こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
労災事故について以下のようなことでお困りではありませんか?
- 労災事故に該当するかわからない
- 労災事故が発生した時にどのように対応すればいいかわからない
- 通勤中の事故も労災になるのかわからない
労災事故とは、業務中や通勤中の事故が原因で、労働者が負傷したり、後遺障害が残ったり、死亡することをいいます。
労災事故が起きたときは、労災事故についての補償をめぐって従業員と会社の間でトラブルが起きやすい場面です。また、ケースによっては、労働基準監督署の調査を受けたり、現場責任者が刑事責任を問われる例もあります。
そのため、労災事故については、正しい知識をはじめ、事故発生時の対処法についてもしっかり理解しておくことが重要です。
この記事では、労災事故の基礎知識や、労災事故の事例、労災事故が発生した時の会社の対応などについてわかりやすく説明します。
最初に労災事故をはじめとする労災(労働災害)に関する全般的な基礎知識について知りたい方は、以下の記事で網羅的に解説していますので、ご参照ください。
自社で労災事故が発生した際は、自己流では誤った対応をして問題をよけいに大きくすることになりがちです。早期に弁護士に正しい対応方法を確認したうえで対応していくことが迅速、円満な解決のポイントです。
労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安などは、以下の記事で解説していますので参考にご覧ください。
▶参考情報:労災に強い弁護士にトラブル解決を依頼するメリットと費用の目安
筆者が代表をつとめる咲くやこの花法律事務所でも企業側の立場で、労災事故発生後の対応についてご相談をお受けしていますので、ご相談ください。
労災トラブルに関する咲くやこの花法律事務所の解決実績の1つを以下でご紹介していますのでご参照ください。
▼労災事故に関して、弁護士の相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,労災事故とは?業務中の負傷は労災事故にあたる
まずそもそも労災事故とは何かから見ていきたいと思います。
労災事故とは、業務中や通勤中の事故が原因で、労働者が負傷したり、後遺障害が残ったり、死亡することをいいます。労災事故によって負傷した場合や死亡した場合は、労災保険から補償を受けることができます。労災が認定されるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件を満たしている必要があります。
(1)業務遂行性
業務遂行性とは、「事故が業務中に発生したものであること」です。
業務中とは、労働者が労働契約に基づいて事業者の支配・管理下にある状態のことをいいます。
(2)業務起因性
業務起因性とは、「負傷や死亡等が業務が原因で発生したものであること」です。
労災の認定基準については以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
(3)パートやアルバイトも労災保険の対象
労災保険における労働者とは、職業の種類にかかわらず、事業に使用される者で、労働の対価として賃金が支払われる者のことをいいます。
雇用形態にかかわらず、パートやアルバイト、契約社員や派遣社員等も含めたすべての労働者が対象です。
(4)事業主が未加入の場合も労災保険が使える
労働者を1人でも雇用している事業主は、法人・個人事業主を問わず、労災保険に加入することが法律で義務付けられています。労災保険料は全額事業主の負担です。
事業主が労災加入手続きをしていなかった場合や、労災保険料を滞納していた場合でも、労働者は、労災申請をすれば、労災保険から補償を受けることが可能です。
ただし、労災保険が未加入の場合、事業主には以下のペナルティがあります。
1,追徴金の徴収
