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パワハラ防止の対策とは?義務付けられた10項目を弁護士が解説

パワハラ防止の対策とは?義務付けられた10項目を弁護士が解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

社内のパワハラを防止するためにどのような対策を行っていますか。

「対策をしないといけないのはわかっているけれど、どのようなことをすればいいのかわからない」「自社の対策が十分なものか自信がない」と感じている方は多いのではないでしょうか。

 

パワハラの対策として法律で義務付けられている内容は大きくわけて以下の内容です。

  • 1.パワハラがあってはならないという事業主の方針の明確化と周知
  • 2.パワハラの相談体制の整備
  • 3.パワハラ発生時の迅速かつ適切な対応
  • 4.あわせて講ずべき措置としてプライバシーの保護と不利益取扱いの禁止

 

パワハラは社会問題化しており、一企業のパワハラ問題が大きく報じられることも増えています。最近でも、のど飴で有名な製薬会社のパワハラに関する裁判がテレビや新聞で大きく報道されました。

パワハラ問題が裁判等に発展し、社内のパワハラが広く世間に知られるようになると、企業イメージの低下や、取引先からの信用の低下、人材の流出等といったダメージを負うことになります。また、会社の責任が追及され、従業員に対して多額の金銭の支払いを命じられることもあります。

このようなリスクを避けるためには、効果的なパワハラ対策を行い、社内でパワハラを発生させないこと、発生してしまった場合も適切に解決することがなによりも重要です。

また、2019年5月に労働施策総合推進法が改正され、会社としてパワハラを防止するための対策に取り組むことが法律で義務付けられました。

この記事では、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の内容を踏まえて、企業が取り組むべきパワハラ対策について、わかりやすく解説します。

この記事を読めば、社内でパワハラを発生させないために、企業がどのような対策に取り組めばよいかがわかるはずです。

それでは見ていきましょう。

なお、パワハラの基礎知識をはじめとする全般的な説明については、以下の記事で詳しく解説していますので事前にご参照ください。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

効果的なパワハラ対策をすることや、パワハラ発生時に適切な対応をすることは、良い職場環境をつくるために非常に重要です。

筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所でもパワハラ防止研修などパワハラ対策のご相談やパワハラトラブル発生時の調査、被害者対応、加害者の懲戒処分等のご相談を常時承っています。

特に被害発生時は迅速かつ適切な対応が法律上も義務付けられていますので、弁護士に相談のうえ正しい対応をすることが必要です。

パワハラに強い弁護士にトラブル解決を依頼する各種メリットや弁護士費用についてなどは、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

▶参考情報:パワハラに強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安

 

また、咲くやこの花法律事務所のパワハラについての解決実績は以下をご参照ください。

 

▶参考情報:内部通報窓口に匿名で行われたハラスメントの通報について、適切な対処をアドバイスし、解決まで至った事例

▶参考情報:パワハラ被害を受けたとして従業員から会社に対し300万円の慰謝料が請求されたが、6分の1の慰謝料額で解決した成功事例

 

▼パワハラ防止の対策に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

 

1,企業のパワハラ防止措置が法律で義務化

企業のパワハラ防止措置が法律で義務化

2019年5月29日に労働施策総合推進法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)が改正されました。

新たにパワハラについての規定が設けられたことから、「パワハラ防止法」とも呼ばれています。

労働施策総合推進法の条文については以下をご参照ください。

 

 

法改正の大きなポイントは、企業にパワハラ措置を義務付けたことです。

パワハラ防止法では、企業に対して、以下の防止措置を行うことを義務付けています。

 

  • (1)パワハラがあってはならないという事業主の方針を明確化し周知すること
  • (2)パワハラについての相談体制を整備すること
  • (3)パワハラが発生したら迅速に事実関係を確認して適切な措置を行うこと
  • (4)当事者のプライシーの保護や相談を理由とした不利益取扱いの禁止を定めること

 

