就業規則変更の手続きの進め方に不安があり、悩んでいませんか?
就業規則変更の手続きは方法を間違うと従業員とのトラブルや裁判に発展することが多い手続きです。裁判例でも就業規則による給与制度の変更が後日無効と判断され、以下のような多額の金銭の支払いを会社が命じられたケースが少なくありません。
●裁判例1:スーパーマーケット東京豊洲店事件
基本給を減額して固定残業手当を増やす就業規則の変更を無効と判断し、「約540万円」の支払命令
●裁判例2:クリスタル観光バス事件
年功序列型の賃金制度から成果主義型の賃金制度に移行する就業規則の変更を無効と判断し、「約1200万円」の支払命令
しかし、実は、就業規則変更の手続きについては、この記事でご説明する6つの注意点をおさえておけばトラブルなく進めることができます。
今回は、これまで就業規則変更の手続きについて多くのご依頼を受けてきた「咲くやこの花法律事務所」の経験に基づき、「就業規則変更の手続きの流れと、就業規則変更の内容面、手続面に関する6つの注意点」をご説明します。この記事で就業規則変更手続きに関する不安を解消し、トラブルなく就業規則変更を進めていきましょう。
▶参考情報:また、就業規則に関する全般的な基礎知識については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
自社の判断のみで就業規則の変更手続きを進めると、変更したつもりが、裁判所で変更の効力を認めてもらえなかったというケースが少なくありません。変更する条文の内容や従業員への説明の仕方については必ず事前に実際の裁判実務、裁判所の考え方に精通した弁護士に相談していただくことをおすすめします。筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所でもご相談を承っていますのでご相談ください。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,就業規則の変更とは?
就業規則の変更とは、既に就業規則を作成し、周知されている事業場について、その就業規則を変更することを言います。就業規則の変更は、事業場ごとに従業員代表者を選出したうえでその意見を聴取し、意見書を添付して労働基準監督署長に届け出ることが必要です。また、変更後の就業規則を従業員に周知することが必要です。
労働条件の変更は、従業員から個別に同意を得て行うことが原則です(労働契約法8条)。しかし、労働条件が各従業員が同意するかどうかによってバラバラになることが望ましくないケースもあります。
例えば、就業規則において休職制度を設けていた会社が、就業規則を変更して休職期間を変更しようとする場合、これに同意するかどうかによって、休職期間が従業員ごとにバラバラになるのは望ましくないでしょう。
そこで、一定の場合には、従業員から個別の同意を得なくても、就業規則の変更によって、従業員の労働条件を変更することが認められています(労働契約法10条)。
▶参考:労働契約法8条
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
▶参考:労働契約法10条
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
・参照元:「労働契約法」の条文はこちら
▶参考動画:この記事の著者 弁護士 西川 暢春が「就業規則の変更方法は?賃金制度変更・賃金の不利益変更を円満に進める方法【前編】」と「就業規則の不利益変更!休日減や労働時間増を円満に進める方法【後編】」を詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
2,就業規則の変更が必要になる主な場面とは?
就業規則変更の手続きの流れのご説明に入る前に、まず、「就業規則の変更が必要になる場面にどのようなものがあるか」、確認しておきましょう。
(1)就業規則変更手続きが必要になる場面の例
場面1:
固定残業代(みなし残業代)制度を新設する場合
会社が残業代トラブルを経験し、その対応として「固定残業代制度(みなし残業代)」を導入する会社が増えていますが、固定残業代制度を新設する場合、就業規則の変更が必要になります。
▶参考情報:固定残業代制度についての詳しい解説は、以下の記事をご参照ください。
場面2:
手当の新設、廃止など従業員の給与の項目を変更する場合
新しい手当をつくったり、従来の手当を廃止するなど従業員の給与の項目を変更する場合にも、就業規則の変更が必要になります。
場面3:
賃金体系を変更する場合
年功序列の賃金体系を成果報酬型に変更するなど、賃金体系を変更する場合も就業規則の変更が必要になります。
場面4:
始業時刻・終業時刻や公休日を変更する場合
始業時刻・終業時刻を変更する場合や、公休日を変更する場合も就業規則の変更が必要になることがあります。
場面5:
在宅勤務制度を設ける場合
在宅勤務制度や在宅ワークなど新しい勤務形式を導入する場合も就業規則の変更が必要になります。
在宅勤務制度や在宅ワークに関する就業規則の重要ポイントについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
場面6:
法改正に対応する必要がある場合
例えば、労働契約法改正により、契約社員の無期転換ルールが設けられたことなど、法改正に対応するために就業規則の変更が必要になる場合です。
▶参考情報:無期転換ルールに関する説明は、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
