導をせずに解雇したことが、不当解雇と判断された理由となっています。

    勤務成績不良や能力不足による解雇事例で、裁判所に解雇が正当と認めてもらうためには、以下の2つの点が大きなポイントとなりますのでおさえておきましょう。

    ● 勤務成績不良を理由とする解雇事例で勝訴するポイント

    ポイント1:
    勤務成績が不良であった事実を裁判所にわかりやすく説明すること

    ポイント2:
    会社が十分な指導をしてきたが成績が改善されなかったことを裁判所にわかりやすく説明すること

     

    ▶参考:勤務成績不良や能力不足を理由とする解雇前に必ずチェックしておくポイント!

    勤務成績不良や能力不足を理由とする解雇した際に、裁判において勝訴するためには解雇する前の会社の対応が重要なポイントになります。そのため、「能力不足の従業員を解雇する前に確認しておくべきポイント」についても必ずチェックしておきましょう。

    2,病気やけがによる欠勤を理由とする解雇事例

    病気やけがによる欠勤を理由に従業員を解雇したケースで、裁判所が不当解雇と判断した例としては、以下の判例が参考になります。

    判例2,東芝事件
    (東京高等裁判所平成28年8月31日判決)

    事案の概要:

    東芝が、うつ病により休職中の従業員について、休職期間を終えても復職できなかったことを理由に解雇したケースです。

    裁判所の判断:

    裁判所は、この従業員がうつ病を発症した原因は会社の長時間労働にあるとして、長時間労働が原因でうつ病を発症して治療中の従業員を解雇することは不当解雇であると判断しました。

     

    このように東芝事件では、病気の原因が会社での長時間労働にあると判断されたことが、不当解雇と判断された理由になっています。

    病気やけがによる欠勤を理由とする解雇事件で裁判所に解雇が正当と認めてもらうためには、以下の2つの点が大きなポイントとなりますのでおさえておきましょう。

    ●病気やけがによる欠勤を理由とする解雇事件で勝訴するポイント

    ポイント1:
    病気やけがの原因が会社の業務によるものでないことを主張すること

    ポイント2:
    休職期間を経ても復職の見込みがないと判断できるケースであることを裁判所にわかりやすく説明すること

     

    ▶参考:病気やけがによる欠勤を理由とする解雇前に必ずチェックしておくポイント!

    病気やけがによる欠勤を理由とする解雇した際に、裁判において勝訴するためには同じく解雇する前に確認しておくべき注意点があります。この点については、「病気やけがによる休職期間満了による解雇について」も必ずチェックしておきましょう

    3,従業員による横領を理由とする解雇事例

    従業員による横領を理由に従業員を解雇したケースで、裁判所が不当解雇と判断した例としては、以下の判例が参考になります。

    判例3,社会福祉法人事件
    (東京地方裁判所平成22年9月7日判決)

    事案の概要:

    社会福祉法人が事務長として勤務していた従業員について、横領を理由に解雇したケースです。

    裁判の判断:

    裁判所は、横領の事実は、認められないとして、不当解雇と判断しました。

     

    このように、社会福祉法人事件では、横領の事実を会社側が立証できなかったことが、不当解雇と判断された理由になっています。

    横領による解雇について、裁判所に解雇が正当と認めてもらうためには、「解雇した従業員が横領をした事実を証明すること」が大きなポイントとなりますのでおさえておきましょう。

    ▶参考:従業員の横領を理由とする解雇前に必ずチェックしておくポイント!