以下では、パワハラ防止法で義務化された防止措置の内容も踏まえて、職場でのパワハラを防ぐために、企業が取り組むべきパワハラ対策とその方法を紹介します。

パワハラ防止法については、以下の記事で詳しく紹介していますのでご参照ください。

 

 

2,パワハラ防止法により義務付けられたパワハラ対策10項目

パワハラ防止法により企業に義務付けられた対策は以下の10項目です。

 

対策1:
会社としてパワハラを許さないことを全従業員に周知する

パワハラを見過ごさない、パワハラが発生したら厳正に対処するという会社の立場を明確にして、従業員に周知します。

 

従業員への周知方法の例

  • 社内報や社内ホームページに掲載する
  • パンフレットやリーフレットを配布する
  • ポスターを掲示する

 

従業員に発信するべき内容の例

パワハラ対処の従業員への周知方法の例

▶参照元:厚生労働省『パワーハラスメント対策導入マニュアル[第4版]』(P59)から抜粋(PDF)

 

また、パワハラ防止ポスターについても、厚生労働省のサイトの以下のページからダウンロードできますので、ご参照ください。

 

 

対策2:
就業規則等にパワハラの禁止とパワハラをした場合の懲戒規定を明記する

就業規則に記載するべきことは以下の4点です。

 

  • (1)パワハラをしてはいけないこと
  • (2)どのような行為がパワハラに該当するか
  • (3)パワハラをした場合は懲戒処分の対象となること
  • (4)処分の内容

 

パワハラをしたら懲戒処分の対象になると従業員に認識してもらうことで、パワハラを防止する効果が期待できます。
また、懲戒処分の規定を設けていないと、社内でパワハラが発生しても、加害者を懲戒処分することができません。

万が一、就業規則にパワハラの禁止に関する規定がない場合は、早急に規定を設けるべきです。

パワハラの禁止に関する就業規則の規定例は、以下をご参照ください。

 

▶参考情報:パワハラについての就業規則条文の記載例

 

(パワーハラスメントの禁止)

第〇条 従業員は、パワーハラスメントに該当する行為をしてはいけません。

2 パワーハラスメントとは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものを指します。その典型例は以下の通りです。なお「優越的な関係を背景した言動」には、上司から部下に対するものだけでなく、同僚または部下による言動であっても、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その協力を得なければ業務の円滑な遂行が困難であるもの、及び同僚または部下からの集団による行為で抵抗または拒絶することが困難であるものも含まれます。

① 暴行・傷害などの身体的な攻撃を加えること
② 脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言などにより、精神的な攻撃を加えること
③ 隔離、仲間外し、無視などにより、人間関係から切り離すこと
④ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制し、または仕事を妨害すること
⑤ 業務上の合理性がないのに能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じ、または仕事を与えないこと
⑥ 私的なことに過度に立ち入ること

3 業務上必要かつ相当な指導はパワーハラスメントに該当しません。また、パワーハラスメントに該当するか否かについては、従業員個人の感じ方を基準とするのではなく、社会一般の労働者が、就業するうえで看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準に判断します。

 

就業規則の作成については、以下の記事で詳しくご紹介していますのでご参照ください。

 

 

対策3:
パワハラ防止研修を実施する

従業員のパワハラに関する理解を深めるために、パワハラに関する研修を実施することも必要です。

 

1,研修の方法

 

  • 厚生労働省が公開している動画やテキストを活用する
  • 弁護士や社労士等の専門家に講師を依頼する
  • 民間業者が実施するオンライン研修講座を受講する 等

 

研修は、管理職層と一般従業員を分けて行うとより効果的です。また、一度だけでなく定期的に実施するべきでしょう。

正規雇用者だけでなく、パート、派遣社員等の非正規雇用者も対象に含めて研修を行い、すべての従業員が受講できるように工夫しましょう。

中には、「これくらいは大丈夫だろう」「昔はこれが当たり前だった」等と考えて、無自覚にパワハラをしているケースもあります。そのような従業員には、具体的にどのような行為がパワハラに該当するのかを知ってもらい、「自分がやっていることはパワハラかもしれない」という意識をもってもらうことが必要です。