労働基準監督署等から指導を受けたにも関わらず、労働保険への加入手続きを行わない事業主に対しては、政府が職権により労災保険の加入手続を行います。
その際に、労災保険に加入していなかった過去の期間の保険料もさかのぼって徴収され、あわせて追徴金も徴収されることになります。
2,労災保険給付額の全部または一部の徴収
労災保険の加入手続きを行っていない期間中に生じた労災事故について、労災保険から労働者への給付が行われた場合、労災保険から労働者へ支払われた給付金額の全てまたは一部を徴収されることがあります。
労災保険の制度内容については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
2,労災事故の発生件数の推移
厚生労働省の統計データによると、労災事故による死亡者数は、2019年は845人、2020年は802人、そして2021年は867人となっています。
休業4日以上の死傷者数は、2019年は125,611人、2020年は131,156人、2021年は149,918人でした。休業4日以上の死傷者数は近年増加傾向にあり、2021年には、平成10年以降で過去最多件数となりました。
業種別にみると、「製造業」「建設業」「陸上貨物運送業」で労災死亡事故が多く発生しています。
死亡事故の種類として多いのは、「機械等へのはさまれ・巻き込まれ」「墜落、転落」「交通事故」です。
年齢別でみると、労災事故による死傷者数の約4分の1を60歳以上が占めており、高齢者労働者の割合が高くなっていることがわかります。
▶参考:「労働災害による死亡者数、死傷者数の推移」
・引用元:厚生労働省「令和3年 労働災害状況(厚生労働省)」(pdf)4ページより抜粋
3,労災死亡事故の事例一覧
ひとまとめに労災事故といっても事故の内容は様々です。
ここからは、実際に発生した労災の死亡事故の事例をいくつかご紹介します。
(1)建設現場で鉄骨材の下敷きになり死亡した事故
建設現場での荷卸しの際に発生した事故です。
トレーラーで鉄骨柱・鉄骨梁を建設現場に運搬し、荷卸しのために、鉄骨材を固定していたワイヤーロープを外したところ、鉄骨材が崩れ落ち、荷台で作業をしていた作業員2名が鉄骨材とともに地上に落下し、鉄骨材の下敷きになって死亡しました。
(2)工事現場で重機にひかれて死亡した事故
工事現場での測量作業中に発生した事故です。
作業員が土砂の移動のために不整地運搬車をバックで運転して現場へ進入させたところ、不整地運搬車の後方で測量作業をしていた作業員がひかれて死亡しました。
(3)転倒したフォークリフトの下敷きになり死亡した事故
フォークリフトの運転中に発生した事故です。
フォークリフトで移動中に、建物の角を右折したところ、フォークリフトがスリップして転倒し、従業員は運転席から投げ出され、転倒したフォークリフトの下敷きになり死亡しました。
(4)フッ酸(フッ化水素酸)中毒による死亡事故
六フッ化リン酸リチウム製造工場で、配管内の六フッ化リン酸リチウムとフッ化水素酸の混合液の抜き取り作業を行っていたところ、作業中に液体が吹き上がり、顔面等に重度の薬傷を負い、さらにフッ化水素ガスを吸入し、フッ化水素中毒によって死亡しました。
(5)ビルの窓の清掃中に転落して死亡した事故
ビルの窓の清掃中の転落事故です。
4階建の建物のひさしに脚立を立てて窓を清掃していたところ、乗っていた脚立がひさしから転落し、約12m下の地上に転落して死亡しました。
上記で紹介した事例は、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」で詳細をみることができます。
今回紹介した事例以外にも多数の労災事故の事例が紹介されていますので、あわせてご覧ください。
4,通勤中の交通事故も労災が使える
労災保険の対象となるのは業務中に発生した事故だけではありません。
出勤時や帰宅途中時等の仕事の行き帰りの通勤中の際に発生した事故も対象となります。
(1)通勤災害とは?