    従業員の横領を理由に解雇した際に、裁判において勝訴するためには同じく解雇する前に確認しておくべき注意点があります。この点については、「従業員の横領を理由による懲戒解雇について」も必ずチェックしておきましょう。

    4,会社の経営難を理由とする解雇事例

    会社の経営難を理由とする解雇(いわゆる「リストラ」)は、法的には「整理解雇」と呼ばれます。

    会社の経営難を理由に従業員を解雇したケースで、裁判所が不当解雇と判断した例としては、以下の判例が参考になります。

    判例4,興和株式会社事件
    (大阪地方裁判所平成10年1月5日決定)

    事案の概要:

    派遣会社が派遣先との契約解除による業務縮小により、従業員を整理解雇したケースです。

    裁判所の判断:

    裁判所は経営難によるリストラの必要性自体は認めましたが、この会社が希望退職者の募集を行わずに整理解雇に踏み切ったこと、解雇にあたり従業員との十分な話し合いをしていないことなどを指摘して、不当解雇と判断しました。

     

    このように、興和株式会社事件では、整理解雇の前に希望退職者の募集を行わなかったことや解雇について従業員との間で十分な話し合いをしていないことが、不当解雇と判断された理由となっています。

    経営難による解雇については、裁判所に解雇が正当と認めてもらうためには、以下の4つが大きなポイントとなります。

    ●経営難による解雇について、裁判所に解雇が正当と認めてもらうための4つのポイント

    ポイント1:
    経営難によるリストラの必要性を裁判所にわかりやすく説明すること

    ポイント2:
    役員報酬の削減や希望退職者の募集、新規採用の停止など、会社が行った「解雇以外の経費削減努力」について説明すること

    ポイント3:
    従業員の中から解雇対象者を選定する際に、一定の選定基準を設けたうえで、公平に判断したことを説明すること

    ポイント4:
    解雇にあたり、従業員や労働組合に対する説明、話し合いを十分に行ったことを説明すること

     

    この4つのポイントは「整理解雇の4要件」とも呼ばれ、会社の経営難を理由とする解雇の場合に裁判所で一般的に重要視されているポイントですのでおさえておきましょう。

     

    1-5,会社が不当解雇で訴えられたときに弁護士に相談するタイミングについて

    続いて、「会社が不当解雇で訴えられたときに弁護士に相談するタイミング」についてご説明したいと思います。

    結論から言えば、解雇した従業員から不当解雇の主張を受けたらできる限り早く弁護士に相談してください。

    裁判になるのを待つべきではありません。
    その理由は以下のとおりです。

    不当解雇の主張を受けたらできる限り早く弁護士に相談すべき理由

    まず、前述のとおり、裁判所で解雇が不当解雇と判断された場合に会社が支払うことになる金銭には、「バックペイ」と「損害賠償(慰謝料)」の2種類がありますが、その中でもバックペイが主な部分を占めます。

    そして、バックペイについては、「解雇から日がたてばたつほど、支払額がふくらむ点」に特徴があります。

    不当解雇の事件が裁判になると最低でも1年はかかりますので、その分、不当解雇と判断された場合のバックペイの額が膨らみます。

    できる限り早く、裁判になる前の段階で弁護士に相談することによって、裁判になる前に解雇トラブルを解決することができ、仮に不当解雇と判断されるようなケースであっても会社の支払額を最小限にとどめることができます。

    「解雇前に弁護士に相談する」のがベストなタイミング!

    さらに、言えば、もし可能であれば、解雇する前の段階で、弁護士に相談することがベストです。

    解雇する前に弁護士に相談すれば、「解雇した場合に不当解雇と判断されるリスクの程度」、「解雇前に集めておくべき証拠」、「解雇前に行っておくべき手続き」等について弁護士にアドバイスを受けることができ、不当解雇と判断されるリスク自体を回避することができるからです。

    以上、この記事の前半では、「不当解雇の損害賠償、慰謝料」についてご説明しました。

    最初に、「どのような場合に不当解雇となるのか」をご説明し、続いて「不当解雇と判断された場合に会社が支払う金銭」についてもご説明しました。

    不当解雇のトラブルでは、「バックペイ」が会社が敗訴した場合に支払う金銭の主要な部分であり、この「バックペイ」は解雇から期間がたつにつれて金額が増えることが特徴ですのでおさえておきましょう。

    会社の支払いリスクを最小限にとどめるためにも、不当解雇トラブルでは早期解決が必須ですので、できる限り早く弁護士に相談することが重要です。

    ▶参考:従業員を解雇しようかお悩みの際は、労務に強い弁護士に相談を!