また、パワハラが発生する背景には従業員同士のコミュニケーション不足等の要因があることから、コミュニケーションスキルアップに関する研修や、適切な指導方法に関する研修を行うこともパワハラの防止につながります。

 

対策4:
パワハラについての相談窓口を設置する

改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正により、すべての事業主にハラスメント相談窓口の設置が義務付けられました。

相談窓口がない場合、パワハラ防止法に違反することになります。その結果、パワハラ被害を受けた従業員から、会社の責任を問われることにもなりかねません。

また、社内に相談窓口を設けることは、パワハラ問題を社内で迅速に解決するために必要なことです。

相談窓口をおいていなければ、パワハラ被害の問題について従業員が外部の労働組合や労働基準監督署に相談してその対応に追われることになったり、上司に相談した結果、適切な対応がされず、トラブルがより大きくなることになります。

相談窓口に相談してもらうことで、パワハラを早期に発見し、社内で問題を解決することが期待できるので、相談窓口の設置は企業にとってもメリットがあるのです。

 

1,相談窓口の設置例

相談窓口は社内に設置するケース、社外に委託するケース、社内と社外を併用するケースなどがあります。社内で適切な相談窓口を設置することが難しい場合は外部に委託するのも1つの方法です。

 

社内に相談窓口を設置する場合の例

  • 人事、コンプライアンス、法務担当部門が相談窓口を兼ねる
  • 管理職や従業員を相談担当者として選任する 等

 

社外に相談窓口を設置する場合の例

  • 弁護士や社会保険労務士の事務所へ委託する
  • ハラスメントなどの相談窓口の代行を専門的に行っている企業へ委託する 等

 

2,相談窓口を設置したことを従業員に周知する

窓口を設置したら、以下の点を明記して従業員に周知します。

 

周知すべき内容
  • 窓口の場所
  • 対応時間
  • 担当者部署名(担当者名)
  • 連絡先
  • 相談方法 等

 

周知の方法には以下のような方法があります。

 

周知の方法
  • 社内でポスターを掲示する
  • 相談窓口について記載したカードを作って従業員に配布する
  • 社内報に掲載する
  • 全従業員にメールで通知する等

 

窓口の設置を知らせる文書には、「相談者のプライバシーが守られること」「相談をしたことによって不利益な取扱いを受けることはないこと」を明記し、従業員が相談をためらうことがないように配慮することが重要です。

 

3,適切に相談に対応できるようにマニュアルの作成や研修を行う

せっかくハラスメント相談窓口を設置していても相談担当者が誤った対応をしてしまったために、問題がこじれてしまうことがあります。

社内に相談窓口を設置する場合は、相談窓口の担当者が適切に相談に対することができるように、適切な対応方法やカウンセリング手法について、事前に研修を行うことが必要です。

相談を受けた際の対応手順を決めてマニュアルを作成したり、必要に応じて他部署と連携して対応ができるよう整備しておきましょう。

相談を受ける時は、相談者のプライバシーに配慮し、相談者の情報や相談内容が漏れないように注意する必要があります。

また、相談者に対して、「そんなことはよくあることでしょ」とか、「あなたにも落ち度があったんじゃないか」というように被害内容を軽視する発言をすることも、トラブルの原因になります。

相談担当者は正しい相談対応の方法を身に着ける必要があります。

被害者だけでなくパワハラを目撃した従業員等からの相談や、今パワハラが発生しているわけではないが今後パワハラに発展する可能性があるケース等、相談は幅広く対応することが適切です。パワハラ未満の相談にも対応することで、パワハラの芽を摘むことができます。

ハラスメント相談窓口の設置については、以下の記事や動画で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

 

 

▼【動画で解説】西川弁護士が「パワハラ相談窓口設置が義務化!おさえておきたい4つのポイント」を詳しく解説中!