通勤災害とは、通勤中の事故等によって、労働者が負傷したり、後遺障害が残ったり、死亡することをいいます。
典型的な例が、通勤中に交通事故に遭うケースです。
労災保険上の「通勤」とは、就業に関し、以下の3つの移動を合理的な経路および方法で行うことをいいます。
- 1.住居と就業の場所との間の往復
- 2.就業の場所から他の就業の場所への移動
- 3.単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動
ここでいう合理的な経路および方法とは、移動の際に、一般に労働者が用いると認められる通勤経路および方法をいいます。
合理的な経路や方法は1つとは限りません。
通勤のために利用できる経路が複数ある場合は、いずれの経路も合理的な経路となります。
通勤のために利用できる交通方法(バスや電車等の公共交通機関、車、自転車、徒歩など)が複数ある場合は、いつも使っている方法であるかどうかにかかわらず、合理的な方法となります。
会社に届け出ている以外の経路や方法で移動していた場合でも、その経路や方法が合理的であれば、労災に認定されます。
(2)通勤途中に寄り道をした場合
通勤の途中で寄り道をした時に起きた事故による負傷等は、原則として労災補償の対象にはなりません。
1,逸脱や中断の後の事故は補償対象にはならないことが原則
通勤途中で寄り道をすることを、通勤経路からの「逸脱」や「中断」といいます。
「逸脱」とは、通勤の途中で、仕事や通勤とは関係のない目的で通勤経路から外れることです。「中断」とは、通勤経路上で通勤とは関係のない行為を行うことです。
例えば、仕事終わりに同僚と飲食店で飲食する場合や、通勤途中で映画館やジムに行く場合が逸脱や中断にあたります。
通勤の途中で、逸脱や中断があると、逸脱や中断の間だけでなく、その後の道のりも通勤とは認められません。
▶参考:合理的な通勤経路を逸脱・中断した場合の例
・参照元:厚生労働省リーフレット「労災保険の通勤災害保護制度が変わりました」(pdf)
(2)逸脱・中断後の事故でも例外的に補償対象となる場合
ただし、以下のような、日常生活上必要な行為のためにやむを得ず逸脱・中断した場合は、逸脱・中断後に通常の通勤経路に戻れば、その後の道のりは通勤と認められ、労災補償の対象となります。
逸脱・中断の例外となる行為
- 日用品の購入その他これに準ずる行為(帰途での惣菜等の購入、クリーニング店、理髪店への立ち寄り)
- 職業訓練や教育訓練等を受ける行為
- 選挙権の行使その他これに準ずる行為
- 病院または診療所において診察または治療を受けること、その他これに準ずる行為
- 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護
▶参考:逸脱・中断の例外となる行為の例
・参照元:厚生労働省リーフレット「労災保険の通勤災害保護制度が変わりました」(pdf)
逸脱・中断の間(上の図の「⑧⑩⑪⑫」)は、労災保険の適用対象外ですが、合理的な通勤経路に復帰後の事故(上の図の「⑨」)は、労災保険の適用対象となります。
なお、通勤経路の近くの公衆トイレの利用や、経路上の店での新聞やジュース等の購入、経路近くの公園での短時間の休憩等のささいな行為であれば、逸脱・中断にはあたりません。
(3)単独事故も労災補償の対象
通勤中に、バイクや自家用車等の単独事故(自損事故)でけがをした場合も、労災保険を使うことができます。
なお、労災保険の補償範囲は人身損害のみのため、怪我のない物損事故の場合は対象外です。
(4)労災保険と任意保険の関係
相手方(加害者)のいる交通事故であれば、労災保険だけでなく、加害者が加入する自動車保険へも請求をすることができます。
1,自賠責保険と任意保険
自動車保険には、自賠責保険と任意保険の2つの種類があります。
自賠責保険とは、自動車やバイクを運転する方全員に加入が義務付けられている保険です。
任意保険は、自賠責保険だけでは足りない部分を補う保険で、自賠責保険よりも補償範囲が広く、補償が手厚いのが特徴です。自賠責保険とは異なり、加入は義務ではありません。
2,労災保険と自動車保険どちらを使う?