最近の法改正では、出生時育児休業制度を創設する育児介護休業法改正への対応(令和4年10月施行)や、中小企業における月60時間以上の時間外労働についての割増率引き上げへの対応(令和5年4月から)などについても、就業規則の変更が必要です。
場面7:
現行の就業規則と会社の実態がずれている場合
給与規程の内容や就業規則で定めた会社のルール(服務規律など)の規定が会社の実態とずれてきている場合も、就業規則の変更が必要になります。
場面8:
現行の就業規則の出来がよくなく、適切な内容に変更する必要がある場合
現行の就業規則が、労働問題トラブルの際に機能する内容になっておらず、適切な内容に変更する必要がある場合も、就業規則の変更が必要になります。
主に上記のような場面で就業規則の変更が必要になることをまずおさえておきましょう。
3,就業規則変更の手続きの流れ
それでは、次に「就業規則変更の手続きの全体の流れ」を把握しておきましょう。
就業規則変更手続きの全体の流れは以下の通りです。
- Step1:変更案作成
- Step2:従業員代表者からの意見聴取
- Step3:就業規則変更届の提出
- Step4:変更後の就業規則の周知
各手続きの概要は以下の通りです。
Step1:
変更案作成
まずは、就業規則の変更案を作成します。
Step2:
従業員代表者からの意見聴取
就業規則の変更については、作成時と同様に従業員代表者からの意見聴取が義務付けられています。
Step3:
就業規則変更届の提出
従業員代表者からの意見聴取が終わった後に、就業規則変更届を「労働基準監督署」に提出します。
Step4:
変更後の就業規則の周知
変更後の就業規則は、従業員に周知することが義務付けられています。
以上が就業規則変更手続き全体の流れです。
4,就業規則変更についておさえておくべき6つの注意点
それでは、次に、「就業規則変更についておさえておくべき注意点」を見ていきましょう。まず、変更案の内容面の注意点として以下の3つの注意点をおさえておく必要があります。
(1)就業規則変更案の内容面の注意点
- 注意点1:就業規則の不利益変更に該当する場合のリスクとその対策方法
- 注意点2:直近の法改正、判例動向に対応する
- 注意点3:現在の自社の実情と合致した内容になっているか再度確認する
次に、就業規則変更手続きの進め方の注意点として以下の3つの注意点をおさえておく必要があります。
(2)就業規則変更手続きの進め方の注意点
- 注意点1:就業規則変更時の意見聴取に関する注意点
- 注意点2:就業規則変更届提出に関する注意点
- 注意点3:変更後の就業規則の周知に関する注意点
このうち、「就業規則変更手続きの進め方の注意点」についてはこの記事で解説通りの手順で進めていただければ問題なく対応が可能です。
一方で、「就業規則変更案の内容面の注意点」のうち、「就業規則の不利益変更のリスク」については、注意点を踏まえて対応しても100%リスクが排除できるものではなく、場合によってはトラブルを覚悟しなければならないこともあります。
しかし、会社経営のために必要なことは、仮にリスクがあっても経営者として断行する必要があります。そのため、「就業規則の不利益変更のリスク」については、できるだけリスクをおさえて進める方法についてご説明したいと思います。
それでは順番に見ていきましょう。
内容面の注意点1:
就業規則の不利益変更に該当する場合のリスクとその対策方法
まず、就業規則変更案の内容面の注意点の1つ目として、「就業規則の不利益変更に該当する場合のリスクとその対策方法」について見ていきましょう。
1,就業規則の不利益変更とは?
就業規則の不利益変更とは、「就業規則により従業員の労働条件を従業員にとって不利益に変更すること」をいいます。
そして、自社で予定している就業規則の変更が不利益変更に該当する場合は、以下の「就業規則による不利益変更の原則禁止のルール」に抵触しないかを検討することが必要です。
▶参考情報:「就業規則による不利益変更の原則禁止のルール」とは?
「就業規則による不利益変更の原則禁止のルール」とは、「就業規則により従業員の労働条件を従業員に不利益に変更することは原則として許されない」というルールです。
例外的に「変更の内容が合理的な場合であり、かつ変更後の就業規則を周知させていた場合」に限り、就業規則により労働条件を不利益に変更することができるとされています。
つまり、就業規則の変更手続きでは、従業員代表からの意見聴取手続きがありますが、これは各従業員からの個別の同意を得るものではありません。
このような各従業員からの個別の同意を得ない就業規則の変更手続きによっては従業員の労働条件を不利益に変更することができないことが原則です。
しかし、例外的に、法律は、「変更の内容が合理的な場合であり、かつ変更後の就業規則を周知させていた場合」に限り、従業員個人の同意を得なくても、就業規則の変更により労働条件を変更することを認めています。
この就業規則による不利益変更の原則禁止のルールは、具体的には労働契約法第9条、第10条で次のように定められています。
▶参考情報:労働契約法第9条、第10条の内容について
第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。(以下略)
・参照元:「労働契約法」の条文はこちら
以上、まずは、就業規則による従業員の労働条件の不利益変更が原則として禁止されていることをおさえておきましょう。
2,就業規則の不利益変更の実際のリスクについて
それでは、原則として禁止されている就業規則の不利益変更を会社が行った場合、実際上どのようなリスクがあるのでしょうか?