 

対策5:
パワハラが発生したら迅速かつ正確に事実確認を行う

パワハラに関する相談があった場合は、被害者や加害者からの聞き取り調査等を行い、速やかに事実確認をすることが必要です。

企業にはハラスメントについての調査義務があります。

パワハラの訴えがあったにもかかわらず、調査をせずに放置したり、調査方法が不適切だった場合、被害者から損害賠償請求をされる可能性があるので注意が必要です。

調査はあくまでも中立・公平な立場で行い、被害者に対して、「それはパワハラとは言えないのではないか」等と自分の意見を述べたり、安易に加害者の処分を約束したりすることは適切ではありません。

被害者だけでなく加害者からも話を聞いて、双方の言い分が食い違う点がないか確認します。

被害者と加害者の認識が一致しない場合は、目撃者等の第三者からも聞き取りを行い、メールや録音等の客観的な証拠資料があるか確認します。

加害者や第三者に事実確認を行う時は、必ず事前に被害者の了解を得る必要があります。

ハラスメントの調査方法については、以下の記事や動画で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

 

 

▶参考動画:西川弁護士が「ハラスメント調査のトラブル事例!重要な注意点を解説【前編】」について詳しく解説中!

 

対策6:
被害者への適切なフォローを行う

調査の結果、パワハラがあったことが確認できた場合には、被害者を支援するための措置を行う必要があります。

パワハラがあったことを認識していたにもかかわらず、会社が何の対応もせずに放置していた場合、会社が被害者から損害賠償を請求される可能性があります。

被害者に対して会社ができる配慮としては、以下のようなものが考えられます。

 

会社が行うべき被害者に対する配慮の例

  • 被害者と加害者の関係改善に向けた援助
  • 被害者と加害者を引き離すための配置転換
  • 加害者への注意や指導
  • 加害者に謝罪するよう促す
  • 被害者の労働条件上の不利益の回復
  • 被害者のメンタルヘルスの不調への相談対応
  • 休業を余儀なくされた場合、被害者が希望する時は、復職に向けた支援

 

明確にパワハラがあったと判断できないケースでも、現状を放置すると事態が悪化する可能性がある場合には、当事者同士の接触を断つために配置転換をする等の対応を行うのが望ましいです。

 

▶参考:パワハラの加害者と被害者のそれぞれの従業員の配置転換に関しては、以下の参考記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

配置転換がパワハラになるケースとは?企業の注意点を解説

 

対策7:
必要に応じて加害者に対する懲戒処分等を行う

パワハラの事実が確認できたにもかかわらず、加害者に必要な指導をしなかったり、当事者同士で解決させようとすることは、問題をこじらせてしまうことになりかねません。

職場の秩序を維持するためにも、就業規則等の社内のルールに基づいて加害者へ必要な処分を行う必要があります。

懲戒処分をするときは、パワハラの内容、加害者の謝罪や反省の有無、常習性、被害の程度等の要素を考慮し、以下の点に注意して処分の内容を検討します。

 

  • パワハラの内容に対して重すぎる処分になっていないか
  • 就業規則や懲戒規定にそった処分になっているか
  • 過去の懲戒処分事例と照らし合わせて不当に重い処分になっていないか

 

しかし、懲戒処分をめぐって、加害者とトラブルになり、裁判に発展するケースも少なくありません。

懲戒処分の対象とするべきか、どの程度の処分が妥当かについては、過去の裁判例や過去の自社での対応事例とのバランスを見ながら判断する必要があります。

自社の判断で決めずに必ず事前に弁護士に相談することをおすすめします。

パワハラの加害者に対する懲戒処分については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

 

 

対策8:
再発防止のための対策を行う

パワハラが発生してしまった場合は、再発を防止するための取り組みも重要です。

なぜパワハラが起こってしまったのか、原因や問題は何だったのかを検討し、単に加害者と被害者だけの問題にせず、会社として再発を防止するためにできることを行いましょう。

 