    不当解雇を防ぐためには、従業員を解雇する前に弁護士に相談するのがベストですが、この際に「労務トラブルや労働問題に強い弁護士」で会社側の立場に立って相談に乗ってくれる弁護士を選定するのも大切なポイントです。咲くやこの花法律事務所では会社側の立場になって、数々の労務トラブルや労働問題を解決してきた弁護士がそろっていますので、「労務トラブル・労働問題に強い弁護士」の紹介ページも参考にご覧下さい。

     

    2,弁護士が教える!「不当解雇裁判での会社の守り方」

    次に、この記事のメインテーマの2つ目である「不当解雇裁判での会社の守り方」について、以下の目次に沿ってご説明していきたいと思います。

    ●不当解雇裁判の流れ
    ●初動が大切!不当解雇で訴えられたら「会社を守るために、まずしなければならないこと」とは?
    ●会社を守るための「裁判所での主張」のポイント!
    ●解雇トラブルを「和解」で解決する場合のポイント!
    ●会社を守るための「証人尋問」のポイント!

     

    それでは順番に見ていきましょう。

     

    2-1,不当解雇裁判の裁判手続きの流れ

    「不当解雇裁判での会社の守り方」をご説明する前に、まず、不当解雇で訴えられた場合の裁判手続きの大まかな流れを確認しておきましょう。

    不当解雇裁判の裁判手続きの流れは、以下の通りです。

    不当解雇裁判の手続きの流れ

    1,訴状が届く
    2,裁判所での主張
    3,証人尋問
    4,裁判所からの和解案の提示
    5,判決

     

    まず、不当解雇裁判の手続きは、会社に「1,訴状が届く」ことから始まります。

    その後、「2,裁判所での主張」のところで、従業員側、会社側がお互いの主張を書面で出し合います。

    双方の主張がおおむね尽きた段階で、「3,証人尋問」の手続きに進みます。

    また、証人尋問と前後して、それまでの主張を踏まえた「4,裁判所からの和解案の提示」があることが通常です。

    そして、和解ができなければ、「5,判決」です。

    以下では、「不当解雇裁判での会社の守り方」として、上記の流れに沿って、「訴状が届いたらまずしなければならないこと」をご説明したうえで、「裁判所での主張の段階」、「証人尋問の段階」、「和解案の提示の段階」の各段階ごとに、会社側が裁判を有利に進めるために理解しておいていただきたいポイントをご説明します。

     

    2−2,初動が大切!
    不当解雇で訴えられたら「会社を守るために、まずしなければならないこと」とは?

    従業員から不当解雇で訴訟を起こされた場合、以下の2つの点が「会社を守るために、まずしなければならないこと」になります。

    ●会社を守るためのポイント!

    1,すぐに訴状の内容を確認すること
    2,従業員の解雇トラブルに精通した企業法務に強い弁護士に相談すること

     

    上記の2つのポイントについて、詳しくご説明していきます。

    1,すぐに訴状の内容の確認すること

    従業員が会社を不当解雇で訴えた場合、訴訟が起こされてから3週間から4週間ほど経過すると、裁判所から会社に訴状が送られてきます。訴状の中で、特に重要なのは、訴状の「請求の趣旨」という部分です。通常は訴状の1ページ目か2ページ目あたりに「請求の趣旨」という項目があるはずです。ここに解雇された従業員が訴訟で会社に請求している内容が書かれています。

    ●訴状の「請求の趣旨」の確認のポイント

    訴状の「請求の趣旨」には、典型的には以下のような内容が書かれています。

    (1)原告が、被告に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
    (2)被告は、原告に対し、●●●●●円およびこれに対する本訴状送達日の翌日から支払い済みまでの年6分の割合による金員を支払え。
    (3)被告は、原告に対し、毎月●日限り●●●●円およびこれらに対する各支払日の翌日から支払い済みまで年6分の割合による金員を支払え。
    (4)訴訟費用は被告の負担とする。

