こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
- 「勤務態度に問題があるアルバイトを解雇したい」
- 「遅刻や当日欠勤が多いパート社員を解雇したい」
咲くやこの花法律事務所では、企業側・事業者側の立場からこのようなご相談をいただくケースも少なくありません。
解雇には法律上のルールがあり、合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は、認められません。これは、正社員かアルバイトやパートかを問わず適用されるルールです。アルバイトやパートであっても、解雇が労働審判や訴訟トラブルに発展することは少なくなく、安易な解雇が大きな法的リスクにつながることがあります。また、解雇しなくても雇止めやシフトから外してしまう対応が訴訟トラブルに発展することもあります。
例えば、以下の例があります。
●事例1:カプセルホテルを経営する会社がアルバイト従業員を解雇した事案。
解雇が無効と判断され、会社は雇用契約が継続していることを判決で確認されたうえ、500万円を超える支払いを命じられました(東京地方裁判所判決平成20年1月25日)。
●事例2:飲食事業を営む会社がパートタイマーを解雇した事案。
解雇が無効と判断され、会社は雇用契約が継続していることを判決で確認されたうえ、約250万円の支払いを命じられました(東京地方裁判所判決平成28年3月10日)。
アルバイトやパートに能力不足や勤務態度の問題がある場合や、会社の業績悪化による人員整理の場合など、解雇の理由によって解雇が認められる条件や会社が注意すべきポイントは異なります。
この記事では、アルバイトやパート社員を解雇するときに会社が知っておきたい法律上のルールについて、解雇理由別の解雇の条件や不当解雇となるケース、解雇した場合に会社に生じるリスク、実際に解雇するときの具体的な手順、解雇予告や解雇予告手当のルール等、企業側の視点からわかりやすく解説します。
また、問題のある社員への対応についての咲くやこの花法律事務所の実際の解決事例もご紹介します。
この記事を最後まで読んでいただくことで、アルバイトやパート社員の解雇について、どのような点に注意して進めればよいかを理解し、リスクをおさえながら問題解決に向けて正しい一歩を踏み出すことができるはずです。
それでは見ていきましょう。
問題のあるアルバイトやパート社員にやめてほしいと考えるとき、解雇を選択してしまいがちですが、要件を満たさない安易な解雇は大きなトラブルを招き、会社にダメージを与える可能性があります。
解雇を検討するときは法律で定められた解雇のルールをよく理解した上で、辞めてもらう手段として解雇が適切なのかや、解雇の有効性・進め方について検討する必要があります。
咲くやこの花法律事務所は、創業以来16年以上にわたり一貫して企業側の立場で労使トラブルの予防や解決に取り組んできました。その中で、解雇に関する様々なご相談をお受けし、解決してきました。早い段階でご相談いただくことが、会社にとってよりよい解決につながります。お困りの際は早めに咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に関するサポート内容については以下をご参照ください。
※咲くやこの花法律事務所では、企業または事業者からのご相談のみお受けしています。
また、咲くやこの花法律事務所の弁護士が解雇トラブルの対応をサポートした解決事例もご紹介していますのであわせてご覧ください。
▼アルバイトやパート社員の解雇について、弁護士への相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
【お問い合わせについて】
※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
1,アルバイトやパート社員は解雇できる?
結論から言えば、「アルバイトだから」「パートだから」という理由で、簡単に解雇ができるわけではないのです。日本では労働者に対する解雇が制約されており、解雇には法律上のルール(労働契約法第16条)があります。この解雇規制は、正社員だけでなくアルバイトやパートにも適用されます。
また、契約期間が決まっている有期雇用のアルバイトやパートの場合、契約期間の途中で解雇するには、さらに厳しい条件があります。
アルバイトやパートを解雇する場合は、解雇の理由や契約期間の定めの有無などを確認し、裁判例も踏まえて解雇の可否について判断することが重要です。
また、解雇は企業にとってリスクを伴う場面であり、自社の判断で進めるのではなく、解雇前の段階から弁護士に相談してすすめることが必要です。
▶参考情報:解雇に関する基本的な知識や解雇の種類について、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
2,アルバイト・パートを解雇できる正当な理由と解雇の条件とは?