以下では、就業規則の不利益変更についての3つの裁判例をご紹介して、「就業規則の不利益変更を行った場合の実際のリスク」についてご説明したいと思います。
裁判例1:
基本給を減額して固定残業手当を増やす就業規則の変更を無効と判断した裁判例(スーパーマーケット東京豊洲店事件 東京地方裁判所平成28年9月27日判決)
事案の概要:
スーパーマーケットにおいて、基本給を減額して固定残業手当を増やす就業規則の変更を行ったところ、従業員の1人が残業代の支払いを求める裁判を起こし、その中で就業規則変更による基本給減額は無効であると主張した事案です。
裁判所の判断:
就業規則の変更を無効と判断し、基本給減額分など「約540万円」の支払いを命じました。
裁判所の判断の理由:
裁判所は、「従業員の給与水準を大幅に下げる内容であること」などを指摘して、就業規則の不利益変更に合理性がないと判断しています。
弁護士による解説:
基本給を減らして固定残業代を設ける就業規則変更は、仮に給与の総額が変更されなくても、この判例にもあるとおり、基本給を減らしているという点において、就業規則の不利益変更に該当しますので注意が必要です。
裁判例2:
年功序列型の賃金制度から成果主義型の賃金制度に移行する就業規則の変更を無効と判断した裁判例 (クリスタル観光バス事件 大阪地方裁判所平成19年1月19日判決)
事案の概要:
バス会社において、年功序列型の賃金制度から成果主義型の賃金制度への移行を内容とする就業規則の変更を行ったところ、成果主義の下で賃金が減額された従業員ら3名がこれを不服として訴訟を起こした事案です。
裁判所の判断:
就業規則の変更を無効と判断し、賃金が減額になった従業員に対する賃金差額として3名に対して合計で「約1200万円」の支払いを命じました。
裁判所の判断の理由:
裁判所は、「成果主義型の賃金制度は、若い従業員の意欲を引き出すことができるなどの利点があり、中長期的にみれば、新賃金体系を採用する必要性があるということができるが、有効な代償措置をとることなく、また、経過処置を設けることなく直ちに新賃金体系を導入しなければならないほどの差し迫った必要性があったということはできない。」として就業規則の不利益変更に合理性がないと判断しています。
弁護士による解説:
この判例が述べている「代償措置」とは成果主義型の賃金制度で賃金が減る従業員に対して不利益を緩和するために行う会社としての手当のことを指しています。また、「経過処置」とは、賃金制度の変更により急激な不利益が発生しないように、変更を徐々に行うことを指しています。
賃金の変更により、一部の従業員に賃金の減額が発生する場合は、就業規則の不利益変更に該当し、原則として「代償措置」や「経過処置」をとらなければならないというのが裁判所の考え方です。
裁判例3:
年間休日を4日削減する就業規則の変更を無効と判断した裁判例(東京地方裁判所 平成24年3月21日判決)
事件の概要:
誕生日やクリスマスなどを休日としていた会社が、業績の大幅な落ち込みに対応するために、これらの休日を出勤日に変更し、合計で就業規則に定める年間の公休日を4日削減したことについて、従業員らが不服として訴訟を起こした事案です。
裁判所の判断:
公休日を4日削減した就業規則を無効と判断し、訴訟を提起した従業員らについて、廃止された公休日4日を「今後も休日として扱うこと」を会社に命じました。
裁判所の判断の理由:
裁判所は、公休日を4日削減した就業規則の変更は不利益変更にあたるとしたうえで、以下の点を指摘して、就業規則の変更は無効としています。
- 1,就業規則変更により従業員が受ける不利益(年間休日4日削減)の程度は必ずしも小さいとはいえないこと。
- 2,業績の大幅な落ち込み自体は認められるとしても、就業規則変更を行って、従業員に上記の不利益を法的に受忍させることを正当化するまでの高度な必要性があるとまではいい難いこと。
- 3,会社と労働組合等との間で実質的な交渉がなされ、十分に利益調整がされた上で就業規則変更がされたとはいい難いこと。
弁護士による解説:
この裁判例でもわかるように、裁判所は公休日の削減については、従業員が受ける不利益は小さくないと判断して、業績改善の必要性などがあったとしても、その必要性の程度が高度なものでない限り、就業規則変更による公休日の削減を有効とは認めない傾向にあります。
以上、就業規則の変更が裁判所で無効と判断された裁判例をご紹介しました。
特に「裁判例1、2」のケースのように給与制度を変更する就業規則の不利益変更については企業としてのリスクが大きく、訴訟を提起された場合、賃金差額分として従業員1人あたり、「400万円」から「500万円」の支払いを命じられるケースも少なくありません。
以上、就業規則の不利益変更の実際のリスクとして把握しておきましょう。
3,不利益変更に該当する場合の同意書取得に関する注意点
次に、就業規則の不利益変更に該当する場合の、対応の方法をご説明します。
就業規則の変更が不利益変更に該当する場合、従業員に不利益変更を承諾する旨の同意書を書いてもらうことで対応することが最も基本的かつ一般的な対策です。
しかし、実はこの同意書取得については、同意書を取得しても同意は無効だと裁判所で判断されて企業が敗訴するケースが増えています。
▶参考情報:スーパーマーケット東京豊洲店事件(東京地方裁判所 平成28年9月27日判決)
前述のスーパーマーケット東京豊洲店事件(東京地方裁判所 平成28年9月27日判決)でも、会社は不利益変更について従業員の同意書を取得していましたが、裁判所は、同意書の記載内容の問題点や、同意書取得の際の説明が不十分であったことなどを指摘して、同意書を無効と判断し、その結果、会社は「約540万円」の支払いを命じられることになりました。
不利益変更に該当する場合の同意書取得に関する注意点としては、以下の点をおさえておきましょう。
注意点1:
同意書は従業員1人1人に書いてもらうことが原則
同意書については、従業員代表に書いてもらうのではなく、従業員個人1人1人に書いてもらうことが原則です。
注意点2:
説明の方法についての注意点
朝礼などで全員に話をするだけでなく、1人1人個別に面談して話をして、内容を説明し、同意を得るようにしましょう。
注意点3:
変更内容の説明についての注意点
就業規則の変更の内容について、従業員にとって不利益になる部分も含めて明確に説明することが必要です。
▶参考例:スーパーマーケット東京豊洲店事件(東京地方裁判所 平成28年9月27日判決)
例えば、前述のスーパーマーケット東京豊洲店事件(東京地方裁判所 平成28年9月27日判決)では、給与の総額が変わらないことのみを強調する説明をしており、従業員にとって不利益になる内容や就業規則変更後の固定残業代が何時間分の残業代に相当するかなどについての説明が会社からされていないことが、裁判所が同意を無効と判断した理由の1つとなっています。
注意点4:
就業規則を不利益に変更することの必要性についての説明
なぜ、不利益な変更を行わなければならないかについて具体的に説明することが必要です。
▶参考例:スーパーマーケット東京豊洲店事件(東京地方裁判所 平成28年9月27日判決)
前述のスーパーマーケット東京豊洲店事件(東京地方裁判所 平成28年9月27日判決)でも、なぜ就業規則の変更を行う必要があるのかについて説明がなかったことが裁判所が同意を無効と判断した理由の1つとなっています。
例えば、「現在の基本給をベースに残業代の支払いを行うと人件費が高くなりすぎて経営に支障が生じる」という理由で基本給を減額するのであれば、その理由を具体的に説明したうえで同意を得なければなりません。
注意点5:
説明内容についての記録
個人面談の際に、従業員から質問を受けた項目とそれに対して会社側が行った回答の内容は必ず記録を取り、後日説明できるようにしておきましょう。
▶参考例:スーパーマーケット東京豊洲店事件(東京地方裁判所 平成28年9月27日判決)
前述のスーパーマーケット東京豊洲店事件(東京地方裁判所 平成28年9月27日判決)では、従業員を個別に呼んで就業規則変更について同意を得た際の会社側からの説明内容について記録がなく、説明内容について、会社側が具体的な主張をすることができなかったことも裁判所が同意を無効と判断した1つの理由となっています。