再発防止策の例

  • パワハラをしてはいけないこと、パワハラをした場合は厳正に処分することを改めて従業員に周知する
  • パワハラに関する研修や講習を行う
  • 管理職向けにパワハラ事案が発生したことを周知し注意をうながす
  • 加害者がパワハラを繰り返すことがないように研修や定期的な面談を行う

 

パワハラが発生していなくても、定期的にパワハラに対する方針の周知や研修を実施したり、相談体制が上手く機能しているか確認したり、防止策に問題がないか定期的に見直しを行うことが必要です。

相談窓口への相談を待つのではなく、従業員に対するアンケートの実施や面談等を通して、パワハラに発展しそうなトラブルがないかを確認することも、パワハラの事前防止策として効果的です。

 

対策9:
当事者のプライバシーを保護する

パワハラに関する相談の中で知り得る情報の中には、被害者や加害者の個人情報が含まれます。

相談の対応、事実確認等の一連の対応において、被害者や加害者のプライバシーを保護するために、十分な注意を払う必要があります。

当事者の個人情報や相談内容が漏洩してしまうと、従業員の相談窓口への信頼を失ったり、問題がこじれてしまったりする恐れがあります。

 

プライバシーを保護するための対策例

  • プライバシー保護のための必要な事項をあらかじめマニュアルに定める
  • 相談担当者のプライバシー保護の意識を高めるための研修を行う
  • 加害者や第三者から話を聞くときは、事前に被害者の了承を得る
  • できる限り少人数で調査を行う
  • 聞き取り調査の際に、守秘義務について説明し、調査の際に知った情報を誰かに話さないように伝える

 

十分な対策を行ったうえで、相談窓口ではプライバシー保護のための対策をしていることを従業員に周知し、従業員が安心して相談できるようにすることが必要です。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

京都地方裁判所判決令和3年5月27日は市立幼稚園におけるパワハラ調査において被害者のプライバシー侵害があったとして市が賠償を命じられた事案です。

この事案では、園長からパワハラ被害を受けたと主張する職員が自分の母親を通じて被害内容を記載した日記を市長に提出しましたが、市が調査にあたりそのコピーを園長に交付して確認させたことが問題になりました。

裁判所は日記には職員の心情などが記載されており、日記のコピーを交付したことは被害を訴えた職員のプライバシー侵害にあたると判断し、市に賠償を命じています。

民間企業においても同様の注意が必要です。

 

対策10:
相談を理由に不利益な取扱いをしないことを定める

パワハラ防止法では、従業員がパワハラに関する相談をしたことや、事実関係の調査に協力したこと等を理由として、解雇やその他の不利益な扱いをすることを禁止しています(労働施策総合推進法第30条の2第2項)。

正規雇用者はもちろん、パート、派遣社員等の非正規雇用者も対象です。

パワハラにあっていても、相談した自分が不利益をこうむることを恐れて、問題が大きくなるまで相談できないというケースは少なくありません。

そのような状況では、せっかく相談窓口を設置しても、十分に機能しなくなってしまいます。

従業員に安心して相談してもらうために、「相談をしても不利益な取扱いをされることはないこと」を明確に規定し、従業員に周知することが必要です。

 

不利益な取扱いをしないことの規定・周知の例

  • 就業規則等でパワハラに関する相談等を理由として不利益な取扱いをされないことを規定する
  • 相談窓口の設置を知らせる文書に、相談したことで不利益な取扱いを受けないことを明記する

 

パワハラ発生時の対応についての詳しい解説は、以下の記事もあわせてご参照ください。

 

 

3,厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル」を活用する

企業のパワハラ対策について、厚生労働省は、「パワーハラスメント対策導入マニュアル」という冊子を公開しています。

このマニュアルでは、企業がパワハラ対策を行う際の取り組み方や進め方、参考資料等を紹介しています。

研修資料やポスターの例、相談窓口で使えるや雛形等も掲載されているので、いまからパワハラ対策に取り組む企業は、このマニュアルを参考に活用するのもよいでしょう。

厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル」については、以下よりご参照ください。

 

 