会社がアルバイトやパートを解雇する理由には以下のようなものがあります。
- 能力不足
- 勤務態度に問題がある
- 横領や窃盗などの犯罪に該当するような行為
- 業績悪化・店舗閉鎖などによる整理解雇
しかし、単に会社から見てこれらの事情があるというだけでは解雇は認められません。
ここからは、解雇の理由別に、どのような場合であれば解雇が認められるのかについて説明します。
▶参考情報:以下の記事ではここであげたもの以外にも様々な理由で解雇する場合の条件について、詳しく解説しています。さらに詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
(1)能力不足の場合
能力不足による解雇では以下の要素を考慮して解雇の有効性が判断されます。
- 能力不足の程度
- 改善の余地があるのに解雇していないか
- 会社が改善のための適切な注意・指導をおこなっているか
- 改善のための期間を与えているか
- 業務場所や業務内容の変更、降格による解決の可能性があるのに解雇していないか
解雇の前に、アルバイトやパート社員に、どのような点が問題なのか、どのように改善すべきなのかを具体的に示して指導を行わなければなりません。
そのうえで、アルバイトやパート社員に、改善に取り組むための猶予期間を与え、その期間中の業務状況を踏まえても改善が難しいと判断できる状態でなければ解雇することはできません。
▶参考情報:能力不足の従業員の解雇については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
(2)勤務態度に問題がある場合
業務命令に従わない、遅刻や欠勤が多い、協調性に欠ける等の勤務態度不良による解雇では、以下の要素を考慮して解雇の有効性が判断されます。
- 問題の内容や程度、頻度など
- 改善の余地があるか
- 会社が十分な注意・指導をおこなっているか
- 本人に反省と改善のための期間を与えているか
- 戒告やけん責などの懲戒処分を行ったか
単に勤務態度が悪いという事実があるだけでは不十分で、会社が勤務態度の問題に対して繰り返し注意指導を行い、改善の機会を与えても解決しないといえる状態でなければ解雇することはできません。
従業員が注意や指導に従う様子がない場合も途中で指導をやめず、繰り返し面談や書面によって指導を繰り返すことが重要です。また、戒告やけん責などの比較的軽い懲戒処分を行い、改善がない場合は解雇の可能性があることも伝えた上で、本人に態度を改める機会を与える必要があります。
なお、遅刻や欠勤が多いアルバイトを解雇せずに、シフトから外してしまうという対応についても解雇と同様に訴訟トラブルの原因となり得ます。例えば、おにぎり販売店を経営する会社が、勤務日の欠勤や遅刻が多いパート社員についてシフトに入れない対応をした事案では、シフトから外した対応が違法とされ、会社は約140万円の支払いを命じられています(東京地方裁判所判決令和7年10月30日)。
解雇を有効なものとするためには、「従業員の勤務態度に問題があったこと」と「会社が繰り返し勤務態度の問題を指導・懲戒したが改善されなかったこと」の両方を証拠により立証することが必要です。
勤務態度に問題があったことが事実でも、その内容が記録に残っていなかったり、会社の指導内容が記録に残っていないと、解雇の有効性が争われたときに、会社側が解雇の理由や経緯を十分に説明・立証できず、解雇が無効と判断されます。
懲戒処分を経ずに解雇した場合も同様です。後から具体的に立証できるように、指導書を作成・交付して従業員にも署名押印をさせる、書面で懲戒処分の手続きを行う等、記録に残す工夫をする必要があります。
▶参考情報:勤務態度に問題がある従業員の解雇については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
(3)横領や窃盗などの場合
会社内での横領や窃盗などを理由にアルバイトやパート社員を解雇する例もあります。このような解雇については、解雇対象者による横領や窃盗について十分な証拠があるかが最も重要なポイントとなります。
そのうえで、さらに懲戒解雇の場合は、以下の点が重要になります。
- 就業規則が周知され、その就業規則で懲戒解雇事由が定められていること