このように不利益変更に該当する場合の同意書取得についてはその方法や説明の内容について慎重な検討が必要であり、弁護士に事前にご相談いただくことを強くお勧めします。
なお、従業員からの同意書を得られない場合、会社のリスクを軽減するために行うことができるポイントとしては以下のものがあります。
- ポイント1:同意書については、書いてもらえる従業員には全員書いてもらいましょう。
- ポイント2:新入社員には、必ず入社時に同意書を書いてもらい、新入社員には確実に変更後の就業規則が適用されるようにしておきましょう。
- ポイント3:従業員にとって不利益な変更となる部分については、できる限り、経過措置(就業規則の変更により従業員に急激な不利益が発生しないように、変更を徐々に行う措置)を設けることも、不利益変更のリスクを減らすために効果的です。
- ポイント4:裁判所ではどの程度従業員と話し合いをしたかも重視されます。
就業規則の変更について、従業員代表者と十分な話し合いを行い、場合によっては、従業員の要望を聴いて一定の譲歩をして変更案を修正することも検討しましょう。
不利益変更にあたる場合でも、「変更の内容が合理的な場合であり、かつ変更後の就業規則を周知させていた場合」は、変更後の就業規則の効力が認められますが、そのためには、経過措置も設けて、従業員に急激な不利益が発生しないように配慮したり、従業員との間で実質的な話し合いを持ち、できる限り従業員の理解を得るプロセスを踏むことが重要です。
以上、就業規則の不利益変更を行う場合の注意点をおさえておきましょう。
▶参考情報:労働条件の不利益変更については以下の記事でも詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
内容面の注意点2:
直近の法改正、判例動向に対応する
次に、就業規則変更案の内容面の注意点の2つ目として、「変更後の就業規則が直近の法改正や判例動向に対応した内容になっているかについても注意が必要」です。
就業規則にかかわる法律は、主に以下のようなものがあります。
就業規則にかかわる法律の例
- 労働基準法
- 労働契約法
- パートタイム労働法
- 高齢者雇用安定法
- 男女雇用機会均等法
- 育児介護休業法
- 労働安全衛生法
- 公益通報者保護法
そして、これらの法律のどれも改正されないという年はほとんどありません。そのため、法改正に対応するためには、毎年就業規則を変更することが本来必要です。また、労働問題トラブルに関する判例も日々新しいものが出ます。
就業規則の変更の際は、変更後の就業規則が、直近の法改正や判例動向に対応した内容になっているかについて専門家のチェックをうけておきましょう。
▶参考:就業規則と労働基準法との関係については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
内容面の注意点3:
現在の自社の実情と合致した内容になっているか再度確認する
最後に、就業規則変更案の内容面の注意点の3つ目として、「変更後の就業規則の内容が現在の自社の実情と合致した内容になっているかについて再度確認することが必要」です。
特に、変更前の就業規則を作成した時点から会社の実情に変化があったというときは、変更後の就業規則に会社の実情の変化の内容を反映しておきましょう。
特に、「賃金の項目」や「服務規律」については、会社の給与体系の変化や、事業内容の変化の中で、会社の実情と合致しない内容になってくるケースも多いため注意が必要です。
進め方の注意点1:
就業規則変更時の意見書取得に関する注意点
続いて、就業規則変更手続きの進め方の注意点について見ていきましょう。まず、注意点の1つ目としておさえておきたいのが、「就業規則変更時の意見書取得について」です。
ここでは、特に「意見書を記載してもらう従業員代表の選出を会社の指名により決めるのではなく民主的に決めなければならない」という点が重要なポイントです。
この点については以下の記事や動画で詳しく解説していますので、参照してください。
▶参考動画:西川弁護士が「就業規則の意見書と過半数代表選出!使用者が候補者を指名しても良い?)」を詳しく解説中!