4,パワハラを生み出しやすい職場環境を改善することも重要

パワハラが発生しやすい職場には以下のような特徴があります。

 

  • 過剰な長時間労働が常態化している
  • 人手不足等で適正な業務体制がとられていない
  • 過剰なノルマ等の不適正な業務目標が設定されている
  • 従業員同士の信頼関係がない

 

職場でのパワハラをなくすためには、労働者に過度に肉体的・精神的な負担がかかる職場環境の改善や、従業員同士のコミュニケーションの活性化を図ることも重要です。

 

5,【補足】個人が上司のパワハラに対策するためには録音などが有効

会社の調査に対して上司がパワハラ行為を否定したり、「言った/言わない」の議論になることも少なくありません。

特に、パワハラが密室で行われたようなケースでは、当事者の証言以外に証拠がなく、パワハラ行為があったことを証明することが難しいことがあります。

そのため、パワハラ被害を受けた労働者の立場からすると、客観的な証拠を取得しておくことが必要になります。

 

パワハラの客観的な証拠の例

  • 録音データ
  • 写真や動画
  • メールやLINEの履歴
  • パワハラ行為を目撃した第三者の証言

 

会社からの聞き取り調査に対して正確な情報を伝えるために、以下のような記録を残しておきましょう。

 

  • 誰がパワハラをしたか
  • パワハラが行われた場所
  • 日時
  • どのような行為が行われたか(暴言の内容、回数、時間等)
  • そのような行為に至った経緯
  • その場に誰がいたか

 

パワハラの録音データは、裁判でも証拠として採用されることが多い有力な証拠ですが、社内での録音が一切自由というわけではないので注意が必要です。

パワハラの証拠取得という目的から外れた録音を繰り返したり、社内の機密情報を録音したり、録音した音声をSNS等で流出させたりした場合、それが原因で懲戒処分を受けてしまう、ということにもなりかねません。

録音の対象はパワハラ行為に限定し、音声を聞かせるのは相談窓口の担当者や弁護士等だけにする等、取扱いには十分注意しましょう。

パワハラの証拠については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

6,パワハラの防止対策について弁護士へご相談されたい方へ

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に、咲くやこの花法律事務所における企業のパワハラ対策、パワハラトラブルについてのサポート内容をご説明したいと思います。

 

(1)パワハラ対策、パワハラ防止に関するご相談

咲くやこの花法律事務所では、パワハラの事前防止策、事前対策のご相談を承っております。

パワハラ防止法に対応した就業規則など諸規則の整備、相談窓口の整備、その他パワハラ防止策の具体的な進め方についてのご相談はぜひ咲くやこの花法律事務所におまかせください。

 

弁護士費用例

  • 初回相談料:30分5000円+税(※顧問契約ご利用の場合は相談料はかかりません。)

 

(2)ハラスメント相談窓口の外部委託のご依頼

ハラスメント相談窓口を外部に委託する咲くやこの花法律事務所では、ハラスメント相談窓口の外部委託のご依頼も承っています。

ハラスメントにあっている従業員の中には、社内に知られることを恐れて窓口への相談をためらう方も少なくありません。

外部に相談窓口を設置することで、従業員がより安心して相談をすることができます。

実際に窓口に相談が寄せられた場合は、ハラスメント、その他労務トラブルの解決経験豊富な弁護士がどのように対応するべきかをアドバイスします。

弁護士の助言を受けながら対応することで、問題を早期解決することができます。

パワハラ相談窓口を外部に委託することを検討されている企業の方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所のハラスメント相談窓口の費用例

  • 従業員数300名未満:月額3万円+税
  • 従業員数300名~999名:月額5万円+税
  • 従業員数1000名~2999名:月額7万円+税
  • 従業員数3000名~:月額8万円+税

 