- 横領や窃盗の行為が就業規則で定めた懲戒解雇事由に該当すること
- 他の従業員との処分のバランスなどを考慮して懲戒解雇が権利濫用にあたらないこと
- 就業規則に定められた手順を踏んで解雇の手続きを行うこと
- 本人に弁明の機会を与えること
アルバイトやパート社員に適用する就業規則が整備されていないようなケースでは、懲戒解雇はできませんので注意してください。
▶参考情報:懲戒解雇の条件や横領による解雇については以下の記事もあわせてご覧ください。
(4)業績悪化・店舗閉鎖などによる整理解雇の場合
整理解雇とは、業績の悪化や店舗の閉鎖によって余剰人員が生じた場合に、余剰人員の削減を目的として行う解雇のことです。
整理解雇の場合、従業員には非がないにも関わらず、企業の都合で辞めてもらうことになるため、法律上の厳しい制限があります。
具体的には以下の4つの要素が重要な判断基準となります。
- 人員削減が必要であること
- 解雇の前に解雇以外の経費削減手段を講じたこと
- 解雇の対象者が合理的な基準で選ばれていること
- 対象者や組合に十分に説明し、協議したこと
無期雇用のパート社員やアルバイトの整理解雇に当たっても、この4つの要素を確認することが必要です。
▶参考情報:整理解雇の要件については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
(5)有期契約の途中で解雇する場合は特に注意が必要
アルバイトやパートタイマーとの間で、契約期間を定めて雇用契約を締結している場合(有期雇用の場合)、原則として契約期間の途中で解雇することはできません(労働契約法第17条)。
▶参考情報:労働契約法第17条
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
・参照:労働契約法の条文はこちら
例外的に、「やむを得ない事由がある場合」は解雇することができるとされていますが、この「やむを得ない事由」が認められるためのハードルは非常に高いです。
このように有期雇用の場合は解雇の条件がより厳しくなるため、契約期間の満了まで待って雇用契約を終了する(雇止めをする)のが合理的です。
▶参考情報:有期雇用契約のスタッフの解雇、雇止めについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
雇止めにも一定のルールがあり、契約期間の満了をもって当然に雇用契約を終了することができるわけではありません。
契約更新を繰り返している場合や、労働者が契約が更新されることを期待するだけの合理的な理由がある場合には、雇止めが認められない場合があります(雇止め法理、労働契約法19条)。
▶参考情報:有期雇用契約のスタッフの雇止めについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
3,アルバイト・パートの解雇が不当解雇となるケースは?

不当解雇とは、法律や就業規則等に照らして適法・有効とは認められない解雇のことを言います。合理的な理由のない解雇や、法律で解雇が禁止されている場面での解雇、就業規則で定められた手続きを踏んでいない解雇等が不当解雇にあたります。
▶参考情報:不当解雇については以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
(1)合理的な理由のない解雇・相当性のない解雇
不当解雇と判断されるケースで一番多いのが、合理的な理由のない解雇や相当性のない解雇です。
法律上、解雇は、解雇することに客観的に合理的な理由があり、社会の常識に照らして解雇が妥当だと認められる場合でなければ、無効となります(労働契約法16条)。
会社がした解雇が、この労働契約法16条により無効と判断される事案は多いです。
どのような状況であれば合理的な理由があるといえるのかは、解雇の理由や経緯等によって異なりますが、以下のような事情が考慮されます。
- アルバイトやパート社員の問題の程度や行為の内容、頻度
- 解雇の前に会社が適切な注意・指導を行ったか
- 解雇の前に配置転換等の方法を試したか
- 解雇の前に懲戒処分を行ったか
- 会社がどの程度の損害を被ったか