通勤中の交通事故の場合は、どちらか一方だけを選ぶ必要はなく、労災保険と自動車保険の両方を使うことができます。
労災保険にしかない補償(特別支給金等)、自動車保険にしかない補償(慰謝料等)もあるので、併用することでより多くの補償を受け取ることができます。
ただし、補償が重複している部分については、労災保険と自動車保険の間で支給調整が行われるため、二重に補償を受けることはできません。(例えば、労災保険から治療費の給付を受けたら、任意保険には治療費の請求はできない等)
労災保険と自動車保険のどちらを先に受けるかは、被害者が自由に決めることができます。
(5)通勤災害の労災申請手続き
労災の申請手続きは、基本的には業務災害の場合と同じです。
請求書に事業主や医師からの証明をもらい、必要書類をそろえて、労働基準監督署長へ提出する流れになります(▶参考「7,労災申請の手続きの流れ」)。
ただし、加害者がいる交通事故や、建設現場からの落下物にあたって負傷した場合等、負傷の原因が第三者の行為によるものである場合は、別途「第三者行為災害届」の提出が必要です。
「第三者行為災害届」については以下をご参照ください。
5,【状況別】労災認定されるケース・されないケース
ここからは労災事故になるかどうかの判断が難しいケースについて、状況別に解説します。
(1)昼休み中に発生した事故
昼休み等の休憩時間中に発生した事故は、原則として労災事故とは認定されません。
休憩時間は、従業員が自由に過ごすことができる時間であり、その時間は業務に従事していないため、労災事故の「業務起因性(業務が原因で発生したこと)」の要件を満たさないためです。
例えば、昼食をとるために外出していて交通事故に遭った場合や、休憩中に運動をしていて負傷した場合は、労災事故と認定されません。
ただし、会社の施設・設備や管理状況などが原因で発生した事故や、トイレなどの生理的な行為の際に発生した事故は、休憩中であっても労災に認定される可能があります。
休憩時間中に起きた事故について、労災が認定された事例として、以下のものがあります。
▶参考例:労働災害事例(No.100455)「職場のあんぜんサイト(厚生労働省)」より
工場で勤務している作業員が、休憩時間中に、工場内にある扇風機のスイッチを入れて涼んでいたところ、扇風機が漏電しており感電した事例
(2)忘年会で起きた事故
忘年会や歓送迎会等で発生した事故は、原則として労災事故にはあたりません。
しかし、忘年会等であっても、単なる慰労目的ではなく業務の一環として行われる場合や、業務上の必要性が高いもので参加を強制されているような場合は、労災事故と認定されることがあります。
歓送迎会に関連して起きた事故について労災が認定された裁判例として、以下のものがあります。
▶参考例:最高裁判所判決 平成28年7月8日
従業員が歓送迎会の帰りに発生した交通事故で死亡したことについて労災を認定した事例
この事案では以下のような事情がありました。
- (1)歓送迎会の目的が研修生との親睦を図るものであり、従業員全員が参加し、会社がその費用を支出していたこと
- (2)被災した従業員は、一度は参加を断ったものの、上司から強く参加を要請され、仕事を中断して歓送迎会に参加したこと
- (3)事故が起きたのは、歓送迎会に参加していた研修生を社用車で住居まで送っていく最中であったこと
裁判所はこれらの事情・経緯からすると、本件事故は業務上の災害にあたると判断しました。
この裁判例の判決内容は以下からご確認いただくことができます。
(3)在宅勤務中の事故
在宅勤務等のテレワークの労働者の場合も、通常の労働者と同様に労災保険法が適用されますので、在宅勤務中に発生した事故も労災に認定される可能性があります。
ただし、たとえ就業時間内であっても、業務と無関係の私的行為(例:ベランダで洗濯物を取り込む行為、個人宛の郵便物を受け取る行為等)で怪我をした場合等は労災事故とはなりません。
テレワークで労災が認定されたケースとして、以下のような事例があります。
▶参考例:「テレワークではじめる働き方改革-テレワークの運用・導入ガイドブック(厚生労働省)」より
自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くため作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した事案について労災を認定
(4)デリバリー中の事故
ウーバーイーツ等のデリバリーサービスの拡大に伴い、配達中の事故が増えてきています。
配達中に事故が発生した場合、労災の対象となるかどうかは、雇用形態によります。労災保険の対象となるのは「労働者」、つまり会社と雇用契約を締結している人です。
事故に遭った配達員が、デリバリーサービスの会社と雇用契約を結んでいれば、労災保険の対象となります。
しかし、フードデリバリーの配達員は、業務委託契約となっていることがほとんどです。
業務委託契約の場合は、会社に雇用されているわけではないので、労災保険の対象にはなりません。
業務委託契約で働く方が労災の適用を受けるための方法として、労災保険の特別加入制度があります。
労災保険の特別加入制度とは、個人事業主等、労働者には該当しない方が、一定の要件を満たすことで労災保険に加入することができる制度のことです。
令和3年9月1日から、デリバリーの配達員も労災保険の特別加入制度の対象となりました。労災保険に特別加入すると、自分で労災保険料を負担する必要がありますが、業務中の事故でけがをした時や死亡した時に補償を受けることができます。
6,労災事故が発生した時の報告書とは?