進め方の注意点2:
就業規則変更届提出に関する注意点
次に、就業規則変更手続きの進め方の注意点の2つ目としておさえておきたいのが、「就業規則変更届提出に関する注意点」です。
就業規則の変更届の提出の仕方については、 以下の3点に注意しておきましょう。
ポイント1:
事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出ることが原則
就業規則の変更届についても、作成と同様に、原則として、各事業所ごとに届出を行います。そのため、各事業所を管轄する「労働基準監督署」に届け出ることになります。
ただし、変更前の就業規則、変更後の就業規則ともに本社及び各事業所で同内容である場合は、「本社一括届出制度」を利用することにより、本社を管轄する労働基準監督署にまとめて届け出ることもできます。
ポイント2:
従業員代表者の意見書を添付する
就業規則の変更届の提出の際は、変更後の就業規則についての従業員代表者から意見書を添付することが原則として必要です。
ただし、従業員代表者が意見書の提出に協力しない場合は、「就業規則の変更について従業員代表の意見を聴取したが意見書の提出が得られなかった」ことを文書に記載したうえで、就業規則の変更届を提出することができます。
ポイント3:
変更届は「2部」提出し、「1部」は受付印をもらったうえで自社で保管する
変更届は、「2部」を労働基準監督署に提出し、「1部」は受付印をもらったうえで自社で保管しましょう。
なお、変更届の提出方法については、以下の2通りの提出方法があります。
- 変更後の就業規則の全文をプリントアウトし、変更箇所をマーキングして提出する方法
- 全文を提出するのではなく、変更箇所についてのみ新旧対照表を提出する方法
以上、就業規則変更届提出に関する注意点についておさえておきましょう。就業規則変更届に関して具体的な書き方や記入例、提出方法についてなどは、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
進め方の注意点3:
変更後の就業規則の周知に関する注意点
最後に、就業規則変更手続きの進め方の注意点の3つ目としておさえておきたいのが、「変更後の就業規則の周知に関する注意点」です。
就業規則を変更した後は、従業員全員に周知することが義務付けられています。(労働基準法第106条)
▶参考:労働基準法第106条
第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三第一項、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第九項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び同条第五項(第四十一条の二第三項において準用する場合を含む。)並びに第四十一条の二第一項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。
② 使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。
・参照元:「労働基準法」の条文はこちら
周知方法としては以下のようなものがありますので、自社の実情に合わせてもっとも行いやすい方法を選択しましょう。
1,変更後の就業規則の周知方法の主な例
- 方法1:各事業所(支社、営業所、店舗など)の見やすい場所に掲示する。
- 方法2:書面で従業員全員に交付する。
- 方法3:メールで従業員全員に回覧する。
- 方法4:自社システム内にデータとして保存し、従業員全員にデータへのアクセス方法を周知する。
裁判例では、実質的にみて従業員に周知がされていない就業規則は無効であると判断されています。そのため、就業規則変更の手続きの最後の段階で周知の手続きに問題があれば、結局就業規則が変更されていないのと法的には同じ扱いになってしまいます。変更後に従業員に就業規則を正しく周知することは非常に重要なポイントですのでおさえておきましょう。
5,従業員から「勝手に変更した」と言われないためには?
労務トラブルが裁判になった場面で、会社が就業規則に基づく主張をした場合に、従業員から、「会社が知らない間に就業規則を勝手に変更した」などと主張されるケースは少なくありません。
この点については、就業規則が従業員に適用されるためには、従業員が就業規則を見ようと思えば見ることができる状態にしていればよく、実際に見ていたことまでは必要ありません。
ただし、休職者やパートタイマー等について、変更後の就業規則を知らせることができていない例もあり、注意が必要です。
▶参考:「勝手に変更した」と言われないために以下の点ができているかチェックしてください。
- 就業規則変更についての意見聴取のために従業員代表者を選出する際の案内が、休職者やパートタイマーにもされ、休職者やパートタイマーにも従業員代表者選出にかかわる機会が与えられていたか
- 変更後の就業規則の内容や閲覧方法について、休職者やパートタイマーにも案内できているかどうか
6,従業員が変更に同意しない場合の対応
では、従業員が就業規則の変更に同意しない場合、どうすればよいでしょうか?
就業規則の変更に同意しないという場面は、個々の従業員が同意しないというケースと、従業員代表者が同意しないというケースに分かれますので、以下で順にご説明します。
(1)個々の従業員が変更に同意しないケース
このケースについては、以下の点を考慮する必要があります。
- 労働条件の不利益変更は個々の従業員から同意を得て行うことが原則であるが、不利益変更に合理性があれば、同意を得ずに行うことも認められている(労働契約法10条)。
- 不利益変更に合理性が認められない場合でも、変更に同意した従業員や、変更後に入社した従業員に対しては、原則として変更後の就業規則が適用される。
- 就業規則の変更手続き自体は、従業員から個別の同意を得なくても可能である。
(2)従業員代表者が同意しないケース
このケースについては、以下の点を考慮する必要があります。
- 従業員代表者から変更について同意が得られない場合は、不利益変更に合理性がないと判断される可能性が高まる。ただし、不利益変更に合理性が認められない場合でも、変更に同意した従業員や、変更後に入社した従業員に対しては、原則として変更後の就業規則が適用される。
- 就業規則の変更手続き自体は、従業員代表者からの意見聴取は必要であるものの、同意の意見をもらえなくても進めることが可能である。ただし、従業員代表者の同意を得ないまま就業規則変更を強行した場合、従業員代表者からの同意が必要になる他の手続(36協定や変形労働時間制・フレックスタイム制等の労使協定)で協力が得られないおそれがある。
上記のように考えると、個別の従業員が同意しないという問題については、不利益変更としてその従業員への適用が否定される可能性はあるものの、企業にとって必要な変更であれば、今後入社する従業員への適用のためにも、個別の同意が得られなくても就業規則変更を進めるべきという判断も十分にありうるところです。
一方、従業員代表者が同意しないという問題については、同意がないまま就業規則変更を強行すると、36協定等について協力が得られなくなる危険があるため、できる限り、譲歩できる点は譲歩して、従業員代表者と折り合いをつけ、同意してもらうことが望ましといえるでしょう。
7,就業規則の変更に取締役会の承認は必要か?