例えば、問題の程度や回数が軽微である場合や、会社が適切な注意・指導を行っていない場合等は、解雇は認められない可能性が高いです。
1,合理的な理由のない解雇・相当性のない解雇の具体例
- 能力不足や勤務態度に問題のあるアルバイト・パート社員について十分な注意や指導をしないまま解雇するケース
- 協調性や人間関係に問題がある場合に会社が十分な指導や配置転換を行っていないまま解雇するケース
- 数回の遅刻や欠勤で解雇したり、解雇の前に懲戒処分を行い改善の機会を与えていないケース
- 業務命令違反について業務命令の趣旨や必要性を十分に説明しないまま解雇しているケース
▶参考情報:指示に従わない従業員に対する適切な指導方法等については、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
(2)解雇が法律で禁止されている場面での解雇
法律は、労働者が一定の状態に該当する場合の解雇や特定の事情を理由とする解雇を禁止しています。そして、これらのルールは、アルバイト・パート社員の解雇についても同様に適用されます。
- 業務上のけがや病気の治療のために休業する期間とその後30日間
- 女性社員の産前産後休業期間とその後30日間
- 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
- 労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇
- 労働者の性別を理由とする解雇
- 結婚・妊娠・出産、産前産後休業をしたことなどを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第9条)
- 育児休業・介護休業等の申出・取得を理由とする解雇(育児・介護休業法第10条・第16条)
これらに該当する期間・理由により解雇した場合は、違法な解雇と評価されます。
▶参考情報:法律による解雇制限のルールについては、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
(3)契約期間の途中の解雇
アルバイトやパートタイマーとの間で、契約期間を定めて雇用契約を締結している場合、やむを得ない事由がない限り、契約期間の途中で契約を終了することはできません(労働契約法第17条1項)。
この「やむを得ない事由」の有無は、かなり厳しく判断されており、通常であれば解雇相当と考えられる事案であっても、有期雇用では解雇が認められないケースが数多くあります。
例えば、契約途中の解雇が認められなかった裁判例として以下のものがあります。
▶参考裁判例:同僚に対して台車をぶつける、胸倉をつかむなどの暴力事件を起こしたため、契約途中で解雇したことについて、不当解雇と判断した事例(東京地方裁判所平成29年5月19日判決)」
このように、契約期間の途中の解雇は、通常の解雇よりさらにハードルが高くなります。能力不足や協調性の欠如といった理由では、契約途中での解雇は困難なことが多いと考えておくべきです。
4,不当に解雇した場合の会社のリスクは?

解雇について訴訟を起こされ、解雇が無効と判断された場合、会社は単にアルバイトやパート社員との雇用関係を終了できないというだけでは済みません。
解雇後の期間について、アルバイトやパート社員が本来受け取るはずだった賃金の支払いを求められることが通常です。この解雇後の賃金のことを「バックペイ」といいます。
また、解雇の有効性をめぐって労働審判や裁判等に発展すると、対応のために多くの時間や費用を費やす必要が生じます。このように不当解雇トラブルによって会社が失うものは多いです。
そのため、解雇を検討するときは法律で定められた解雇のルールをよく理解した上で解雇の有効性について検討し、適切な手続きで進めることが重要です。
アルバイトやパート社員の解雇の場面でも、解雇の前に労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
▶参考情報:不当解雇で訴えられたらどうなるのか、慰謝料、弁護士費用の目安等については以下の記事もご参照ください。
5,アルバイトやパートを解雇するときの具体的な方法は?