労災事故が発生した場合、状況によって、労働基準監督署長への報告書の提出が必要となるケースがあります。
労災事故が発生したにもかかわらず、必要な報告書を提出しなかった場合や、虚偽の内容を報告した場合、いわゆる労災隠しとして、処分を受けることがありますので、注意が必要です。労災隠しについて罰則の内容などは、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて確認しておきましょう。
労働基準監督署長への報告書には、以下の2つの種類があります。
(1)労働者死傷病報告
労働災害によって従業員が負傷、窒息または急性中毒により、死亡または休業した場合、「労働者死傷病報告」の提出が必要です(労働基準法施行規則第57条、労働安全衛生規則第97条)。
労災保険を申請しない場合でも、労働死傷病報告は必ず提出しなければなりません。
(2)労災事故報告書
事業場で火災や爆発、倒壊、破裂等の事故が起きた場合は、負傷者の有無に関わらず、「労災事故報告書」の提出が必要です(労働安全衛生規則96条)。
労災事故が発生した時の報告書についての詳しい内容や報告時の注意点等は以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
7,労災申請の手続きの流れ
労災保険から補償を受けるためには、労災保険への申請手続きが必要です。
ここからは、労災保険へ請求する際の手続きの流れをご説明します。
(1)申請方法
請求する補償給付の内容によって異なりますが、おおまかにいえば以下のとおりです。
- 1.請求書に事業主や医師から証明をもらう
- 2.労働基準監督署長に請求書を提出する
- 3.労働基準監督署で調査が行われる
- 4.給付金の支給または不支給の決定
労災の申請方法については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
給付の請求手続きの詳細は、以下の厚生労働省のホームページからもご確認いただけます。
(2)必要書類
労災の申請に必要な書類には以下のようなものがあります。
1,療養(補償)等給付の場合
- 療養の給付請求書【様式第5号または様式第16号の3】(労災指定病院を受診した場合)
- 療養の費用請求書【様式第7号または様式第16号の5】(労災指定病院以外を受診した場合)
- 治療費や薬代等の領収書(労災指定病院以外を受診した場合)
2,休業(補償)等給付の場合
- 休業補償給付支給請求書【様式第8号または様式第16号の6】
- 賃金台帳の写し
- 出勤簿の写し
3,障害(補償)等給付の場合
- 障害(補償)給付支給請求書【様式第10号または様式16号の7】
- 労働者災害補償保険診断書
- レントゲン画像資料等
4,遺族(補償)等給付の場合
- 遺族補償年金支給請求書【様式第12号または様式第16号の8】
- 遺族補償一時金支給請求書【様式第15号または様式第16号の9】
- 死亡診断書
- 戸籍抄本・謄本
- 被災労働者の収入によって生計を維持していたことを証明する書類(住民票の写し、民生委員の証明等)等
状況によって上記以外の書類が必要となる場合がありますので、申請する前に、管轄の労働基準監督署へ確認されることをおすすめします。
労災申請に必要な書類については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
請求書等の様式は、以下の厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。
8,労災事故の補償の内容
労災保険から給付される補償には以下のものがあります。
(1)療養(補償)給付
けがや病気によって治療が必要となった場合の治療費や薬代、通院交通費等が給付されます。
▶参考:労災の療養補償給付については以下で解説していますのでご参照ください。
(2)休業(補償)給付、休業特別支給金
労災事故によるけがや病気で働くことができない時に、休業4日目以降、1日につき平均賃金の80%が給付されます。
▶参考:労災の休業補償給付については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
(3)障害(補償)給付
症状固定した後も、一定の後遺障害が残った場合は、障害等級に応じて、障害(補償)年金または障害(補償)一時金が給付されます。