就業規則の変更に取締役会の承認は必要なのかというご相談をいただくことがあります。この点については、結論としては、その会社のルール次第です。
取締役会のある会社においては、法律上、「重要な業務の執行の決定」は取締役会の決議により行う必要があります(会社法362条4項)。しかし、就業規則の変更は、一般的には、この「重要な業務の執行の決定」にはあたらないと考えられます。
従って、法律上は、就業規則の変更について取締役会の承認を得る必要はありません。しかし、自社の取締役会規則等で就業規則の変更について取締役会で承認を得る旨を定めている会社においては、その規則に従うことが必要です。
8,労働組合がある場合の対応について
労働組合がある場合の対応についてもご説明したいと思います。
(1)過半数労働組合がある場合
まず、就業規則を変更しようとする事業場の従業員の過半数が加入する労働組合がある場合は、就業規則変更にあたっての意見聴取は従業員代表者に対してではなく、その労働組合に対して行う必要があります(労働基準法90条1項)。
また、事業場の従業員の過半数が加入する労働組合がある場合、特に従業員にとって不利益な内容になりうる就業規則変更については、労働組合に対して十分な説明を行い、譲歩可能な点は譲歩し、できるだけ、労働組合の同意を得ておくことが、不利益変更の効力を否定されないためにも重要になってきます。
一方、過半数が加入する労働組合が就業規則の変更に同意している場合、これに反対する従業員がいたとしても、就業規則の変更の合理性が肯定されやすくなる事情の1つになります。
▶参考:労働基準法90条1項
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
② 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
・参照元:「労働基準法」の条文はこちら
(2)多数組合と少数組合が併存する場合
就業規則を変更しようとする事業場に、従業員の過半数が加入する労働組合と少数組合が併存する場合は、過半数が加入する組合の意見書を就業規則変更届に添付することになります。
ただし、少数組合とも十分な説明、協議を行うことが重要であり、多数組合に提供する就業規則変更案や説明資料等は、多数組合への提供と同時期に少数組合にも同様に提供するべきです。
この点を怠ると、少数組合に対する不当労働行為(誠実交渉義務違反)の問題が生じ得ます。また、就業規則の変更が不利益変更を含む場合、少数組合との十分な協議がされていないことによって、不利益変更の合理性について否定的な判断がされるリスクが高まることになります。
(3)労働協約がある場合
労働組合との間で労働協約を締結している会社は、就業規則の変更だけでなく労働協約の改定も必要になるケースがあることに注意してください。
労働協約は就業規則よりも上位の規範です。就業規則の変更により、就業規則の内容が既存の労働協約に抵触することになるケースがありますが、その場合、その部分については就業規則の効力が生じないことになります(労働契約法13条)。
そのため、就業規則の変更の効力を労働組合員にも適用するためには、労働協約についても就業規則の変更にあわせた改定が必要となることがあります。
▶参考:労働契約法13条
第十三条 就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第七条、第十条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。
・参照元:「労働契約法」の条文はこちら
また、労働協約については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
9,就業規則の変更に関して弁護士に相談したい方はこちら
最後に就業規則変更手続きに関する「咲くやこの花法律事務所」のサポート内容をご紹介したいと思います。「咲くやこの花法律事務所」の就業規則変更手続きについてのサポート内容は以下の通りです。
- (1)就業規則変更に関するご相談
- (2)就業規則変更案の作成
- (3)不利益変更の際の同意書取得のサポート
以下で順番に見ていきましょう。
(1)就業規則変更に関するご相談
就業規則変更にあたって、まず、必要になるのが就業規則変更案の作成です。
自社ですでに変更案を作成されている場合は、労務に強い弁護士の視点で変更案を精査し、補足すべき点や実態を反映していない点がないかを確認します。
また、そもそも労働問題のトラブルに対応できないような就業規則であれば作成する意味がありません。変更後の就業規則の内容が労働問題のトラブルに対応できるような適切な内容になっているかについて、「咲くやこの花法律事務所」の労務に強い弁護士が万全のリーガルチェックを行います。
▶参考情報:リーガルチェックの重要性については、以下をご参照下さい。
さらに、就業規則変更は会社として大きなリスクが伴う場面の1つです。不利益変更のところでご紹介した裁判例でもわかるように、場合によっては裁判トラブルに発展し多額の金銭支払いを命じられることもあります。
実際に企業側の立場で労働裁判に多く携わってきた「咲くやこの花法律事務所」の労働問題に強い弁護士が、過去の労働裁判の経験を生かし、ご相談者のリスクを最大限回避する就業規則変更の手続きの進め方を助言し、立案します。