アルバイトやパートを解雇するときは、以下の順序で進めます。
- 手順1:雇用契約の種類を確認する
- 手順2:解雇の前に退職勧奨を検討する
- 手順3:退職合意が成立しなかった場合は解雇を検討する
- 手順4:解雇予告を行う、または解雇予告手当を支払う
- 手順5:解雇後に必要な手続きを行う
順番に詳しく解説していきます。
(1)手順1:雇用契約の種類を確認する
ここまでご説明してきたように、有期雇用なのか、無期雇用なのかによって、解雇に関する法的なルールが異なります。
まずは、対象のアルバイトやパートの雇用契約の種類を確認します。そのうえで、有期雇用の場合は雇止めをするのか、解雇をするのかを検討します。
(2)手順2:解雇の前に退職勧奨を検討する
退職勧奨とは、会社が従業員に退職を促し、従業員との合意によって雇用契約を終了させることを目指すことをいいます。解雇は会社から一方的に雇用契約を終了するものですが、退職勧奨で退職する場合は会社と従業員の双方が合意した上で退職することになります。
解雇に比べてトラブルに発展するリスクが格段に低く、まずは退職勧奨による合意退職を目指す方が会社にとってメリットがあるケースは多いです。
ただし、退職勧奨についても様々な注意点がありますので、事前に弁護士に相談したうえで行ってください。
▶参考情報:退職勧奨と解雇の違いや退職勧奨の具体的な進め方、弁護士に相談すべき理由については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
・企業が弁護士に退職勧奨を相談すべき4つの理由とサポート内容や費用について
退職勧奨については、簡単に合意は得られないと考えてあきらめるのではなく、合意を得るための工夫を積み重ねることが大切です。退職勧奨の進め方については、筆者が執筆した書籍「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」で詳しく解説していますので、こちらもあわせてご参照ください。
(3)手順3:退職合意が成立しなかった場合は解雇を検討する
解雇する場合は、事前に解雇の有効性についてよく検討する必要があります。
具体的には以下の対応が必要です。
- 就業規則に定められた解雇事由や解雇の手続きを確認する
- 具体的な行為・事実関係を特定した上で解雇の理由を整理する
- 弁護士に相談したうえで、裁判例も参考にしながら、問題の程度や頻度、本人の態度、会社が行った指導・注意の内容等の事情を総合的に考慮し、解雇に合理性・相当性があるといえるか検討する
▶参考情報:解雇について会社が弁護士に相談すべき理由については以下でも詳しく解説しています。あわせてご参照ください。
(4)手順4:解雇予告を行う、または解雇予告手当を支払う
1,解雇するときは何日前に通知すればよい?
従業員を解雇するときは、少なくとも30日前に解雇の予告をすることが法律で義務付けられています(労働基準法第20条1項)。
解雇予告通知は、法律上は口頭でも可能とされていますが、通知したことを記録として残すためにも、書面を交付して行うことが原則です。
2,解雇予告手当はいくら支払えばよい?
30日より前に予告ができない場合は、30日に満たない日数分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があることが原則です。
「解雇予告手当=平均賃金×予告期間が30日に足りなかった日数」で計算
平均賃金とは、解雇日の直前3か月間の賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額のことです。ただし、日給制・時給制など一定の場合には、平均賃金に最低保証額があり、解雇日の直前3か月間の賃金の総額を労働日数で割った額の6割にあたる金額の方が高いときは、その金額が平均賃金になります。
▶参考例:
- 通知した当日に解雇する(即日解雇)場合:平均賃金×30日分
- 解雇日の14日前に予告する場合:平均賃金×16日分
なお、日雇いのアルバイトの場合、2か月以内の雇用契約の場合、季節的業務で4か月以内の雇用契約の場合、試用期間中で入社後14日以内の場合は、解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要とされています。ただし、日雇いのアルバイトでも1か月を超えて引き続き雇用された場合、契約期間を超えて引き続き使用された場合、試用期間中の労働者が14日を超えて引き続き使用された場合は、解雇予告が必要です(労働基準法21条)。
▶参考情報:解雇予告や解雇予告手当、解雇予告通知書については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
(5)手順5:必要な手続きを行う
雇用保険や社会保険に加入しているアルバイトやパートについては、解雇後の手続きを適切に行うことも必要です。
具体的には、離職票の交付、雇用保険や社会保険の喪失手続き、源泉徴収票の交付等です。普通解雇の場合は、原則として「会社都合退職(雇用保険上の特定受給資格者)」になります。また、従業員から解雇理由についての証明書を求められた場合、会社には交付する義務があるので注意が必要です。
▶参考情報:従業員を解雇した後の手続きについては以下の記事もご参照ください。