▶参考:労災の後遺障害については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
(4)遺族(補償)給付
労災事故が原因で労働者が亡くなった場合に、遺族に対して、遺族(補償)年金または遺族(補償)一時金が給付されます。
(5)葬祭料、葬祭給付
労災事故が原因で亡くなった労働者の葬儀を行った場合に、葬儀費用として一定の金額が給付されます。
(6)傷病(補償)給付
治療開始後1年6ヶ月を経過しても症状固定せず、傷病等級1~3級に該当する重い症状が残っている場合に給付されます。
(7)介護(補償)給付
障害等級または傷病等級の1級または2級に該当する高次脳機能障害、身体性機能障害があり、介護を必要とする状態にある場合に給付されます。
上記の他にも、義肢等補装具の費用や、遺児の学費支援として労災就学等援護金、アフターケア通院費等の支援制度があります。
労災保険から給付される補償の種類や内容、金額はいくらくらいなのかについては、以下の記事などで詳しく解説していますのでご参照ください。
9,労災事故が発生したらどうなる?会社の対応
ここからは労災事故が発生した時に会社がやるべきことや、労災認定によって会社がどのような影響を受けるのかを解説します。
(1)労災事故が発生した時の対応の流れ
どんなに注意していても、労災事故が発生する可能性をゼロにすることはできません。
いざという時に落ち着いて対応するために、常日頃から対応手順を確認しておくようにしましょう。
労災事故が発生してしまった時は、以下のような対応が必要です。
1,事故発生直後の対応
- 被災者の救助、病院への搬送
- 警察や労働基準監督署への通報
- 事故現場の保存
- 被災者の家族への連絡
2,警察や労働基準監督署の調査への対応
- 現場検証への立会い
- 事情聴取への対応
- 資料の提出
3,事故状況の調査
- 関係者への聞き取り
- 事故が発生した経緯の確認
- 設備や手順に不備がなかったか確認
4,労働基準監督署長への報告
- 労働者死傷病報告(休業4日以上を要する場合は遅滞なく報告が必要)
- 労働者死傷病報告(休業3日以内の場合は3か月ごとにまとめて報告)
- 労災事故報告(法律上定められた事故は負傷者の有無にかかわらず報告が必要)
5,被災した労働者や遺族への対応
- 労災保険請求への協力
- 被災労働者の見舞い
- 通夜、葬儀、法要への参列
- 損害賠償請求への対応
6,再発防止対策
- 安全衛生教育の実施
- 作業手順の見直し
- 設備や道具の点検
- 安全装置等の設置
労災事故が発生した時の会社の対応については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
▶参考情報:労災死亡事故が発生した場合の会社の対応について
(2)従業員から労災申請があった場合の対応
会社には、「従業員が労災申請をする際の手助け」と「申請書の事業主証明欄への記入」をすることが法律で義務付けられています。
そのため、従業員から労災保険への請求をしたい旨の申し出があった場合、会社は従業員の労災申請に協力することが原則となります。
しかし、中には、従業員が主張する事故状況や発生原因等に疑義があるケースや、労災とは認めがたいケースがあります。
このような場合は、事業主証明を行わず、証明しない理由を理由書にまとめて労働基準監督署長に提出することが正しい対応です。
その上で、労働基準監督署の調査には誠実に対応し、調査の過程で、労災ではないと考える理由や根拠等、会社の主張を積極的に伝えていくことが重要です。
労災申請があった場合の会社の対応については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
(3)労災認定によって会社がうける影響
労災が認定された場合、会社は以下のような影響を受ける可能性があります。
- 被災した従業員や遺族から損害賠償を請求される
- 被災した従業員の解雇が制限される
- 労災保険料が上がる
- 国や自治体の入札において指名停止処分を受ける
- 行政処分を受ける
- 会社や責任者が刑事罰を受ける
- 労災事故がニュース等で報じられることによる社会からの批判や信用の低下
労災認定によって会社が受ける影響について、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
10,労災事故の慰謝料について
次に、労災事故が発生した時に慰謝料の金額がいくらくらいになるのか解説します。