そして、就業規則変更については、意見聴取や周知の手続きまで見据えておく必要があります。この点についても、経験豊富な咲くやこの花法律事務所の弁護士が、ご相談者の実情をお伺いしたうえで、ベストな方法をアドバイスします。
(2)就業規則変更案の作成
「咲くやこの花法律事務所」では、過去の裁判対応の経験も生かして作り上げた、独自の「就業規則のひな形」を用意しています。
このひな形をベースに、就業規則の作成経験豊富な労務に強い弁護士が相談者の会社の実情をヒアリングして、相談者の個別の事情も十分反映させた、実際に労働問題のトラブルの現場で機能する就業規則の変更案を作り上げることが可能です。
過去の労務裁判の経験から得られたノウハウを反映した就業規則案は、一般的なひな形とは似て非なるものであり、必ず、貴社の労働問題のトラブル防止に貢献します。
(3)不利益変更の際の同意書取得のサポート
この記事でご紹介した通り、不利益変更の際のリスク低減策の1つとして、従業員から同意書を取得する方法があります。
ただし、同意書を取得してもあとで無効と判断されているケースもあり、同意書取得にあたってはその文面はもちろん、説明の方法や記録の仕方に十分な注意が必要です。
不利益変更の際の同意書の取得についても、過去に多くの就業規則変更を実施してきた「咲くやこの花法律事務所」が確実な進め方を助言し、相談者をサポートします。
就業規則の作成や変更については、企業の労働問題のトラブル予防のために「咲くやこの花法律事務所」が一番力を入れて取り組んでいる分野の1つです。
就業規則の作成や変更をご検討中の方は、ぜひ「咲くやこの花法律事務所」のサポートをお問い合わせください。
(4)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士へ問い合わせる方法
就業規則に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。また、今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
【お問い合わせについて】
※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
10,まとめ
今回は、就業規則変更の手続きの流れと注意点についてご説明しました。まず、就業規則変更の手続きの全体の流れとして、以下の内容をご説明しました。
- Step1:変更案作成
- Step2:従業員代表者からの意見聴取
- Step3:就業規則変更届の提出
- Step4:変更後の就業規則の周知
そのうえで、就業規則変更案の内容面の注意点としては以下の点をご説明しました。
- 内容面の注意点1:就業規則の不利益変更に該当する場合のリスクとその対策方法。
- 内容面の注意点2:直近の法改正、判例動向に対応する。
- 内容面の注意点3:現在の自社の実情と合致した内容になっているか再度確認する。
最後に、就業規則変更手続きの進め方について、「意見聴取」、「変更届提出」、「変更後の周知」の各段階における注意点をご説明しました。この記事で就業規則変更手続きの流れとリスクを把握したうえで、トラブルなく変更手続きを行うことに役立てていただければ幸いです。
11,【関連情報】就業規則変更に関する他のお役立ち記事一覧
この記事では、「就業規則の変更方法は?手続きと不利益変更・同意書取得などの注意点を解説」について解説しました。今回ご紹介してきた「就業規則の変更」に関する内容と合わせて、「就業規則の記載事項」「届出方法」「就業規則がない場合はどうなる?」等、就業規則に関連するその他のお役立ち情報もあわせて確認しておきましょう。
(1)就業規則の基礎知識
▶モデル就業規則とは?厚生労働省作成の無料テンプレートの使い方
▶就業規則の閲覧を求められたら?会社は応じる義務がある?対処法を解説
▶就業規則がない場合どうなる?違法になる?リスクや対処法を解説
▶パート・アルバイト用の就業規則の重要ポイントと注意点【雛形あり】
(2)業種別の就業規則に関するお役立ち
▶派遣社員の就業規則の重要ポイント!厚生労働省のひな形も参考に解説
就業規則は、社内の労務管理を正しく整備しておくためにも必要です。何か問題が発生しそうな時にはトラブルに発展させないようにすることや、また、万が一トラブルに発展しても深刻化せず、早期解決が可能になるような就業規則にしておくなど労働問題や労務に強い顧問弁護士による整備を必ず行っておきましょう。
▶【全国対応可】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら
▶大阪で実績豊富な顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)をお探しの企業様はこちら
また、顧問弁護士の主な役割や必要性、一般的な相場費用についてなど知りたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年10月6日
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