・従業員解雇後の離職票、社会保険等の手続きをわかりやすく解説
▶参考情報:解雇理由証明書については以下の記事もご参照ください。
・解雇理由証明書とは?書き方や注意点を記載例付きで解説【サンプル付き】
▶参考情報:会社都合退職の範囲については以下のハローワークのページも参考になります。
6,解雇については咲くやこの花法律事務所への相談がおすすめの理由
咲くやこの花法律事務所では、創業以来16年以上にわたり、企業側の立場で数多くの労働トラブルや問題社員トラブルについてご相談をお受けし、解決してきました。また、その経験を踏まえ、書籍「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」を出版する等、問題社員対応に関するノウハウの共有にも取り組んできました。
企業がアルバイトやパートの解雇を検討する理由は、勤務態度不良や能力不足、協調性の欠如などさまざまです。しかし、法律には、それぞれの理由ごとに詳しい解雇の条件が書かれているわけではありません。
解雇の有効・無効の明確な線引きがあるわけではなく、裁判例で示された裁判所の考え方をもとに判断していくしかないのです。だからこそ、解雇の判断は難しく、解雇トラブルで企業側が敗訴する事案は後を絶ちません。
かといって、勤務態度や協調性に問題のある従業員を放置すると、業務効率が低下したり、職場の雰囲気が悪くなって他の従業員の離職につながったり、さまざまな支障が生じる可能性があります。企業として時には勇気を持って解雇を決断すべき場面もあります。
解雇が避けられない場面でも、弁護士に相談し、弁護士と一緒に取り組むことで紛争に発展するリスクを抑えることができます。
咲くやこの花法律事務所は、現在約700社の事業者と顧問契約を締結し、日々、企業の労務管理や労働トラブルについてご相談をお受けしています。これまで経営者や企業に寄り添ってトラブルに対応してきた経験と知識、そして問題社員対応についての専門性を活かして、企業にとってよりよい解決のために尽力します。
7,実際に咲くやこの花法律事務所の弁護士が解雇トラブルの対応をサポートした解決実績
咲くやこの花法律事務所は、顧問先の企業様をはじめとして、数多くの企業から解雇トラブルについてご相談・ご依頼をいただいています。
ここでは、咲くやこの花法律事務所の解決事例の一部をご紹介します。
(1)勤務態度に問題がある職員の指導をサポートし、自主退職につながった事例
事案の概要
歯科医院で歯科助手として採用した職員が、指導に対してあからさまに態度を悪くする、返事をしない等、勤務態度が悪く、他のスタッフからもこの問題社員が怖いので医院を辞めたいという相談も出ていました。そのような状況で、問題社員への対応について咲くやこの花法律事務所へご相談いただきました。
咲くやこの花法律事務所の弁護士の対応
院長は、当初は、この問題社員を早急に解雇または退職勧奨することを希望しておられました。
しかし、ご相談をいただいた時点では、解雇は法的に難しく、これまでの指導状況から退職勧奨をしてもうまくいかないことが予想されました。そこで、弁護士から、焦って解雇や退職勧奨をしても解決につながらないことを説明し、問題社員を正しく指導し、それでも改善しない場合に退職勧奨を行うという方針で進めることになりました。
指導にあたって、弁護士からは、「問題社員の勤務態度が悪い場合はできるだけその場で指導すること」「なぜその行為が指導対象になるのかを説明した上で、具体的な改善策を伝えること」を助言し、弁護士が日々の指導をサポートしました。
そのうえで、指導をより効果的なものにするために、指導のたびに指導記録票を作成し、従業員には業務日報を提出させ、指導内容について定期的な面談を行うことを実行しました。これらの指導記録票や業務日報は、咲くやこの花法律事務所において問題社員対応の実践の中で作り上げてきたオリジナルの書式です。
従業員は指導に反発し、反抗的な態度を改めることはありませんでした。そのため、弁護士と院長で相談し、従業員に対して就業規則に基づく懲戒処分を行うことにしました。
懲戒処分をする際は、従業員に弁明の機会を与えることが必要です。処分対象となる行為について、日時を特定した上で具体的に記載した弁明通知書を従業員に交付し、一定期間までに弁明を行うよう通知しました。
解決結果
弁明書の提出期限前に、従業員から「退職したい」との申し出があり、従業員自ら退職することになりました。
この事例では、強引に解雇や退職勧奨に進んでもうまくいかなかったことが予想されます。弁護士の助言の下、適切な指導を積み重ねて、医院が従業員の態度を放置しないという態度を示し続けたからこそ、最終的に自主的な退職につながりました。
▶参考情報:この解決事例についての詳細は以下の記事でご紹介していますのであわせてご覧ください。
(2)勤務態度に問題があり解雇した従業員から解雇無効を主張されたが、弁護士の交渉の結果、復職を断念させた事例
事案の概要
仕事中の私語が多い、ほぼ毎日ミスをする、上司の指導に対して反抗的な態度をとる等、勤務態度に問題のある従業員について、3か月間の試用期間満了をもって解雇したところ、従業員から解雇無効を主張された事案です。従業員との交渉について咲くやこの花法律事務所にご相談いただきました。
咲くやこの花法律事務所の弁護士の対応