    との判決及び第2項、第3項について仮執行の宣言を求める。

     

    この場合、解雇された従業員は、この訴状で、会社に対して4つの請求をしています。まずは、従業員が何を請求しているのかを正確に理解することが大切ですので、以下では上の例で挙げた4つの請求の意味を順番に説明します。

    第1項:
    原告が、被告に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

    上記の部分は「地位確認請求」と呼ばれるものです。これは、「解雇は無効だから、今も自分は従業員だ。会社に復職させてください。」という意味の請求です。

    第2項:
    被告は、原告に対し、●●●●●●円およびこれに対する本訴状送達日の翌日から支払い済みまでの年6分の割合による金員を支払え。

    これは、「バックペイの請求」です。

    「会社がした解雇は無効であり、解雇後に会社が賃金を支払わなかったのはおかしいので、今まで支払わなかった分をまとめて支払ってください」という内容になります。

    「バックペイ」については、この記事の前半部分の「不当解雇に関する事件の損害賠償額や慰謝料額について」の項目で詳しく説明していますので確認してください。

    第3項:
    被告は、原告に対し、毎月●日限り●●●●円およびこれらに対する各支払日の翌日から支払い済みまで年6分の割合による金員を支払え。

    これは、「将来の賃金請求」です。「解雇は無効で自分は今も従業員だから、訴訟を起こした後は、毎月給料日に解雇以前と同じ給与を支払ってください」という請求です。

    第4項:
    訴訟費用は被告の負担とする。

    最後は、「訴訟費用の請求」です。「訴訟のために従業員が裁判所に納めた印紙代などの費用は会社で負担してください」という請求です。

     

    このうち、特に注目していただきたいのは、第1項の「地位確認請求」が含まれているかどうかです。

    「地位確認請求」は前述のとおり、「復職を求める」という意味の請求です。従業員がすでに別の職についているなどの事情により復職を求めない場合は、「第1項」の「地位確認請求」はされません。しかし、「地位確認請求」がされている場合は、単にお金の問題ではなく、「敗訴すれば従業員を復職させる義務を負うことになる」という点を理解して訴訟に対応していく必要があります。

    ●訴状に同封されている書類の確認のポイント

    裁判所から届いた封筒には、訴状と一緒に「第1回口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」という書面が同封されています。
    この書面に、以下の内容などが記載されています。

    (1)出廷しなければならない裁判所の名前
    (2)第1回の裁判期日の日時
    (3)答弁書の提出期限

     

    「答弁書」とは、「訴状に対する反論書面」のことです。そして、「第1回口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」に書かれた「答弁書の提出期限」までに、裁判所に「答弁書」を提出しなければなりません。

    2,従業員の解雇トラブルに精通した企業法務に強い弁護士に相談すること

    訴状の内容を確認したら、従業員の解雇トラブルに精通した弁護士に相談に行きましょう。答弁書の提出期限までに、内容の充実した答弁書を提出できるように、訴状が届いたらできる限り早く弁護士に相談することがポイントです。

    弁護士への相談の際、

    (1)不当解雇で訴えてきた従業員の履歴書
    (2)従業員との雇用契約書
    (3)就業規則
    (4)解雇通知書

     

    資料として、上記の書類をもって弁護士に相談することをお勧めします。

    その他、従業員を解雇する理由となった従業員の問題行動について、簡単に時系列でまとめたものを持参すると、相談がスムーズです。弁護士の専門分野もさまざまですので、解雇のトラブルに精通した弁護士で、かつ企業法務に強い会社側の立場に立って活動している弁護士に相談しましょう。不当解雇で訴えられた場合に会社側で十分な対応をするためには、労働法の理解だけでなく、企業経営やマネジメント、経営の哲学についての理解が必要です。このような点にも理解のある弁護士に依頼できればベストです。

    このように、会社に訴状が届いたら、まずは従業員が請求している内容を正確に理解し、同時に、従業員の解雇トラブルに精通した弁護士にできるだけ早く相談することが、会社を守るための最初の重要なポイントです。

     

    2−3,会社を守るための「裁判所での主張」のポイント!