(3)パワハラ発生時の調査についてのご相談

パワハラの相談があった場合、被害者、加害者等への調査をすみやかに行うことが必須です。

しかし、調査の結果、パワハラの有無について、被害者と加害者の言い分が食い違うなど、対応が難しいケースも少なくありません。

そこで、咲くやこの花法律事務所では、パワハラについて、弁護士がヒアリングその他の調査を行うサポートも提供しています。弁護士が調査を担当することによって、被害者と加害者の言い分が食い違うケースなど、判断が難しい事例についても、適切な判断とその根拠の証拠化をすることができます。

パワハラ発生時の調査の結果は、裁判資料になることも多いです。そのため、特に紛争化が予想される事案では弁護士に依頼して第三者的な立場からの調査を行い、調査結果についても調査報告書に整理し、裁判資料として提出できるように準備しておくことが必要です。

 

弁護士費用例

  • 初回相談料:30分5000円+税(※顧問契約ご利用の場合は相談料はかかりません。)
  • 調査費用:30万円+税~

 

(4)パワハラ被害者への対応や加害者への懲戒処分に関するご相談

咲くやこの花法律事務所ではパワハラ被害者から企業の責任を追及される事態になってしまった場合についてもご相談を承っています。

弁護士が企業の立場で被害者との交渉を行い、問題をできるだけ裁判に発展させずに迅速に解決します。

法律上実際にはパワハラにはあたらないのに自身の感覚でパワハラ被害を受けたと主張されるケースもありますので、そのようなケースについては適切な反論を行います。また、訴訟に発展してしまったときも、企業の主張を判決に反映させるべく、十分な裁判対応を行います。

さらに、パワハラ加害者に対する懲戒処分をめぐって、加害者とトラブルになることもあります。加害者に対する懲戒処分は、必ず事前に弁護士に相談してから行ってください。

咲くやこの花法律事務所でも、加害者への懲戒処分について、企業の経営者や人事担当者からのご相談を承っています。

 

弁護士費用例

  • 初回相談料:30分5000円+税(※顧問契約ご利用の場合は相談料はかかりません。)

 

(5)パワハラ防止に関する社内研修、社内セミナー

咲くやこの花法律事務所では、パワハラ防止に関する社内研修や社内セミナーのご依頼も承っています。

実際にパワハラ事例の調査やトラブルの交渉、訴訟案件等に対応してきた弁護士が講師を務めることで、パワハラにあたる事案についての注意喚起はもちろん、パワハラ問題にならない指導方法などより企業に役に立つ効果的な研修をご提供します。

咲くやこの花法律事務所の社内研修や社内セミナーに関するご案内は以下をご参照ください。

 

 

7,【参考情報】セクハラ・モラハラ等のハラスメント対策もあわせて取り組む

職場ではパワハラだけでなく、セクハラやマタハラ、モラハラといった様々なハラスメントが発生します。

パワハラと同様、セクハラ、マタハラについても、防止措置を行うことが企業に義務化されています(男女雇用機会均等法第11条・第11条の3、育児・介護休業法第25条)。

セクハラ、マタハラの防止措置は、パワハラ防止措置と重なる部分も多いので、ハラスメント対策としてまとめて対策を行うのがよいでしょう。

職場でのハラスメントは、パワハラ、セクハラ、マタハラ等のハラスメントが複合的に行われることもあります。それぞれのハラスメントを明確に区別できないケースも少なくありません。ハラスメントに関する相談窓口を一本化し、1つの窓口であらゆるハラスメントについて相談できる体制を整備することが望ましいとされています。

また、俗に「モラハラ」といわれるハラスメントについては法的な定義もなく、これについての法律もありません。しかし、そのようなモラハラについても、職場内の人間関係の悪化を示すものであり、ハラスメント相談窓口で相談対応をすることが適切です。

 

8,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

パワハラ防止の対策などパワハラに関する相談などは、下記から気軽にお問い合わせください。今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

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パワハラの相談まとめ!企業の窓口や労働者の相談に関する対応について

逆パワハラとは?具体的な対処法を事例や裁判例付きで徹底解説

 

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記事更新日:2023年8月8日
記事作成弁護士:西川 暢春

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