弁護士が会社から聴き取り調査を行った結果、この従業員の勤務態度には以下のような問題がありました。
- 業務中の私語が多い
- ほぼ毎日ミスをする
- 上司が指導しても反抗的な態度をとる
- 会社が話し合いの機会を設けても態度が改善しない
- 配置転換をしても私語やミスが解消されない
しかし、これらの事情についての客観的な証拠はなく、従業員側の弁護士からもこの点を指摘されていました。
会社としては、この従業員に勤務を続けさせた場合、会社全体の業務効率が悪化してしまうことが予想されます。そのため、咲くやこの花法律事務所の弁護士が会社の代理人となって絶対に復職を認めないという姿勢を示し、従業員の行為や会社の指導等に関する具体的なエピソードを文章にまとめて、粘り強く交渉しました。
解決結果
弁護士の交渉の結果、解決金等を支払うことなく復職を断念させることができました。
この事例では、会社が熱心に指導をしても従業員の問題点が改善されないという事情がありましたが、それについて客観的な証拠がない点が会社にとってのウィークポイントでした。それでも、解雇が有効であることを根拠づける具体的なエピソードを拾い上げ、弁護士が強い姿勢で交渉に臨んだ結果、復職を断念してもらうことができました。
▶参考情報:この解決事例についての詳細は以下の記事でご紹介していますのであわせてご覧ください。
・成績・協調性に問題のある従業員を解雇したところ不当解雇の主張があったが、交渉で金銭支払いなしで退職による解決をした事例
また、咲くやこの花法律事務所の問題社員の解雇トラブルに関してサポートしたその他の解決事例については、以下の『企業法務の事件や裁判の「解決実績」サイト』で紹介しています。こちらもあわせてご参照ください。
8,アルバイトやパート社員の解雇に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で、アルバイトやパートの解雇に関するご相談をお受けしています。咲くやこの花法律事務所の弁護士によるサポート内容をご紹介します。
(1)アルバイトやパートの解雇に関する相談
咲くやこの花法律事務所では、アルバイトやパートの解雇について以下のようなご相談をお受けしています。
- 解雇の可否について法的な助言、リスク判断
- 勤務態度に問題のある従業員に対する指導方法についての助言・サポート
- 従業員の問題行動や会社の指導内容の証拠化についての助言・サポート
- 横領や窃盗等が発生したときの調査や証拠の確保についての助言・サポート
- 解雇手続きの進め方についての助言・サポート
- 解雇通知書や解雇理由証明書等の解雇に関する書面の作成に関する助言・サポート
- 労働審判や訴訟への対応
実際にトラブルになってから弁護士に相談すればいいか、と考える方もいるかもしれませんが、一度解雇してしまった後では、とれる手段が限られてしまい、会社のダメージを避けられないことも多いです。
解雇に踏み切る前に相談し、弁護士の助言の下で適切な対応を行い、手順を踏んで解雇に進むことで、不当解雇とされるリスクを減らすことができます。
また、トラブルになってしまった場合も、弁護士が窓口となって対応することで、精神的な負担を軽減することができ、裁判になった場合の見込みを踏まえて会社にとってより有利な解決を目指すことができます。
従業員の勤務態度不良や能力不足への対応にお困りの方、解雇してもいいのか悩んでいる方、解雇トラブルにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
咲くやこの花法律事務所の弁護士への相談費用
- 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
- 相談方法:来所相談のほかオンライン相談、電話相談が可能
(2)顧問弁護士サービス
咲くやこの花法律事務所では、解雇トラブルの対応や予防はもちろん、企業の労務管理全般をサポートするための顧問弁護士サービスを提供しています。
解雇トラブルが起こったとき、会社が日頃どのように対応していたかが結果に大きな影響を与えます。日頃からこまめに顧問弁護士に相談いただき、社内の労務管理を改善したり、問題がある従業員に正しく対応していくことで、解雇トラブルに強い会社を作ることができます。
咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で数多くの事案に対応してきた経験を活かして、トラブルの予防、そしてトラブルが発生してしまった場合の早期解決に尽力します。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの内容は以下をご参照ください。
(3)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
弁護士の相談を予約したい方は以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
【お問い合わせについて】
※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
9,アルバイトやパート社員の解雇についてよくある質問
最後に、アルバイトやパート社員の解雇に関してよくある質問をご紹介したいと思います。
(1)アルバイトやパートを解雇すると会社都合退職になる?