    実際に裁判がスタートすると、少なくとも最初の6ヶ月程度は、「従業員側」、「会社側」の双方が書面でお互いの主張を出し合うことが続きます。

    訴状に対して、会社側が「答弁書」で反論し、それに対して従業員側が書面で再反論し、会社側がさらに再々反論する・・・、という繰り返しです。

    この書面による主張の場面で、解雇トラブルを勝ち抜くためのもっとも重要なポイントは、「解雇した従業員の問題点について、できる限り詳細で具体的な主張をすること」にあります。

    以下では、どのような点に重点をおいて主張をしていけばよいかをご説明します。

    ●裁判所での主張のポイント

    解雇した従業員の問題点を具体的に主張する前提として、会社の事業内容や従業員が担当していた業務の内容をわかりやすく説明する必要があります。

    具体的には、以下の通りです。

    (1)会社の事業内容
    (2)売り上げ規模
    (3)解雇した従業員の入社前の経歴
    (4)解雇した従業員の入社後の経歴
    (5)解雇した従業員の役職
    (6)解雇した従業員の担当していた業務の内容

     

    これらについて、わかりやすく書面に主張をまとめ、裁判所に理解してもらう必要があります。その上で、解雇の原因となった従業員の問題点を「できるかぎり詳細かつ具体的に」主張することになります。

    ▶参考:解雇の原因となった従業員の問題点の主張について

    例えば、従業員の能力が不足していたために解雇したという場合に「仕事の段取りが悪い上に、事務作業にミスが多く、いくら注意しても改まらなかった」とか、「営業成績が悪く、6か月連続で最下位で、新人よりも成績が悪かった」などというような抽象的な主張をしただけでは、裁判所は解雇を正当と認めることはありませんので注意が必要です。

    従業員の能力不足が原因で生じた問題点について、以下のようなことを時系列に沿って詳細に述べていくことが必要不可欠です。

    (1)いつ問題が生じたか?
    (2)どういう場面で問題が生じたか?
    (3)どういう問題が生じたのか?
    (4)その問題が生じた原因はなにか?
    (5)その問題に会社としてどのように対処したか?
    (6)会社として問題が生じたことについて「いつ、誰が、どのように」その従業員を指導したか?
    (7)指導に対して従業員はどのように対応したか?

     

    書面の証拠があればベストですが、書面の証拠がなかったとしても、証言で立証することは十分可能です。そのため、まずは書面の証拠の有無にかかわらず、できるだけ詳細に具体的事実を主張することが大切です。

    このように、解雇の原因となった従業員の問題点について具体的かつ詳細な主張をすることが、会社を守るために重要なポイントです。労力と気力がいる作業にはなりますが、これができれば裁判所で解雇の正当性を認めてもらう余地が十分に出てきます。

     

    2−4,会社を守るための「証人尋問」のポイント!

    次に、「従業員側」、「会社側」の双方の主張が概ね出揃うと、裁判の手続きは「証人尋問」に進みます。

    「証人尋問」は、従業員本人や会社側の証人を裁判所で尋問して、会社側の主張と従業員側の主張が食い違う事実関係について裁判所がどちらを信用するかを決める手続きです。

    証人尋問では、「証人の人選」と「事前の準備」が、大切なポイントです。
    この大切なポイントについて、以下でご説明いたします。

    ●証人の人選のポイント

    証人尋問では、解雇された従業員の問題点を立証することが目的です。この目的にあったベストな証人を人選することが重要なポイントです。

    通常は、解雇された従業員の直接の指導担当であった上司が、解雇された従業員の問題点を一番詳しく話をすることができます。そのため、直接の指導担当であった上司を証人とすることが多いです。解雇された従業員を指導していた立場の人が複数人いるときは、人選が必要になります。

    その場合、以下の点をよく検討して証人を人選しましょう。

    (1)従業員の問題点について具体的な内容をよく記憶している人物かどうか?
    (2)従業員の問題点を裁判所にわかりやすく説明できる人物かどうか?
    (3)従業員の問題点を一方的に攻撃するのではなく、「従業員を懸命に指導したがうまくいかなかった」という点を謙虚さをもって説明できる人物かどうか?