労災事故の慰謝料とは、受傷した従業員本人、または、従業員が死亡した場合は遺族の精神的損害に対して支払われるお金です。
慰謝料は労災保険からは支払われないため、会社が負担することになります。
その概要は以下の通りです。
慰謝料には以下の3つの種類があります。
(1)死亡慰謝料
従業員が亡くなった場合に遺族に対して支払われる慰謝料です。
金額は、一般的には2000~2800万円程度になります。
(2)入通院慰謝料
労災事故によって入院や通院を余儀なくされたことで生じた精神的苦痛に対する慰謝料です。
入院期間と通院期間の長さに応じた金額が支払われます。
(3)後遺障害慰謝料
労災事故によって後遺障害が残ってしまった場合に支払われる慰謝料です。
金額は、後遺障害の等級に応じて110~2800万円程度になります。
労災事故の慰謝料については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
慰謝料は労災事故について会社に帰責性がないときや、通勤災害については支払義務はありません。また、会社に帰責性があっても従業員にも落ち度があるときは、それを考慮して減額されることになります。
11,労災事故について弁護士に相談したい方はこちら(企業側)
ここまで、労災事故の事例や、労災事故が発生した時の対応、補償内容、申請手続き等についてご説明しました。
(1)労災事故発生時のご相談
咲くやこの花法律事務所では、労災事故が発生した場合の対応について、企業の担当者の方から、以下のようなご相談を承っております。
- 従業員からの労災申請に関するご相談
- 従業員からの損害賠償請求についてのご相談
- 労災死亡事故後の遺族対応についてのご相談
- 労働基準監督署や警察による調査、捜査についてのご相談
- 労働基準監督署からの指導や是正勧告に関するご相談
- 刑事事件の不起訴に向けた活動についてのご相談
ご相談が遅れると、とれる手段が限られてしまいますので、ご不安がある場合は早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
弁護士へのご相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
(2)顧問弁護士サービスによるサポート
労務管理全般をサポートする顧問弁護士サービス。
咲くやこの花法律事務所では、労災トラブルの場面はもちろん、その他の場面においても、企業の労務管理全般をサポートするための、顧問弁護士サービスも提供しております。
トラブルが起こったときの正しい対応、迅速な解決はもちろんのことですが、平時からの労務管理の改善によりトラブルに強い会社を作っていくことがなによりも重要です。日ごろから顧問弁護士の助言を受けながら、労務管理の改善を進めていきましょう。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスのご案内は以下をご参照ください。
(3)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
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12,【関連情報】労災に関するお役立ち関連記事
この記事では、「労災事故とは?業務中・通勤中の事例を交えてわかりやすく解説」についてご紹介しました。労災に関しては、その他にも知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ対応方法を誤ってしまいます。
そのため、以下ではこの記事に関連する労災のお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。
・労災の休業補償の期間は?いつからいつまで支給されるかを詳しく解説
・労災が発生した際の報告義務のまとめ。遅滞なく届出が必要な場合とは?
・労災病院のメリットと手続き、支払いについてわかりやすく解説
・ぎっくり腰は労災にならない?仕事で発症した腰痛の労災認定について
・パワハラで労災は認定される?会社の対応と精神疾患の認定基準を解説
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記事更新日:2024年11月20日
記事作成弁護士:西川暢春
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