解雇の場合は、原則として「会社都合退職(雇用保険上の特定受給資格者)」になります。
例外的に、労働者に重大な落ち度があり解雇したときは自己都合退職となることもあります。労働者の重大な落ち度があるといえるのは、例えば、横領や窃盗、暴力行為など犯罪に該当する行為があった場合や、経歴や身分を偽って就職した場合等です。
(2)試用期間中のアルバイトやパートを解雇できる?
試用期間中のアルバイトやパートについては、本採用された従業員と比べて、解雇が有効と認められるハードルは若干低くなっていますが、それでも自由に解雇できるわけではありません。
また、試用期間中は、従業員としての適性を試す期間でもあります。この期間に十分な指導を行い改善を促すことなく解雇した場合、不当解雇と判断される可能性があるので、試用期間中であっても解雇は弁護士に事前に相談したうえで行う必要があります。
▶参考情報:試用期間中の解雇については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
10,まとめ
この記事では、アルバイトやパート社員について、解雇が認められる条件、不当解雇となるケースや不当解雇と評価された場合の会社のリスク、解雇予告のルールや解雇予告手当の計算方法などについて解説しました。
解雇には法律上のルールがあり、これは正社員であっても、アルバイトやパートであっても同じように適用されます。アルバイトやパートだからといって、自由に解雇できるわけではありません。
会社がアルバイトやパートを解雇する理由は、能力不足や勤務態度不良、横領などの非違行為、業績悪化による整理解雇等さまざまですが、会社から見てこれらの事情があるというだけでは解雇は認められません。
例えば、能力不足を理由とする場合は、「会社が適切な注意・指導を行っていること」や「改善のための期間を与えていること」が必要です。勤務態度不良を理由とする場合は、「会社が適切な注意・指導を行っていること」「改善のための期間を与えていること」「解雇の前に戒告やけん責などの懲戒処分を行っていること」が必要です。
そして、契約期間を定めて雇用契約を締結している場合は、原則として契約期間の途中で解雇することはできません。契約期間の途中で解雇した場合、不当解雇と判断されるリスクも高いので、契約期間の満了まで待って雇用契約を終了するのが合理的です。
アルバイトやパートを解雇するときの具体的な手順は以下のとおりです。
- (1)雇用契約の種類を確認する
- (2)解雇の前に退職勧奨を検討する
- (3)退職合意が成立しなかった場合は解雇を検討する
- (4)解雇日の30日以上前に解雇予告する
- (5)解雇後に必要な手続きを行う
ただし、このような手順を経ても、後日、不当解雇と判断された場合、会社はそのアルバイト社員やパート社員を雇用し続けなければならないだけでなく、解雇の時点にさかのぼって賃金(バックペイ)の支払いを命じられることが多いです。また、労働審判や裁判等に発展すると、対応のために多くの時間や労力を費やすことになります。
そのため、解雇については必ず弁護士に事前にご相談いただくことをおすすめします。弁護士に相談して適切な証拠を確保したり、解雇前に適切な対応をすることで、解雇のリスクを大きく下げることができます。
咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場から、勤務態度や勤務成績に問題があるアルバイトやパート社員への対応や、退職勧奨、解雇等に関するご相談をお受けしています。お悩みの事業者の方は、ぜひ一度咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
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記事作成日:2026年10月10日
記事作成弁護士:西川 暢春
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