     

    話が長くて説明がわかりにくい人物は証人には向きません。また、解雇された従業員に対して嫌悪の感情を持っている人物は、裁判所でも、感情的な面が出てしまい、裁判所から単なる好き嫌いで解雇したのではないかと誤解される危険がありますので、避けたほうがよいです。従業員の問題点を一方的に攻撃するようなタイプの人物も、裁判所に従業員が不合理に解雇されたという印象を与えかねませんので、避けることが賢明です。

    ●証人尋問の事前の準備のポイント

    尋問にあたっては、弁護士が証人に質問する内容を事前に決めて、打ち合わせを行うのが通常です。
    この打ち合わせで、以下の点を確認しましょう。

    (1)裁判所にも理解ができるように、わかりやすく質問に答えることができているか?
    (2)質問の答えを覚えてしまい、記憶に基づかない不自然な答えになっていないかどうか?
    (3)証言の内容が、これまでの主張や提出した書証に矛盾していると裁判所から受けとられるおそれがないかどうか?

    さらに、過去の記憶が十分でなければ、具体的な証言ができません。

    (1)従業員を指導する目的で送ったメールのやりとり
    (2)従業員が業務について報告した業務月報
    (3)従業員の面談記録
    (4)従業員が過去に提出した始末書
    (5)会社から従業員に交付した指導書

    などがあれば、十分に目を通し、証人尋問までに、その従業員を解雇に至った経緯について記憶を喚起しておきましょう。証人尋問の前に、解雇された従業員の同僚や上司からのヒアリングを再度行い、記憶を喚起することも有効です。

    このように、証人尋問では、「適切な人選をすること」と、「事前に十分な準備をすること」が、会社を守る上で重要なポイントとなります。

     

    2−5,解雇トラブルを「和解」で解決する場合のポイント!

    これまでご説明してきた「従業員の解雇トラブル」において、証人尋問の前のタイミング、あるいは証人尋問の後のタイミングで、裁判所から和解案の提示があるのが通常です。

    和解の場合は、「会社が支払う和解金の額」がもっとも重要なポイントとなります。また、「和解にあたり、会社側として必要な和解条項を盛り込んでもらうこと」も重要なポイントです。

    以下では、この2点について説明します。

    ●会社が支払う和解金の額についての交渉のポイント

    裁判所から提示される和解案の内容は、会社が一定の「和解金」を支払うことで従業員が退職に合意する内容であることが最も多いです。そのため、「会社が支払う和解金の額についての交渉」が重要なポイントになります。和解にあたり会社が支払う金銭については「慰謝料」等と呼んでいる人も多いですが、正確には「和解金」と呼びます。

    和解金の額については、裁判官から「和解案」という形で提案があることが多いです。
    通常は以下の3つの要素により、裁判官からの「和解金」の提案額が決まってきます。

    ●和解金の金額を決める要素:その1

    「会社側の解雇がやむを得ない合理的なものであったことを裁判所でどの程度説明できたか?」

    裁判所が解雇はやむを得なかったという心証であれば、和解案で示される和解金の額は低くなります。

    ●和解金の金額を決める要素:その2

    「解雇された従業員の給与の額」

    和解金の金額は、通常、解雇された従業員の給与の●か月分という考え方で計算されます。そのため、給与の額が高ければ和解金の額は高くなる傾向にあります。

    ●和解金の金額を決める要素:その3

    「解雇された従業員の解雇後の失業の期間」

    失業の期間が長ければ、従業員からみて解雇による損害が多額になるため、和解金の額が高くなる傾向にあります。逆に、従業員が解雇後に別の仕事に就いたようなケースでは、従業員からみて解雇による損害は小さく、
    和解金の額は低くなる傾向にあります。

     

    この3つの要素の中でも、特に和解金の額に重要な影響を及ぼすのは、「その1」の「会社側の解雇がやむを得ない合理的なものであったことを裁判所でどの程度説明できたか」という要素です。

    これによって、和解金は1ヶ月分の給与額程度で済むこともあれば、2年分程度の高額になることもあります。そのため、和解案が出るまでの段階で、「会社を守るための裁判所での主張のポイント」で書いたように、解雇した従業員の問題点についてできる限り詳細で具体的な主張をしておくことが、和解を有利に進めるための最大のポイントとなります。

    また、「その3」に関連して、解雇した従業員がその後、別の仕事に就いていないかどうかも、和解の前に確認しておくことが必要です。この点を忘れてしまうと、従業員が解雇後に別の仕事に就いていたとしても、和解案で、別の仕事に就いたことによって従業員の損害が小さくなっていることを考慮してもらえず、結果として和解金の額が高くなってしまいますので、注意が必要です。

    ●会社側として必要な和解条項を盛り込んでもらうための注意点

    和解金以外にも、会社側として必要な和解条項を和解の中に盛り込んでもらう交渉をしておきましょう。
    例えば、和解にあたって以下のような内容を忘れないようにしましょう。

    1,和解金の額などが他の従業員に伝わらないように、和解の内容を口外してはならない旨の条項を裁判所にいれてもらうこと

    2,従業員が和解後に会社の悪口を言いふらすなどの事態を避けるため、お互いに誹謗中傷を禁止する内容の条項をいれてもらうこと

     

    会社としては解雇した従業員に「和解金」を支払うことは、意に沿わないことも多いと思います。しかし、一審で勝訴したとしても、さらに二審、上告審まで裁判が続く可能性があることや、その場合の弁護士費用を考えれば、和解により裁判を解決して紛争に終止符をうつことも十分検討に値します。実際にも、不当解雇に関する訴訟になる事件のうち約半数が、判決まで至らずに和解により解決しています。

    事前に解雇した従業員の問題点についてできる限り詳細で具体的な主張をしたうえで和解に臨み、裁判所から和解案の提示があれば、その後の裁判手続の負担も含めて冷静に損得を検討することが、和解交渉の重要なポイントになります。

     

    まとめ

    記事の後半部分では、不当解雇裁判の手続きの流れと不当解雇裁判での会社の守り方について、重要なポイントを説明いたしました。

    最後にポイントを整理すると以下の通りです。

    1,訴状が届いたらまずしなければならないこと

    ・すぐに訴状の内容を確認する
    ・従業員の解雇トラブルに精通した企業法務に強い弁護士に相談する

    2,裁判所での主張の段階におけるポイント

    ・解雇した従業員の問題点について、できる限り詳細で具体的な主張をする

    3,証人尋問の段階におけるポイント

    ・証人の人選と事前の準備が重要

    4,和解案の提示の段階におけるポイント

    ・要点を踏まえて和解金の額についての交渉を行う
    ・会社側として必要な和解条項を盛り込んでもらう

     

    不当解雇の事件でも、裁判所はきちんと詳細かつ丁寧な説明をすれば会社側の主張を認めてくれます。

    要点をおさえて、解雇の訴訟を乗り切りましょう。

    前半部分でもご説明しましたが、「問題従業員を解雇しようか悩んでいる」などのケースはもちろん、「既に解雇した従業員と不当解雇でトラブルになっている」など、解雇に関することでお悩みの際はスピード相談が重要です。そのため、すぐにでも咲くやこの花法律事務所の労務トラブルや労働問題の実績豊富な弁護士までご相談下さい。

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    記事作成弁護士:西川 暢春
    記事更新日:2017年2月24日

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